2018年1月9日更新

白石和彌監督おすすめ映画【デビュー作から最新作まで】

『凶悪』(2013)が話題となった白石和彌は同作以降、精力的に作品を世に問い続けています。そのフィルモグラフィに通底するテーマは、「社会から弾かれた人間」、「悪」あるいは「正義」と言えるでしょう。そんな白石和彌の監督作品をご紹介します。

映画監督、白石和彌とは?

白石和彌は1974年、北海道出身の映画監督です。ピンク映画で有名な中村幻児の「映像塾」に参加した後、『キャタピラー』(2010)などの若松孝二監督に師事します。 演出部として行定勲監督や犬童一心監督の作品に参加した後、『ロスト・パラダイス・イン・トーキョー』(2010)で映画監督デビュー。以後、精力的に作品を発表し続けています。 その作風は、正義とは何か、悪とは何か、社会とは何かを観客に問いかけてくる問題作が多いようです。 この記事では、そんな白石和彌のフィルモグラフィを振り返っていきます。

1.一握りの希望を描いた、白石和彌の記念すべきデビュー作

白石和彌の長編映画デビュー作です。ロッテルダム、釜山、ドバイの国際映画祭に正式出品されました。 幹生(小林且弥)は、実家の両親が亡くなったのを機に知的障害者の兄、実生(ウダタカキ)を引き取ります。実生のために呼んだデリヘル嬢は自称・地下アイドルのマリン(内田慈)でした。マリンは兄弟の家に居候し、3人の奇妙な同居生活が始まります。 幹生は実生を世間から隠そうと、彼をほとんど軟禁状態にし、その道具としてマリンを利用するのです。ところが実生が起こした過去の事件が暴かれてしまいます。一体パラダイスとはどこなのか? 白石は本作で社会の過酷さを描きつつも、一握りの希望を残しています。

2.実際にあった恐るべき保険金殺人を基にした話題作

各賞を総なめにした、白石和彌の出世作とも言えます。原作は『凶悪 -ある死刑囚の告発-」という実際に起きた事件を基にした小説です。 収監中の死刑囚、須藤(ピエール瀧)から手紙が届き、雑誌社の記者である藤井(山田孝之)が話を聞きに行きます。須藤によるとまだ3件の余罪があり、首謀者は先生と呼ばれる木村(リリー・フランキー)だということ。 藤井が取材を進めるうちに須藤の話は信憑性を帯びてきて、藤井は家庭も忘れて取材を続けます。事件は藤井自身の心をも蝕んで……。 本職俳優ではないピエール瀧とリリー・フランキーの凄まじい演技に注目です。

3.悪に染まっていく警察官にフォーカスした問題作

『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』が原作で、著者である稲葉圭昭自身が起こした事件をモチーフとしています。 北海道警の刑事となった諸星要一(綾野剛)は、正義感は強いのですが実績が上がらず、先輩の村井(ピエール瀧)から、「裏社会に潜り込みスパイを作れ」と忠告されます。 諸星は暴力団とズブズブの関係になりながら点数を稼ぐのですが、やがて覚醒剤や拳銃の取引といった犯罪を犯していくのです。 綾乃剛が体重を増減させたり、顔をむくませるなどして、悪に手を染めてしまう刑事を熱演しています。彼はこの作品で、日本アカデミー賞主演男優賞を受賞しました。

4.日活ロマンポルノを白石和彌流に復刻

2016年、日活ロマンポルノ45周年を記念したリブートプロジェクトとして5作品がリリースされました。塩田明彦、園子音、中田秀夫、行定勲らの監督に加え、白石和彌の名前もあります。 白石和彌がメガホンをとった『牝猫たち』は、『紙の月』(2014)などの井端珠里、『アルビノ』(2016)などの真上さつき、『沈黙 サイレンス』(2017)などの美知枝という、3人の女性がヒロインです。 ネットカフェ難民、シングルマザー、不妊症といった問題を抱えながら、池袋の夜の街を生きる女性たちを描きます。白石和彌らしい、社会の裏側を覗かせてくれる映画です。

5.ダメ男と身勝手女が主人公のミステリー

沼田まほかるのミステリー小説を原作にした『彼女がその名を知らない鳥たち』は、蒼井優、阿部サダヲのダブル主演です。 さえない中年、佐野陣治と暮らす欲求不満の女性北原十和子は、昔別れた恋人黒崎(竹野内豊)へ未練を抱き続けていました。ある日、彼女は黒崎が失踪していることを知り、佐野の関与を疑うようになり……。 蒼井優が同棲相手に依存しながら、妻子ある男(松坂桃李)との情事に溺れる身勝手な女を熱演。阿部サダヲは彼女に執着する、うだつの上がらない中年男という癖の強い役回りです。 蒼井優は本作で報知映画賞主演女優賞を獲得しています。

6.ネットで神格化された殺人犯の少女は誰なのか?

白石和彌が『凶悪』(2013)の脚本家、高橋泉と再びタッグを組み、さらに同作のピエール瀧とリリー・フランキーも配した映画『サニー 32』。 藤井赤理(北原里英)は24歳の誕生日に拉致されます。犯人は柏原(ピエール瀧)と小田(リリー・フランキー)の2人組で、彼らは赤理を「サニー」と呼ぶのです。 「サニー」とは「犯罪史上最も可愛い殺人者」として、2003年にネット上で神格化されていた少女。14年を経て、2人組は「サニー」をどうするのか? 、さらにネット上にもう1人の「サニー」(門脇麦)が現れて……。 NGT48の北原里英が主演に挑み、スーパーバイザーとして秋元康が参加しています。

7.白石和彌最新作!暴力団に挑む、飢えた狼のような刑事

原作は日本推理作家協会賞を受賞した、柚月裕子の小説。昭和末期の広島における暴力団同士の抗争と刑事たちの奮闘を描いた作品です。 昭和63年、広島・呉原東署の捜査二課に白岡(松坂桃李)が配属されてきます。白岡は大上(役所広司)の部下として、金融会社社員の失踪事件を担当。 その会社は暴力団の系列でした。大上は暴力団との癒着を囁かれていて、違法な捜査を繰り返します。間もなく、組同士の抗争が勃発する中、大上は奇策に出るのです。 本作は『日本で一番悪い奴ら』(2016)のように、正義とは何かを問いかける作品。『孤狼の血』は2018年5月12日公開です。