映画『メランコリア』の異様な魅力まとめ【ラース・フォン・トリアー】

2017年7月6日更新

鬼才ラース・フォン・トリアー監督の「鬱三部作」の一つでありもっとも有名な映画『メランコリア』。主演のキルスティン・ダンストにカンヌ映画祭での主演女優賞をもたらした今作の異様な魅力に迫ってみましょう。

ラース・フォン・トリアーの「鬱な」映画『メランコリア』

デンマーク出身の一風変わった映画監督ラース・フォン・トリアーが作り上げた「鬱な」映画の最高傑作『メランコリア』。世界中でカルト的な人気を誇り、また主演のキルスティン・ダンストにカンヌ映画祭の主演女優賞をもたらした作品です。自身のうつ病体験をもとにした「鬱三部作」の第2作でもあります。

他のどの映画とも違う特殊な魅力を持った本作は一体どのような作品なのでしょうか?この記事では映画のあらすじやキャスト、監督情報といった基本から映画を見返したくなるようなトリビア、またユーザーの皆さんから寄せられた感想をご紹介します。

『メランコリア』あらすじ

『メランコリア』1

©2011 Zentropa Entertainments

主人公となるのは新婦ジャスティン(キルスティン・ダンスト)。彼女はうつ病を患ったコピーライターという設定です。新郎のマイケル(アレクサンダー・スカルスガルド)と共に結婚パーティーの行われる姉夫婦の家に向かうものの、途中で車が壊れて大遅刻するはめになります。姉クレア(シャーロット・ゲンズブール)とその夫ジョン(キーファー・サザーランド)が催してくれた大規模なパーティーでしたが、ジャスティンは次第に虚しさを覚えるようになります。

クレアから「まともにふるまうよう努力してほしい」とくぎを刺されているにもかかわらずジャスティンはパーティー会場を抜け出し、夜の中一人で散歩したり、馬に乗って林の中を駆け抜けたりと不可解な行動を繰り返します。一方でパーティーもジャスティンの両親の酷い態度もあり、全く楽しめないものになっていました。

『メランコリア』3

©2011 Zentropa Entertainments

上司とは喧嘩し勢いで仕事を辞めてしまったり、他の男と一緒にふろをに入るためにケーキ入刀の重要な場面で抜け出したりと奇妙な行動を繰り返すジャスティンの精神状態はまともなものではありません。そんな中、ふと夜空を見上げた彼女は、さそり座の赤い星「アンタレス」が存在しないことに気づきます。

その後、映画の舞台は7週間後に移ります。アンタレスが見えなかった理由、それは惑星「メランコリア」が遠い宇宙から地球の近辺にまで到達しており、アンタレスを遮っていたから。クレアはメランコリアが地球に衝突するのではないかと不安でたまらず、夫のジョンはそんなことはないと彼女を慰めようとしますが、密かに緊急時のために物資を蓄えていました。

その時クレアのもとにジャスティンがやってきます。彼女のうつ病は悪化しており、夫のマイケルとも別れてしまった彼女は憔悴しきっていました。支えられなければ歩くこともできないほどでしたが、惑星が地球に接近するにつれてなぜか彼女の心は軽くなっていきます。

『メランコリア4』

©2011 Zentropa Entertainments

「地球は邪悪だから消えたって構わないわ」と言うジャスティンは、いつしかメランコリアが衝突することを期待するように。そして当日、クレアとジョンとその息子のレオ、そして彼女の4人はテラスでその様子を観察しながら地球最後の日を迎えようとしていました。

彼らはみな手を繋いでその時を迎えようとしますが、クレアは恐怖のあまり息子の手を放してしまいます。その一方でジャスティンは一人、笑顔で最期の時を迎えたのでした…。

『メランコリア』の気になるキャストは?

ジャスティン/キルスティン・ダンスト

『メランコリア』

© 2011 - Magnolia Pictures

本作の奇妙な主人公ジャスティンを演じるのはドイツ系の女優キルスティン・ダンスト。これまでの純真で可愛らしいイメージから打って変わって精神病を患った役に果敢にも挑戦しました。この演技で彼女はカンヌ映画祭で主演女優賞を獲得します。

子役としてキャリアをスタートさせたダンストは11歳の時『インタビュー・ウィズ・バンパイア』に吸血鬼クローディア役で出演し、ブラッド・ピットやトム・クルーズにも劣らない演技力で世界を魅了しました。その後も確かな演技力でハリウッド期待の若手俳優になります。

オリジナルの『スパイダーマン』シリーズでヒロインのメアリー・ジェーンを演じ世界的に大ブレイク。また新進気鋭のソフィア・コッポラ監督とも組んで『ヴァージン・スーサイズ』や『マリー・アントワネット』に出演しました。現在ではテレビドラマ『ファーゴ』にレギュラーとして出演しており、まだまだホットな女優です。

クレア/シャーロット・ゲンズブール

ジャスティンの姉クレアを演じるのはフランスの女優シャーロット・ゲンズブール。名女優ジェーン・バーキンの娘としても有名です。トリアー監督作品の常連である彼女は『アンチクライスト』や『ニンフォマニアック』で衝撃的なヌードシーンも披露しています。

14歳の頃にフランス版アカデミー賞とも呼ばれるセザール賞の最優秀若手女優賞を受賞してから注目度が上がり、以後何度も数々の賞を受賞してきた演技派です。歌声も相当なものであり歌手デビューも果たしている彼女は、単独で来日し公演を行ったこともありました。

ハリウッドにも進出している彼女は2016年の映画『インディペンデンス・デイ:リサージェンス』にも出演しています。

マイケル/アレクサンダー・スカルスガルド

『メランコリア』

© 2011 - Magnolia Pictures

結婚したばかりのジャスティンの夫マイケルを演じるのはアレクサンダー・スカルスガルド。スウェーデン出身の彼は著名な俳優ステラン・スカルスガルドの息子でもあります。その甘いマスクで近年世界中で人気が高騰している俳優です。

モデルとしての活動は若いころから行っていたものの俳優としてのキャリアはあまり長くないスカルスガルド。『メランコリア』への出演は彼の知名度を世界的に高めました。近年では『ターザン:REBORN』で主演を務め、ハリウッドの中でもなくてはならない存在です。

ちなみに父親のステランもジャスティンの上司役として本作に顔を出しています。親子の共演が見られるのは面白いですね。

ジョン/キーファー・サザーランド

クレアの夫であり、何かとジャスティンを気に掛けるジョンを演じるのはキーファー・サザーランド。名優ドナルド・サザーランドの息子としても有名ですが、自身も俳優としてしっかりとしたキャリアを築いています。子役としてデビューしており『スタンド・バイ・ミー』の不良役で世界中に名をはせました。

その後役に恵まれない時期が続きますが、テレビドラマ『24』主役の座を射止めたことで状況は一変。世界的な人気俳優となります。『24』は爆発的な大ヒット作となり、父のドナルドまでがファンを公言しました。

ドラマは終了しましたが映画から遠ざかることはなく、近年では出演だけでなく製作や監督にも手を出しています。父親との待望の共演作も公開されました。

ラース・フォン・トリアー監督について知っておこう

ラース・フォン・トリアー

©2011 Zentropa Entertainments

映画『メランコリア』をこの世に送り出したのは、おそらく現在生きている中で最も奇妙な映画監督、デンマーク出身のラース・フォン・トリアーです。トリアーは映画撮影のミニマリズム的な新しい技法を打ち出し、個人的なトラウマ体験や精神疾患の経験などを一般化して描いたダーク・ファンタジーを得意とします。

2000年にアイスランドの歌手ビョークと組んで製作した『ダンサー・イン・ザ・ダーク』はカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、世界中にトリアー旋風を巻き起こしました。その後重度のうつ病を患い製作活動が滞ってしまいましたが、克服した後はそれを逆手にとって「うつ」をテーマに「鬱三部作」を作り上げます。それが『アンチクライスト』、『メランコリア』そして最新作の『ニンフォマニアック』です。

映画における度々の過激な性描写やナチを支持する問題発言などで度々注目される監督ですが、実験的な映画技法や他の誰にも真似できないリアルな心理描写などは確かに評価されており、映画史に名を残す人物となっています。

絵画やクラシック音楽の使用に注目

ユニークで現代的なSFとも思える世界観が特徴的な本作ですが、映画の中で度々現れる伝統的な絵画やクラシック音楽へのレファランスも見逃してはいけません。

例えばウエディング・ドレスを着たジャスティンが川に浮かぶシーンはジョン・エヴァレット・ミレーによる1852年の絵画「オフィーリア」が意識されています。この絵画はシェイクスピア悲劇「ハムレット」の主人公オフィーリアが精神を病み、川に飛び込んで自殺するシーンを描いたものであり、本作の物語と共通点があります。

また本作のテーマソングはリヒャルト・ワーグナー作曲による『トリスタンとイゾルデ』。これは作家マルセル・プルーストがこの曲を世界最高の芸術と呼んだことによるものです。ワーグナーはナチスドイツに愛された作曲家であり、本作の美意識とナチスのそれが共通すると述べたトリアーは、世界中から顰蹙を買いました。

他にもブリューゲルの絵画や、アンドレイ・タルコフスキー監督の映画『惑星ソラリス』に対するオマージュが全編に散りばめられています。

もともとはペネロペ・クルスが主演を務める予定だった?

本作にはトリアー監督作品の常連であるシャーロット・ゲンズブールやステラン・スカルスガルド、ウド・キアなどが出演していますが、主人公のジャスティンはもともとペネロペ・クルスが演じることが予定されていました。しかし彼女は『パイレーツ・オブ・カリビアン』への出演予定で都合が合わなくなってしまったそう。

そこで打診されたのがキルスティン・ダンストやオルガ・キュリレンコ。ダンストはポール・トーマス・アンダーソン監督によりトリアー監督に紹介され、スカイプでオーディションをした後に主役に決定しました。

トリアー監督は飛行機恐怖症?

ラースフォントリアー

©2011 Zentropa Entertainments

うつ病やその他様々な精神疾患を抱えるトリアー監督ですが、中でも特に極度な飛行機恐怖症は彼の映画製作を困難にしています。この症状のため、アメリカなどを舞台にした映画でも全てデンマークやスウェーデンで撮影されています。俳優とのオーディションにもスカイプが活用されています。

またカンヌ映画祭に作品がノミネートされた時、トリアー監督は自分で車を運転して映画祭会場のフランス南部まで移動しました。陸路でヨーロッパ全体を車で縦断したのはすごいですね。

映画『メランコリア』感想・評価まとめ【ネタバレ注意】

深い思索に誘われる哲学的な映画

satikuru 冒頭を見返してみると、惑星が地球にぶつかったように見えていたシーンが、地球が惑星にのみこまれているように見えた。 ジャスティンとクレアの対比が、鬱かそうではないかというのは、つまりは、生/現在への執着の違い。ジャスティンは生を肯定も否定もしない。否定もしない。
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メランコリア / ラース・フォン・トリアー 以前観たときには特に何も思わず(というか何も考えずに観ていた)とりだてて感想もなかったのだが、 友人がおもしろいことを言っていたのを思い出した。 いわく、鬱病患者は常に最悪の事態のことしか考えていないから、 実際に最悪の事態が起こると冷静でいられる。 だが健常者は想定外のことが起こると狼狽える。 本当にこの映画の中でその通りで、普段いかれているキルスティン・ダンストが、最期の瞬間には非常に冷静で安心感がある。 しかし健常者である(そうは見えないシーンもあるんだけど)シャルロットは、最期のときが近づくほど狂って行く。 その逆転してさまがとても面白いなと感じた。

ochinchin0203 性格も底意地も悪く、しかも深く病んでいるラースフォントリアーが、観る側の夢も希望も救いも全て根こそぎ奪うために作ったかのような悪意に満ちた問題作。 巨大惑星が地球に衝突し、人類が滅亡するという救いのない不条理な世界観もこの監督ならでは。しかし、全体的に間延びしてて退屈な構成が気になった。寝てしまう人や途中で出て行く人もちらほら... お金持ちに嫁いで、慎ましく穏やかな生活を送るも惑星の接近によって徐々に冷静さを失って行くゲンズブールと、鬱に悩まされ、奔放な言動を繰り返しながらも惑星の接近とともに達観し、落ちついていくキルスティン・ダンストの2人の演技の良さでもっていたように感じた(でもキルスティン・ダンストは嫌い)。この2人の相性は非常に良く、全編にわたって謎の科学反応を生み出していたように思う。

好き嫌いが別れる映画だし、強くオススメは出来ないけど観て損はしない...はず。 少なくとも、本作の一番の見せ場である、やり切っているのにやりきれない気持ちにさせられるあの終末感たっぷりのラストのカタルシスはすごい。一見の価値あり。

映像美に酔う!特に冒頭の美しさに注目

whentheycry 2度目の視聴。

まず、冒頭のジャスティンの脳内の映像と思われるシーンが凄く綺麗。 スローモーションになっているのだけれどまるで絵画を見ているよう。 だけどこのシーン2部のシーンなんだよね。

僕は2部が大好きで特にラストのシーンが大好き。 メランコリアが衝突する瞬間。 冒頭のシーンとラストのシーンを映画館で見れなかったことがとても悔やまれる。 1部はあんなにもキャストに溢れていたのに2部は最後には3人しかいなくてその静けさと騒がしさのギャップが印象的だった。

メランコリア(鬱)がテーマで、ジャスティンがうつ病の持ち主なのだけれど最後は綺麗にジャスティンとお姉さんの立ち位置が変わっている。 しかも、どうやらこの映画。作った当時監督自身もうつ病だったらしい笑 たしかにあの世界観は普通じゃない。そこが好きなんだけど。

ラストシーンで3人が手をつなぐけど取り乱して息子とジャスティンの手を離すお姉さんとかあの光とかほんっと凄い印象的でふとそこだけでも見たくなる。

mamichiru まず最初のシーンに心奪われました。 幻想的で鬱鬱としてて素敵。。あれはキルスティンの頭の中だったんですね。 観てる間はイライラするし、見終わった後の疲労感は半端ないけど、ラストシーンは素晴らしいと思いました。 キルスティンの演技も凄かったです。 嫌いじゃない。☆
nieve822 惑星メランコリアの接近とともに近づく地球の終焉。映像が綺麗でした。特に冒頭8分はすごいなぁと。がしかし、あとは私の理解の範囲を超える作品でした。難しい!!

とにかく鬱蒼としていてダーク

sekhisako ラースフォントリアーの前作「アンチクライスト」に続いてダークなおとぎ話要素が入っていて好みだった。最後のシーンで少し反応に困るのは前作と同じだったけど、それはあまり気にしてない笑。オープニングの壮大な音楽とイメージ映像は、元になっている絵画が目に浮かぶようで眺めていてどんどん謎の士気が高まる笑。

地球に遠ざかり、近づき、と波のある惑星の動き。それに対するそれぞれの人の(咄嗟の)反応。ラースフォントリアーの個人的な「鬱」に関する作品だというのは観る前に何かの記事で読んだのだが、タイトル通りまさしくそうだった。

fumi すごく観たくて、でも確実に躊躇われた映画。そしてサザエさん症候群の時間帯に観る映画では無い。だって鬱病の映画だし。それなのに日曜日の夕方に観てしまった私です。 メインの登場人物は、鬱病のキルスティン・ダンスト、生真面目な姉のシャルロット・ゲンズブール、その旦那の普通ぽいキーファー・サザーランド。 地球に惑星が急接近するだけ→実は衝突してしまうというストーリーで、平常時の時と衝突するとわかってからの3人の性格の違いが観る側に強烈なインパクトを与えます。映像美と音楽と相まって、鬱病賛美な映画に仕上がってます。
o325 ラース・フォン・トリアーの作品ですが、彼の映画でした。 一部では鬱を患っているジャスティンの結婚披露宴。結婚に不安を覚え祝宴を壊す。 二部ではメランコリアという惑星の急接近により地球の崩壊。

一部と二部での鬱に対する対比が必見です。一部で物事の始まりに恐怖をするジャスティンに対して、地球の崩壊に直面すると普通の人(鬱では無い人)は慌てふためき自暴自棄に。鬱病患者は常に最悪の事態を考えている、実際に起きたらかえって冷静になると。監督自身が鬱病だったようで... しかし、冒頭の映像が凄く綺麗ですね。