2018年3月21日更新

クリストファー・ノーラン監督映画を驚愕のこだわりと共に紹介!

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ダンケルク、クリストファー・ノーラン
©2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.All RIGHTS RESERVED.

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現代の巨匠クリストファー・ノーラン監督作のこだわりに迫る!

クリストファー・ノーラン監督は、『ダークナイト』三部作(2005、2008、2012)や『インセプション』(2010)、『インターステラー』(2014)など、ハリウッド大作で次々と高評価を得るヒットメーカーです。 ストーリー展開をはじめ、映像にも並々ならぬこだわりを持つノーラン。今回は彼の人物像に迫り、映画へのこだわりを紐解いていきましょう。 監督作のほとんどがヒットしているノーランの驚きの手法の数々。これを読めば、お気に入りのあの作品も、また違った楽しみ方ができるのではないでしょうか。

天才クリストファー・ノーランの経歴、人物像は?

1970年、クリストファー・ノーランはイギリス人の父親とアメリカ人の母親の間に、ロンドンで生まれました。 3人兄弟の真ん中として育ったノーランは、7歳頃から父親の8mmフィルムカメラで短編映画を撮り始め、その後、ロンドン大学で英文学を学びながら本格的に短編映画の製作を始めます。 1998年に『フォロウィング』で長編監督デビューを果たし、長編2作目となる『メメント』(2000)でインディペント・スピリット賞などを受賞。その後、ハリウッドで大作映画を監督するようになります。

私生活では、携帯電話もEメールアドレスも持たいないことで知られ、そのことについて本人は「テクノロジーに反対というわけではなく、興味がないだけ」と語っています。 撮影現場で連絡を取りたい場合には、周囲のスタッフの携帯電話を借りるのでとくに困らないとか。 では、そんなクリストファー・ノーランの監督作品をご紹介しましょう。

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1.伏線が張り巡らされた衝撃の長編デビュー作!(1998)

ノーランの長編デビュー作である『フォロウィング』は、白黒フィルムで撮影されたクライムミステリーです。 小説のネタのため、他人を尾行する習慣を持つ作家志望の青年ビル。ある日コッブという男に尾行がばれたことから、彼の運命は変わっていくことに。 入り組んだ時系列と、それによって張り巡らされた伏線を終盤で一気に回収するというノーラン得意の手法は、この作品ですでに発揮されています。 わずか6000ドルという超低予算で、ノーランが製作、脚本、監督、撮影、編集の5役を1人で務めたこの作品は、英国インディペンデント映画賞プロダクション賞にノミネートされました。

2.世界を驚かせた時間軸逆転の手法(2000)

長編2作目にして、インディペンデント・スピリット賞作品賞、監督賞を受賞したノーランの出世作『メメント』。 弟であるジョナサン・ノーランの短編小説をベースにしたこの作品は、他にもゴールデングローブ賞で最優秀脚本賞に、アカデミー賞ではオリジナル脚本賞、編集賞にノミネートされました。 ある事件により10分しか記憶が保たなくなってしまった主人公が妻を殺した犯人を探すこの物語は、ぶつ切りになる主人公の記憶と同様に、結末から始まりへと進んでいく構成になっています。 この時間軸逆転により観客は少しずつ物語の全貌を理解し、最後は驚愕の事実を目にすることになります。

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3.ノーラン初のリメイク作品は抑制の効いた演出が秀逸(2002)

『インソムニア』は、1997年のノルウェー映画『不眠症 オリジナル版 〜インソムニア〜』のリメイクです。 ノーラン初のリメイク作品は、アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンクという3人のアカデミー賞俳優が共演した豪華な作品となっています。 しかし、内容は太陽の沈まない白夜のアラスカで、ロサンゼルスから来たベテラン刑事が不眠症に悩まされながら、少女殺害事件の捜査を進めていくという地味なもの。 ノーランはそれを、見事な演出によって息を飲むサスペンスに仕上げました。 薄暗い色彩が登場人物の秘密と罪悪感を暗示し、不眠症で判断力を失っていく刑事の姿が描かれます。

4.リアルな映像にこだわった英雄誕生譚『バットマン ビギンズ』(2005)

過去にも4作の映画が製作された人気アメコミヒーロー、バットマン。その5作目は、クリストファー・ノーランの手によって新たな次元へと突入しました。 幼少期にコウモリに対する恐怖を抱き、強盗に両親を殺された資産家の息子ブルース・ウェイン。そんな彼が「バットマン」としてゴッサム・シティの悪と戦うようになるまでの経緯が描かれます。 ハリウッドでの最初の大作とあって、ノーランはこの作品ではCGを比較的多めに使っています。 しかし、バットマンが空を飛ぶなどのアクションシーンは全て実演と、こだわるところにはしっかりとこだわり、アカデミー撮影賞にノミネートされました。

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5.天才マジシャンの対決が複雑な時間軸で驚きの結末へ導かれる(2006)

ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールがダブル主演を務めた『プレステージ』は、2人の天才マジシャンがお互いの手品のトリックを見破ろうと火花を散らすサスペンス映画です。 この作品では現在と過去を行き来しながら物語が展開し、セリフによって張り巡らされていった伏線が一気に回収されるラストでは、大きな事件の真相と、登場人物の抱える闇を明らかになります。 本作はアカデミー撮影賞にノミネートされたほか、19世紀末のロンドンの街並みや絢爛豪華な劇場のシーンなどが評価され、アカデミー美術賞にもノミネートしました。

6.実写はもちろん特撮技法も使用して迫力のある映像に!(2008)

新生バットマンの第2作目『ダークナイト』は、普通のヒーロー映画では考えられないほどCGの使用を抑えています。 多くのシーンが実写で撮影され、走るトレイラーを横転させたり、ビルを一棟まるごと爆破したりと、CGとは違う迫力のある映像に。 バットモービルとゴミ収集車のチェイスシーンでは、2つの車のミニチュア模型を使って実際の道路で撮影を行う特撮の技法が用いられています。 また、ハンス・ジマーマンが担当したサウンドトラックの評価も高く、アカデミー賞で音響編集賞を受賞しました。 アカデミー賞では他に、ジョーカーを演じた故ヒース・レジャーが助演男優賞を受賞しています。

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7.あのシーンにCGは使われていなかった!(2010)

『インセプション』
© 2010 Warner Bros. Entertainment, Inc.

レオナルド・ディカプリオ主演の『インセプション』は、特殊な産業スパイのコブ(ディカプリオ)が、ある会社の御曹司(キリアン・マーフィー)の夢に侵入し、あるアイディアを“植え付ける(インセプション)”ミッションに挑戦する物語です。 映画の大半が夢のなかという設定のため、次々と世界各国に舞台が移り変わりますが、これはCG合成ではなく、すべてロケで撮影されました。

また、コブの仲間であるアーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が無重力の廊下で戦闘するシーンはこの作品の見どころとなっており、やはりCGは使われていません。 ノーランはこのシーンを撮影するため、イギリス・ベッドフォードシャーにある巨大な倉庫に360度回転する長い廊下のセットを建てました。 ゴードン=レヴィットもこのシーン備えて、撮影の2週間前からトレーニングと回転するセットに慣れる訓練を行なっていたそうです。

8.『ダークナイト』最終章のこだわりがスゴイ!(2012)

「ダークナイト」三部作の完結編である『ダークナイト ライジング』は、CGと思われがちなシーンがいくつも存在しますが、そのほとんどが実写です。 壊れた飛行機のシーンはグリーンバックで撮影し背景を合成したものではなく、別の飛行機でセットである飛行機の残骸を実際に空中にぶら下げて撮影されました。 また、ウォール街で群衆が乱闘するシーンは、何千人ものエキストラを使っています。 フットボール場が爆破されるシーンは、本物のグラウンドの上にさらにグラウンドのセットを建て、それを爆破して撮影。 さらに空を飛ぶ戦闘機「ザ・バット」は全てCGかと思いきや、本体が存在します。それをアームで車両につないで撮影し、下のアームと車両をCGで消す処理しています。 リアルな映像にこだわるノーランは、莫大な費用を使ってこれらの映像を実現しました。

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9.グリーンバックは一切使用していない!『インターステラー』(2014)

『インターステラー』は、滅亡寸前の地球から人類が移住できる惑星を探すというSF作品でありながら、グリーンバックを一切使っていないというのですから驚きです。 まず、地球のシーンでは主人公が暮らす家の周りのコーン畑は、本物であるだけでなく、この映画のために種から育てたものだとか。 地上で主人公たちが頻繁に見舞われる砂嵐も、巨大なファンを使用して表現されています。

雪の惑星や水に覆われた惑星は、アイスランドでロケを敢行。過酷な環境ではありましたが、リアルな映像に仕上がっています。 また、宇宙船の外観が映るシーンは全てミニチュアを使って撮影されました。 主人公が5次元空間に落下するシーンも、彼の宇宙服やブーツを吊るすというアナログな手法で無重力状態を表現。 本作でグリーンバックを使用しなかった理由を、ノーランは「(グリーンバックでの撮影は)退屈だから」と語っています。

10.超アナログな手法を用いた史実に基づく戦争映画(2017)

ノーラン初の戦争映画『ダンケルク』は、第二次世界大戦中にフランスのダンケルク港から約40万人の兵士を救うという、実際にあった救出作戦を題材にしています。 壮大な戦争映画にはCG表現が欠かせないものですが、ノーランは本作でもできる限りCGを使用しない姿勢を貫きました。 本物の大型軍艦マイレ・ブレゼを使って実際に海での戦闘シーンを撮影し、空のシーンは500万ドルのアンティークの戦闘機にIMAXカメラを取り付けて撮影。 陸で救助を待つ兵士たちが映し出されるシーンでは、1500人のエキストラを33万3000人に見えるよう人型の書き割りを使用するなど、超アナログな手法を取り入れました。

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リアリティにこだわる映像職人クリストファー・ノーラン

インディペンデント映画で高く評価され、ハリウッド大作でもヒットを連発するようになったクリストファー・ノーラン。 彼の作品のストーリー展開の巧みさと、映像・撮影へのこだわりを感じていただけたでしょうか。 デジタル処理を極力避けリアルな映像にこだわるノーランは、工夫を凝らして頭の中の映像を現実にする、インディペンデント・スピリットを忘れない映像職人とも言える側面を持っています。 2017年現在、長編監督作は10作品と決して多いとは言えませんが、そのほぼ全てが確実にヒットしているノーラン。今後はどんな作品をわたしたち届けてくれるのでしょうか。