アニメ『カウボーイビバップ』はなぜ評価されているのか そのカルト的人気に迫る Netflixで実写化!?
『カウボーイビバップ』、海外でも評価が高い傑作アニメの魅力に迫る!
1998年に放送された『カウボーイビバップ』は「ガンダム」シリーズで有名なアニメ制作会社サンライズによるSFアニメ。放送から十数年が経った作品にもかかわらず、その唯一無二の作風で未だにアニメファンに愛されています。 『カウボーイビバップ』の監督を務めた渡辺信一郎は、2017年10月に公開された名作SF映画の続編『ブレードランナー2049』において、その前日譚を描いた短編アニメの監督に抜擢され話題を呼びました。本作はそんな渡辺監督の原点ともいえるアニメ初監督作品です。 さらに、アメリカでは『プリズンブレイク』で知られるアメリカのテレビ製作会社Tomorrow Studiosによる実写化ドラマ企画が立ち上がり、今後の展開も気になるところ。今回はそんな世代を超えて評価され続けているの『カウボーイビバップ』の魅力に迫ります。
『カウボーイビバップ』のあらすじ
2071年、位相差空間ゲートによる惑星間航行を可能にした人類の生活圏は太陽系全域まで広がり、その治安維持に指名手配犯を捕まえる賞金稼ぎ「カウボーイ」たちが大いに貢献していました。抜群の戦闘能力を持つ元マフィア・スパイクと左腕が義手で元警官の相棒・ジェットの二人もまた、ボロボロの宇宙船ビバップ号で宇宙を飛び回るカウボーイでした。 そんなビバップ号に転がり込むのは、過去を失った美女・フェイと子供ながらの天才ハッカー・エド、知能が高いデータ犬・アインなど個性豊かな面々ばかり。出自も目的も違う4人はビバップ号の生活の中で徐々に絆をはぐくんでいきますが、そんな中スパイクの身にも逃れられない過去の宿命が忍び寄っていました……。
大人も楽しめる骨太な世界設定、バリエーション豊富な各話完結のストーリー
『カウボーイビバップ』が熱い支持を集めている理由の一つは、厚みのあるSF設定とバリエーション豊富なエピソードの数々。シリーズを通して各話完結のオムニバス形式で構成され、各回によってサスペンスやコメディなどジャンルさえも変わります。 アクションシーン全開の派手な回はもちろん、スパイクやフェイの恋愛を描いた回からジェットが主役のハードボイルドな回まで実に様々で、視聴者を飽きさせることなく劇的な結末まで導いてくれます。 またバックを彩る音楽もジャンルを問わず、ジャズのタイトル曲をはじめとしてブルースやロックといったクールなBGMが、ハードボイルドタッチの本筋にマッチしています。 シリーズ構成の信本敬子は、実写の世界で活躍する脚本家。脚本・舞台設定を担当した佐藤大をはじめ、後に売れっ子脚本家として活躍する人物も多数参加しており、各エピソードは大人をも満足させる内容となりました。
『カウボーイビバップ』の主要キャラクター・声優
劇中でそれぞれの心情が掘り下げられていくビバップ号のメンバーは全員が魅力的。信頼しながらも互いに干渉しすぎないメンバーの距離感は、大人が観ても憧れる絶妙な塩梅で、観ているうちに自然とビバップ号に感情移入してしまいます。 そして、愛すべきビバップ号のメンバーに命を吹き込んでいるのは贅沢過ぎるキャスト陣です。そんなメインキャラと豪華な声優を紹介します。
スパイク・スピーゲル/CV.山寺宏一
ビバップ号の乗組員で賞金稼ぎのスパイク。かつては火星のチャイニーズ・マフィア“レッド・ドラゴン”に属していたことも。ニヒルで危険を好む、凄腕の“カウボーイ”です。 相棒のジェットとともにビバップ号で宇宙を飛び回る賞金稼ぎとして活躍しています。アクションスターのブルース・リーを師と仰ぎ、スパイク自身もジークンドーというブルース・リーが生んだ武道の使い手。元マフィアの経歴のためか、銃撃戦、戦闘機の操縦など戦闘に関することは一通りこなします。 軽口とジョークが多く、女性に甘い軟派な男に見えますが、マフィア時代の同僚・ヴィシャスと、謎の美女ジュリアとの間に深い因縁を持ち、そのことはビバップ号の仲間にも話していません。 スパイクの声を担当したのは「七色の声を持つ男」と呼ばれる山寺宏一。言わずと知れた声優界の雄で、ナレーションや俳優、司会もこなす多才な声優です。
ジェット・ブラック/CV.石塚運昇
スパイクの相棒で、ビバップ号の船長ジェットは、痩身なスパイクとは対照的に筋肉質な巨漢。禿頭に顎髭、サイボーグ化された左腕など悪役のような風貌の持ち主ですが、かつては警察組織I.S.S.P.の一員として働き、ブラックドッグの通り名で恐れられた凄腕刑事でした。とある事件をきっかけに警察の職を辞してからは賞金稼ぎとして活動しています。 見た目からは想像がつかない几帳面な性格の持ち主で、ビバップ号での料理などの家事全般はジェットが担当しています。艦の整備もするなどその仕事は多岐にわたり、スパイクをはじめに怠けがちなビバップ号のクルーに比べとにかく頼りになる男です。 ジェットの声を担当したのは舞台出身の声優・石塚運昇。「ポケットモンスター」シリーズのナレーションとオーキド博士の声でお馴染みですが、2018年に食道癌のため死去しています。
フェイ・ヴァレンタイン/CV.林原めぐみ
元イカサマ師の賞金首だったフェイ。男を惑わす美貌の持ち主ですが、過去のトラウマからお金に強い執着を持っており、浪費癖があるのが玉に瑕。初登場時もお金をだまし取るイカサマ師の賞金首として登場しました。 スパイクたちとは、なし崩し的に始まった関係でしたが、さまざまな出来事を通して信頼関係を築いていき、最後には自分の居場所と感じるほどになります。 フェイの声を担当したのは人気声優で、歌手としても活動する林原めぐみ。代表作は『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイ役、『名探偵コナン』の灰原哀役などです。
エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世/CV.多田葵
13歳の天才ハッカーであるエド。ビバップ号の噂を知り、そのまま居着いてしまいました。赤髪にゴーグル、褐色の肌という特徴からは少年にしか思えないエドですが、実は女の子。地球出身で、長いフルネームは自分で適当に考えたものだとか。 自作のコンピュータを使いどこにでもハッキングできる天才ハッカーで、スパイクたちの活躍を以前から追いかけていました。その後、自らスパイクたちに接近し、いつの間にかビバップ号に居つくようになりました。それからは、賞金首の情報を集め、ビバップ号に貢献します。 エドの声を担当したのは元子役・声優の多田葵。2005年からはシンガーソングライターとして活動し、多くのテレビアニメ主題歌を歌っています。
アイン
アインはビバップ号で飼われている犬で、犬種はウェルシュ・コーギー・ペンブローク。 実はとある研究機関が育てたデータ犬で、知能の高さ・情報処理能力において人間を凌駕しています。クルーの中でも特にエドに懐いており、行動を共にすることが多いです。 エドとアインはビバップ号をめぐるきな臭い事件には絡まず、数少ない癒し担当。物語がシリアスへと向かう最終話付近で、エドとともにビバップ号から下船することからも、平和の象徴のようなキャラクターであることがうかがえます。
ビシャス/CV.若本規夫
ビシャスは銀髪に黒いコートが特徴の27歳の男。かつてスパイクが所属したチャイニーズマフィア・レッドドラゴンの幹部を務めています。長い日本刀を愛用し、人間離れした戦闘力を武器にスパイクに襲いかかるライバルです。 スパイクとはマフィア時代に相棒を務めるほどの関係でしたが、マフィアとしての価値観の違い、そしてビシャスの恋人であったジュリアをめぐって対立。どちらかが命を落とすまで終わらない血で血を洗う戦いへと発展します。 担当声優は若本規夫。『ドラゴンボールZ』セル役や、『戦国BASARA』織田信長役などが代表作として挙げられます。バラエティ番組『人志松本のすべらない話』のナレーター役としても有名です。
『カウボーイビバップ』を知るための3つのキーワード
主人公のスパイクが元マフィアのカウボーイ、相棒のジェットが元警官の賞金稼ぎという経歴を持ち、宇宙を舞台にしているのにどこかローテクで、アメリカの多民族国家の様相も映し出している点が独特。こういったミスマッチとも思える設定の面白味が、人気の秘訣なのかもしれません。 そんな独特な世界観を構成している、3つのキーワードを解説します。
位相差空間ゲート
本作の世界では、2022年に月で行われた“位相差空間ゲート”の実験が大事故を引き起こし、地球は死の星と化しています。その結果、地球人は火星や金星などの外惑星に移住し、位相差空間ゲートは宇宙航海になくてはならないものとなりました。これはいわゆる宇宙の“高速道路”のようなもので、ゲート間を高速移動できます。
カウボーイ法
月のゲート事故から20年間ほど、地球は無政府状態に陥り治安は悪化。大量の犯罪が蔓延し、警察の手も及ばないほどになったため、犯罪者を賞金首にする“カウボーイ法”が施行されることになります。アメリカの西部開拓時代のように、一般から賞金稼ぎを公募し、“カウボーイ”として犯罪者を摘発させるものです。
I.S.S.P.
I.S.S.P.は「インターソーラー・システム・ポリス」の略で、太陽系全体の警察組織として機能しています。I.S.S.P.独自の捜査官がおり、惑星や国家を超える規模の事件を取り扱う大組織です。もちろん惑星や国家単位での警察もあり、ジェットは地元のガニメデ警察からI.S.S.P.に移っています。
OP曲が人気バラエティ番組のオープニング曲に!
監督の渡辺信一郎と脚本・舞台設定を担当した佐藤大はともに音楽に造詣が深いことでも有名です。渡辺信一郎は『サムライ・チャンプルー』でヒップホップを取り入れた独自の世界観を作り上げ、ジャズを題材とした青春を描いたアニメ『坂道のアポロン』でも監督を務めました。 本作ではさらに『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』や『マクロスF』などの音楽担当として知られている菅野よう子を加わり、ジャズを基調にした色とりどりの楽曲が物語を盛り上げています。 『カウボーイビバップ』のOP曲である「Tank!」は2017年11月現在も放送されているバラエティ番組・ホンマでっか!?TVのオープニング曲としても有名です。サウンドトラックも多く発売されている『カウボーイビバップ』、その音楽にもぜひ注目してみてください。
『カウボーイビバップ』は放送までに2年もかかっていた
制作はサンライズの第2スタジオが担当し、渡辺監督と南雅彦プロデューサーが中心になってスタッフが集められました。企画の発端は、宇宙船のプラモデルが売れるようなアニメをバンダイに発注されたことから。その際渡辺監督が思いついたコンセプトは、アメリカの賞金稼ぎが近未来の宇宙で活躍する無国籍アクションというもの。 ところがジャズをベースにした音楽も独特のクールな作風にも周りの反応は芳しくなく、スポンサーも降板して放送すら危うかったとか。なかなか放送枠も決まらず、オンエアまでになんと2年もかかったそうです。 結局、他の作品の穴埋めとして急遽テレビ東京での放送が決定。1998年4月から6月の間に半分のエピソードで13回分が放送されました。同年10月から翌年4月にかけて、改めてWOWOWで全26回が無事にオンエアされています。
アニメ映画には劇場版ならではのアクションシーンが盛りだくさん
アニメ本編でも作画への力の入りようが見て取れますが、2001年に公開された劇場版『カウボーイビバップ 天国の扉』では、さらに迫力を増したアクションシーンを満喫することができます。 中でも主人公・スパイクとゲストヒロインのエレクトラがモップで格闘するシーンは、アニメファンの間ではしばしば語られる名シーン。キャラクターデザインや総作画監督にクレジットされることも多いアニメーター・馬越嘉彦のまばたきを許さない派手なアクションは見どころのひとつです。 アニメの劇場版といえば一見さんお断りのファンムービーであることも多い中、映画単体でも面白い『カウボーイビバップ 天国の扉』は、見逃し厳禁の傑作となっており、まだ観ていない人は要チェックです。
高い評価を受けている海外で実写化!Netflixで全世界に配信
【作品ニュース】[カウボーイビバップ]「カウボーイビバップ」がNetflixにて米国実写TVシリーズ化決定! https://t.co/N72jIfkojE
— サンライズ (@SUNRISE_web) November 28, 2018
その独特な設定や音楽性ゆえに、日本での知名度より、欧米での人気が高いようです。特にアメリカではビデオとDVDが先行発売され、劇場版が公開された2001年からはアニメ専門局で全米放送もされています。 アメリカでの人気を受けて、2009年にはキアヌ・リーブスの主演でハリウッドでの実写映画化が噂されましたが、その後は資金難に直面していることも報じられました。 2017年にはアメリカでの実写テレビシリーズ化が発表され、さらに2018年、テレビ製作会社Tomorrow StudiosがNetflixと共同制作し、Netflixが配信も行うことが決定。原作アニメの渡辺信一郎監督が監修として参加し、サンライズも製作で携わることが決まっています。
お蔵入り寸前だった『カウボーイビバップ』は知る人ぞ知る良作アニメだった
初めはジャズなんて売れないといわれていた本作の音楽CDも、日本ゴールドディスク大賞で「アニメーション・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を受賞。映像パッケージの売り上げも国内外でヒットしました。 特に海外での人気が高いのは周知の通りで、主題歌の「Tank!」は2016年のカナダフィギュアスケート選手権でケヴィン・レイノルズ選手のショートプログラムで使用されたり、楽曲に合わせてスパイクのコスプレまで披露しています。 一時はお蔵入り寸前だった名作アニメ『カウボーイビバップ』。徹底した設定作りとジャンルを問わない無国籍なテイスト、クールな音楽と映像などなど魅力あふれる作風がいまだ愛され続け、国を問わず多くの人の心を掴んでいるようです。