2018年1月19日更新

ミヒャエル・ハネケ監督映画おすすめ8選

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ミヒャエル・ハネケ
©ABA/Newscom/Zeta Image

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カンヌの常連ミヒャエル・ハネケ監督

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ミヒャエル・ハネケは、ドイツ人の俳優で映画監督の父とオーストリア人女優の母との間に1942年3月23日ドイツに生まれ、オーストリアで育ちました。ウイーン大学を卒業後、映画評論家やテレビ局での編集者などを経験。1989年に初の長編作品『セブンス・コンチネント』を発表しました。 1987年の『ファニーゲーム』で初めてカンヌ国際映画祭に出品、衝撃的な内容で物議を醸しました。これ以降、カンヌ国際映画祭へは計6度の出品、常連となります。2001年『ピアニスト』は審査員特別グランプリを受賞、2009年の『白いリボン』で最高賞のパルムドールに輝きました。また2012年には『愛、アムール』で2作連続となるパルムドールを受賞、アカデミー外国語映画賞を初め、数々の映画祭で絶賛されました。 破滅や暴力を淡々と描き、後味の悪さや不快感を誘う作風が特徴的ですが、独特の感性で人間の本質に迫る作品で高い評価を得ています。

何が家族を破滅へと向かわせたのか【1989年】

Keimiyazato ハネケ監督の一作目は色々考えても結論が出せない、肯定しようとすると ありきたりな意見しか出ないし 否定しようとすると感情的になって長々と書き連ねたくなるので両方止め!まだ観てない人はとにかく観て永遠に出そうにない正解の自問自答をして欲しい、決して゛退屈゛゛つまらない゛で片付けないように。
父母娘の3人家族を3部構成で断片的に綴った作品。 第1部1987年。妻は母を亡くし、心を病んだ弟をかかえ、夫は職場の上司と対立、娘は学校で目が見えないふりをする、と問題がありながらも特別ではない、ごく普通の家族の姿がありました。 第2部1988年。夫は上司との対立に決着、昇進が認められます。家族で外出した際に事故現場に遭遇し、その後に入った洗車場で人生を悟った妻の目に涙が。 第3部1989年。夫の両親を訪ねた後、オーストラリアへの移住を宣言した夫婦は預金を全て下ろし、大量の工具を購入。その工具で家の中のものを次々と破壊し、娘の飼っていた熱帯魚の水槽を壊した時、娘が初めて感情を爆発させます。下ろしてきた預金を全てトイレに流し、そして・・・。

「映像の中の映像」が特徴的な作品【1992年】

k1ller_aka_tKo ハネケ初期三部作(感情の氷河化)の2作目。 1992年に公開されたこの作品はネット依存社会におけるコミュニケーションの閉鎖性、そして現実/虚構の境界の希薄さなど、現代における社会問題のテーマにも通じている。これがおよそ20年以上も前に取り上げられているのだから凄い。 主人公・ベニーが突発的に犯した殺人を軸に広がる物語。あまりにもつかみどころがなく終始何を考えているのか分からないベニーがとにかく薄気味悪い。少女を殺した後の行動や家族へ殺人を告白する場面、そしてあのラストの行動ととにかくどこを切り取ってもゾワゾワする。 少女の死体をずらしては血を拭くシークエンス、その後のこぼれた牛乳を拭くカット、無駄に長いエジプト旅行のシークエンスなど執拗なまでのしつこさと長回しはさすがハネケ。本当に大切なことは全く映像に映さないスタンスはこの頃から健在。初期三部作の一本で映像も暗めですがハネケを語る上では重要な作品であることに間違いないだろう。
部屋から街を撮影することが趣味の青年ベニーは自分で撮った豚の屠殺ビデオを繰り返し見ている内に、いつしか人が血を流す映画を見ても刺激を感じなくなっていました。 ある日、ベニーは街で知り合った少女を自宅に招き、屠殺のビデオを見せますが、衝動的に銃で殺害。その一部始終が部屋に設置されたビデオカメラに記録されていました。この事件の後もベニーはこれまでと変わらない生活を続け、両親に少女殺害のビデオを見せます。その映像を見た両親が保身のために選択した事とは。

凄惨さで物議を醸した問題作【1997年】

epocheche 「憤慨させる為に作った」と監督自身が語っているように、観た後は気分が悪くなりました。途中の巻き戻しシーンはあまりにも絶望的でもはや笑えてきます。 映画でよくあるハッピーエンド、でも実際はそうじゃないでしょう?と観ている人を良い意味で馬鹿にしている作品でした。
Hiroto_Ueno 暴力シーンを撮さないのにあれだけ後味の悪さを植え付けてくるのはさすが。 娯楽的なハリウッド映画で描かれる暴力シーンでスカッとしてしまうのとは対照的。 暴力が用いられるストーリーの違いでこうも変わるものなのか。
ある穏やかな夏の午後、休暇を過ごすために別荘へ向かうショーバー一家。車にはゲオルグと妻アナ、息子のショルシ、そして愛犬のロルフィー。別荘に着くとゲオルグとショルシは明日のセーリングのための準備にかかり、アンは夕食の支度をしていたところにピーターと名乗る見知らぬ若者がやってきます。礼儀正しい態度を見せていましたが、もう1人の仲間、パウルが現れ態度が豹変。2人はゲオルグの膝をゴルフクラブで打ち砕くと、一家全員をソファーに縛り付け、家を占領しつづけます。 「明日の朝まで君たちが生きていられるか賭けをしないか?」ピーターとパウルはこれをゲームだと言い、一家を理不尽な"ファニーゲーム"に引き込んでいきます。

カンヌ映画祭で3賞を受賞【2001年】

igagurichan ミヒャエル・ハネケ監督作品。 幼い頃から母親に生活の全てを支配されてきた中年女性エリカ。名門音楽院でピアノ教授として働く日々だが、母親からの呪縛は続いていた。「共依存」と言う言葉がありますが、この親子はそれの斜め上をいっちゃってます。 母親からピアノを弾くことだけを強制され感情を抑圧された彼女は「愛」を知らない。ピアノへの情熱は強く表現力も高いのに、人への「愛し方、愛され方」はわからない。彼女の性癖にはドン引くものがありますが、それも致し方ないような気がします。狂気、暴力…血なまぐさいし、痛々しくて不快感が強く、観た後に置いてけぼりにされるような映画ですが、映画の全てが心に傷のように刻まれました。しばらく頭から離れなかったです。ハネケ監督の思惑通りみたいな気がしてちょっと腹が立ちます…。
幼い頃から母親に厳しく育てられた39歳のエリカ、ウイーンの名門音楽院でピアノ教師となった今も母親と2人暮らし。ある日、私的な演奏会で青年ワルターに出会います。エリカはワルターのピアノの才能に特別な感情を抱き、ワルターはエリカへの思いを強くし、執拗につきまとうように。やがてエリカが勤める音楽院へ編入までし、ある日、思い余って化粧室で強引にキスを。これをきっかけにエリカがひた隠しにしていた秘密があらわになり・・・。 2001年カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリ、男優賞、女優賞を受賞しました。

危機的な災害が起き、水や食料不足に陥ったヨーロッパが舞台【2003年】

whentheycry 冒頭からいきなりやられます。 世界的飢饉に陥った世界の話なんだけど、こんな時代に四人家族の大黒柱を失うところから始まります。 その時の妻の反応が忘れられない。 こういう状況に、立たされた時の人間の本質を描く映画は数あれどここまで違和感もなくドストレートなのは他にはないと思います。 何より、"家族の団結"を中心に人間同士の団結を描いているようなのに最後の終わり方は衝撃的。 1番幼い少年だけが一番の選択肢を考えようと必死だったのにそれを見守ったのは暴力を奮った男でその男に「こんなときにお前の家族は何してるんだろうな」なんて言われてしまう。 その男にも良心があり過ちに気付く心もあったと気付かされる。 最後のやっぱりある長回しは希望にも絶望にも見えてしまう。
水・食料不足に陥ったヨーロッパ。絶望的な状況の中、住んでいた街から別荘へとやって来た一家4人は、そこに居座っていた貧しい家族に銃をつきつけられます。説得しようとした夫は射殺され、物資と車を奪われた妻は娘と息子を連れて、残った自転車でさまようことに。 警察はとりあってくれず、知人も助けてはくれません。あてもなくさまよう内に農家の納屋にたどり着き、1人の少年と出会います。少年は列車に乗って避難することができると話し、一行は貨物駅を目指しますが・・・。

謎のビデオテープが鍵の心理サスペンス【2005年】

epocheche ストーリーはやや難解で、おそらくミステリーとして観るためには作られていない気がします。 ただ、題名にある通り、人は自分にとって不都合な記憶の蓋を閉ざして無かったことにしてしまう、という無意識下の罪をハネケ監督は描きたかったのかな、と素人ながら感じました。 今まで観たハネケ監督の作品の中では、一番好きな作品です。
southpumpkin ハネケの緊迫ワンカットが冴え渡る本作はかなり難易度の高い映画だと言えます。多分一年前の僕では意味のわからなかったのではないでしょうか。この鑑賞後にじわじわ来る感じが狙われたものなのですね、ハネケ師匠。 ある家族のもとに、玄関先の映像を撮り続けたビデオが送られてきます。(ところでこの映像、明らかに『ファニーゲーム』のオマージュを意識してます)ここから謎の展開を迎えて、まさかのオチです。この映画のラストカットにとんでもない事実が隠されている、というのは鑑賞後に知ったので見直してみたのですが、こんなのわかったところで不可思議が増すばかり。もしや、と思ったこの映画のメッセージ性がどうやら正しいみたいです。こりゃあハネケ映画の中でも最も難易度の高い映画なのではないでしょうか。 全然わからなくてもものすごい計算された何気ない長回しだけでも楽しめます。終盤のエレベータのシーンはヤバすぎです。
テレビキャスター ジョルジュと出版社に勤める妻アンの元に、送り主不明のビデオテープが不気味な絵と共に送られてきます。ビデオテープにはジョルジュの自宅を外から長時間にわたり隠し撮りしたもので、単なる悪戯として片付けようとしますが、その後もビデオテープが送られてきて・・・。

パルムドールを受賞したクライム・ミステリー【2009年】

Ayano_Jinnouchi ハネケの作品はどれも明確な結末だったり答えをださないで、視聴者に問題を投げかけるだけだからとても難解!この映画でいえば、誰が犯人なのか?っていうのはあまり重要じゃない気がする。決して娯楽映画じゃないのに、いっつも魅了されるからきっとハネケ好きなんだろうなあ…笑 村全体に広がる悪意、嫉妬、狂気、白いリボンによって抑圧される子供たち…恐ろしかった。
Chihiro_Kaneko モノクロ画面と終始じっとりした雰囲気で、村の人々の閉鎖的な雰囲気が出ていたと思う。 ナチスとのつながりは感じなかったけど、押さえつけられれば必ずどこかに捌け口となるものが必要で、その結果は抑制の意図とは真逆になったのだと感じた。
第一次世界大戦前夜のドイツ北部。のどかな農村で不可解な事故が次々と襲い、村人は疑心暗鬼になり、子供達は苦悩を感じ始めていました。村で権力を持つ男爵の息子が行方不明になり、暴行を受け、逆さ吊りの状態で発見され、男爵は「犯人を見つけ出さなければ村に平和はない」と告げ、村には不安がたちこめていき・・・。

2度目のパルムドールに輝いたヒューマン・ドラマ【2012年】

skr_icj #eiga #movie 長年連れ添った妻がひとりでは何もできなくなってしまい、夫の献身的な介護生活が始まる。年を重ねるごとに自分で出来ることが減っていく。そのとき、そばに誰がいてくれるのだろう。誰に、どういう扱いを受けるのだろう。彼女の希望通りにしてあげることが本当の愛なのか間違いなのか、私にはわからないけれど、彼の愛は苦しいほど真っ直ぐだった。あまりの救いの無さに、無音のエンドロールの間放心状態であった。
2_fillmore ハネケと出会えて、僕は幸せです。彼の映画を見る度に毎回心が落ち着かなくなります。 それは彼の映画は必ず感情の整理が容易にいかないものを投げかけてくるからです。 長年連れ添った妻が半身不随になり、次第に会話も支離滅裂になっていく中で献身的に介護に尽力する老夫。この老夫の苦労は誰が理解し、誰が支えることができるのでしょうか。それは人を愛することは、同時になにか業を背負って生きていくことのように感じました。 ハネケの映画全ての共通項として、「コミュニケーションの困難さ」というテーマがあると私は思っています。今回もやはりそのテーマは健在でした。また、ハネケの構図の象徴とも言えるフィックス画角と、長回し。今回も完璧です。 本当にいい映画をみれました。100点です。
パリ在住の80代の音楽教師の夫婦、ジョルジュとアンヌ。娘はミュージシャンとして活躍し、充実した日々を送っていました。ある日、アンヌが病に倒れ、病院に緊急搬送され、半身まひの重い後遺症が残ることに。アンヌの願いを受け、ジョルジュは自宅でアンヌと過ごすことを決めます。しかし徐々にアンヌの症状は悪化していき、やがて死を選びたいと考えるようになり・・・。