2019年12月5日更新

『インサイド・ヘッド』がピクサー史上最高の映画である理由と15のトリビア【ネタバレ注意】

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インサイド・ヘッド
© DISNEY\PIXAR

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『インサイド・ヘッド』高評価の理由と面白いトリビアを紹介!

2015年に公開されたディズニー/ピクサー映画『インサイド・ヘッド』は、11歳の女の子の頭の中を舞台とした物語。脳内での感情たちの役割や活躍が描かれています。 そんな『インサイド・ヘッド』が、「ピクサー史上最高傑作」といわれていることを知っていますか? この記事では、本作が高評価を受ける8つの理由を紹介します。また、ピクサー作品には欠かせない小ネタやカメオ出演している他作品のキャラクターたちも紹介しましょう。

『インサイド・ヘッド』のあらすじ

インサイド・ヘッド
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ミネソタ州の田舎町に住んでいた11歳のライリーは、父親の仕事の都合で都会のサンフランシスコへ引っ越します。 新しい生活に慣れようとするライリーの頭の中では、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ビビリ、ムカムカの5人の感情たちが、それぞれ「ライリーのしあわせのため」を思うあまり衝突をはじめてしまい……。

『インサイド・ヘッド』が最高の作品である9つの理由

1.『インサイド・ヘッド』は成長にともなって感情が複雑になっていく物語

インサイド・ヘッド
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『インサイド・ヘッド』はとても感動的で、スペクタクルに溢れた物語になっています。観客のなかには、この作品の悪役はライリーの思春期だと推測する人もいるかもしれませんが、今回のテーマは違います。 本作は、11歳のライリーの感情が成熟していく過程を描いた物語になっています。成長すること、変化と折り合いをつけることの難しさを、ライリーの目と彼女の感情を通して正に最前線から描いています。 その感動的なストーリーは、とにかく涙なしには見ることができません。

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2. コメディ要素がストーリーと関連している!?

涙なしには見ることのできない本作ですが、思わずクスリと笑ってしまうようなコメディ要素も含まれています。 本作のコメディ要素やギャグは全てストーリーに関連し、最も重要な要素の1つになっています。ただのパロディやドタバタ劇ではありません。ライリーが想像することで、頭の中の至る所で様々な感情が反応し、次々とコメディ要素が生まれていきます。 さらに、エンドロールでは様々な脇役キャラクターたちが登場し、映画の中で最も笑える場面の1つになっています。

3. 頭の中を表現するアイディアが天才的!

『インサイド・ヘッド』で採用された、小さな人間が頭の中で感情をコントロールしているというアイデアは、とてもシンプルなように思えます。 しかし、頭の中には生態系のようなものが形成され、主要な感情たちは議論を交わします。一方、小さな労働者たちは広い脳のような居住スペースに広がっています。抽象的な考えから、潜在意識に至るまで、頭の中で起こる全ての現象はそれぞれ視覚化され、ライリーの行動に与える影響が明確になっているのです。 そのなかで、特に素晴らしいのが記憶の表現。ライリーの人生において重要な記憶は「特別な思い出」として全ての感情や行動に影響を与えるようになり、印象に残らなかった出来事は時間と共に文字通り消えていきます。 これは、実際に脳が記憶を処理するプロセスをよく表現しているといえるでしょう。

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4. 美しい映像のスタイルが作中で変化する

ピクサーはこれまでの作品で、アニメーション技術の限界を塗り替えつづけてきました。 『インサイド・ヘッド』もまた例外ではありません。人間の精神や感情を視覚的に表現することはとても難しいことですが、ピクサーが生み出したライリーの頭の中の描写は素晴らしいものでした。 記憶を表現した渦を巻いた火の玉やオーブは特に視覚的に美しい表現になっています。また、作中にヨロコビとカナシミ、想像上の友達ビン・ボンがマシンの中へ入って行くと、シンプルな2Dアニメーションに変化してしまうシーンがあります。 このシーンは、ピクサー作品の中でも最もエキセントリックで素晴らしい表現ではないでしょうか。

5. オープニングで大人を子供に引き戻す

『インサイド・ヘッド』はライリーが生まれてから10年の間に起きた重要な感情が生み出された瞬間、大事な記憶が生まれる瞬間にフォーカスをしたシーンから始まります。 このシークエンスは、映画全体のテーマを説明する役割を果たしています。 この場面によって観客は次第に大人の感性を忘れていき、ライリーの感性とピュアな目線で映画を楽しめるようになります。ヨロコビの無垢さ、無知さを通して大人を子供へと後退させ、再び、現実の厳しさをキャラクターたちとともに追体験するような作りになっています。

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6. なんといっても声優陣が素晴らしい!

ピクサー作品の声優は素晴らしいことで有名です。『インサイド・ヘッド』の声優陣、エイミー・ポーラー(ヨロコビ)、フィリス・スミス(カナシミ)、ビル・ヘイダー(ビビリ)、ルイス・ブラック(ムカムカ)は声でそれぞれの感情を完璧に表現しています。 彼らは単に与えられた感情を表現しているだけでなく、キャラクターにしっかりと深みを与えてくれています。 例えば、ヨロコビはただハッピーというより、底抜けに明るく、ビビリは落ち着いている時と恐怖で叫んでいる時の差が激しく上手いコントラストになっています。 また日本語吹替版の声優も、竹内結子(ヨロコビ役)や大竹しのぶ(カナシミ役)など、その演技が絶賛されました。

7. クライマックスにアクションシーンがない

ピクサー映画のクライマックスにはアクションシーンがつきもの。『ファインディング・ニモ』(2003年)や『Mr.インクレディブル』(2004年)など、これまでの作品のクライマックスには、派手なアクションシーンが挿入されていました。 しかし、『インサイド・ヘッド』はアクションに頼るのではなく、キャラクターにフォーカスを当てることで、クライマックスを感動的に盛り上げていきます。 この作りによって、アクションが苦手な大人も楽しめますし、映像自体が素晴らしいので子供も決して飽きることはありません。 クライマックスにはマイケル・ジアッキーノの素晴らしい曲が鳴り響き、さらに涙を誘いますが、すばらしい音楽のおかげですすり泣く声を聞かれずに済むはずです。

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8. ヨロコビとカナシミが司令部を離れている間のライリーの感情【ネタバレ注意】

ヨロコビとカナシミが「特別な思い出」のボールを追っているあいだ、司令部にはイカリ、ビビリ、ムカムカが残されました。彼らは3人だけでライリーの感情を操らなければいけなくなってしまいます。

彼らはうまくライリーの感情をコントロールすることができず、彼女の性格を形成する「おふざけの島」、「友情の島」、「家族の島」、「正直の島」が次々と崩れ落ちていきました。 残された3人が操ることのできる感情は、「怒り(イカリ)」、「恐怖(ビビリ)」、そして「不快(ムカムカ)」です。この3つの感情は、どちらかといえば生命を維持するために必要なもの。多くの動物は、自分にとって好ましくない状況を避けることで安全に暮らす事ができます。 しかし、ヨロコビやカナシミといった「感情」は、“死なないため”のものではありません。人間として本当の意味で“生きていくため”に必要なのです。 彼女たちが司令部にいない間、ライリーは人間らしさを失いかけていたのではないでしょうか。

9. カナシミの存在意義と本作のメッセージ【ネタバレ注意】

エンディングでヨロコビや他の感情たちは、カナシミの本当の価値を知ることになります。11年間、カナシミはライリーを困らせるだけで、必要のない感情だと彼らは信じていました。

物語終盤、ライリーは感情を失ってしまいます。その唯一の解決方法は、悲しみによってしあわせだった記憶を取り戻させることだったのです。クライマックスで、彼らは人生とは喜びと悲しみの繰り返しで、どちらもかけがえのない感情であることを学びました。 これが『インサイド・ヘッド』の真のメッセージです。子供のころは誰でも、喜びだけで生きていくことができるかもしれません。しかし、成長するにつれて周りの環境は変わり、つらい現実を嫌でも知ることになります。 ユーモアに溢れ、明るく楽しいキャラクターが登場する本作は、一見子供向けに見えて、実は痛みや悲しみが物語に必要不可欠な要素になっている、大人にも響く作品です。 『インサイド・ヘッド』は普遍的であると同時に個人的な作品になり得る、まさにピクサー史上最高傑作というにふさわしい作品でしょう。

『インサイド・ヘッド』がもっと面白くなる15の小ネタ

ディズニーピクサーによる感情たちを描いた映画『インサイド・ヘッド』は子供だけでなく大人もおもわず涙ぐんでしまうようなエモーショナルな作品で、ピクサーファンの中でも最高傑作と名高い人気作品です。 そんな本作には、実はいろいろなピクサーの遊び心が隠されています。本記事を読んだ後は『インサイド・ヘッド』を新しい角度から楽しめること間違いなし!

1. ライリーは『カールじいさんと空飛ぶ家』を観ていた!?

カールじいさんの空飛ぶ家
© DISNEY\PIXAR

2009年公開の映画『カールじいさんと空飛ぶ家』の冒頭にはカールとエリーの結婚生活を描いた感動的なシーンがあります。 本作の監督は、『カールじいさんと空飛ぶ家』と同じピート・ドクター。彼は、この映像をライリーの思い出ボールの1つに紛れ込ませました。

2. 感情キャラクターのモデルとは

感情を表現したキャラクターはそれぞれ特定の物体の形がモデルになっています。 ヨロコビは星の形、カナシミは涙、イカリは耐火レンガ、ビビリは神経、そしてムカムカはライリーの嫌いなブロッコリー(日本版ではピーマン)がモデルになっています。

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3. 短編キャラがこっそり登場

オープニングのライリーと両親が車でサンフランシスコに引っ越す場面で、電話線に並んだ鳥たちが登場しました。この鳥たちは『モンスターズ・インク』(2001)と同時上映されたピクサーの短編『フォー・ザ・バーズ』に登場したキャラクターです。

4. 次回作のキャラクターが一足先にカメオ出演

ライリーのハッピーな思い出の1つである、サンフランシスコのドライブ旅行の最中に大きな恐竜アトラクションが登場します。 この恐竜は、本作の後2016年3月に公開されたピクサー作品『アーロと少年』のフォレスト・ウッドブッシュです。

5.『カーズ2』のキャラクターがリアルな車として出演してる!?

このカメオ出演は、たとえピクサーの筋金入りのファンでも見つけることは困難かもしれません。本作の背景に登場する車のデザインは、『カーズ2』のキャラクターがモデルになっています。

6.あのキャラクターがとっても不本意なカメオ出演!?

レミーのおいしいレストラン
© Disney/Pixar. All rights

引っ越し先のリビングにあったネズミの死骸はライリーがサンフランシスコを嫌いになった大きな理由の1つでした。 ライリーの悪夢に2007年のピクサー作品『レミーのおいしいレストラン』のキャラクター・レミーを誇張したようなネズミが登場します。同作の主人公レミーにとっては、不本意なカメオ出演だったのではないでしょうか。

7. 監督が声優を務めたキャラクターとは!?

ピクサー作品は、監督が声を吹き込んだキャラクターが登場することで知られています。 もちろん本作も例外ではありません。ピート・ドクターがライリーの父親のイカリの声を担当しています。父親の頭の中ではヨロコビではなくイカリに感情のチーフを務めさせることで、ライリーがカナシミの重要さを知るエンディングとのバランスを取ったようです。

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8. 上から覗くと脳の形!?

『インサイド・ヘッド』は感情が頭で処理される過程をライリーの頭の中の構造やプロットに活かしていました。 本作の長期記憶の棚の曲線は上から覗くと、実際に脳の形に見えるように設計されていたそうです。

9. ライリーにとって両親は王様と女王様!?

本作には何度かトランプが登場する場面があり、トランプの絵柄にはライリーと彼女の両親が描かれていました。 Rはライリー、K(キング)は父親、Q(クイーン)は母親と、11歳の少女が両親に抱く印象をこのトランプの絵柄によってライトに示していました。

10. あのシドと同じTシャツを着ている同級生

ライリーの同級生“クールガール”の1人は、黒いスカルがプリントとされたTシャツを着ていました。これは『トイ・ストーリー』(1995年)でシドが着ていたTシャツの色違いです。 また、別の女子生徒は『トイ・ストーリー』のキャラクター柄のシャツを着ていました。

11. ヒッチコック作品へのオマージュが隠されている?

ドリーム・プロダクションの壁のポスターの1枚に“I’m Falling for a Very Long Time Into a Pit.”と書かれたものがあります。 このポスターデザインは、アルフレッド・ヒッチコック『めまい』のポスターデザインと酷似しています。

12. 『トイストーリー』アンディの部屋にあるのと同じ地球儀

ライリーの教室の隅には地球儀が飾ってありますが、これは『トイ・ストーリー』のアンディの部屋にある地球儀と同じものです。

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13. 傑作ノワール映画へのオマージュ

イマジネーションランドで雲の女性が誰に夫を吹き飛ばされたのか2人の警官に聞かれる場面で、1人の警官がこんなセリフを言います。 “Forget it, Jake. It’s Cloudtown.”(ジェイク、ここはクラウドタウンだぜ) これはロマン・ポランスキー監督のノワールの傑作『チャイナ・タウン』の“Forget it Jake、It’s Chinatown”(ジェイク、ここはチャイナタウンだぜ)をもじったものです。

14. ディズニーランドのアトラクションの曲が流れる!

ライリーが新しいアパートで悪夢をみるシーンでは、ディズニーランドの人気アトラクション「ホーンテッドマンション」の曲が流れていました。

15. 【ネタバレ】ヨロコビのキャラクターデザインは本作のテーマを反映している!?

ヨロコビがカナシミの大切さに気づくという本作感動のエンディングは、映画が始まった瞬間から巧みにほのめかされていました。 感情キャラクターはそれぞれ赤、青、紫、緑など肌や髪の毛、服の色が統一されていますが、ヨロコビは肌の色は黄色で髪の毛は青、服は緑と、身につけている色がバラバラです。

これは、“喜びは悲しみと表裏一体”という本作の重要なメッセージを表現していたのです。

『インサイド・ヘッド』はピクサー史上最高傑作だ!

『インサイド・ヘッド』がピクサー史上最高傑作である理由と、楽しいトリビアを紹介しました。 子供と大人が、それぞれ違った目線で楽しめる本作。久しぶりに観なおしてみると、新たな発見があるかもしれませんね!