2019年11月11日更新

ポン・ジュノ映画一覧 ジャンルも国境も超える韓国の名監督

ポン・ジュノ
©Adam Orchon/Sipa USA/Newscom/Zeta Image

アジアにとどまらず、世界各国で高い評価を受けるポン・ジュノのフィルモグラフィーを一覧にして紹介します。最新作「パラサイト」でパルムドールを獲得するなど、その勢いは留まることを知りません。

目次

ポン・ジュノ映画一覧 韓国映画界の至宝が生み出した名作の数々を紹介

2019年のカンヌ国際映画祭で、『パラサイト 半地下の家族』が韓国映画として初のパルム・ドール(最高賞)を受賞しました。本作の監督・脚本を手がけたのが、ポン・ジュノ。1969年9月14日生まれの韓国人監督・脚本家で、韓国を代表する監督の一人です。 大学卒業後に韓国映画アカデミーで映画を学び、在学中から短編映画を監督。2000年に『ほえる犬は噛まない』で初めて長編映画の監督を務め、2003年には監督2作目の『殺人の追憶』が韓国で大ヒットを記録。新進気鋭の若手監督として注目を集めました。 ジャンルにとらわれない作品を生み出し、発表するたびに高い評価を受けるポン・ジュノ監督。ここでは彼のこれまでの長編監督作を振り返るとともに、話題の受賞作『パラサイト 半地下の家族』についても紹介していきます。

ポンジュノ新作『パラサイト 半地下の家族』(2020) がカンヌでパルムドールを受賞

2019年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したことで、大きな注目を集めている『パラサイト 半地下の家族』。原題は『寄生虫』というタイトルのブラック・コメディで、日本でも2020年1月10日に全国公開されます。 家族全員失業中で、半地下に暮らすキテク(ソン・ガンホ)の家族。そんな中、長男のギウ(チェ・ウシク)が裕福なパク(イ・ソンギュン)の家で家庭教師をすることに。しかしこの相反する二家族の出会いが、予期せぬ事態に発展していき……。 『殺人の追憶』や『スノーピアサー』などでポン・ジュノ作品常連のソン・ガンホが、本作で4度目の主演を務めています。韓国では2019年5月30日に公開され、観客動員数は1千万人を突破。格差社会というタイムリーなテーマを秀逸な悲喜劇として描いており、カンヌでは満場一致で最高賞に選ばれたといいます。

『ほえる犬は噛まない』(2000)

Purazo
Purazo 4.5

ポン・ジュノ監督の長編デビュー作とのことですが…おもしろすぎた! もちろん韓国が舞台のおはなしですが、なんかどの国にも当てはめられる普遍性があるんですよね。 このひと天才…鬼才…。 原題はフランダースの犬らしい。ところどころあの曲がきけるのもおもしろいです。 そしてペ・ドゥナとそのおんな友だちがかっこいい。

ポン・ジュノ監督の長編映画デビュー作で、得意分野であるブラック・コメディの要素を持つ佳作。主演のペ・ドゥナのキュートさと展開のシュールさのギャップもさることながら、日本にはない韓国独特の犬食文化に驚きます。巨大な団地を舞台にした人間模様の描写も秀逸でした。 閑静なマンションで起こる連続子犬失踪事件をめぐり繰り広げられる騒動を描いたコメディです。出産間近の妻ウンシルに養われながら教授を目指している大学の非常勤講師ユンジュ。最近飼うことを禁止されているはずの犬の鳴き声が響き、出世出来ずイラついていたユンジュは、ある時、たまたま見つけた犬を地下室に閉じ込めてしまいます。 一方、マンションの管理事務所で働くヒョンナムは平凡な毎日を送っていましたが、団地に住む少女の愛犬がいなくなったと知り、正義感を燃やしビラ配りを手伝い始め――。

『殺人の追憶』(2004)

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southpumpkin 4

とある田舎で連続強姦殺人が発生。怠慢な警察は拷問により容疑者に自白を促すが、遅れてやって来た都会の刑事は批判的。彼らは次第に犯人を応用になるが…。 連想するのはフィンチャー『セブン』『ゾディアック』です。嫁の登場が『セブン』の距離感と同じでした。あ、これはもしかして…!と思ったら…。衝撃的な展開です。明らかに「『セブン』を観た人」を明確に意識していたように思いました。最高です。『ゾディアック』ぽさもどんどん出てきます。オチなんてほとんど、なのですがなんと『ゾディアック』前に撮られた映画でした。フィンチャーが意識したのか?しかし『ゾディアック』よりも理解しやすくわかり易いので(『ゾディアック』が難しいとも言える)おすすめです(前にも何かのレビューで似たことを書いた気がしますが思い出せません)。 韓国ノワールとしてはド派手ではないもののずっしりと重い。粗暴で直感的な刑事に対して、知的で論理的な刑事が活躍するが、それは最後まで続かない。テンプレを狂わせる良作でした。

実在の事件を題材にしているため、フィクションとはいえ緊迫感とリアリティを追求した作風が特徴です。韓国の各映画賞で監督・作品賞など総なめにしました。パク刑事がカメラ目線で凝視するラストシーンは、ポン・ジュノ監督が意図的に真犯人に向けた視線だったそう。 そして事件から33年を経て、題材となった事件の容疑者が特定されたというニュースで再び注目を集めています。 韓国のある農村で1986年から1991年の6年間で10人の女性が殺害され、懸命な捜査を続けるも有力な手掛かりがつかめず苛立つ捜査陣。地元警察の刑事とソウル市警から派遣された刑事が組み、有力な容疑者が浮上しますが……。

『グエムル 漢江の怪物』(2006)

pleiades_gin
pleiades_gin 3.5

チープなB級パニックもたまにはいいか〜と思って観たら火傷した。 この映画には"ここにフォーカスするぞ"っていう強さがある。 フォーカスするための準備も怠らない。意外なほど優等生な作りだったよ。 終盤、怪物・グエムルを追い詰めるシーンでは韓国映画特有(私のイメージ?)の"これでもかっ!"っていう容赦しない、まるで胸倉掴まれてステージに引っ張り出されるような突き付けられる感がある。 いいんだ、このなりふり構わずいく感じってのが。

韓国映画の観客動員数ランキングで、いまだトップ6(2019年現在)に入っている大ヒット作です。シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀視覚効果賞、ファンタスポルト国際ファンタジー映画賞で最優秀監督賞を受賞するなど、国際的にも高評価を得ています。 実際の公害事件をヒントにした社会風刺の効いた作風と、グエムル=怪物の造形が評価されたポイントでしょう。 ソウルの中心を流れる漢江(ハンガン)に突然現れた正体不明の巨大な生物。驚異的なスピードで動き回り、人々を次々と襲い始めます。河川敷で売店を営む一家の娘が連れ去られ、救出するために奮闘する家族を描きました。

『母なる証明』(2009)

HMworldtraveller
HMworldtraveller 4

母親の愛はなんて愚かで、なんて深く、なんて盲目的なんだろう、、。思わず深い溜め息をついてしまう後味の悪い韓国映画だった。 本来、母の愛は普遍的で 慈悲深く 包むような温かさと 愛ゆえの厳しさを持つものだと思う。が、ひとたび その愛情が正しさを見失い 偏った方向へ向かうと それは狂気に他ならない、厄介なモンスターと化してしまうのだ。 本作の息子は 知的障害を持っている。母親は息子を心配し食事や 行き先、 付き合う友人にも口を挟み、いい大人のはずの息子と1つのベッドで寄り添うようにして眠る。彼にもし障害が無かったら 、こうはならなかったのだろうか? 普通にいけば 母親のほうが先に寿命を迎えるのだから ほんとに息子のことを思うなら過保護にせず、彼が1人でも何とか生きていけるようにあえて試練を与えたり、生き抜くための能力を身につけさせるべきなのではないだろうか? 生き抜くための能力とは 少なくとも「バカにされたら黙っていないでやり返せ」と教えることではないだろう。この母にとって きっと、息子がバカにされることは すなわち その子を産んだ自分がバカにされること。だから 息子への教えは究極的な自己愛だとも言える。 息子を演じたウォンビンの、視線が定まらず 常に空中を泳ぐような目が恐かった。彼はどこまでを自覚しているのだろうか。終盤、母親にあるものを差し出す時の表情といったら‼︎ 空虚な表情の中に秘めたものは悪意か無知か? 嫌悪感を煽るような静物描写や人々の佇まいなど後味が悪く2度は観たくないのに 観て後悔してはいない自分が恐い。常軌を逸した情念に満たされた作品なので 誰にでもおすすめはできないけれど 作品としては よくできていると思う。

母と息子の強い結びつきと母の無償の愛に感動する……かと思いきや、あまりにもシビアなどんでん返しに驚くこと必至のヒューマン・サスペンス作品。主演の二人の演技が高く評価され、ストーリー構成も巧妙で、韓国のみならず世界各国の映画祭で作品・脚本賞を受賞。カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門でも上映されました。 一人息子のトジュンを育て上げ、貧しいながら懸命に生きてきた母。ある日、二人が暮す静かな町で凄惨な女子高生殺人事件が起き、容疑者となったのはトジュンでした。事件の解決を急ぐ警察はトジュンを犯人と決めつけます。無能な弁護人も頼りにならない中、母が純粋な息子の無実を信じて真犯人を探し出そうと一人奔走しますが……。

『スノーピアサー』(2014)

Ken_Chang
Ken_Chang 5

全く予備知識なかったので面白かった! 突っ込むところは数あれど、背負い投げ気味にグイグイ引っ張られて、あららと言う間に終演 ふと気づくとニヤリとする伏線も、ばら撒いては拾い上げてわりとよく練られているほうの脚本だと思う 階級制である意味も不明だったけど、まさかの子供がキーポイント… てっきりパク・チャヌクが監督だと勘違いしてて、ウィキったら製作だった(´Д` )明らかに影響大かと

ポン・ジュノ監督初の英語作品で、主演にクリス・エヴァンスを迎え、内外から集結したキャストが多国籍で不思議な列車空間を作り上げました。走るノアの方舟「スノーピアサー」の中で繰り広げられる階級闘争に引き込まれ、氷の世界となった地球の映像に息を呑みます。独特な世界観を持つ本格SFアクションとしても見どころ満載です。 地球温暖化を防ぐために世界中で散布された薬品により、想定外の冷却が進み、氷河期となった2031年の地球。動くものは永久エンジン搭載の巨大列車のみでした。生き残った少数の人類は乗り込んだ1台の列車内は支配層と被支配層に分かれ、壮絶な戦いが繰り広げられます。 被支配層の人々の怒りは爆発寸前になる中、一人の男が立ち上がり、仲間と共に列車を奪おうと反乱を起こし――。

『海にかかる霧』(2014)

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swingby2355 3.5

本編前になぜか何とも微妙なキャストからの挨拶映像が流れて、ゆるい雰囲気で始まるけど内容は全然ぬるくない。最初の漁のシーンが生き生きと描かれていて、後で振り返るとあまりに切ない。中盤起こるギョッとする事件から皆が正気を失っていく描写はさすが韓国映画

ポン・ジュノ初のプロデュース作品。2001年に実際に起こった「テチャン号事件」を基にした舞台の映画化で、『殺人の追憶』の脚本を担当したシム・ソンボが初監督を務めています。 不況に苦しむ韓国の漁村。6人の乗組員を乗せたチョンジン号は不漁続きで船の維持も難しくなっていました。切羽詰まった船長は船を守るため中国からの不法移民の輸送を引き受けます。海上で中国船から密航者を迎え入れるも海上警察の調査、悪天候に阻まれ、思いもよらぬ事態へ。 海上の密室と化した船上で正気を失っていく船員たち。その中で守るべきものを得て成長していく一人の青年。やがて衝撃のクライマックスを迎えます。

『オクジャ/okja』(2017)

ティルダ・スウィントンやポール・ダノを配した国際色豊かな作品で、2017年にNetflixで配信されました。主演は子役として活躍するアン・ソヒョンで、韓国の山村に住む少女ミジャが、親友の巨大生物「オクジャ」を利用する多国籍企業から守ろうとする冒険譚です。 ポン・ジュノ監督は本作には宮崎駿作品の影響があり、少女版『未来少年コナン』だとも語っています。山奥からニューヨークの都会へ連れて来られたオクジャには、『ベイブ 都会へ行く』(1999)の影響もあるとか。 2017年のカンヌ国際映画祭では、ネット配信作品として初めてメインコンペティション部門に出品。高評価を得てパルム・ドールを争いましたが、劇場公開予定のない映画の受賞資格について議論が紛糾したことでも大きな話題を呼びました。

ジャンルも国境も超えるポン・ジュノ作品

ポン・ジュノ
©Adam Orchon/Sipa USA/Newscom/Zeta Image

『殺人の追憶』で実際の殺人事件を取り上げ、『グエムル-漢江の怪物-』で怪獣パニック、『母なる証明』で狂気的な母性を描いたポン・ジュノ監督。作品ごとにジャンルを変え、『スノーピアサー』ではついに国際的な配役のSFスリラーにも着手!さらに『オクジャ/okja』で配信作品という形態にもチャレンジしました。 『パラサイト 半地下の家族』では再び韓国国内に戻り、常に奥底に流れているテーマである社会的格差とその対比を、一級のブラック・コメディとして見事に描き出しています。 作品は国境を超えて評価され、さらには配信作品の評価方法に議論を呼ぶきっかけも作り、ついに念願のパルム・ドールも手にしました。この先はどんな新たなジャンルに挑むのか、ポン・ジュノ監督の次回作にも期待が高まりますね。