2021年7月16日更新

『クリムゾン・ピーク』新感覚ホラーをネタバレ考察!

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『クリムゾン・ピーク』舞台と幽霊が印象的なホラー映画

2016年1月8日に公開された、ギレルモ・デル・トロ監督作品の『クリムゾン・ピーク』。 ギレルモ・デル・トロ監督は、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの前日譚にあたる『ホビット』シリーズの2つの脚本を担当し、監督としても『パンズ・ラビリンス』や『ブレイド2』を大ヒットに導くなどヒットメイカーとして世界的に高い評価を得ています。 トム・ヒドルストン、ミア・ワシコウスカ、ジェシカ・チャステインなど豪華なキャストが集結した本作の魅力を考察とともにご紹介していきます。

『クリムゾン・ピーク』のあらすじ

クリムゾン・ピーク(2015)
©︎Universal Pictures/Photofest/ Zeta Image

19世紀のイギリスが舞台です。北イギリスの壮大な山脈に囲まれたカンブリア州に立つ古ぼけた豪邸に若手作家のイーディス・クッシング(ミア・ワシコウスカ)が夫のトーマス(トム・ヒドルストン)と住んでいました。 この地域は冬が訪れると地面に埋まった赤粘土が地上に現れます。そして、地上に出て来た赤粘土は白い雪を血のように真っ赤に染めるのです。だから、この地域は「クリムゾン・ピーク(深紅の山頂)」と呼ばれているのです。 小さい頃から霊を見る特殊な能力を持っていたイーディス・クッシングは、死んだ母親から「クリムゾン・ピークに気をつけなさい」という警告を与えられ……。

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『クリムゾン・ピーク』の傑出した魅力を2つの観点から考察!

『クリムゾン・ピーク』はギレルモ・デル・トロ監督の言葉では、「ゴースト・ストーリーにしてゴシック・ロマンス」という位置づけの映画です。 同時にデル・トロ監督は、閉ざされた空間で『オーメン』、『エクソシスト』、『シャイニング』のようなスケールの大きいホラーを演出することを目指したといいます。 ここからはこのような映画『クリムゾン・ピーク』の魅力を、特徴的な舞台とホラー映画でお馴染みの幽霊という2つの観点から考察しましょう。

1.アラデール・ホールの役割とは!?

クリムゾン・ピーク(2015)
©︎ Universal Pictures/Photofest/ Zeta Image

アラデール・ホール・大穴と内装の秘密!?

『クリムゾン・ピーク』の主要な舞台となるのがイギリスの田舎の邸宅・アラデール・ホール。『パンズ・ラビリンス』(2006年)といったダーク・ファンタジーで知られるデル・トロ監督の独特の感性が反映されたこの邸宅は、ロケではなくカナダ・トロントのスタジオに建設されたものです。 アラデール・ホールに入って最初に目につくのが、玄関大ホールの天上に空いた大きな穴。デル・トロ監督は、落ちぶれたシャープ家の象徴として簡単に修理できない欠陥を邸宅に持たせるため、天上に穴を空けたと語っています。 このため、この穴はそこに住むイーディスやルシールの心の欠損状態を表している、と解釈する人がいるほど聴衆に強烈な印象を与えます。 内装も玄関ホールの絨毯に蛾のモチーフが用いられるなど、物語と関連するメタファーをふんだんに取り込んだものです。 さらにルシールのドレスは、内装のモチーフが使われているばかりでなく、色も壁の色に溶け込んで、彼女の邸宅に対する異常な愛着を表しています。

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2.『クリムゾン・ピーク』はただのホラー映画ではない

クリムゾン・ピーク(2015)
©︎ Universal Pictures/Photofest/ Zeta Image

「ホラー」と「ゴシック・ロマンス」の融合!

本作は、ホラー映画という枠組みだけではなく、さらに、「ゴシック・ロマンス」というジャンルに分けられます。 ゴシック・ロマンス映画とは、『レベッカ』(1940年)や『ガス燈』(1944年)のような閉塞された状況にある女性の心理に焦点を置いた映画です。 このため、舞台となる邸宅などが作品の雰囲気を決定する重要な役割を担うホラーやスリラーの要素をもつ物語も少なくありません。

これまでのホラーとは一味違う?幽霊の存在

『クリムゾン・ピーク』に登場する幽霊たちは、類型的なホラー映画に見られるヴィラン的な立ち位置ではありません。 結末でイーディスは、幽霊に2つの種類がある、と言います。1つは古い家や犯罪現場などの過去や土地に縛り付けられている幽霊。もう1つは衝動、喪失、復讐や愛といった感情にとらわれた幽霊です。 『クリムゾン・ピーク』に登場する幽霊は後者に属するものが多く、イーディスなど登場人物に危害を加えることはほとんどありません。逆に、イーディスの母の幽霊のように、彼女に警告を発したり、何かを伝えたり、彼女を守ったりしてくれる幽霊です。 このように同情すべき幽霊を登場させたことで、『クリムゾン・ピーク』はゴシック・ロマンス映画として魅力的な作品になっています。

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監督のギレルモ・デル・トロはR指定にこだわった

『クリムゾン・ピーク』はユニバーサルとレジェンダリーの共同制作にする予定でした。そして、ユニバーサルは『クリムゾン・ピーク』に製作費の半分を出す条件として「PG-13」で公開できるように内容の修正を迫りました。 しかし、ギレルモ・デル・トロ監督は頑なにユニバーサルの要求を拒否。結果として『クリムゾン・ピーク』はレジェンダリーの全額出資の作品になりました。 ギレルモ・デル・トロ監督は自身の美学を貫くためにR指定にこだわったのです。

『クリムゾン・ピーク』のスタッフ・主要キャストを紹介

監督・脚本はギレルモ・デル・トロ

クリムゾン・ピーク(2015)
©︎Universal Pictures/Photofest/ Zeta Image

『ホビット』シリーズや『パンズ・ラビリンス』などをヒットさせたファンタジー映画職人ギレルモ・デル・トロ。近年では、『クリムゾン・ピーク』に出演するチャーリー・ハナムが主演した『パシフィック・リム』が4億ドル以上の興行収入を上げました。

主人公のイーディス・クッシングにミア・ワシコウスカ

クリムゾン・ピーク(2015) ミア・ワシコウスカ
©︎Universal Pictures/Photofest/ Zeta Image

インディペンデント・スピリット賞助演女優賞やオーストラリア映画協会賞新人女優賞にもノミネートされたことのあるオーストリア出身の実力派女優。 近年ではティム・バートン監督のファンタジー映画『アリス・イン・ワンダーランド』のアリス役に大抜擢されるなど成長が著しいです。そんなミア・ワシコウスカが主人公のイーディス・クッシングを演じます。

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主人公の夫トーマス役を演じるのはトム·ヒドルストン

クリムゾン・ピーク(2015) トム·ヒドルストン
©︎Universal Pictures/Photofest/ Zeta Image

トム·ヒドルストンはケンブリッジ大学をダブルファースト(最優等の成績)で卒業した知性派俳優。男爵の曾曾祖父を持つ英国紳士です!世界一優しい声とも評され、『マイティ・ソー』のロキで世界中を魅了したトム·ヒドルストンの名演技に注目!

トーマスの姉レディルシールシャープにはジェシカ·チャステインが大抜擢

クリムゾン・ピーク(2015) ジェシカ·チャステイン
©︎Universal Pictures/Photofest/ Zeta Image

1977年生まれ、スクリーンデビューは2008年と遅いデビューながら近年存在感を放っている女優ジェシカ・チャステイン。 2014年以降の出演作だけを見ても、『インターステラー』『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』と話題作でメインキャストをつとめており、2016年2月5日全国公開の映画『オデッセイ』にも出演しています。 シアトル国際映画祭で最優秀主演女優賞、第70回ゴールデングローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)を受賞。第84回アカデミー賞助演女優賞、第85回アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされるなど輝かしい経歴を持つ彼女が見せる圧巻の名演技に期待しましょう!

アラン·マクマイケル博士を演じるのはチャーリー・ハナム

クリムゾン・ピーク(2015) チャーリー・ハナム
©︎Universal Pictures/Photofest/ Zeta Image

チャーリー・ハナムはイギリスのニューキャッスル出身の俳優です。アメリカのテレビドラマ『サン・オブ・アナーキー』シリーズの主人公ジャクソン・ジャックス・テラー役が有名です。 主人公のローリー・ベケットを演じた『パシフィック・リム』では、ギレルモ・デル・トロ監督との名コンビで作品を世界的に大ヒットさせた実績を持っています。ギレルモ・デル・トロが監督を務める本作品でもファンを熱演で魅了してくれるでしょう。

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ホーリー役にはバーン・ゴーマンを起用

パシフィックリム(2018) バーン・ゴーマン
©︎Universal Pictures/Photofest/ Zeta Image

バーン・ゴーマンは、『パシフィック・リム』では、ギレルモ・デル・トロ監督の下でチャーリー・デイと共に科学者コンビを演じ名脇役ぶりを如何なく発揮し、本作品にも見事にキャスティングされました。 『パシフィック・リム』の続編ではチャーリー・デイと一緒に再起用させる事が決まっており、本作品でも『パシフィック・リム』での名演技を再現してくれると思います。

『クリムゾン・ピーク』の考察で本作をより楽しもう!

クリムゾン・ピーク(2015)
©︎Universal Pictures/Photofest/ Zeta Image

この記事では映画『クリムゾン・ピーク』のあらすじやキャストを紹介し、舞台と幽霊という2つの観点から作品の魅力を考察しました。 ロバート・ワイズ監督の『たたり』(1963年)やジャック・クレイトン監督の『回転』(1961年)といった20世紀ホラー映画の古典にもインスパイアされた映画『クリムゾン・ピーク』。 舞台や幽霊に独自の美学に基づく映像効果をふんだんに取り込んだことで、デル・トロ監督はこの映画を21世紀にふさわしい魅力的な作品に仕上げています。