タランティーノの『ヘイトフルエイト』を倍楽しむための裏事実15選

2017年7月6日更新

クエンティン・タランティーノ監督の8作品目『ヘイトフルエイト』。雪小屋に閉じ込められた、曲者揃いの8人が繰り広げる密室劇ですが、本作をより楽しむための裏事情を15ご紹介します。

雪の中に閉じ込められた曲者8人の物語!

『ヘイトフルエイト』は2015年に公開された作品です。南北戦争後のアメリカを舞台に、雪の中の山小屋に閉じ込められた8人の人物たちを中心にストーリーが展開します。

残虐描写や、フルヌードなどの演出により、日本ではR18指定で公開されたことも話題になりました。そんなタランティーノの話題作を、より楽しむためのトリビアを紹介します。

1.初期のシナリオが流出していた

『ヘイトフルエイト』

監督のタランティーノは、初期段階のシナリオを身の回りのごくわずかなグループに共有していました。しかし、どこからかそのシナリオが流出してしまい、アメリカの有力的なブログメディアの運営会社であるゴーカー・メディアが故意にそれを拡散しました。

その事件で傷づいたタランティーノは、一度は『ヘイトフルエイト』の企画自体の取り下げを検討しましたが、流出したシナリオを読んだ読者からの様々な意見を受け、新たにこの作品に取り組む意欲がわいてきたそうです。

映画公開後も、誰がシナリオを流出させたのかは判明していませんが、結果この事件によってタラティーノの創作意欲が刺激され、より良い作品が生まれたことは間違いありません。

2.アメリカでは70mmフィルムで上映された

『ヘイトフルエイト』

『ヘイトフルエイト』がアメリカで公開された際は、44都市に渡る100の劇場で70㎜フィルムでの上映が行われました。

70㎜フィルムの上映は、現在ではあまり対応している劇場はありませんが、かなりの高画質での上映が可能です。『ヘイトフルエイト』以前では、1959年公開の『ベン・ハー』や、1963年公開の『おかしなおかしなおかしな世界』が70mmで上映されています。

通常の『ヘイトフルエイト』は上映時間167分ですが、70mmフィルム上映の際は187分になっており、間に12分の休憩が設けられたそうです。

3.本当の極寒の中で行われた撮影

『ヘイトフルエイト』

『ヘイトフルエイト』の舞台設定は、アメリカはワイオミング州の雪山ですが、実際の撮影はコロラド州のテルユライドで行われました。

テユルライドの気候は寒いことで知られています。そして12月に開始された撮影の為、プロデューサー陣は雪の中テユルライドに移動し、キャストも演技に信憑性を出すため常にマイナス1度の環境におかれていたそうです。

4.最初は若い設定だったデイジー・ドメルグ

『ヘイトフルエイト』

デイジー・ドメルグは主要人物の中では紅一点の女盗賊で、1万ドルの賞金をかけられているというキャラクターです。

そんな唯一の女性メインキャラクターの配役に関して、当初タランティーノは若い女優の起用を検討していました。候補として挙がっていたのは、2006年に公開されたジャパニーズホラーのリメイク版『呪怨 パンデミック』に主演したアンバー・タンブリンや、2012年公開の『世界にひとつのプレイブック』でアカデミー賞主演女優賞に輝いたジェニファー・ローレンスです。

しかし、最終的にタランティーノはデイジーのキャラクターをより年配の女性に設定。女優としてのキャリアも長く、1994年の『ミセス・パーカー/ジャズエイジの華』でゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされたジェニファー・ジェイソン・リーをキャスティングすることに決めました。

5.『ジャンゴ 繋がれざる者』との関係性

『ジャンゴ 繋がれざる者』

2012年公開の『ジャンゴ 繋がれざる者』は、タランティーノが『ヘイトフルエイト』の一作前に録った作品です。

ジェイミー・フォックス演じる黒人奴隷のジャンゴが賞金稼ぎとなって、生き別れの妻を探すというストーリーですが、この作品が深く『ヘイトフルエイト』とも関係しています。『ジャンゴ 繋がれざる者』はいわゆる西武劇ですが、タランティーノは自信が満足のいく西部劇を作ることができたと思っておらず、その遺恨を次回作で晴らしたいと思っていました。

そして、彼は前作の主人公ジャンゴを演じたジェイミー・フォックスの代わりに、企画段階では配役もされていなかった黒人俳優のサミュエル・L・ジャクソンを登場させ、ジャンゴの世界観を踏襲しつつも新しい作品を制作することに成功しました。

6.『ヘイトフルエイト』は西部劇三部作の2つ目?

『ヘイトフルエイト』

黒澤明にも影響を与えたジョン・フォードや、ヘミングウェイなどアメリカ文学の重鎮とも親交が深かったハワード・ホークスは、西部劇というジャンルで有名な映画監督です。

彼は、西部劇ジャンルで大成するまでに少なくとも3作の作品を制作しています。タランティーノも西部劇というジャンルに非常に入れ込んでおり、自身も最低3作はそのジャンルで制作したいと思っているようです。

1作目の『ジャンゴ 繋がれざる者』、2作目の『ヘイトフルエイト』に続き、3作目は2018年に公開が予定されているそうです。

7.『ヘイトフルエイト』の後は残り2つしか映画を撮らない?

『ヘイトフルエイト』

『ヘイトフルエイト』の記者会見の時に、タランティーノはとある意味深な発言をしています。その内容とは、“自分は合計で10作品しか映画を撮らないつもりだ。映画監督をやめた後にやりたいことについても考えている”といったものです。

『ヘイトフルエイト』は、彼の8つ目の作品なので、実質残り2作品しかタランティーノは制作しない予定となっています。ちなみに、映画監督引退後は、執筆活動や舞台演出などに興味を示しているようです。

8.タランティーノ作品史上“最長”作品

『ヘイトフルエイト』

『ヘイトフルエイト』はタランティーノ監督の作品史上、最長の上演時間を誇る作品です。

165分の『ジャンゴ 繋がれざる者』や153分の『イングロリアス・バスターズ』(2009)と比べても、70mmフィルム版で187分はとても長い作品です。ちなみに『ヘイトフルエイト』は、オスカー受賞作品の中で最も長いタイトルの作品でもあります。

9.作曲家からはホラー映画扱いされた

『ヘイトフルエイト』

エンニオ・モリコーネはイタリア出身の作曲家です。モリコーネは、1988年の映画『ニュー・シネマ・パラダイス』のメインテーマなどで有名な映画音楽家。2003年のNHK大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』の音楽を担当していたりもする人物です。

モリコーネは『ヘイトフルエイト』の音楽も担当しており、同作品で第88回アカデミー賞作曲賞を受賞しています。そんな作曲家はなぜか、『ヘイトフルエイト』の楽曲を制作するに当たり、ホラー映画だと思って臨んだそうです。

10.クラシックなレンズで臨んだ撮影

『ヘイトフルエイト』

『ヘイトフルエイト』を撮影するに当たり、タランティーノは、1970年代に使用されていた古いタイプのレンズを使用したそうです。

撮影するカメラ自体は最新のものだった為、クラシックなタイプのレンズが使用できるか何度も事前にテストしたうえで撮影に臨みましたが、幸い極寒の状況でも古いレンズでの撮影は可能でした。

11.『ヘイトフルエイト』の制作予算

コロラド州

タランティーノは、ハリウッドの映画監督の中でも予算管理を気にするタイプの監督として知られています。

『ヘイトフルエイト』も例にもれず、総製作費は4400万ドル(約45億円)という、ハリウッド作品の中では比較的低コストな作品となりました。しかもそのうち、500万ドル(約5億円)は、ロケ地であるコロラド州の投資により成り立っています。