2019年6月14日更新

『ハウス・ジャック・ビルト』ラストの解釈やテーマを咀嚼して解説 ジャックはフォン・トリアーの一部だった?

『ハウス・ジャック・ビルト』
(C)2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31,ZENTROPA SWEDEN,SLOT MACHINE,ZENTROPA FRANCE,ZENTROPA KÖLN

デンマークの鬼才ラース・フォン・トリアーの監督最新作『ハウス・ジャック・ビルト』は、2018年のカンヌ国際映画祭で上映され、賛否両論を巻き起こしました。そんな本作にはどんな意味やメッセージが込められているのでしょうか。重要用語解説とともに紹介します。

目次

【ネタバレ注意】『ハウス・ジャック・ビルト』 ラース・フォン・トリアー新作はゾッとするほど魅力的!

マット・ディロン主演、ラース・フォン・トリアー監督のサイコスリラー映画『ハウス・ジャック・ビルト』。 本作は1970年代のアメリカを舞台に、殺人をアートととらえ連続殺人を行うジャック(ディロン)の12年を描いた作品です。 主演のマット・ディロンのほか、ユマ・サーマン、ブルーノ・ガンツら豪華俳優陣が出演。カンヌ国際映画祭で賛否両論を巻き起こしたデンマークの鬼才、ラース・フォン・トリアーの最新作は、一体どんな作品に仕上がっているのでしょうか。 『ハウス・ジャック・ビルト』のあらすじからキャラクター/キャスト、スタッフ、トリアーの本作へのこだわりや、カンヌをはじめとする海外での評価を紹介します。また、重要な用語解説を踏まえ本作の内容を徹底解剖していきましょう! ※本記事は、作品に関するネタバレ情報を含むため未鑑賞の方はご注意ください。

気になる『ハウス・ジャック・ビルト』のあらすじは?

『ハウス・ジャック・ビルト』メイン
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1970年代のアメリカ、ワシントン州。建築家を目指すハンサムな独身の技師・ジャックは、ある日、車が故障し立ち往生している女性を助けます。しかし彼は偶然女性を殺してしまい、そこからアートを創作するように殺人に没頭していき……。 5つのエピソードを通じて明かされる、”ジャックの家”を建てるまでのシリアルキラーの12年間とはーー。

途中退席&スタンディングオベーション?カンヌで賛否両論

『ハウス・ジャック・ビルト』ポスター
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2018年5月、第71回カンヌ国際映画祭で『ハウス・ジャック・ビルト』がプレミア上映された際、その評価は真っ二つに分かれました。 100人以上が途中退席したものの、上映終了後はスタンディング・オベーションが沸き起こったという賛否両論ぶり。 アメリカの大手レビューサイトRotten Tomatoesでは支持率59%と、こちらも賛否両論の様子。シカゴ・トリビューンのマイケル・フィリップスは、「シリアルキラーに関する退屈な映画の歴史の中でも、これは一番退屈な連続殺人の映画かもしれない」と星4つ中1つと評価しました。 一方、BBC.comのニコラス・バーバーは「途中退席した人の気持ちもわかるが、私はあの仰天のエンディングまで観てよかった」とし、本作を「大胆で刺激的な映画で、デンマークの著名な映画作家以外の誰にも作れない」と5つ星中4つ星を与えています。

『ハウス・ジャック・ビルト』のキャスト/キャラクターを紹介

ジャック/マット・ディロン

『ハウス・ジャック・ビルト』
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アメリカ・ニューヨーク州出身の俳優マット・ディロンが主人公で狂気的殺人鬼ジャック役を演じます。 ディロンは1979年に映画『レベルポイント』でデビュー。10代から20代初めはティーンエイジャーたちのアイドル的存在でもありました。その後はテレビドラマや映画などでも活躍しています。2004年には、『クラッシュ』でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされました。 本作でマット・ディロンが演じる主人公のジャックは、あるきっかけから殺人に目覚めていきます。強迫性障害を患う彼は、殺人をアートと考えいつしか次々と人を殺す連続殺人犯(シリアル・キラー)になりました。ジャックを待ち受けるのはいったいどんな運命なのでしょうか。

ヴァージ/ブルーノ・ガンツ

ブルーノ・ガンツ
©️Snapshot/K.M. Krause/Future Image/WENN.com/zetaimage

スイスの演技派俳優・ブルーノ・ガンツも本作に出演しています。 1941年にスイスのチューリッヒに生まれたブルーノ・ガンツは、1979年の『ノスフェラトゥ』で主演を務め、1987年のヴィム・ヴェンダース監督作『ベルリン・天使の詩』で演じた天使ダミエル役で世界的な名声を獲得。その後も各国の数々の作品に出演し活躍しました。 ガンツが演じるのは、ヴァージと呼ばれる謎の人物。ヴァージはジャックと対話しながら、彼の考え方や殺人哲学を語らせます。哲学や芸術の歴史と、自分の殺人を同じものだと考えるジャックの価値観は、ヴァージが問いかけることによって観客に伝えられます。 長らく大腸ガンを患っていたブルーノ・ガンツは、2019年2月15日に惜しまれつつもこの世を去りました。

女性1/ユマ・サーマン

ユマ・サーマン
©︎Joseph Marzullo/WENN.com

『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』など、クエンティン・タランティーノ作品のミューズとして知られるユマ・サーマンも、本作への出演。2014年に公開された『ニンフォマニアック』でもヒステリックなミセスHを演じ、ラース・フォン・トリアーと共に仕事をしていました。 彼女が演じるのは、ジャックが殺人に目覚めるきっかけとなった女性です。

車が故障し雪道で立ち往生していた彼女は、ジャックに助けてもらったにも関わらず横柄な態度を取りつづけます。さらに「あなたの車に乗ったのは間違いだったかも」「あなた見た目が連続殺人犯っぽい」などと言い出す始末。 衝動的に彼女を殺害したことをきっかけに、ジャックは本当に連続殺人犯になってしまうのでした。

女性2/シオバン・ファロン

シオバン・ファロン、マット・ディロン『ハウス・ジャック・ビルト』
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ニューヨーク出身のシオバン・ファロンは、1983年に大学卒業後舞台でキャリアをスタートさせ、1991年から1992年にかけて人気コメディショー「サタデー・ナイト・ライブ」に出演し、コメディエンヌとして注目されるようになります。 『遺産相続は命がけ!?』(1994)で映画デビュー後はさまざまなジャンルの作品で活躍するようになりました。ラース・フォン・トリアー監督作には『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)、『ドッグヴィル』(2003)につづく出演となります。 ファロンが演じる女性はジャックの被害者のひとり。彼女とジャックのやりとりに要注目です。

女性3/ソフィー・グローベール

ソフィー・グローベール
©️Euan Cherry/WENN/zetaimage

デンマークのコペンハーゲン出身のソフィー・グローベールは17歳で映画デビューして以降、母国を中心に舞台やテレビでも活躍するベテラン女優です。主人公を演じたテレビシリーズ『THE KILLING/キリング』(2007〜2012)はデンマーク史上最高の視聴率を獲得。ヨーロッパで大人気を獲得したことでアメリカでもリメイクされています。 グローベールが演じたのは、2人の子持ちでジャックと交際していた女性。彼女が直面することになる恐怖は想像を絶するものでした。

シンプル/ライリー・キーオ

ライリー・キーオ
©Dennis Van Tine/Future Image/WENN.com

ライリー・キーオは1989年生まれ、カリフォルニア州ロサンゼルス出身のモデル・女優です。14歳のときドルチェ&ガッバーナのショーでモデルデビュー、2010年には『ランナウェイズ』でダコタ・ファニングの妹役で女優デビューしました。その後、『マジック・マイク』(2012)や『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)、『アンダー・ザ・シルバーレイク』(2018)など、話題作に次々と出演しています。 そんなキーオが演じるのは“シンプル”と呼ばれる女性。登場人物の中では数少ない名前のあるキャラクターです。

彼女は女性3と同じく、ジャックの恋人だった女性です。本名はジャクリーンですが、ジャックがつけた“シンプル”というニックネームは「単純、バカ」というような意味。ジャックは彼女だけでなく、女性を見下していることがわかります。

アル/ジェレミー・デイビス

アメリカ、ミシガン州出身のジェレミー・デイビスは、1994年にデヴィッド・O・ラッセルの初長編作品で主演デビューを飾った俳優です。1998年『プライベート・ライアン』への出演で注目され、以降活躍をつづけています。 デイビスが演じるアルは、ハンティングを趣味とするジャックが通う銃砲店の店主です。

監督は鬼才・ラース・フォン・トリアー

ラース・フォン・トリアー
©Tim Brakemeier/dpa/picture-alliance/Newscom/Zeta Image

本作の監督であるラース・フォン・トリアーは、これまでに『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)や『ドッグヴィル』(2003)、『ニンフォマニアック』(2013)など、数多くの問題作を生み出してきました。 鬼才の名をほしいままにするトリアーは、鮮烈な映像とショッキングなストーリーテリングで熱狂的な支持者を得る一方、非難を受けることも少なくありません。また重度のうつ病を患っており、飛行機恐怖症のため車で行ける範囲内でのみ撮影を行うことでも知られています。

ジャンルものとしての『ハウス・ジャック・ビルト』

『ハウス・ジャック・ビルト』ポスター
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トリアーは自身にとってシリアル・キラーというものはあるひとつのジャンルを示す要素でしかないとCinema Scopeのインタビューで語っています。本当に変わったことをするためには、ジャンルという既存のレールから映画を出発させることが重要だと考えているのだとか。 「この映画の場合も、観客はシリアル・キラーものだと最初からわかっている。だから彼らも落ち着いて見ていられるし、楽しいことが起こりそうだぞという気持ちで映画に接することができるんだ。それに対して、期待とはちょっと違う映画を作る。そういう意味では、この作品は本当の意味でのシリアル・キラーものではない」と語るトリアー。 サイコスリラーとジャンル分けされる本作ですが、実際にはコメディ要素も強く一筋縄ではいかない作品になっています。

ラース・フォン・トリアー監督のおすすめ作品はこちら

重要用語解説 タイトルや劇中流れる楽曲の意味とは?

マザーグースのわらべうた「ジャックが建てた家(The House That Jack Built)」

本作のタイトルは、英語圏で親しまれるマザーグースの伝承童謡のうちのひとつから取られています。日本でもよく知られている「メリーさんのひつじ」もそのひとつですが、マザーグースは「歌」ではなく韻を踏んだ「詩」が多いのも特徴。 本作のタイトルとなっている“The House That Jack Built”は「これはジャックが建てた家(This is the house that Jack built)」から始まり、それを中心に一見関係のなさそうなものが雪だるま式に増えていく韻詩。 本作のジャックにとって殺人はアートでしたが、それとは別に、彼は殺人を犯すようになる以前から家を建てようとしていました。彼はなかなか理想の家を建てられずにいましたが、殺人をつづけていくことがのちに家の建設に重要な意味を持っていきます。

タイトルにもこだわりが

邦題を決める際にはトリアー監督から「本作においてはタイトル自体とても重要で、それを変えることは映画そのものを変えることになりかねない」とタイトルを変更しないよう要望があったとか。 ただし、日本語のように公用語に冠詞(The)や関係代名詞(That)を持たない国では、それらを削除することが許可されました。

デヴィッド・ボウイ『FAME』

本作の劇中で何度も流れるデヴィッド・ボウイの『Fame』。シリアル・キラーと名声(fame)は切っても切れないものです。 ジャックは殺人をアートとして考えるようになるうち、名声を求めるようになりました。現実でも多くの連続殺人鬼が自らの犯行を新聞などのメディアに公表し、警察を挑発すると同時に一定の人気を集めています。 Cinema Scopeのインタビューでトリアーは「ジャックは名声に弱いところがあるし、僕もそうだ。自分でもイヤだけどね」と語っており、この曲で名声に酔うジャックの様子を表現しました。

【ネタバレ】『ハウス・ジャック・ビルト』を咀嚼して解説!

ヴァージの正体は?

『ハウス・ジャック・ビルト』
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劇中でヴァージがこれまでに書いた詩について語るセリフがあります。このセリフから、彼は古代ローマの詩人ウェルギリウス(英語名:ヴァージル)であることがわかります。

ウェルギリウスは、イタリアの詩人ダンテが13世紀から14世紀にかけて執筆した『神曲』で、ダンテを地獄案内の旅へと連れて行く人物。ジャックもヴァージに案内されて地獄へと下っていきました。

地獄の階層(ダンテ『神曲』からの引用)

ハウスジャックビルト
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さきほど紹介したとおり、ヴァージとジャックの地獄への道行きはダンテの『神曲』になぞらえたものです。

映画終盤、ヴァージはジャックに地獄の底を見せ、「君の行くところはもう2階層ほど上だ」と言います。『神曲』では、地獄の最下層である第九圏は“裏切り者の地獄”とされ、第八圏は“悪意者(偽造や虚偽、汚職、盗みなどを行った者)の地獄”となっています。 ジャックのような殺人犯が行くのは第七圏の“暴力者の地獄”。人殺しの方が裏切りや虚偽よりも罪が軽いというのは意外ですね。

シリアルキラー・ジャックには実在のモデルがいる?

『ハウス・ジャック・ビルト』
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「連続殺人」、「ジャック」と聞いて誰もが思い浮かべるのは19世紀のイギリスで世間を騒がせた「切り裂きジャック」ではないでしょうか。トリアーはさきほど紹介したマザーグースの詩と切り裂きジャックを融合させて本作のジャックを生み出したのかもしれません。 またディロン演じるジャックはハンサムで、被害者となった女性たちに近づくのは難しいことではなかった様子がうかがえます。これは、1970年代のアメリカが凶行を重ねた連続殺人鬼テッド・バンディを連想させます。バンディはその魅力的な容姿を利用し30人以上の若い女性を誘拐、強姦、殺害したことで知られています。 本作ではジャックが警察のふりをしたり、松葉杖をついて身体の自由が効かないふりをしたりしますが、これはバンディが誘拐などの際に使っていたのと同じ手口です。

『ハウス・ジャック・ビルト』のテーマとは

ハウスジャックビルト
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一方でトリアーはLittle White Liesなどのインタビューで「ジャックは僕の一部だ」とも語っています。自分自身はサイコパスではないものの、ジャックの中にはトリアー自身が持っているものがたくさん入っているとのこと。 「人はだれでもシリアル・キラーになれる。もしこの映画にメッセージがあるとすれば、そういうことになるだろうな」と語るトリアー。そのためにジャックというキャラクターも、ひとりのあたりまえな人間だと感じられる造形にする必要があったといいます。 本作ではジャックが普通に暮らしている様子は冒頭でほんの少し描かれているだけですが、神経質で気の弱い人間がある境界線を超えて殺人者になる瞬間がショッキングに描写されています。そしてその境界線は一度超えてしまえば戻れないのです。

カンヌで途中退席者が続出した理由は?

ソフィー・グローベール『ハウス・ジャック・ビルト』
©️ZENTROPA ENTERTAINMENTS/zetaimage

本作はたしかにグロテスクな描写の多い作品ですが、これまでのどんな作品よりも残酷かというとそうではないと思います。しかし、観客にたいして本作がなによりも引き起こすのは倫理的嫌悪感なのでは無いでしょうか。残酷描写というよりも、悪趣味なジャックの“アート”がカンヌで途中退席者を続出させた原因なのではないかと考えられます。

鹿狩りになぞらえた殺し方や、力ずくで死体の形を変えるなど、ジャックの“アート”は残酷かつ悪趣味。映像の過激さよりも、そういった嫌悪感から席を立った観客も少なくないのではないでしょうか。キリスト教敵な倫理観がそれほど浸透していない日本では、そこまで反発はないかもしれません。

『ハウス・ジャック・ビルト』のラストの意味

 マット・ディロン『ハウス・ジャック・ビルト』
©️ZENTROPA ENTERTAINMENTS/zetaimage

タイトルになっている積み上げ歌のように、ジャックは殺人の罪を重ねることで死体という“独自の材料”を得て、自らが納得する家を建てることができました。そして、そこが地獄への入り口となっていたのです。 ヴァージに連れられて、地獄への道々、これまでの殺人やそれに対する自身の考え方、彼にとっては栄光を語って聞かせるジャックの声には、反省の色はみじんもありません。これまで多くの悪人を地獄へ案内してきたヴァージでさえ彼を強く非難しますが、それにも反論してみせるジャック。 そして最終的に、ジャックは地獄の底へつながる崖を渡ってそこから逃れようとします。しかし当然悪人は地獄へ落ちるのです。 トリアーはこの結末について、数年前の自分ならラストでジャックを死なせることはなかっただろうと語っています。しかし、今回は試しにやってみたら気持ちよかったのだとか。 次回も同じことをするとは限らないとしつつ、トリアーは本作では悪人が地獄に堕ちる様子を描きました。ほんの気まぐれかもしれませんが、これは面白い変化ですね。

残酷描写に震え、ジャックの滑稽さに笑う『ハウス・ジャック・ビルト』

『ハウス・ジャック・ビルト』
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「カンヌ途中退席者続出!」というセンセーショナルなキャッチコピーとともに、無修正ノーカットR18+指定で日本公開(2019年6月14日)された『ハウス・ジャック・ビルト』。鬼才ラース・フォン・トリアーの新たな衝撃作はシリアル・キラーを主人公とし、残酷な殺人描写をふんだんに散りばめながら同時に非常に笑える作品に仕上がりました。 ジャックの殺人に対する欲求そしてその描写は恐ろしく悪趣味ですが、彼の殺人への執着心や行動は滑稽でさえあります。絶妙なバランスの上に成り立っている本作は、それなりに残酷描写に抵抗がない人であれば楽しめるのではないでしょうか。