2019年7月22日更新

映画の中の、家族のために覚醒する6人のパパたち

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映画のなかの父親たち

優しいパパ、厳格なパパ、陽気なパパや、秘密を抱えたパパ……。映画に登場する父親は様々です。彼らの妻や子供に対する感情や行動のなかには、良くも悪くも強烈な印象を残すものがあるでしょう。「あの映画の、あのパパは忘れられない」という方もいるのではないでしょうか。 今回は6本の作品から、家族への思いの強さゆえについつい覚醒してしまう父親たちを紹介します。

『処女の泉』(1961年)

まずは1961年日本公開の『処女の泉』。スウェーデンが誇る巨匠イングマール・ベルイマンの作品で、『第七の封印』『野いちご』とともに彼の三大傑作の一つに数えられています。 舞台は中世のスウェーデン、敬虔なキリスト教徒の一家を悲劇が襲います。この映画に登場するパパは、『エクソシスト』の神父役などで広く知られるマックス・フォン・シドー演じるテーレ。彼の娘カリンは家の召使いインゲリと共に教会へ行く道中、三人組の男に殺されてしまいます。テーレは恥辱の果てに殺された娘の無念を晴らすため、男たちを皆殺しにします。 復讐に身を燃やすテーレの葛藤だけでなく、作品の根底にある神や赦しといった宗教的なテーマも見どころです。

『96時間』(2009年)

リュック・ベッソンとロバート・マーク・ケイメンがタッグを組んだ脚本にピエール・モレルがメガホンをとったアクション映画『96時間』は大ヒットとなり、続編となる『96時間 リベンジ』(2012年)『96時間 レクイエム』(2014年)も製作されました。 リーアム・ニーソン扮する元CIA工作員のブライアン・ミルズは離婚した後も、離れて暮らす一人娘キムとの関係を大切に思っています。ある日、キムは友人と2人でパリ旅行に行きたいと言い出します。実父の許可を得るためキムが少しの嘘をついているとは思わず、渋々了承するブライアン。けれども、ブライアンの不安は当たってしまいます。キムは旅先で人身売買を生業とする組織に拉致されるのです。 敵を電流で拷問したり、知り合いの妻を撃って協力するよう脅したり、娘を救い出すためにブライアンは手段を選びません。 緊迫した感情に引き込まれるばかりでなく、彼がまぎれもなく凄腕工作員であったことを思わせる華麗なアクションにも注目です。

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『パージ』(2015年)

2015年に日本公開された『パージ』は、ジェームズ・デモナコが監督をつとめたイーサン・ホーク主演のホラー映画です。 2022年、「パージ法」が制定されたアメリカで暮らすサンディン家の人々を描いたストーリーです。その法律は1年に1晩だけあらゆる犯罪行為が許されるというもの。一家のパパ、ジェームズ・サンディンはセキュリティ会社に勤めており、パージ法の恩恵を受けて儲けています。そういうわけでサンディン家はパージ法に賛成の立場なのですが、年に一度のパージを家から出ずにやりすごそうとします。 ところが、娘の恋人が家に侵入したり、見知らぬ男が逃げ込んできたり、その男のせいで謎の集団が押しかけてきたりとトラブルが続きます。不測の事態が次々と起こる極限状態で、ジェームズは家族を守るため男を縛り上げて痛めつけるのです。

『フォーリング・ダウン』(1993年)

マイケル・ダグラス主演のジョエル・シューマッカー監督作品『フォーリング・ダウン』は1人の男性が酷い交通渋滞にはまっているところから始まります。車のナンバーに因んで「D-フェンス」と呼ばれることになる彼が、離婚した妻と娘に会いに行くという実にシンプルなストーリーです。しかし、冒頭の渋滞をはじめ道中あらゆるものがD-フェンスのストレスとなり、怒りに駆られた彼の行動は徐々にエスカレートしていきます。 店の商品をバットで破壊、バーガーショップで銃を乱射、工事現場でバズーカを発射と 彼の行動はどんどん過激化するのです。 やがて警察も動き出し、定年直前で退職を決めていた刑事プレンダガストがD-フェンスを追い詰めます。ちなみに、刑事は娘を幼くして亡くしています。彼らは、全く異なる理由で「会いたくても娘に会えないパパ」だといえます。 行動は常軌を逸しているのですが、彼の主張する内容は的を射ているところがあり、そこが映画の面白さの一つになっています。また、どれだけ妻子に会いたいと思っているかが何度も描かれます。狂気と家族愛のアンバランスさが印象深く、それゆえにどこか切ない後味のある作品です。

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『スパイ・タイム』(2016年)

ハビエル・ルイス・カルデラがコミック原作を映画化したスペイン映画『スパイ タイム』。スペインの俳優イマノル・アリアスがソーセージ職人とスパイという二つの顔を持つパパ、アナクレトを演じています。 かつて刑務所送りにされたバスケスは復讐のためにアナクレトの息子アドルフォの命を狙います。アナクレトがエプロン姿のまま敵を迎え撃ち、ヘッドショットをきめていくのは見ていて爽快です。 過去の敵に子供の命を狙われるというシリアスな状況設定にもかかわらず、緊迫したアクション映画というよりはコメディ調に仕上がっています。

『追想』(1976年)

1976年に日本初公開された『追想』は、ロベール・アンリコによるセザール賞受賞作品です。 第二次世界大戦中、ドイツ占領下のフランスで医師としてつつましく暮らすジュリアンをフィリップ・ノワレが、彼の美しき妻をロミー・シュナイダーが演じています。愛する妻子を無残に殺されたジュリアン輝かしい思い出を追想しつつ仇を討っていきます。彼の復讐劇は凄まじく、ドイツ兵を撃ち殺し、さらに生きたまま火炎放射器を浴びせます。 残酷な現実と愛おしい過去が混ざり合う映像が美しい作品です。2017年9月9日から全国で順次リバイバル上映もされています。

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すべては家族のために

様々な意味で「覚醒した」といえるパパたちをまとめてみました。彼らの行動がどのようなものであれ、その背景に家族への強い思いがあることが共通しています。人物の動機が一貫していること、それは物語のしっかりとした軸を作っているようにも思います。今回ご紹介した作品を見てみたり、あるいは一度みた映画を「パパ」に注目して見返すのも面白いかもしれません。