2018年1月23日更新
ケン・ローチ監督映画おすすめ10選
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- ケン・ローチ監督とは
- 1:不幸な少年と一匹のハヤブサの交流を悲劇的に描くファミリー長編作【1969年】
- 2:劣悪な労働条件で働く男と歌手を目指す女性の愛と葛藤を描くリアリズム作品【1991年】
- 3:イギリス社会の底辺に生きる人々の愛や矛盾を悲喜劇調で描いた人間ドラマ【1993年】
- 4:家族の温もりを取り戻すため必死にもがく少年に訪れた過酷な現実を描く青春物語【2002年】
- 5:独立戦争から内戦へ発展したことによって翻弄される二人の兄弟の悲劇【2006年】
- 6:シングルマザーが、一生懸命がゆえに少しずつモラルを踏み外していく姿をシニカルに描く【2007年】
- 7:スーパースターサッカー選手との出会いでどん底中年男の復活と熱い絆を描く【2009年】
- 8:イラク戦争に参加して戦死した友人の死の謎に秘められた闇、暴かれる衝撃の真相【2010年】
- 9:スコッチウィスキーとの出会いでもたらした感動的な一発逆転コメディー【2012年】
- 10:実在の元活動家ジミー・グラルトンの生き様を通して自由の尊さを描いた感動の社会派ドラマ。【2014年】
ケン・ローチ監督とは
ケン・ローチは1936年6月17日生まれ、イングランド出身の映画監督・脚本家です。
イギリス空軍に2年間従軍した後、オックスフォード大学で法律を専攻しながら、コメディ・グループThe Oxford Revueに俳優として参加し、演劇に熱中していたのだとか…。
1967年に長編映画の『夜空に星のあるように』で映画監督としてデビューを果たし、1969年に撮り上げた『ケス』では、英国アカデミー賞作品賞と監督賞にノミネートされ絶賛されました。しかし、市民の社会問題への関心の低さや政治的な検閲が原因となり、10数年不遇の時代を過ごすことになります。
そして、90年代に入ると、労働階級や移民の日常をリアルに描かれた作品を立て続けに発表し、どの作品も高評価を受け、再び脚光を浴びることになりました。その後、1990年『ブラック・アジェンダ/隠された真相』と1993年『レイニング・ストーンズ』がカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞し、1991年『リフ・ラフ』と1995年『大地と自由』がヨーロッパ映画賞作品賞を受賞し、国際的に評価されるような映画監督に名を上げていきました。
ちなみに、息子のジム・ローチも映画監督になっています。
1:不幸な少年と一匹のハヤブサの交流を悲劇的に描くファミリー長編作【1969年】
Keimiyazato
ケン・ローチ1969年の作品 オープニングから続いて出てくる街並みでU2とかカモーン アイリーンのPVなんかを連想、家庭環境に恵まれない少年が鷹と心を通い合わせながら成長していきますが ラストは過酷、、自分的に身につまされ観るのが辛いのだけどイギリス独特のユーモアも挟んでいるし ラストだってその先に希望があるように終わっているので救われます。
ヨークシャー地方に住む活気の無い炭鉱町で、母と兄のジャドと3人暮らしをしているビリー・キャスパー。ジャドには、いつもいびられ仲が悪く、学校では、気弱い性格のせいでいじめられ、心憂い毎日送っている。そんなある日に、ハヤブサの巣を見つけ、ヒナの愛らしさに、自分で一から育てたいと思い、猛禽の訓練法の本を手に取り勉強し始めたのだが…。
イギリスのテレビ演出家ケン・ローチの初期代表作である。日本では、『少年と鷹』という作品でテレビ放映のみでしたが、制作から数十年後からケン・ローチ映画作品の評価が高まり、1996年に劇場初公開となりました。
2:劣悪な労働条件で働く男と歌手を目指す女性の愛と葛藤を描くリアリズム作品【1991年】
Miyako__Nagumo
学生時代、「ロバート・カーライルが好き」と話したら「ひゃくはち」「宇宙兄弟」の監督さん(当時、学生)が私に薦めてくれた映画。ケン・ローチ的なラブストーリー。ロバート・カーライルがいい味だしてます
グラスゴー出身のスティーブは刑務所を出た後、最下層の労働者が集まる悪条件の違法労働現場で改築工事の仕事に就いた。劣悪な環境で仕事を続けていたある日、スティーブは現場に忘れてあったカバンを見つけ届けたことをきっかけに出会った歌手志望の娘、スーザンと出会う。
場末のパブで歌っているスーザンに現場の仲間と声援を送るため出向いた夜、客席からの野次で彼女は、歌を歌えなくなってしまう。スティーブは、スーザンを励ますように一夜を共にし、やがて一緒に暮らし始め、不器用ではあるものの愛を育んでいたが…。
3:イギリス社会の底辺に生きる人々の愛や矛盾を悲喜劇調で描いた人間ドラマ【1993年】
southpumpkin
貧しい家庭の男が娘のドレスを買うために奔走するお話。いろんな仕事に手を出す間抜けな男のエピソードはコメディっぽく描かれ、ほんわかとゆるいテンポです。しかし過酷で避けようのない貧困が彼を襲います。
男が敬虔なカトリックであることが本作の大きなポイントでしょう。彼の信心深さに関するエピソードは下水工事の件で十分に語られています。ラストはかなりモヤっとしました。ただあれが本作のテーマである「宗教と貧困」に対する答えなのかもしれません。宗教については浅学で何も知らないに等しいのですが、「貧困が先で、宗教が後」とするメッセージを感じました。あれが宗教一般に言えることなのか、この映画に言えることなのかわかりません。
実はケン・ローチ作品初鑑賞なのですが、かなり見易いように感じました。他の作品も観てみたいです。
レイニング・ストーンとは、"石が降ってくるように辛い生活"という意味。
主人公のボブは、失業中の上に借金を抱え、借金取りに追われる毎日。そんな中で、7歳の可愛い一人娘コクーンの聖餐式(せいさんしき)のためのドレスを買ってやろうと考える。
ある日、同じく失業中の友人トミーと羊泥棒を思いつく。やっとの思いで捕まえた一匹を売り歩くもその間に車を盗まれてしまう。ほかにも、ディスコの店員をしたり、芝生を売ったりと、金が稼げることは何でもしていたがうまくいかず…。
1993年カンヌ審査員賞受賞した、イギリス社会の貧苦に悩みながらも娘のためにがむしゃらに突き進む一人の男を通して、底辺で生きる人のつらい現実を悲喜劇調で描いたヒューマンドラマ。
4:家族の温もりを取り戻すため必死にもがく少年に訪れた過酷な現実を描く青春物語【2002年】
Moto_Ishiduka
題名にだまされたといっていいほどに衝撃を受けた作品だった。
16歳の甘い青春なんてものはこの映画には存在しない。今日を生きれても明日はわからない。クスリと銃とナイフとが町中にあふれている。タバコを売るのと同じ感覚でクスリを売りはじめた主人公のたったひとつの夢は母と幸せに暮らすこと。ただそれだけだった。早く大人になろうとする彼の行動の裏には全てにおいて母の存在があった。まだ子供なのに、まだ子供なのに、まだ子供なのに。母を思ってする行動全て16歳の子供がすることとは考えられない、その差がまだ胸をついた。
ラストにつれて観てるのも耐え難くなって、目を覆いたくなるようなシーンはそれを誰も望んでいなかったからだと思った。この作品みたら母に電話をしている自分がいるはず。声を聞きたくなるはず。
もうすぐ16歳のなる少年リアムは、学校も行かず親友のピンボールと遊ぶ自堕落な生活を送っていた。そんな少年にも、恋人の濡れ衣で服役中の母ジーンとそんな母を嫌い家を出た姉シャンテルと再び幸せに暮らすという夢があった
とある日、湖畔でコテージを見つけたリアムは、そのコテージで夢を実現しようと決意。金の無いリアムは、ピンボールとともに、母の恋人スタンが仕入れている麻薬を盗み売ることを企てるが…。
第55回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、脚本賞を受賞しました。
5:独立戦争から内戦へ発展したことによって翻弄される二人の兄弟の悲劇【2006年】
chocolateammt
独立戦争では拷問などの痛々しい場面に目をおおいたくなりましたが、その後の内戦には息ができなくなりそうなほど泣きました。
守りたかったモノがどんどん失っていき、同胞が敵になり、名前を呼び合いながら銃を向け打ち合うシーン、そしてラストの兄弟2人には胸が張り裂けそうな思いでした。
自由国兵士のしている事が英国軍と何も変わらない。しかしデミアンを牢獄で尋問したあの英国軍の兵士にも胸が詰まりました。
勝とうが負けようが幸せなど無いのですね。
1920年。医者を志すデミアンは、アイルランドを離れてロンドンで働こうと考えていた。しかし、頻繁に起こるイギリス軍のアイルランド人に対する支配的な暴力を目の当たりにして、ロンドン行きを取りやめ、兄のテディと武装組織に加入。
そして、アイルランド独立を胸に戦争に参入し、イギリスとの激しい攻防戦の末、アイルランドとイギリスの間で講和条約が締結される。しかし、条約の内容がアイルランド独立と呼ぶには苦しい内容で、人々からは賛否両論が飛び交い、ついには、内戦にまで発展し兄弟を引き裂いてしまうことに…。
第59回カンヌ国際映画祭で最高賞にあたるパルム・ドールを受賞しました。
6:シングルマザーが、一生懸命がゆえに少しずつモラルを踏み外していく姿をシニカルに描く【2007年】
podima_hattaya3
ロンドンの貧困層における不法滞在者の雇用問題云々といったテーマはケンローチ監督の十八番であるし、同じテーマのより優れているものはもっとあると思うので、省略。
「この自由な世界で」がその他ケンローチ作品と明らかに違う点がある。
主人公に同情の余地まるでなしという点である。
中盤、彼女はゾッとするほど最低な行為をはたらくのだが、その時視聴者というのは、主人公に期待し信じながら展開を見守っているものなのだな、と感じた。何故なら、その行為を見せ付けられたとき、何か裏切られたような気持ちになったからである。
軽蔑の眼差しでその後、後半の展開を待つ。ラスト、はたして彼女の浮かべた笑みの意味は。
一生懸命故に、道を踏み誤ってしまうシングルマザーを通して、現代のロンドンの労働事情と移民問題の苦難を描いた社会派ドラマ。
両親に、一人息子のジェイミーを預けて働くシングルマザーのアンジーは、この仕事がうまくいったら、息子と一緒に暮らそうと考えていた。その仕事というのは、職業紹介所で外国人の求職者に企業を紹介すること。
ルームメイトのローズと助け合いながら、その仕事が軌道に乗ってきたある日、不法移民を働かせる方が儲けになることを知ってしまう。そして、アンジーは、その方法に心揺れてしまい…。
第64回ヴェネツィア国際映画祭で金オッゼラ賞(最優秀脚本賞)を受賞しました。
7:スーパースターサッカー選手との出会いでどん底中年男の復活と熱い絆を描く【2009年】
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素敵な映画だった!!!!
エリック・カントナが本人役で出演。
郵便局員の冴えない中年男エリックが、ファンであるエリック・カントナのポスターに話しかけてたら、本当に本人が現れて、様々な助言をしてくれる。サッカーのことも彼のことも全く知らない私でもすごい楽しめた。
カントナの格言はどれも重くて、涙が出るものもあった。「最も高貴な復讐は赦すことである」
成功の秘訣はヘタくそなトランペットなのかもしれない。
やらなければならないこととは少し違った新しいことが、案外何かに繋がるのかな。
自分を見失ったら赦しと協力をすることで、縛りつけている自分自身から解放される。
それにしても、クライマックスのあのシーンはシュールで笑った。
大のサッカー好きのケン・ローチが、マンチェスター・ユナイテッドでエースとして活躍した元フランス代表のエリックカントナとタッグを組んだ、人生逆転コメディ映画。
マンチェスターに住む、しょぼくれた郵便配達員のエリック・ビショップは、過去に2度結婚を失敗し、2度目の妻の連れ子、10代のライアンとジェスを1人で育てながら暮らしてきた。しかし現在、その2人の子供は立派に問題児として成長し、自身もなめきられ、それに追い打ちをかけるように交通事故を起こして、すっかり人生を諦めている。
そんなある日、自室に貼ってあるサッカーのスーパースター"エリック・カントナ"のポスターに向かて話しかけた後、聞こえてくるはずの無い彼の声が聞こえて来て…。
8:イラク戦争に参加して戦死した友人の死の謎に秘められた闇、暴かれる衝撃の真相【2010年】
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ケン・ローチにしてはキャラクターがマッチョだし女優が美人だし、ミステリー&サスペンス風な展開が珍しいなと思いつつ。でも冒頭から痛々しさいっぱいで、特に親友の棺を覗く主人公の言葉、こういう関係性や心情が生々しい。戦場より1人のファナティックな落とし前に焦点を絞って、英国や当事者の足元を見つめる視点もケン・ローチらしい気がした。海を渡ってどこかへ行こうとしただけなのに、結局引き返せない所まで行っちゃうんだよな…。
タイトルの「ルート・アイリッシュ」とは、バグダッド空港と市内の米軍管轄区域「グリーンゾーン(英語版)」を結ぶ約12キロの道路のことであり、テロ攻撃の第一目的とされる「世界一、危険な道路」として知られている。
イラク戦争で生まれた、コントラクターと呼ばれる民間兵に焦点を当て、その陰の部分を浮き彫りにした社会派戦争サスペンス。
リバプールに暮らす民間警備兵のファーガスは、多額の報酬に惹かれて、友人のフランキーとともにコントラクター(民間兵)としてイラク戦争に参加することにする。しばらくして、先に帰還したファーガスは、残っていたフランキーはイラクで最も危険エリアと言われる"ルート・アイリッシュ"で戦死したと聞かされる。それに納得のいかないファーガスは、フランキーの妻レイチェルとともに真相を突き止めようと調査を始め、次第に戦争をビジネスにしている企業に結びついていく…。
9:スコッチウィスキーとの出会いでもたらした感動的な一発逆転コメディー【2012年】
podima_hattaya3
ケン・ローチファンとして、驚きの一作だった。
陰気臭くて気分が滅入るような作風が彼の特色だと思っていたが、本作はなんせポップ。前向き。登場人物たちも、少年漫画ばりのキャラの立ち具合。
しかし根底に流れる、貧困層と「やり直しのきかない社会」のやるせない現状という視点で社会風刺する辺りは相変わらず。
鑑賞後は爽やかな気分になれるほどであるが、よくよく考えると「こんな大バクチ打って成功するくらいの奇跡が起きんと、こいつらは這い上がれんのやで〜」というのが真意かと思えてきてしまい、結局気は滅入る。
教育もままならない荒んだ環境で育った青年ロビー。先の見えない自暴自棄になっていたロビーの恋人が妊娠したことが分かり、今までの行いを見直し心を入れ替えようと思った矢先に、暴力沙汰を起こしてしまい、裁判所から300時間の社会奉仕活動を言い渡されてしまう。
同じく社会奉仕活動の対象者達を指導するのは、ウィスキー愛好家のハリー。ロビーは、親身に接してくれるハリーによってウィスキーの魅力と味にどんどん引き込まれていった。そして、ロビーは自らテイスティングの才能があることに気付く…。
第65回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映され、審査員賞を受賞したヒューマンコメディドラマ。
10:実在の元活動家ジミー・グラルトンの生き様を通して自由の尊さを描いた感動の社会派ドラマ。【2014年】
HMworldtraveller
1930年代、内戦後のアイルランドが舞台。実在した人物の話だということもあってか、過剰な描写は無く題材の割にはライトなタッチで、この時代の教会や神父の権威や、一般人への封建的抑圧が描かれていました。ささやかな娯楽や文化さえ抑圧され、権力に抗えば 人々を煽る危険な共産主義活動家だと言われる理不尽さ。そんな中にあって、芸術や文化に触れ人間らしい生活を謳歌したいという人々の先頭に立って立ち向かうジミーの姿は静かな力強さを放ってました。すごく地味だけどいい映画だと思います。国や文化の違いや、その時代ならではの社会事情の違いはあるけど、権力と一般市民の対立の構図って、どこでもいつの時代にもある普遍的な問題なんだなとも感じます。アイルランドの風景の素朴な美しさも良かった。ただ、欲を言えばジミーを支持した人達のその後も描いてほしかったかな。美しく終わらせるためにあえてそこは割愛し、”受け継がれる希望” の暗喩のようなエンディングにしたのかもしれません。
1930年代、アイルランドの田舎町を舞台に、実在した活動家ジミー・グラルトンを描いた作品。
1932年、悲劇的な内戦が終結してから、いまだ傷が癒えぬ10年後のアイルランドの村に、アメリカで暮らしていた元活動家のジミー・グラルトンが、10年ぶりに帰郷した。かつては、地域のリーダーとして信頼を集めていたジミーは、昔の仲間たちに歓迎され、昔の恋人ウーナとも再会を果たす。
今のジミーの望みは、ただ村で、年老いた母親アリスの面倒を見ながらささやかに暮らすこと。しかし、かつてジミーが村の人々のために、憩いの場として建設した小さな多目的ホールが閉鎖されていたため、村の若者たちが、それを再建してほしいと訴え始める。そんな彼らの情熱に突き動かされたジミーは、仲間とともに再建の計画を練り始めるが、それを快く思わない勢力も現れてしまう…。