水島精二、「ハガレン」「00」を送り出したアニメ監督に迫る!

2017年9月8日更新

『鋼の錬金術師』や『機動戦士ガンダム00』など長大な叙事詩的作品を次々に手がけてきたのが、アニメ監督・水島精二です。もともとはアニメーターを志望していた人物が、監督として大成する中で大切にしてきたもの、こだわり続けてきたものとはいったい何だったのでしょう。

水島精二、どんなに難しい条件でも対応できる「天才肌」の持ち主

水島精二監督は初監督作品となった『ジェネレイターガウル』をはじめ、SFやファンタジー関連の作品を中心に優れたアニメ作品を作り続けてきました。原作のあるなしに関わらず手がけてきたものの中には、とてもユニークな設定や風変わりな放映スタイルの作品があります。 たとえば1999年に監督を務めた『地球防衛企業ダイ・ガード』は、主人公が警備保障会社に勤めるサラリーマンという想定外の設定。2001年の『i-wish you were here』は、業界初のネット配信によって放送されたエポックメイキングな作品でした。2007年には劇団☆新感線の舞台作品『大江戸ロケット』をアニメ化しています。 水島精二監督は、どんなに難しく思える仕事でもしっかり魅力的な世界を構築できる、ある意味で天才肌な人物。そこで本記事では代表作にスポットを当てながら、その天才ぶりをチェックしてみたいと思います。

『シャーマンキング』をきっかけに広がった水島精二の名

1966年生まれ、東京都府中市出身の水島精二がアニメ制作の世界に入るきっかけとなったのは、高校時代にアニメーターに憧れたことから。しかし東京デザイナー学院でともに学んでいた友人との絵心の格差にショックを受けて、違う方向でアニメ作りに関わることにしたそうです。 卒業後、東京アニメーションフィルムで『ドラえもん』などに関わったのちサンライズへ移籍。その後、フリーに転身しました。本人いわく2001年に携わった『シャーマンキング』をきっかけに、「割とメジャー感のあるものを」任されるようになった、のだとか。 2003年からはテレビシリーズ『鋼の錬金術師』で監督を担当、2005年には『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』で、映画初監督を果たしました。

『鋼の錬金術師』で見せた「物語の錬金術師」の凄技

『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』は、テレビシリーズのその後を描いた作品で、主人公のエルリック兄弟が、パラレルワールドの垣根を越えて再び共に生きるために試練を乗り越えいく姿を描いています。 原作にはないオリジナルストーリーですが、実はテレビシリーズ自体も制作スタート時にはまだ原作が3巻分しかなく、かなりの割合でキャラクターや世界観、ストーリーが原作とは異なっていました。結末もアニメ独自のエンディングを迎えています。 この作品は興行的にも大ヒットとなりましたが、毎日映画コンクールアニメーション賞を始めさまざまなアワードに輝くなど、非常に高い評価を受けました。原作を知らなくてもアニメで好きになって、改めて読み始める人も多く、メディアミックスならではのメリットは大きかったようです。

『機動戦士ガンダム00』では、「0」から物語世界を構築した水島精二

人気コミックを原作としながらも独自の視点で新しい物語を紡いだ「鋼の錬金術師」シリーズと同様に、2007年から各25話×2シーズンに渡って手懸けた「機動戦士ガンダム00」シリーズでも、水島精二監督は「ガンダム」シリーズの確立された世界観に新しい視点でアプローチをかけました。 そこでは対立の構図そのものが、宇宙移民対地球人類の戦いという従来のスタイルとは違います。世界を牛耳る3つの大国間の「戦いを終わらせるための戦い」というテーマは、とても斬新でした。 原作や長い時間をかけて積み重ねられてきたエピソードの持つ魅力を違う切り口によってさらに際立たせる手法は、水島精二監督ならではの制作テクニックと言えそうです。

水島精二監督による完全オリジナルアニメ『楽園追放 —Expelled from Paradise—』

ヒットメイカーとしての評価が定着していく中で挑戦した完全なオリジナル作品が、2000年に劇場公開された『楽園追放』です。3DCGアニメーションで描かれた情景美やダイナミックな戦闘シーンは、劇場用映画ならではの迫力と魅力を楽しませてくれました。 キャラクターの描き方にもまた、水島精二監督らしい人と人のつながりを大切にする思いが強く伝わってきます。物語には三種類の異なる生命体が登場しますが、彼らの対立と交流をとても丁寧に描き出しています。 生身の肉体を捨ててデータとしてサイバー空間に存在する「人類」と、電脳技術から離れ地上で生きる「人類」、そして「人類」の未来を切り開くためにノアの方舟のような航宙船を作り上げた自我を持つAI。彼らが次第に寄り添いあっていくプロセスの中で本当の「人」とは何なのか、「楽園」とはどこなのかを深く考えさせられる感動作です。

「天才」としては必須の条件?水島精二の「長丁場」力

最後にもうひとつ、水島精二監督の特徴を挙げるとすれば「長丁場」に強いことでしょう。『機動戦士ガンダム00』は全50話でしたが、『鋼の錬金術師』も全51話でシリーズ化されました。『ジェネレイターガウル』に至っては全64話に渡って、初めての監督役を全うしています。 水島精二は2017年現在日本のアニメ制作会社の中でも優れた作画力やオリジナリティ溢れる作品で定評のある、ボンズとの仕事に精力的に取り組んでいる様子。彼の新たな挑戦が、これからますます楽しみです。