映画『火喰鳥を、喰う』ネタバレ解説!ラストシーンの原作との違い・タイトルの意味を考察
『火喰鳥を、喰う』が公開中。原作は第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞を受賞した原浩の小説です。 事件か、怪異か。この記事では、予測不能のミステリー原作ネタバレ、映画のキャストや映画の考察・感想などを紹介します。 ※この記事には、『火喰鳥を、喰う』の原作小説および映画の結末までのネタバレが含まれます。未鑑賞の方はご注意ください。
【ネタバレなし】映画『火喰鳥を、喰う』作品概要・あらすじ
| タイトル | 『火喰鳥を、喰う』 | 
|---|---|
| 公開日 | 2025年10月3日 | 
| 上映時間 | 108分 | 
| 監督 | 本木克英 | 
| キャスト | 水上恒司 , 山下美月 , 宮舘涼太 | 
原浩の同名小説を、本木克英監督で映画化した『火喰鳥を、喰う』。 『あの花の咲く丘で、君とまた出会えたら。』(2023年)などで知られる水上恒司が映画単独初主演を務める本作。『山田くんとLv999の恋をする』(2025年)の山下美月やアイドルグループ「Snow Man」の宮舘涼太が共演しました。
映画『火喰鳥を、喰う』のあらすじ
ある日、信州で暮らす久喜雄司(水上恒司)と夕里子(山下美月)のもとに、戦死したはずの先祖の日記が届きます。最後のページに書かれていたのは、「ヒクイドリ、クイタイ」の文字。その日を境に、2人の周辺で数々の不可解な出来事が起き始めます。 彼らは超常現象専門家・北斗総一郎(宮舘涼太)の助けを借り、真相を突き止めることに。そして驚愕の真相を知ることになるのでした。
【原作ネタバレ】『火喰鳥を、喰う』結末までのあらすじ!真犯人は誰?
「お前の死は私の生」
信州に住む久喜雄司と妻の夕里子は、久喜家の墓にいたずらされたと聞いて、現場に行きます。実際に見てみるといたずらで済むような状況ではありませんでした。墓石からは、雄司の祖父の兄である「久喜貞市」の名前が削り取られています。 それと同時に、貞市の遺した日記が久喜家に返送されてきました。日記を読んでみると、貞市がマラリアで苦しむ様子と、命を落としたその日まで「火喰鳥を喰いたい」という尋常でない執着が見て取れました。 取材に来ていた新聞記者の玄田は「久喜貞市は生きている」と突拍子もないことを言い出します。それを聞いた夕里子の弟・亮は様子がおかしくなり、日記に「ヒクイドリヲ クウ ビミナリ」と書き込みました。なぜそんなことをしたのかわからないと言う亮。夕里子は黙ってその文字を消しました。 その後、雄司は玄田たちとともに生き残った貞市の当時の部下に話を聞きに行きます。すると彼らは「久喜曹長が火喰鳥を喰った」と言います。 雄司は祖父と日記のお祓いでもしようかと話しますが、「もう遅い」と言われてしまいます。その翌朝、祖父は忽然と姿を消してしまいました。
変わっていく現実

夕里子は悩んだ末、大学時代の元彼で超常現象専門家の北斗総一郎に相談することに。雄司は気が進みませんでしたが、火喰鳥と思われる怪鳥に襲われる悪夢を見ていたため、藁にも縋る思いで北斗を頼ります。 その頃、久喜家の墓には、新たに雄司の祖父の名前が刻まれていました。雄司はそこで、チヤコと名乗る少女と出逢います。 雄司、夕里子、北斗は、もう1人の貞市の部下に会いに行きます。しかし彼は70年以上前に亡くなり、彼の姉の息子から話を聞くことに。彼の話では、部下たちは野営をしていたところを敵兵に襲われ命を落としたと言い、貞市だけは食糧を探しに行っていたため助かったとのこと。自分たちが知っているのとは正反対の話に、雄司たちは混乱してしまいます。 その後、亮が行方不明になりますが、夕里子は弟などいないと言います。貞市が生きているとされる世界では、雄司の祖父は亡くなり、亮は存在すらしなかったことになっているのです。雄司はそのうち自分も消えてしまうのではないかと不安になります。 北斗は貞市の日記に込められた「生きたい」という強い思いが、現実を変えているのはないかと言います。彼は手帳と関わったすべての人に怨念解除の儀式に参加してもらう必要があると言い、自分の別荘に来るように言いました。
日記の魔力
もう1人の新聞記者にも連絡しようとしたところ、「怪鳥に追われている、車に乗って逃げている、助けて、殺される」とSOSが入ります。雄司たちは慌てて車に乗ろうとしますが、そこに記者の運転する車が猛スピードで突っ込んできて、車が炎上する事故になってしまいました。 自分たちだけでも元の世界に戻ろうとしますが、北斗の儀式は失敗し、夕里子が死んでしまいます。北斗は「夕里子を死なせたりしない」と雄司から貞市の日記を受け取ろうとしますが、雄司が日記を取り出すと、彼はいつの間にか実家の前に立っていました。 夕里子はどうなったかと気になり、家に入った雄司は母親から「どちら様ですか?」と言われてしまいます。雄司が名乗ると、「息子の雄司は、17年ほど前に交通事故で父親と祖父とともに亡くなった」と聞かされます。 恐れていたことが現実となり、気を失ってしまう雄司。気がつくと北斗は夕里子の死体を埋めようとしていまいした。 貞市の日記は、とんでもない魔力を持っていました。北斗はそれを利用し、夕里子との幸せな生活を手に入れようとしていたのです。 「夕里子は彼と幸せになれる。君も、僕も、消えるんだ」という北斗に、雄司は怒り狂って襲いかかり、彼を殺してしまいました。
執着心の行く先
不可解な出来事が起き始めてから9日目。雄司はまだ生きていることを実感し、貞市の日記を焼こうとします。そこで彼は、日記の内容が変わっていることに気が付きます。以前は6月12日で終わっていたのが、貞市は捕虜となって5月に密林生活から脱出し、12月29日に帰国したことになっていました。 墓石の貞市の名前も消えたままで、彼が生きていることがわかります。雄司は貞市を殺せば元の世界に帰れるのではと思い、急いで実家へ向かいました。 そこにいたのは、見知らぬ老人。しかしその姿は老いた怪鳥・火喰鳥だったのです。 何事もなかったような久喜家の1室。孫娘の千弥子は祖父の貞市に声をかけます。千弥子は40歳にして妊娠しており、子どもを守ると誓っていました。そのとき、近所の青年がこれから新婚旅行に行くと挨拶をしに来ます。 「妻の夕里子です。大学時代からの知り合いで、僕はずっとこんな現実になればって、強く思っていたんですよ」と北斗総一郎は言いました。
原作/前作の感想・評価

たった一冊の日記が媒体となって、現実が侵食されていくアイディアが面白い。ただ、貞市の墓石の名前が削られていることが怪異のきっかけとなっているので、このあたり整理したほうがわかりやすかったかも。でも作品の不穏な雰囲気は楽しめました。
まさかのマルチバースと懐かしのサイコメトリー。火喰鳥が火喰鳥である必然性はよくわからなかったし、怖さを半減させている気もしましたが、モチーフとしては充分機能している。オチもやっぱりホラーはこうじゃなくちゃ、というオチで良かったです。
【考察】『火喰鳥を、喰う』や北斗総一郎が描くメッセージは?

ここでは、タイトルの意味や本作を映画として楽しむべき理由について考察します。
火喰鳥は生への執着の象徴?タイトルの意味を考察
本作における火喰鳥は、「生への執着」と「自滅の衝動」の二面性を表しています。貞市は、マラリアに苦しむ一方で、日記に「ヒクイドリ、クイタイ」と記し、生への執着を見せていました。「鳥」は死者の魂を天国へ運ぶ存在とも言われています。 また「喰う」という行為は一見暴力的ですが、相手を「取り込む・赦す」ということを象徴してもいます。 本作は暴力の形をとりながらも、「生きたい」と強く願った貞市や、なんとしても夕里子を再び手に入れようとする北斗の執着を描く、再生の物語でもあるのです。
『火喰鳥を、喰う』を鑑賞することでできる経験
映画『火喰鳥を、喰う』は非常に凝った演出がされています。不気味ながらも耳触りの良いサウンドトラックや、作り込まれた映像によって現実が侵食されていく様子がリアルに映し出され、観客である自分自身も映画に侵食されていくような感覚を体験することができるでしょう。 それと同時に、私たち自身も日々なにかを“喰い(取り込み)”、なにかを燃やして生きていることが実感できるのではないでしょうか。
【考察】原作と映画の違いは?
原浩の原作と映画はどう違うのでしょうか?テーマやターゲットといった観点から違いを徹底解説します。
①テーマが原作よりも強調されている
『火喰鳥を、喰う』は「言葉が現実を上書きする」というモチーフをもとにしており、「執着」がテーマとなっています。映画では、そのテーマが原作よりも強調されています。 貞市の生きることへの執着、そして北斗の夕里子を手に入れるためなら世界をも壊すという強烈な執着が描かれています。特に北斗については、原作では夕里子への執着を表面的には隠していましたが、映画ではもっとストレートに表現されていました。
②映画はラストがより世界的
映画では原作にはない、パラレルワールド的なラストシーンが挿入されています。 それは貞市が生き残った世界線で、雄司と夕里子がすれ違うシーンです。この世界線では雄司は助教ではなく、プラネタリウムの職員になっていました。彼は駅で、北斗の妻となったはずの夕里子とすれ違います。 ふたりは互いに振り返り、目が合った瞬間、夕里子は涙を流すのでした。 このシーンでは、世界線が変わっても雄司と夕里子の間にある絆(執着)は、消せないものとして存在していると、観客に感じさせるシーンです。
③映画はショッキングなシーンをカット
映画では、原作にはあったショッキングなシーンがカットされている部分もあります。例えば、久喜家で玄田が自殺未遂をするシーンなどは映像化されませんでした。 もともと映画化の発表があった際に、原作の読者からはこれらのショッキングな描写をどう表現するのかとの声もあったようですが、映画ではカットされました。それによって本作はレーティング「G(全年齢向け)」として公開され、多くの人が楽しむことができる作品となりました。
【キャスト】映画『火喰鳥を、喰う』の登場人物を解説!宮舘涼太が初主演
| 久喜雄司役 | 水上恒司 | 
|---|---|
| 久喜夕里子役 | 山下美月 | 
| 北斗総一郎役 | 宮舘涼太(Snow Man) | 
| 久喜保役 | 吉澤健 | 
| 与沢一花役 | 森田望智 | 
| 瀧田亮役 | 豊田裕大 | 
| 久喜伸子役 | 麻生祐未 | 
久喜雄司役/水上恒司

信州で家族とともに実直な暮らしをしている久喜雄司(くき ゆうじ)。ある日、戦死したはずの大叔父・貞市の日記を受け取り、それを読んだことで不可解な出来事が起こり始め、苦悩することになります。 雄司を演じるのは、『死刑にいたる病』(2022年)や『あの花が咲く丘で、君とまた会えたら。』(2023年)などで知られる水上恒司です。
久喜夕里子役/山下美月

雄司の妻の久喜夕里子(くき ゆりこ)は夫とともに不可解な出来事に悩まされ、超常現象専門家の北斗を頼ることになります。 夕里子を演じる山下美月は、元乃木坂46のメンバーで、モデルとしても活躍しています。俳優としては、ドラマ『御曹司に恋はムズすぎる』や映画『山田くんとLv999の恋をする』(ともに2025年)などに出演しています。
北斗総一郎役/宮舘涼太(Snow Man)

超常現象専門家の北斗総一郎(ほくと そういちろう)は、久喜夫妻からの依頼を受けて、日記にまつわる怪異の調査に乗り出します。 北斗を演じる宮舘涼太は、アイドルグループ「Snow Man」のメンバーで、映画『おそ松さん』(2019年)やドラマ『大奥』(2024年)などに出演しています。
【監督】幅広いジャンルを手掛ける本木克英が担当

本作の監督は、『鴨川ホルモー』(2009年)や「超高速!参勤交代」シリーズ、『空飛ぶタイヤ』(2018年)、『シャイロックの子供たち』(2023年)など、幅広いジャンルの作品でその手腕を発揮している本木克英です。 脚本は、『ラーゲリより愛を込めて』(2022年)などの林民夫が手掛けました。
【見どころ】映画『火喰鳥を、喰う』は怖い要素だけではない?

監督の本木克英は本作について、「人間の執着心が異世界を創出し、時空を超えて現実を侵食していく。この怖ろしくも幻想的な物語を映像化することは、監督として心躍る挑戦でした」と語っています。 主演の水上恒司の地に足のついた演技や、夕里子役の山下美月の繊細さを称賛しており、「抑制の効いた二人の演技があればこそ、この不可思議に交錯する世界が成立し、ラブストーリーとしての厚みも増したと思っています」と、ホラーやミステリーだけでなく、ラブストーリーとして本作に注目してほしいとコメントしました。
【感想】映画『火喰鳥を、喰う』は面白い?物議を醸す北斗総一郎

現実ともしもの世界が交錯する。物語の世界観に引き込まれる演技と演出。何回観ても違った見方ができそう。北斗総一郎(宮舘涼太)には、いい意味でイライラする。どちらの世界を現実と捉えるか、で面白さが変わるかも。
ホラー映画と思ってたけど、パラレルワールド系?SF。藤子・F・不二雄作品みたいな「少し不思議」感。前半はピンとこない部分が多かったけど、北斗が出てきてから俄然面白くなる。茶目っ気もあるし、なかなか愛せる悪役。
映画『火喰鳥を、喰う』の原作ネタバレを解説しました!

ホラーミステリーとして高い評価を獲得した小説を原作とした『火喰鳥を、喰う』。「もしも」が現実を侵食していくミステリーホラーとして、不思議な感触の映像体験を与えてくれる作品となっています。 『火喰鳥を、喰う』は2025年10月3日から公開中です。
        
        



