2019年12月22日更新

アニメ『ポカホンタス』はどれだけスゴイ?史実との違いやトリビアと共に解説

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アニメ『ポカホンタス』のすごさを解説 独自の魅力を紐解く

ディズニーアニメーション映画史上初めて実在の人物を扱った『ポカホンタス』。歴史的な逸話だけでなく、民話や伝承などを元にした本作は、初めて異人種間の恋愛を描いた作品としても注目されました。 今回は、そんな歴史的な作品『ポカホンタス』の史実との違いやトリビアを紹介しながら、本作のすごさについて解説します。

アニメ『ポカホンタス』のあらすじを紹介

17世紀初頭のアメリカ。インディアンのポウハタン族の娘・ポカホンタスは、好奇心旺盛で知的な女性です。自然を愛し木々とも会話できる彼女は、アライグマのミーコとハチドリのフリットとともに大自然のなかを駆け回って暮らしていました。 村の英雄ココアムからプロポーズを受けたポカホンタス。しかし彼女は気が進みません。そんななか、彼らの土地に金を探し求めてをイギリス人たちがやってきます。ポカホンタスは、そのうちのひとり、ジョン・スミスと彼女はお互いに惹かれ合うようになっていきました。 しかしイギリス人たちは彼女たちの土地を植民地化しようとしはじめ、ついには戦いがはじまってしまい……。

ポカホンタスのモデルは実在したのか?

『ポカホンタス』は、ディズニーアニメ史上初めて実在した人物の物語を描いた歴史的作品です。16世紀に実在したネイティブアメリカンの女性をモデルとしていて、彼女はインディアンに囚われたイギリス人ジョン・スミスの命を救ったという逸話が残されています。 1613年、ポカホンタスは囚われの身となりイギリスへ。そこで彼女はキリスト教へ改宗、タバコ農家のジョン・ロルフと結婚し子供を授かりました。アメリカへ戻る機会もありましたが、自らイギリスに残る決断をして、わずか21歳でその生涯を終えたといわれています。

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『ポカホンタス』独自の魅力とは?

史実と上手く折り合いをつけたキャラクター!?

彼女が実在した人物であることは間違いありませんが、ディズニーアニメと史実とは異なる部分が多くあります。 まず、映画ではポカホンタスは大人の設定ですが、実際の彼女がジョン・スミスと出逢ったときは、彼女はわずか10歳だったといわれています。また、ディズニーが参考にした史実は、ジョン・スミスが自身を美化するためについた嘘だと指摘する歴史家も。 しかし、いくら史実を基にするからといって10歳の少女と大人の恋愛を描くことは出来ないため、ディズニーは上手くバランスを取って賢明な判断をしたといえます。

ポカホンタスがいなければアナ雪は生まれていなかった

もしもポカホンタスがいなければ、エルサやラプンツェルは生み出されていなかったかもしれません。 1990年代、ディズニーの女性キャラクターたちは大きなターニングポイントを迎えます。それまでアニメで描かれてきた、か弱く美しいだけのプリンセスは時代遅れとなり、新たなヒロイン像の構築が不可欠でした。 そんな時に登場したのが、強く美しいヒロイン・ポカホンタス。本作が世間に受け入れられたことで、ディズニーの新たな章の幕が開いたのです。そして、ラプンツェルやエルサなど、単に美しいだけでなく、自分の未来を自ら切り開くプリンセスが次々と登場することになりました。

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一目惚れではパートナーを選ばない!?

アリエル、シンデレラ、オーロラ姫、白雪姫などディズニープリンセンスといえば、一目で“真実の愛”を見つけるのが定番です。 最後に愛を選ばなかったポカホンタスですが、彼女は本気でジョン・スミスを愛していました。しかし、今までのディズニーヒロインように直感で生涯のパートナーを選ぼうとしたわけではありません。 彼女はジョン・スミスとの交流を通して、しっかり彼の人間性を見極めながら次第に恋に落ちました。また、ネイティブアメリカンと白人という人種間を超えた恋を描いた点でも、『ポカホンタス』は重要な意味を持ちます。

恋より信念を重視するディズニーヒロイン

ポカホンタスはディズニーキャラクターの中で、恋に盲信しないとても珍しいヒロイン。初めはジョン・スミスと恋に落ちますが、アリエルやベルのように愛を選択しませんでした。 ジョン・スミスがイギリスへ連れて行こうとしたとき、彼女は自分の生まれた土地に残ることを決意。自分のアイデンティや愛する土地を守る選択をしました。

ポカホンタスは自然と対話できる

ポカホンタスは、特別な能力を持つ数少ないディズニーヒロインです。彼女は自然や精霊と対話する能力、動物の気持ちや未知の言語を理解する能力など不思議な力を持っています。

『ポカホンタス』誕生秘話を紹介 リライトを繰り返して生まれた素晴らしい脚本

ポカホンタスのアイデアを思いついたのは感謝祭の週末

感謝祭 ディナー お祝い

エリック・ゴールドバーグと共同で監督を務めたマイク・ガブリエルは、当初「ウエスタン・ロマンス(西洋人のロマンス)」をテーマに思い描いていました。ところが感謝祭の週末、彼は急に『ポカホンタス』のアイディアを思いついたそうです。 感謝祭は、アメリカに移民してきた白人たちに、そこで生きる術を教えてくれたネイティブアメリカンへの感謝を思い出す祝日です。

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脚本は最低35回は書き直されている

『ポカホンタス』の脚本を務めたのはカール・ビンダー、スザンナ・グラント、フィリップ・ラズブニクの3人。彼らは何度も何度も推敲し、どのシーンも全て35回以上書き直しているのだそう。 ちなみにグラントは後に『エリン・ブロコビッチ』(2000年)の脚本を手がけたことでも有名です。

ジョン・スミスはポカホンタスに助けられたことを長年秘密にしていた?

本作のストーリーは、実際にジョン・スミスが遺した回顧録をもとにしています。しかし、彼がポカホンタスに命を救われたと言いはじめたのは、イギリスに戻ってから17年後のことでした。 どうしてそんなに時間が経ってから急にその話をしたのかはわかりませんが、なにかしら思惑があったのかもしれません。

アニメーション制作の秘話 ポカホンタスは描く難易度がかなり高い

ネイティブアメリカンも認めるポカホンタスのリアリティ

ネイティブアメリカンが映像作品で描かれる時は大抵デフォルメされていますが、本作でのネイティブアメリカンの描き方は違います。制作チームは、専門家やポカホンタスの子孫などから情報を得て、なるべく正確にネイティブアメリカンを描こうとしていました。 ポカホンタスの父親の声を吹き込んだネイティブアメリカンの俳優は、初めてインディアン女性に人間の顔が描かれたと制作技術を称賛しています。

ディズニー史上最も描くのが困難なキャラクター?

ポカホンタスを描くにはとても高い技術と忍耐力を要したといわれています。 ディズニースタジオのアニメーターたちは複雑な着色、様々な角度からの骨格、多彩な表情など彼女を描くためにとことんこだわり、本作の製作は最も困難な作業の1つだったと語るほどです。 しかしアニメーターたちの努力のおかげで、最も美しくリアルなディズニーキャラクター・ポカホンタスが生まれました。

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ポカホンタスだけで55人のアニメーターが必要だった

『ポカホンタス』には複雑なアニメーションテクニックが採用されていたため、完成までに5年の歳月を要しました。ポカホンタスひとりのために55人のアニメーターが必要だったといわれています。

パーシーの描写は正しい

17世紀初頭のインディアン部族の物語にパグ犬が登場することに違和感を覚えた方もいるかもしれません。しかし、このパグのパーシーは史実に基づいた描写でした。アメリカに入植したイギリス人たちは、パグを連れてやってきたことがわかったのです。

ミーコはアライグマではなくリスだった!?

アライグマ

ポカホンタスの友達であるアライグマのミーコの名前は、メイン州のワバナキ族の伝承に登場するリスからきています。 伝承によると、ワバナキ族の人々に恐れられていた大きなクマ(オオカミの説もあり)が、善神グルースカップによって身体を縮められ、リスになったといわれています。こうしてミーコは危険な存在ではなくなりましたが、いたずら好きな性格は残ったのだとか。

声優キャストの秘話 ポカ・ホンタスとジョン・スミスは一度も顔を合わせていない?

クリスチャン・ベールはアイルランド訛り、スコットランド訛りの英語を試した

クリスチャン・ベール演じたジョン・スミスの部下トーマスは、当初キャラクター設定が決まっていなかったそうです。ベールはアイルランド訛りやスコットランド訛りで話したり、実年齢よりももっと若く聞こえる話し方を試したのだとか。結局は彼と同年齢でイングランド訛り(ベールはイギリス出身)と決定しました。

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収録現場は和気藹々かと思いきや……

アニメーションなどでは、俳優たちは別々に収録を行うことも珍しくないそうです。『ポカホンタス』で共演しているのに、収録では一度も会わなかった俳優同士も多くいるとか。ポカホンタスを演じたベダードは、ポカホンタスの歌を担当したジュディ・クーンや、ロマンスの相手ジョン・スミスを演じたメル・ギブソンにも一度も会わなかったというから驚きですよね。

『ポカホンタス』の人生に役立つ名言を紹介

「安定することとは退屈であり、変化を拒むこと。変化こそが人間を成長させてくれる」(ポカホンタス)

ポカホンタスの父であるチーフ・パウアタン首長は、娘に安定した生活を送ってほしいと願います。しかし、彼女は父のこの言葉を告げました。 私たちの人生に変化はつきもの。もし変化を拒めば、決して成長することはないでしょう。成長するためには変化を受け入れ続けることが大切なのです。

「君を知らないで100年生きるなら、明日死んだ方がましだ」(ジョン・スミス)

ジョン・スミスがポカホンタスに送った言葉のひとつ。愛を知らないで生き続ける永遠の命よりも、一瞬でもいいから愛を知ることの方が価値がある、尊いということですね。愛する人とともに様々な経験をすることは人生の喜びであり、何にも代えがたいものです。

『ポカホンタス』はディズニーアニメのターニングポイントだった!

多くのプリンセスを生み出し、世界中の子供たちに親しまれてきたディズニー映画ですが、『ポカホンタス』は、新たなディズニーアニメーション、新しいプリンセス像を打ち出した革新的な作品です。 それが2010年の『塔の上のラプンツェル』や2013年に世界中で社会現象を巻き起こした『アナと雪の女王』につながっていきました。ディズニーアニメーション映画にとって大きなターニングポイントとなった本作を楽しんでみてはいかがでしょうか。