映画「コード・ブルー」ネタバレあらすじと7つの結末を解説！なぜ評価されたのかドラマと共に読み解く

映画「コード・ブルー」の舞台は、成田空港と東京湾の海ほたる。乱気流に巻き込まれた航空機の緊急着陸、そして巨大フェリーの事故と、未曾有の大事故が連続して発生しました。負傷者の中には、スキルス性胃ガンに冒された富澤未知という女性もいて……。 フェロー時代から約10年、藍沢たち5人にこれまでにない危機と別れの時が訪れました。

映画「コード・ブルー」では、2つの事故と並行して複数のサイドストーリーが描かれました。本作を構成する7つの群像劇について、それぞれネタバレありで解説します。 ①末期ガンの花嫁 ②雪村の毒親 ③冴島と藤川 ④虐待歴のある父 ⑤藍沢の生死 ⑥緋山の恋 ⑦脳死判定を受けた少年

成田空港の事故で負傷し運ばれた末期ガン患者・未知は、自暴自棄になり周りの医療スタッフに当たり散らしていました。しかしそんな彼女のもとに、喧嘩別れした婚約者の彰生が訪ねてきます。 実は未知は捨てられたのではなく、病気を知ったとき自ら彰生を突き放していたのでした。そして彰生も素直になれず彼女から離れたのです。 しかし後悔して戻ってきた彰生から、未知は改めてプロポーズされます。彼女は嬉しく思いつつも、末期ガンの身で受け入れても良いのか苦悩します。 そんなとき自分に寄り添ってくれた看護師・冴島の過去を知り、彰生との結婚を決意しました。 冴島と藤川が予約していた式場を借りて2人は無事、幸せな結婚式を挙げることができます。しかし式の終盤、彼女は吐血して倒れ救急搬送されました。 終盤には未知が亡くなったことが示唆されています。藤川と冴島の結婚式に未知の姿はなく、彰生が2人分の指輪をして参列していました。

成田空港での事故が一段落した頃、雪村の母・沙代が姉の運転する車で搬送されてきます。 沙代の頭には包丁が刺さっており、酔って転んだ結果だということでした。出血をおそれた他の医師が、包丁を抜かないよう指示しますが、沙代は自分で抜いてしまい、案の定意識を失います。 そんな母を冷たい目で見る雪村。沙代はいわゆる毒親であり、雪村は母から離れたい一心で学を積み看護師となって自立したのです。そんな雪村のいる病院へ姉が紗代を運んできたのは、1人で毒親から逃げた雪村への当てつけでした。 無事沙代が一命をとりとめても、母に辟易する雪村。しかし沙代はアルコール依存症に加え肝臓も悪くなっていました。 さらに沙代が「面倒(＝自分)を押し付け合う娘がいるだけで、自分を心配する家族はいない。」と話すのを聞いて、彼女の心境に変化が現れます。 彼女なりに母と少しずつでも向き合っていこうと決意するのでした。

結婚式に浮かれていた藤川と対象的に、マリッジブルーだった冴島。そんなとき未知と出会い彼女を慰めるうちに、亡くなったかつての恋人との記憶、彼が冴島の幸せを望んでいたことを思い出します。 そして式場の日取りを譲った未知からは、「結婚式をしてね」と最期に言い遺されました。 未曾有の事故から3週間、藤川と冴島は急患がいると言われて病院の中庭へ急行します。そこにいたのは、サプライズ結婚式を準備していた藍沢、白石、緋山たち。救命チームや患者に祝われながら、藤川との新しい未来へ、1歩を踏み出しました。

藍沢たちがフェリーの駐車スペースに到達すると、脇腹に鉄パイプが突き刺さった男性の傍らで立ちすくんでいる青年・杉原剛志の姿がありました。 杉原はその男性の息子で、虐待から逃げ出して以来、死にかけた父と約10年ぶりの再会でした。 腹部の切開を行うため杉原に患者の病歴などを尋ねられても、何も知りません。最後に交わした会話が「1人で惨めに死ね。」という言葉だったため、杉原は自分を責めました。 しかし父親の処置をしていた藍沢は、「子どもは親を選べない、11歳でよく逃げることを決めた。」と穏やかに語りかけます。杉原は心を落ち着かせ、それでも今の自分を父に見て欲しい、父を助けてほしいと藍沢に改めて頼みました。

杉原の父を救った後、藍沢と白石、雪村の3人はエンジンルームへ。その途中、藍沢は船内の漏電に気付き、助けるために雪村を突き飛ばしました。 自身は感電して階段から落下してしまい、意識不明の重体で救命センターに運ばれます。白石が懸命に彼の処置を続けていましたが、救命チームは改めて藍沢の存在の大きさを痛感していました。 白石の治療の甲斐あって藍沢は意識を取り戻します。藤川と冴島の結婚式にも参加し、最後は白石に見送られて再びトロント大学へ旅立つのでした。

緋山が3rdシーズンで交際を始めた緒方博嗣は、ミシュラン1つ星の元シェフ。転落事故による頸髄損傷で両腕に麻痺が生じ、現在はリハビリに励んでいます。結婚式で料理を振る舞う緋山のために、リハビリを兼ねて指導もしてくれました。 しかしそのとき彼女は自分の癖で心ない一言を放ってしまい、緒方との関係がギクシャクし始めます。またもや白石の家に転がり込んで悩みを口にしていました。 そして冴島と藤川の結婚式で、緋山は緒方に謝り、歯に衣着せぬ物言いを直すと伝えます。しかし緒方は、「そのままの美帆子でいい」と笑いかけてくれました。

灰谷は海に浮かぶ少年を救出しますが、長い間呼吸をしておらず脳死状態でした。少年の荷物の中には、臓器提供の意思を示した「ドナーカード」が……。しかし、14歳の意思表示には効力がなく、その判断は両親に委ねられることになりました。 灰谷が両親に寄り添おうと決意した矢先、2人は臓器提供に同意して、息子の遺体の前で泣き崩れていました。 受けとめきれないままに臓器提供を進めてしまった両親のもとへ、橘が心臓移植を受けた我が子を連れて行きます。2人は息子の臓器が誰かに渡って生き続けることを感じ、慰められました。 その様子を横で見ていた灰谷。自分は両親のために何ができたのか悩み、橘に再度尋ねます。しかし橘もわからないと答えました。難しいテーマに悩みながらも、医師たちは歩み続けるのです。

新田真剣佑と山谷花純、そしてベテラン女優のかたせ梨乃がゲスト出演した本作。特に注目を集めたのは、末期がんに冒された花嫁・富澤未知を演じた山谷です。 当時まだ無名だった彼女は、“地毛で坊主頭にする”体当たりな役作りに挑んでいます。 不安と戦う婚約者を演じた真剣佑も、自分を押し付け合う娘たちに傷付く毒母を演じたかたせも、人間味を感じさせる演技でドラマを盛り上げました。

「コード・ブルー」はヒューマンドラマ色が強く、複数のドラマが並行して進行する群像劇の形をとっています。そのため、映画が初見の観客にとっては感情が置いてけぼりになるシーンも……。 冒頭で現場に藍沢が来た時の安心感や藤川と冴島の結婚、大切な仲間の危機など、3rdシーズンまでに築いた関係性を知ってこそ感動できる出来事が多いからです。 より深く映画を楽しむために、映画に関連する連続ドラマのエピソードを振り返ってみましょう。

藤川と冴島の結婚式で「田所先生」の手紙が代読されますが、「誰？」、「黒田先生じゃないの？」と思った人もいるかもしれません。 田所は映画の時点では島医者をしていますが、元々は救命センターの初代部長でした。翔北のドクターヘリ導入に尽力し、現在のチームの基盤を築き上げました。キャストの児玉清が死去したことから、3rdシーズンには登場していません。 裏方としてフライトドクターが活躍する環境を作ってくれた偉大な医師からの手紙に、メンバーは心を打たれていました。

1stシーズンでは、冴島には心臓外科医の恋人・田沢悟史がいましたが、彼は指定難病のALSを発症。介護や彼が自殺未遂を起こしたことに負担を感じ、一時は自然消滅状態になってしまいます。 そして2ndシーズンでは彼の最期に寄り添い、さらに励ましてくれた藤川の想いを受け入れました。 その後、3rdシーズンでは藤川と同棲していることが発覚。それだけでなく冴島は藤川との子どもを妊娠しました。しかし子宮頚管無力症で流産してしまいます。さらに藤川も事故現場で命の危機に陥りました。 本作で描かれた2人の結婚式は、多くの哀しみと困難の先で掴んだ幸せだったのです。シリーズを通して見守り藤川を応援してきたファンとしては、胸が熱くならずにはいられない最高のハッピーエンドでした。

初期はスキルを磨くことにのみ執着し、社交性も皆無だった藍沢。黒田は彼の技術力を評価しつつ、あまりの冷酷さに「患者は練習台じゃない」と諭していました。 しかし藍沢は黒田の右腕を切断したことを機に、自分の処置が患者の人生を左右することを実感し始めます。患者の心に寄り添うような処置や心配りができるようになっていきました。 同僚(特に藤川)のことも見下していた藍沢ですが、シリーズを通して4人を信頼し頼るようになっていきます。 そして映画では藤川たちへのビデオメッセージ撮影に1番に応じるまでになっていました。藤川に対して「大切な人間に胸を張って大切だと伝えられる、藤川のようになりたい」とメッセージを残しています。

本作の興行収入は93億円にものぼりました。邦画のヒットの基準が一般的に10億円からとされている(※)ことからも、いかにすごい記録であるかが推し量れます。 2018年度に限っては、興行収入ランキング1位(邦画のみ)に輝き、邦画ドラマ部門では15年ぶりに5位以内を更新する快挙を成し遂げました。 ※総興行収入10億円を突破した作品だけが、翌年1月に日本映画製作者連盟(松竹・東宝・東映・KADOKAWAの大手映画製作配給会社で構成された団体)から発表されるリストに掲載される。

『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 1st season』の放送から10年。 当時、新米フェロー(研修医)だった山下智久演じる藍沢耕作たちは、10年の時を経て立派なフライトドクターへと成長していました。また、劇中のキャラクターたちが成長するように、それぞれの役を演じたキャストも、人気俳優として成長を遂げています。 人気俳優陣の共演と、若い世代にも人気の新キャストを加えたことで、映画「コードブルー」は幅広い年齢層の視聴者を獲得し、さらなる人気を得たと考えられます。 これも、短いスパンではなく7年という長い期間を空けてからの新ドラマ放送、そして映画化だったからこその成功ではないでしょうか。 また「コード・ブルー」シリーズに流れている「10年間」という時間は、人を成長させただけでなく、キャラクター同士と作品と視聴者の関係性も強めました。 「お互い語らずとも、相手が考えていることがわかる」キャラクター同士の関係性や、それを感じることができる視聴者と作品の関係性。これらの要素もスマッシュヒットを記録した要因の1つと考えられます。

集大成と言えるストーリーもキャストも、ファンから高評価だった映画「コード・ブルー」。一方で、シリーズ初見だと複雑な群像劇を理解しきれないのも事実です。まだ鑑賞していないという人は、ぜひ連続ドラマと併せて視聴してみてください！ 藍沢と白石の関係には目立った進展がなかったので、続編の製作にも期待したいですね。