2018年2月24日更新

【独特の映像表現に注目】CM出身の映画監督9選

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映画監督のキャリアのスタートはさまざまです。ここではCM業界で活躍したのちに映画に進出した監督を9人選び、両分野での代表作と経歴を中心にご紹介します。

CM業界から映画の世界へ飛び出した監督たち

世界中にたくさんの映画監督がいますが、それぞれキャリアのスタートはさまざまです。かつての日本であれば、大手映画会社に就職し、助監督として経験を積んでから監督に昇格するというのが王道でしたが、今や多種多様な分野から映画監督に進出するのがごく当たり前になりました。 テレビ業界、広告業界、映像作家やデザイナー、俳優、あるいは小説家から映画監督になる人もいます。 ここではCM業界から転身した映画監督を9人ご紹介します。海外から4人、日本から5人を選びました。また、彼らCM業界のディレクターは音楽のPVも並行して手掛けていることが多いのも特徴です。

1.際立つ多才ぶり、スパイク・ジョーンズ

1969年10月22日メリーランド州ロックビルに生まれたスパイク・ジョーンズは、まずフォトグラファーとしてキャリアを開始し、その後活動の場を拡げていきます。GAPやアディダスなどのCM、またビョークやファーサイドのPVでその才能をいかんなく発揮し、天才クリエーターの名をほしいままにしました。 日本のソフトバンクのCM「ボディガード編」ではブラッド・ピットを起用して話題になり、また2016年のKENZOのCMでは奇抜で大胆な演出が高く評価されました。

代表作:『マルコヴィッチの穴』『アダプテーション』など

1999年に『マルコヴィッチの穴』で映画監督デビューを果たすと、その特異な映像世界が絶賛されていきなりアカデミー賞の監督賞にノミネートされます。続く『アダプテーション』はベルリン国際映画祭銀熊賞に輝きました。 2013年の『her/世界でひとつの彼女』では監督に留まらず脚本も担当し、さらに『ウルフ・オブ・ウォールストリート』では俳優として出演するなど、マルチな多才ぶりは際立っています。

2.「映像の魔術師」と呼ばれる、ターセム・シン

ターセム・シンは1961年5月26日生まれでインド出身です。父親の仕事の関係で幼少時代をヒマラヤやイランなどさまざまな場所で過ごし、独特の映像センスを培ったと言います。 20代で米国に渡ってデザインスクールを卒業したあと、90年代を中心にCMやPVの演出で高い評価を得ました。手掛けた代表的なCMにはナイキやコカ・コーラがあり、特にクィーンの楽曲と組み合わせたペプシのCMは有名です。 PVでも数々の名作を残し、MTVのベストビデオ賞を受賞したR.E.M.の「ルージング・マイ・レリジョン」などが代表作です。

代表作:『ザ・セル』『落下の王国』など

2000年にジェニファー・ロペス主演の『ザ・セル』で映画監督デビューを果たすや、その斬新でスタイリッシュな映像で世界をあっと驚かせます。続く『落下の王国』ではさらに大胆な映像世界を構築し、「映像の魔術師」と呼ばれるようになりました。 やはり広告出身の故石岡瑛子とのコラボも有名で、ジュリア・ロバーツが主演したファンタジー大作『白雪姫と鏡の女王』まで一緒にコンビを組み続けました。

3.英国を代表する巨匠もCM出身!リドリー・スコット

巨匠リドリー・スコットも実はCM業界出身です。英国の名門ロイヤル・カレッジ・オブ・アートでグラフィック・デザインを学び、卒業後はBBCでデザイナー・演出家としてキャリアを積みました。 1968年に自らCM制作会社を設立し、多数の作品を手掛けて各国で様々な賞を受賞しました。2000本近いと言われる作品の中、1970年代に手掛けた英国Hovis社のCM、またChanel No.5のCMなどが有名です。

代表作:『ブレードランナー』『グラディエーター』など

1977年に『デュエリスト/決闘者』で映画監督デビューし、カンヌ国際映画祭で新人監督賞を受賞します。その後は『エイリアン』の世界的大ヒット、SF映画の金字塔『ブレードランナー』、大作『グラディエーター』などその後の活躍ぶりは言うまでもありません。 美術から照明など細部にこだわる完璧主義で知られ、とりわけ『ブレードランナー』に代表される初期の作品にみられる幻想的映像美は、類まれなる世界観を構築しました。

4.スタイリッシュな映像センスが光る、マイケル・ベイ

1965年2月17日ロサンゼルスに生まれたマイケル・ベイは、15歳の頃からジョージ・ルーカスのもとでインターンとして映画を学び始めます。大学卒業後はまずCMやPVでキャリアをスタートさせ、すぐにその才能が注目されました。 全米規模となった赤十字のCMでは、1992年の権威あるクリオ賞を受賞しました。映画界に進出してからもいくつかのCMやPVを手掛け、中でも人気のヴィクトリアズ・シークレットのCMを一貫して手掛けていることは有名です。

代表作:『トランスフォーマー』『アルマゲドン』など

満を持しての映画監督デビュー作は、1995年の『バッドボーイズ』です。その後は『アルマゲドン』や『パール・ハーバー』など大作も手掛けて大ヒットに導き、ハリウッド屈指のヒットメーカーとなりました。 また代表作となった「トランスフォーマー」シリーズなど、壮大なスケールとスタイリッシュな映像の合体はマイケル・ベイの代名詞です。

5.今や各映画賞の常連監督に!吉田大八

吉田大八は1963年10月2日生まれの鹿児島県出身です。大学卒業後、 CM制作会社のディレクターとして20年間に渡り数々のCMを手掛けました。国内外複数の賞を受賞していますが、TOTO宝くじのCMなどはよく知られています。 またPVでは、スピッツの「流れ星」「愛のしるし」はともに吉田大八の演出です。

代表作:『桐島、部活やめるってよ』『紙の月』など

ショートムービーは早くから手掛けていましたが、2007年に初の長編『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』を発表し、いきなりカンヌ国際映画祭に招聘されます。 その後は、日本アカデミー賞最優秀監督賞や作品賞に輝いた『桐島、部活やめるってよ』、同じく各映画祭を席巻した宮沢りえ主演の『紙の月』など次々と秀作を手掛ける人気監督の一人となりました。

6.CM業界では誰もが知る巨匠!中島哲也

1959年9月2日福岡県に生まれた中島哲也は、学生時代にぴあフィルムフェスティバルで入選してCM制作会社に就職します。才能を発揮してフリーになり、山口美江が出演した有名なフジッコのCM、富士フィルムやサントリーなどの有名作品を次々と送り出し、CM業界では知らぬ者がいない巨匠となりました。 映画監督になってからも、dTV、ソフトバンクの「白戸家 ギガ物語」、大和ハウスの「故郷2016」など、コンスタントに話題のCMを手掛け続けています。

代表作:『告白』『嫌われ松子の一生』など

1988年にオムニバス『バカヤロー! 私、怒ってます』の第二話を担当して映画監督デビューを果たします。 2004年の『下妻物語』以後、2006年の『嫌われ松子の一生』など数々のヒット作で監督と脚本の両方を手掛けており、スローモーション、CG、アニメーション、サブカルなどを組み合わせたユニークな映像世界を確立しました。 2010年の『告白』では日本アカデミー賞最優秀監督賞と脚本賞をW受賞しています。

7.繊細でナイーブな世界を得意とする、犬童一心

1960年6月24日生まれで東京都出身の犬童一心は、大学在学中から自主映画を製作し、卒業後は広告制作会社のディレクターとして数多くのCMを手掛けました。VISAインターナショナル、小岩井乳業、カプコンなどのCMではACC賞など国内外多数の賞を受賞しています。 2015年にはカンニング竹山を起用し、「オレオレ詐欺を防ぐのは、オレだ。」と題する政府広報のCMを手掛けて話題になったほか、前田敦子やエレファントカシマシ、内田裕也、高田漣らのPVも担当しています。

代表作:『ジョゼと虎と魚たち』『グーグーだって猫である』など

CMディレクションのかたわら、90年代から長編映画も手掛けるようになり、2003年の『ジョゼと虎と魚たち』で一躍注目を集めます。繊細でナイーブな演出が高く評価されて芸術選奨新人賞に選ばれました。 2005年のヒット作『メゾン・ド・ヒミコ』、また『グーグーだって猫である』は映画版・ドラマ版両方を手掛ける代表作のひとつとなりました。

8.独特のこだわりと個性を発揮する、石井克人

石井克人は1966年12月31日新潟県に生まれました。武蔵美視覚伝達デザイン学科を卒業後、CMディレクターとしてたくさんの話題作を送り出してきました。湖池屋のポテトチップス、SMAPが出演したNTT東日本の「フレッツ光」など、一目で強烈な印象を残すCMを得意としています。 話題になった草彅剛が出演するアサヒの「一本満足バー」、カゴメの「野菜一日これ一本」などは石井克人の演出です。

代表作:『鮫肌男と桃尻女』『茶の味』など

1995年の『8月の約束』で映画監督デビューを果たします。同作はゆうばり国際冒険ファンタスティック映画祭オフシアター部門でグランプリを受賞し、また2004年の『茶の味』はカンヌ国際映画祭監督週間の栄えあるオープニング作品に選ばれました。 漫画を原作とした『鮫肌男と桃尻女』や、クエンティン・タランティーノの『キル・ビル』でアニメ部分を手掛けるなど、アニメ通を活かした作品で個性を発揮しています。

9.知る人ぞ知るCM出身の大御所、大林宣彦

邦画界を代表する大御所監督の一人、大林宣彦は創成期のテレビCM業界でキャリアを築いた先駆者です。学生時代から自主製作映画では広く知られていましたが、その映像センスを認められて1964年頃からセイコーなどのCMを手掛けるようになります。 とりわけハリウッドスターを起用したCMが有名で、チャールズ・ブロンソンの「マンダム」、ソフィア・ローレンの「ホンダ・ロードパル」、カトリーヌ・ドヌーヴの「ラックス化粧品」など、当時は「CM界の巨匠」と呼ばれていました。

代表作:『転校生』『時をかける少女』など

1977年に『HOUSE』でようやく商業映画の監督デビューを果たします。CM的映像センスを大胆に取り込んだ作風で大きな話題をよびました。 その後はアイドルを主役にした映画で一時代を築きます。80年代に発表した『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』は故郷を舞台した「尾道三部作」として広く愛される、文字通り大林宣彦の代表作です。

個性あふれる映像センスはCM出身ならでは!

CM出身の映画監督の特徴は、なんといっても独特の映像センスにあります。スタイリッシュさ、斬新さ、奇抜さ、ユーモアやインパクトの強さなど個性にあふれた世界は、クリエーターそれぞれです。 また、CMというモノを売るための広告業界で培われた経験は、芸術性と大衆にアピールする商業性の両方を満たす才能に恵まれているのも確かでしょう。 今後もCM業界で華々しく活躍したのち、映画の世界へと進出する人はどんどん出てくるはずです。その意味で、CMという分野は新しい才能を発掘する土壌だと言えるのかもしれません。