フランシス・フォード・コッポラ監督作『ゴッドファーザーPART3』!
1991年に日本で公開されたフランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー PART3』は前作『ゴッドファーザー PART2』(1974)より16年を経て製作されました。
本作は前2作とはトーンが変わり、アル・パチーノ演じる年老いたマイケルの悲哀が描かれた重厚な人間ドラマ。
この記事ではそのあらすじ、キャスト、見どころをご紹介します。
映画『ゴッドファーザー PART3』あらすじ【ネタバレあり】
舞台は、前作から20年が経った1979年のニューヨーク。コルレオーネ・ファミリーのドンとなったマイケルは、「ヴィトー・コルレオーネ財団」の名のもとに多額の寄付をしてバチカンより叙勲され、バチカン内の資金運営を掌るギルディ大司教と関係を得ることができます。
そしてマイケルは組織を合法化させようと考えていたのでした。
一方で息子のアンソニーは父のビジネスを嫌いオペラ歌手を目指すことに。後継者を失ったマイケルは、長兄ソニーの息子でマイケルには甥にあたるヴィンセント(アンディ・ガルシア)を後継者候補とし後見することにします。
やがてコルレオーネ・ファミリーの違法ビジネスの大部分を引き継いだ新興マフィアのジョーイ・ザザとヴィンセントとの間で抗争が勃発。とうとうヘリコプターを使った襲撃を受け、マイケルとヴィンセントは助かったものの、多くの友好ファミリーの重役が殺されてしまいます。
この襲撃の黒幕は、バチカンと利権関係を取り付けようとするマイケルの追い落としを狙ったドン・アルトベッロでした。
さらにアルトベッロと仲間たちの罠に嵌りマイケルが投資した資金が横領され、ファミリーを合法的な組織にする計画は暗礁に乗り上げます。マイケル自身も糖尿病の病魔に冒され発作に苦しむように。
八方塞がりの状況の中で一刻も早く後継者を決めなければならないと憔悴するマイケルですが、彼の心に浮かぶのは、兄フレドを殺し妻ケイ(ダイアン・キートン)を裏切った自らの人生に対する後悔の念と罪悪感ばかり。
やがてヴィンセントがマイケルの許可を得ずザザを射殺。それを引き金にバチカン絡みの利権を狙うマフィアや教会関係者たちの間で血で血を洗う全面戦争が引き起こされます。
息子アンソニーがオペラ歌手になることを認めて和解したマイケルは、デビュー公演を見るために家族とともにシチリアへ。
劇場で襲撃を受け、マイケルは一命を取り留めたものの銃弾は娘メリーの胸を直撃します。最愛の娘を目の前で殺され、絶叫して泣き崩れるマイケル。その姿を見た人々は、コルレオーネ・ファミリーの終焉を悟ります。
それから数年後、マイケルはシチリアの古い自宅の庭で、誰からも看取られることなく一人静かに息を引き取ったのでした。
『ゴッドファーザー PART3』キャスト
ドン・マイケル・コルレオーネ役/アル・パチーノ
前2作に続きアル・パチーノが演じる主人公ドン・マイケル・コルレオーネ。『ゴッドファーザー』では当初家業を嫌う真面目な青年から徐々にマフィアの威厳を身につける様子が描かれ、『ゴッドファーザー PART2』のラストではとうとう実の兄フレドを粛清し、マフィアのドンとして君臨しながらも孤独を深めるマイケルの様子が描かれてきました。
『ゴッドファーザー PART3』では、撮影当時50歳だったパチーノが60代になったマイケルを演じています。
彼は1940年ニューヨーク生まれのイタリア系アメリカ人。貧しい家庭に育ち成長後も様々な仕事を転々とした苦労人でしたが、20代後半になり舞台俳優の道へ。本シリーズ前2作で父親役を演じたマーロン・ブランドを非常に尊敬していたそうです。
多くの名作で高い演技力を発揮しながらも、長いこと賞には無縁とされてきたパチーノ。1992年に『セント・オブ・ウーマン』で悲願のアカデミー賞主演男優賞を受賞しました。
その後も『フェイク』(1997)『インサイダー』(1999)『オーシャンズ13』(2007)をはじめ多くの作品で圧倒的な存在感を見せ続けています。
ケイ・アダムス役/ダイアン・キートン
マイケルの学生時代からのガールフレンドで後に妻となるケイ・アダムス。誠実な青年からマフィアのドンへと変貌するマイケルに戸惑い翻弄されてきました。『PART2』の終盤で3人目の子供を中絶したことを夫に告げたケイでしたが、本作ではその後に離婚していたことが明かされます。
演じるダイアン・キートンは1946年ロサンゼルス出身の女優。舞台女優としてキャリアをスタートさせ、当時の公私にわたるパートナーであったウディ・アレン監督の『アニー・ホール』(1977)ではアカデミー主演女優賞を受賞。
監督や脚本家としてもマルチな才能を発揮しています。女優としての代表作にメリル・ストリープ、レオナルド・ディカプリオと共演した『マイ・ルーム』(1996)、ナンシー・マイヤーズ監督の『恋愛適齢期』(2003)などがあります。
ヴィンセント・マンシーニ役/アンディ・ガルシア
1作目で敵の策略に乗り命を落とした長兄ソニー。その息子でマイケルの甥にあたるのがヴィンセントです。父譲りで気性が激しく武闘派な彼ですが、やがてマイケルの娘メリーと密かに愛し合うようになります。
アンディ・ガルシアは1956年ハバナ出身。『アンタッチャブル』(1987)での新米警官役で注目を集め、『ゴッドファーザー PART3』ではアカデミー助演男優賞にノミネートされました。
近年では『オーシャンズ11』(2001)その続編の『オーシャンズ12』(2004)『オーシャンズ13』(2007)で、オーシャン達の敵役であるカジノオーナーを演じています。
コニー・コルレオーネ役/タリア・シャイア
マイケルたち三兄弟の妹にあたるコニー。1作目では夫カルロをマイケルによって殺されましたが、本作ではマイケルの理解者となりファミリーの仕事を支えています。
演じるタリア・シァイアは1946年ニューヨーク出身の女優。本作の監督であるフランシス・フォード・コッポラの妹です。『ロッキー』シリーズのエイドリアン役としても非常に有名ですね。
『ゴッドファーザー PART2』(1974)でアカデミー助演女優賞に、『ロッキー』(1976)でアカデミー主演女優賞にノミネートされています。
『ゴッドファーザー PART3』監督
フランシス・フォード・コッポラ
1939年ミシガン州生まれ、父は『ゴッドファーザー』3部作の音楽を担当しているカーマイン・コッポラ。妹はコニー役のタリア・シャイアです。娘は本作にもマイケルの娘役で出演している映画監督のソフィア・コッポラで、俳優のニコラス・ケイジは甥に当たります。
学生時代から黒澤明監督の大ファンであるコッポラは、「B級映画の帝王」ロジャー・コーマンのもとで映画作りを学びました。1972年の『ゴッドファーザー』のヒット以来、『地獄の黙示録』(1979)や『アウトサイダー』(1983)などの名作で知られ、アカデミー監督賞をはじめ数々の映画賞を受賞しています。
壮大なコルレオーネ・ファミリーの物語の最終章
『ゴッドファーザー PART2』(1974)より16年を経て製作された『ゴッドファーザー PART3』。コルレオーネ・ファミリーの栄枯を描いた物語の最終章です。
本作の見どころは、年老いたマイケルの懺悔と後悔の念。1作目では父ヴィトーからドンの座を引き継ぎファミリーを巨大化させ、2作目では自分を裏切った実の兄フレドまでを暗殺した非情なマフィアのドンであるマイケル。
組織と家族を守るために、自分の弱みを周囲に悟られまいと常に非情に冷酷に生きてきた彼がそれゆえに孤独に苛まれ苦しむ姿は因果応報とはいえ、過去を見てきた観客にはとても共感できます。
父ヴィトーの幸せな最期とは対照的なマイケルの最期からは、盛者必衰というこの世の真理を見ることが出来るでしょう。前2作がマフィア映画の金字塔と呼ばれているのに対し、本作は一人の人間の孤独と老いを描いた重厚で物悲しい人間ドラマでもあります。
実際のローマ法王「暗殺」事件がモデルに
本作ではバチカン利権をめぐるマフィアと教会関係者の黒い人脈が描かれていますが、これらは実際に1970年代後半から1980年代に起きた事件をほぼそのままに近い形で作品に織り込んだものです。
1978年に教皇に選出された革新派のヨハネ・パウロ1世は、わずか在位33日目にして自宅で遺体で発見されます。死因は心筋梗塞と発表されましたが、のちに証拠隠滅や情報操作が行われた可能性があるとしてマスコミやバチカン内部関係者からの大きな疑惑を呼び起こしました。
当時のバチカン銀行の総裁であったマルチンクス大司教はマフィアと深い関係を持ち違法取引や汚職を続けていたことが明るみになり、FBIの捜査対象となっていました。ヨハネ・パウロ1世はマルチンクス大司教や国務長官を含むバチカン関係者を更迭し、改革を行おうとしていたのです。
その後事件関係者が次々と謎の死を遂げたことからも、ヨハネ・パウロ1世はマルチンクス大司教とその協力者のマフィアに謀殺されたとの噂が現在でも根強く残っています。
『ゴッドファーザー PART3』のCiatrユーザーの感想・評価を紹介!【ネタバレ注意】
マイケルの苦悩と葛藤が深く描かれている
HMworldtraveller
評価は分かれているようですが壮大で重厚な三部作の最後をしめる作品としてふさわしいものだったと私は思います。過去を悔い合法な道を歩もうとしながらも、しがらみや禍根、自らがまいてきた火種がマイケルにまっとうな道を行くことを許さない。苦悩と葛藤に苛まれつつもまた歴史を繰り返してしまうマイケル。最後に払う代償は彼にとってあまりにも大き過ぎるものだったでしょう。三部とも観てこそ感じる強いメッセージがありました。3つ合わせて9時間にも及ぶ人間ドラマ。やっぱり深い。
3部作のラストに相応しい結末
Maaaaaaboou
やっと3作観れた。
今作もラストに相応しくおもしろかったし、今までで一番分かり易いストーリーだった気がした。
すっかり衰えてしまったマイケルが切なくて、人はみんな年を取るものなんだとなぜか改めて感じて哀しかった。
とても長い映画やったけどもう1度一作目から観たいと思わせる作品でした。
幸せとはなにか考えさせられる
homaremania
華やかなパーティの裏ではいつも黒い出来事が渦巻いてる。結局は幸せとはなんだったのか。後悔してる悲しいシーン全般が好きです。
ラストのオペラシーンに感動
southpumpkin
ゴッドファーザーシリーズの集大成とも言える今作。不評という感想もよく聞かれますが、確かに1,2とは若干趣向が異なります。しかしどこかの方も書かれていましたが、シリーズを通じての壮大すぎる大河ドラマのようになっています。今作で描かれたマイケルの苦悩はその最後にふさわしいものだったのではないでしょうか。
ラストのオペラシーンは傑作です。過去の清算はあまりにも大きすぎるものでした。エンディングでは思わず涙が出ます。アル・パチーノ好きやわあ。