2017年7月6日更新

シェイクスピアの四大悲劇を徹底紹介!【あらすじからおすすめ映画作品まで】

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シェイクスピアは映画の定番

2015年にはベネディクト・カンバーバッチ主演の舞台『ハムレット』が世界各地の映画館で上映され、また2016年には『マクベス』がマイケル・ファスベンダー主演で映画化されるなど、近年映画館におけるシェイクスピア悲劇のプレゼンスが高まっています。 しかしもちろんこれは最近のみの事象ではなく、映画の歴史が始まった最初期からシェイクスピア作品は映画のための格好の題材だったのです。ローレンス・オリヴィエなどの名優を生み出したのも、彼の作品の映画化でした。 でも実際に作品を読んだことのある人は意外と少ないのではないでしょうか?もちろん映画単独でも楽しめますが、シェイクスピアの作品は難解な言い回しが多く、物語を理解するのが困難な時があります。そのため、映画鑑賞前に簡単なあらすじを知っていれば、もっと楽しめることは間違いありません。 この記事では四大悲劇に焦点を絞り、それぞれのあらすじと、有名な映画化作品をご紹介します。芸術の秋はシェイクスピアで満喫しましょう!

シェイクスピアの四大悲劇①ハムレット

「ハムレット」のあらすじ

主人公はデンマークの王子ハムレット。父である王の葬式のために帰国したハムレットは、母親が彼の叔父クローディウス(王の弟)と再婚したことを知り苛立ちます。さらにクローディウスは、ハムレットが正式な王位継承者であることを無視して、自らデンマークの王を名乗ったのでした。 そんな理由で憂鬱に沈むハムレットのもとに、父親の霊が現れ、自分が弟のクローディウスに殺されたことを明らかにします。彼は父親のために復讐を誓いますが、まずは霊が本物であり、クローディウスが本当に父親を殺したのかどうかを確かめることにするのです。 ハムレットはクローディウスの前で「王が毒殺される」という内容の劇を上映します。それを見たクローディウスは動揺を隠せません。その姿を見てハムレットはクローディウスの有罪を確信し、クローディウス殺害を企みます。しかしこの計画により全てが思わぬ展開に進んでいきます。 まずハムレットは、親友レアティーズの父であるポロニウスをクローディウスと勘違いして殺害。またレアティーズの妹であり、ハムレットに恋をしているオフィーリアは混乱の最中で悲しみのあまり精神を病んでしまい、溺死します。 父と妹の仇を取ろうとするレアティーズは、ハムレットに決闘を挑むことに。その決闘の最中、ハムレットの母である王妃は、クローディウスがハムレットを殺すために用意した毒入りのぶどう酒を飲んで死んでしまい、レアティーズも決闘で死亡。 自身も致命傷を負ったハムレットは最後の力を振り絞ってクローディウスを殺した後、友人ホレイショーに全ての真相を語り絶命します。

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「ハムレット」が愛されている理由

主要登場人物が全員死んでしまうという、悲劇中の悲劇である「ハムレット」がここまで愛されている理由は、ハムレットの人物像にあります。難しい状況に立たされた若者ハムレットが、鬱々と悩みに耽る様子の描写が巧みであり、どこか親近感まで覚えてしまうのです。 「生きるべきが死ぬべきか、それが問題だ(To be, or not to be: that is the question)」のセリフには、その様子が見事に凝縮されていますね。 また、劇中劇や複雑な決闘、幽霊の登場など、演劇として面白い技法が多用されている点も魅力の一つです。

「ハムレット」映画化作品

『ハムレット』(1948年)

『ハムレット』の映画化作品で外せないのが、1948年のこの名作。ローレンス・オリヴィエ監督・主演のこの映画は不朽の名作として世界中で知られており、公開年のアカデミー賞作品賞を受賞しました。モノクロで重厚感あふれる、シェイクスピアの雰囲気にぴったりな作品です。

『ハムレット』(1996年)

最近の『ハムレット』で最も有名なものはこのケネス・ブラナー版でしょう。舞台は19世紀に置き換えられていますが、何と原作のセリフを一つもカットしていない忠実な作品。4時間超の大作です。

シェイクスピアの四大悲劇②リア王

「リア王」のあらすじ

年老いたイギリス国王リアは、王位を退き、王国を3分割して彼の3人の娘に与えようと決めます。しかしその前に3人の娘たちに対して、彼女らがどれくらい自分を愛しているかを問い、娘たちの愛を確かめることに。 長女ゴネリルと次女リーガンは王が望む通りの返答をしますが、末娘コーデリアは「お父様をどれくらい愛しているかを述べる言葉などない」と言って沈黙してしまいます。リア王にとってコーデリアはお気に入りの娘であっただけに、王は怒り狂いコーデリアを追放。 こうしてコーデリアは財産もなく、また父親からの祝福もないままにフランス王に嫁ぐことになります。しかしすぐにリアはこのことを後悔。上の2人の娘たちは父親であるリアを冷たく扱うようになり、そんな娘たちの裏切りを信じられない彼は少しずつ精神を病んでいきます。 意地悪な娘たちの元から逃げ出したリア王は、悪天候の中荒野をさまようことに…。 一方、年老いた貴族であるグロースター卿もまた家族内の不和に悩んでいました。彼の不義の息子であるエドマンドが、グロースター卿と彼の正式な息子エドガーの仲を裂こうと策略を巡らしていたのです。そのためエドガーもまた追放され、身分を隠して荒野をさまようことになります。 グロースター卿はリア王の境遇を知ると彼を助けようとしますが、そのことがリーガンにバレてしまい、彼は失明させられた上で追放され、同じく荒野に迷います。そんな彼に助けの手を差し伸べたのが息子エドガーでしたが、目の見えないグロースター卿はそのことに気づきません。 そして物語の最後、リア王、エドガー、グロースター卿の3人はドーバーに集結。また末娘コーデリアも、ゴネリルとリーガンを倒すために、フランス軍を引き連れてドーバーにやってきます。 エドマンドが率いるイギリス軍とコーデリアの率いるフランス軍はついに衝突。フランス軍は負けてしまい、リアとコーデリアは捕らえられてしまいます。しかしエドガーはエドマンドに決闘を挑み、ついにエドマンドを倒すのでした。 そしてここからがこの物語が悲劇と言われる理由です。グロースター卿は自殺を試みた後に死亡。ゴネリルはエドマンドと良い仲にあったリーガンに嫉妬し、彼女を毒殺。そして自分自身も父親を裏切ったことが夫にバレると自殺します。 そして囚われていたコーデリアも、彼女の身の潔白が証明された頃にはもう遅く、処刑されてしまうのです。愛する娘の死を知ったリア王は、彼女の遺体を抱いて悲しみに絶叫し、この世を去ります…。

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「リア王」が愛されている理由

四大悲劇の中でも最も壮大なのがこの「リア王」。たくさんの登場人物が複雑に絡み合い、宮廷だけでなくヨーロッパ中を舞台に物語が進んでいきます。決闘もあれば戦争もあるストーリーは、映画化するにはうってつけの作品。 女性の登場人物も多く魅力的で、また裏切りと信頼、勝利と敗北、家族愛、王位継承の問題など、多様な観点を巧みに織り交ぜた構成も見事です。

「リア王」映画化作品

『乱』(1985年)

日本が誇る巨匠、黒澤明監督がこの「リア王」の物語をベースにして描いたのが壮大な時代劇『乱』です。舞台が日本に移され、3人の娘は3人の息子に置き換えられていますが、その他の点はほとんど原作どおり。 黒澤明が監督した最後の時代劇であり、多大な力を注ぎ込んだこの作品は、シェイクスピアの「リア王」の重厚さと複雑さを残しながら、そこに日本ならではのニュアンスが追加された名作となっています。 最近で最も高評価を得ているものは、2008年のテレビ映画『リア王』でしょう。主演のリア王を演じるのは名優イアン・マッケランで、まさにこれぞリア王といった貫禄を醸し出しています。マッケランは1970年代にハムレットも演じていました。

シェイクスピアの四大悲劇③オセロ

「オセロ」のあらすじ

ヴェニスの軍人でムーア人であるオセロは、デズデモーナと愛し合い、デズデモーナの父ブラバンショーの反対を押し切って駆け落ちします。こう言った背景があるためにオセロは多くの人から嫌われることに。 旗手のイアゴもその一人。オセロが自分の代わりにキャシオーを昇進させたことに腹を立てたイアゴは、オセロに悲劇をもたらそうと決心し、ブラバンショーにオセロと娘デズデモーナの駆け落ちのことを密告します。これにはブラバンショーも怒り狂い、オセロを殺そうとするのでした。 しかし貴族の前でお互いに愛し合っていることを証言したオセロとデズデモーナは人々にその婚姻関係を認められ、ブラバンショーは手を出すことができなくなってしまいます。彼はオセロに「デズデモーナは必ずお前を裏切るだろう」と言い残して去っていきました。 オセロがキプロス島に出征している間に、イアゴはキャシオーを酔わせ乱闘騒ぎに巻き込みます。それを知ったオセロは帰国するとキャシオーを解雇。キャシオーは抗議しますが、オセロは聞き入れません。そこでイアゴはキャシオーに対し、デズデモーナに言い寄って復職させてもらうように頼むべきだとアドバイスします。 悪知恵の働くイアゴはそこでオセロのもとに向かい、キャシオーとデズデモーナが密通していると告げます。さらにこの話に信ぴょう性を持たせるために、イアゴはオセロがデズデモーナに送ったハンカチを盗み、キャシオーの部屋に置いたのです。 それを知ったオセロは怒りに燃え、デズデモーナを殺すことを誓い、またイアゴにキャシオーを殺すように命じます。 イアゴは巧みな策略でキャシオーに気付かれることなく彼を傷つけることに成功し、またこの計画をバラしてしまいそうな友人も容赦なく殺します。一方でオセロもデズデモーナを見つけると、話も聞かずに彼女の首を絞めて殺害。 そこにイアゴの妻エミリアがやってきて、デズデモーナのハンカチは夫のイアゴがわざとキャシオーの部屋に置いたものであると証言。デズデモーナの潔白を証明し、イアゴの悪巧みを全て明かします。怒りのあまりにオセロは彼女をも殺害。 そしてオセロはイアゴを見つけ出し、深い傷を負わせますが殺しはせず、残りの人生を深い苦しみの中で過ごすように彼を呪います。そしてオセロ自身はデズデモーナを失った悲しみと、無実のエミリアを殺してしまった後悔から自殺して、物語は幕を閉じるのです。

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「オセロ」が愛されている理由

「オセロ」は四大悲劇の中で最も平坦で明快なプロットの作品であるため、多くの人が親しみやすさを覚えるようです。また登場人物のほとんどが最後のシーンで死ぬという、シェイクスピア悲劇の定番パターンに沿っていることも人気の理由でしょう。 しかし最大のポイントは、イアゴの悪人っぷり。シェイクスピア悲劇史上最悪のヴィランと言っても良いでしょう。その悪知恵の巧みさは見ていて恐ろしくなってきます。

「オセロ」の映画化作品

『オーソン・ウェルズのオセロ』(1951年)

「オセロ」はイギリスやアメリカだけでなくソ連でも数々の映画化作品が製作されていますが、一番の定番は1951年の『オセロ』。あのオーソン・ウェルズが脚本・監督・主演を務めた名作です。カンヌ国際映画祭においてパルム・ドールを獲得しました。 原作とは少々かけ離れた設定もある模様ですが、さすがは天才オーソン・ウェルズ。名作をさらに上のレベルへと持ち上げています。

『オセロ』(1995年)

また1995年の『オセロ』もまた有名な作品です。シェークスピア俳優のケネス・ブラナーがイアゴを演じ、主役のオセロはローレンス・フィッシュバーンが担当。 興行的には失敗してしまったものの批評家や視聴者からの評価は高く、フィッシュバーンの名演技が見られます。

シェイクスピアの四大悲劇④マクベス

「マクベス」のあらすじ

戦場からの帰り、ダンカン王に仕える将軍であるマクベスとバンクォーは、謎の3人の魔女に出くわします。魔女はマクベスがまずはコーダーの領主になり、いずれ王になるだろうこと、またバンクォー自身は王にはならないが彼の子孫は王になるだろうことを予言。 王のもとに戻ると魔女の言った通り、マクベスはコーダーの領主に命ぜられます。魔女の予言の信ぴょう性を確信した彼は、妻のレディ・マクベスに予言の内容を伝えます。喜んだ彼女は、何が何でも王になるとマクベスに誓わせ、自分も手助けすることを決意。 その夜、レディ・マクベスはダンカン王の護衛たちに睡眠薬を盛り、そしてマクベスは王の寝室に忍び込み眠っている王を殺害します。ダンカン王の息子たちは殺された王を発見すると自分の身の危険を感じて逃げますが、マクベスと妻の巧みな策略により、彼らが王殺害の容疑を着せられてしまうのでした。 そうしてマクベスはスコットランド国王に選ばれますが、自分の行いに対する後悔の念と、王殺害の真実がばれるのではないかという恐怖に、少しずつ発狂していきます。 また魔女の予言が気にかかるマクベスはバンクォーとその息子を殺害するように命令。しかしまだ幼いバンクォーの息子は刃を逃れ、命拾いします。さらにバンクォーを殺したことでマクベスは彼の霊の出現にも悩まされるようになり、さらに精神を病むのです。 マクベスは自分に予言を与えた魔女たちを探しだし、これからどうすればいいのかを問うたところ、「女の股から生まれたものはマクベスを倒せない」「バーナムの森が進撃して来ないかぎり安泰だ」との言葉をもらいます。そんなことがあるわけないと、マクベスは自分が無敵なのだと信じてやみません。 しかしどうにも不安は消えず、マクベス王は恐怖政治に乗り出し多くの罪なき人々を殺害。その中には貴族マクダフの無抵抗の妻子も含まれていました。家族を殺されたマクダフはイングランド王エドワードに助けを求め、復讐を誓います。 城にこもるマクベスのもとに、バーナムの森が進撃して来たとの知らせが。実はこれ、イングランド軍が木の葉や枝で身を隠して進行してきたのが、森が動いているように見えたことからの発言でした。 その頃にはレディ・マクベスも心を病んで夢遊病に苛まれることに。その中で彼女はマクベスと自分こそがダンカン王を殺害したのだということを漏らし、それをそばにいた医者に聞かれてしまいます。身の終わりを感じた彼女は、イングランド軍が攻め入る前に自殺。 そして最後のシーン、マクダフはマクベスに決闘を挑み致命傷を与えます。ここで、マクダフが「母親の腹を破って生まれてきた(帝王切開)」ことが明らかになり、魔女の予言の正しさがまたもや証明されることに。 ダンカン王の息子マルカムが新しく王に命ぜられ、一同が新王の誕生を喜ぶシーンで舞台は幕を閉じます。

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「マクベス」が愛されている理由

ここまで読んだ方ならお分かりだと思いますが、「マクベス」は他の悲劇とは一線を画しています。最後の場面はむしろ幸せなもので、恐ろしいのは物語そのものなのです。また主役のマクベスとレディ・マクベスも他の悲劇の主人公とは異なっており、欲にまみれた悪人として描かれています。 権力に対する人間の飽きる事なき欲望と恐怖政治の悲劇を明確に描写した「マクベス」は、その点で四大悲劇の中で最も「鬱な」作品とも言えるでしょう。 また、女性(妻)にそそのかされて悪事に走る男性(夫)というプロットにも、普遍的なメッセージがあります。

「マクベス」の映画化作品

『マクベス』(1971年)

この作品もまた何度も映画化された作品で、オーソン・ウェルズも演じていますが、有名なのは1971年のロマン・ポランスキー監督による『マクベス』でしょう。 実は今作はポランスキー監督が妊娠中だった妻シャロン・テートを殺害されてから、最初に撮った作品。そのためか、これまでの「マクベス」よりもずっと暴力的な描写の多い作品になっており、また夢遊病で歩くレディ・マクベスが全裸で描かれているなど、論争を呼びました。

『マクベス』(2015年)

そしてもちろん2016年に日本公開された最新作『マクベス』も忘れてはいけません。マイケル・ファスベンダーとマリオン・コーティヤールという2人の人気俳優を使って、壮大なスケールで詩的に描かれた作品です。 シェイクスピア映画は古いものが多く少し敷居が高い中、初めての人もこの最新の映画で、魅惑の世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。