ケン・ローチ監督映画おすすめ10選
ケン・ローチは、1936年6月17日生まれ、イングランド出身の映画監督・脚本家。イギリス空軍に2年間従軍したのち、オックスフォード大学で法律を専攻。在学中はコメディ・グループ「The Oxford Revue」に俳優として参加し、演劇活動に熱中していた。 1967年、『夜空に星のあるように』で長編映画監督デビュー。続く1969年の『ケス』では、英国アカデミー賞の作品賞・監督賞にノミネートされ、高い評価を得た。しかし、その後は社会問題を鋭く描く姿勢ゆえに政治的検閲や社会的風潮の影響を受け、約10年にわたり不遇の時代を過ごすことになる。 1990年代に入ると、労働者階級や移民の現実をリアルに描いた作品を次々と発表。『ブラック・アジェンダ/隠された真相』(1990年)と『レイニング・ストーンズ』(1993年)がカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、『リフ・ラフ』(1991年)と『大地と自由』(1995年)はヨーロッパ映画賞作品賞を受賞。国際的名声を確立した。 その後も精力的に作品を発表し続け、社会派映画の巨匠として確固たる地位を築いている。なお、息子のジム・ローチも映画監督として活動している。
1. 『ケス』(1969年)
不遇な少年と一羽のハヤブサの交流を描く、初期の代表作 活気を失ったヨークシャーの炭鉱町。母と兄ジャドと暮らす少年ビリー・キャスパーは、家庭でも学校でも居場所を見いだせず、孤独な日々を送っている。ある日、ハヤブサの巣を見つけた彼は、ヒナを育てることを決意。猛禽類の飼育書を読みながら懸命に訓練を重ね、次第にハヤブサと心を通わせていく。 過酷な現実の中で生きる少年の一瞬の輝きを、抑制の効いたリアリズムで描いた名作。日本では長らく『少年と鷹』の題でテレビ放映のみだったが、再評価の高まりを受け、1996年に劇場初公開された。
2. リフ・ラフ(1991年)
劣悪な労働環境の中で芽生える、不器用な愛 刑務所を出所したスティーブは、ロンドンの違法建築現場で過酷な労働に従事する。ある日、届け物をきっかけに歌手志望のスーザンと出会い、やがて二人は惹かれ合う。しかし、夢と現実のはざまで生活は決して容易ではない。 不安定な社会に生きる若者たちの姿を、ユーモアを交えつつ描いたローチ復活期の代表作。1991年ヨーロッパ映画賞作品賞受賞。
3. 『レイニング・ストーンズ』(1993年)
貧困と信仰のはざまで揺れる父の物語 失業中のボブは借金に追われながらも、娘の聖餐式用ドレスを用意しようと奔走する。羊泥棒や日雇い仕事など、あらゆる手段に手を伸ばすが、状況は好転しない。 タイトルは「石が降るような辛い人生」を意味する。敬虔なカトリック信者である主人公を通して、宗教と貧困というテーマを悲喜劇調で描写。1993年カンヌ国際映画祭審査員賞受賞。
4. 『SWEET SIXTEEN』(2002年)
16歳の少年が抱く、ただ一つの願い 服役中の母と再び暮らすことを夢見るリアムは、その資金を得るため麻薬取引に手を染めていく。無垢な願いとは裏腹に、彼の選択は次第に取り返しのつかない現実へと向かっていく。 過酷な環境下で大人にならざるを得ない少年の姿を痛切に描いた青春ドラマ。第55回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞。
5. 『麦の穂をゆらす風』(2006年)
独立と分断に揺れる兄弟の悲劇 1920年、アイルランド独立戦争。医師を志していたデミアンは、イギリス軍の暴力を目の当たりにし、兄テディとともに武装闘争に身を投じる。しかし、講和条約をめぐる対立は内戦へと発展し、兄弟をも引き裂いていく。 歴史の大きなうねりに翻弄される個人の運命を描き、第59回カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。
6. 『この自由な世界で』(2007年)
成功への野心が導く、道徳の揺らぎ シングルマザーのアンジーは、職業紹介業で成功を目指す中、不法移民の搾取に手を染めていく。善意と野心の境界が崩れていく過程を、冷徹な視線で描く。 第64回ヴェネツィア国際映画祭金オッゼラ賞(最優秀脚本賞)受賞。
7. 『エリックを探して』(2009年)
憧れのスターがもたらす人生再生の物語 人生に行き詰まった郵便配達員エリックの前に、憧れの元サッカー選手エリック・カントナが“出現”。助言を受けながら、彼は再び自分を取り戻していく。 ユーモアと温かさに満ちた人生賛歌。
8. 『ルート・アイリッシュ』(2010年)
戦争ビジネスの闇に迫る社会派サスペンス イラク戦争に民間兵として参加した友人の死に疑問を抱いた男が、真相を追ううちに巨大な利権構造へと行き着く。戦争を取り巻く現代的問題を鋭く描く。
9. 『天使の分け前』(2012年)
ウィスキーがつないだ再出発の希望 社会奉仕活動中の青年ロビーは、ウィスキーのテイスティングに才能を見出す。一発逆転を賭けた挑戦が、仲間たちの未来を切り開いていく。 第65回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞。
10. 『ジミー、野を駆ける伝説』(2014年)
自由と文化を守ろうとした実在の活動家 1930年代アイルランド。帰郷した元活動家ジミー・グラルトンは、若者たちのためにホール再建に立ち上がるが、保守的勢力の反発を招く。 自由と表現の尊さを静かに問いかける社会派ドラマ。