2023年3月9日更新

【ネタバレ】『娼年』6つの濡れ場のあらすじを解説 「下手」と言われ続けた23男の感想も

このページにはプロモーションが含まれています
娼年
(C)石田衣良/集英社 2017 映画『娼年』製作委員会

「この映画は事件となる。」 キャッチーな惹句で公開された映画『娼年』は、R18という挑戦的なレーティング設定ながら世の女性たちの共感を呼び官能映画として異例のヒットを記録しました。 いったいどこが世の女性たちの心を掴んだのか。今回は話題騒然のこの映画のあらすじを、濡れ場のネタバレ中心に全編解説していきます!

AD

映画『娼年』あらすじ

バーでアルバイトしている大学生・森中領(松坂桃李)はほとんど大学にも行かず、友人・白崎恵(桜井ユキ)からノートを写してもらってばかり。女性とは行きずりの関係だけで、深く向き合ってきませんでした。 ある夜、領は幼い自分を残して玄関を出ていく母の夢を見ます。 ある日、友人であるホストの田島進也(小柳友)が、ひとりの女性を領が働くバーに連れてきます。彼女の名前は御堂静香(真飛聖)。会員制ボーイズクラブ「Le Club Passion」の経営者でした。 「女なんてつまんないよ」と素っ気なく言う領を、静香は自宅に招きます。そこで領は、静香が見守る前で咲良という女性と関係を持つ「試験」を受けることに。静香は領の振る舞いを見届け、厳しく評価します。やがて領は“リョウ”として、ボーイズクラブで働くことになりました。

娼年
(C)石田衣良/集英社 2017 映画『娼年』製作委員会

AD

映画『娼年』の濡れ場は本当にしている?

「娼年 本当にしている」と検索する人も多い本作ですが、濡れ場はすべて俳優の演技として撮影されたものです。映画は映倫区分R18+(18歳未満は鑑賞不可)で、2018年4月6日に公開されました。 監督の三浦大輔は、ひとつひとつの濡れ場を細かくカット割りし、松坂桃李らとリハーサルを重ねてから本番に臨んでいます。生々しく見えるのは、偶然ではなく緻密に設計された演出の結果といえるでしょう。 なお、本作は物語の大部分に性的な場面が含まれます。家族や友人と観る場合は、その点を踏まえておくと安心です。

AD

『娼年』濡れ場のあらすじを相手ごとにネタバレ

ここからは映画のあらすじを、領が出会った女性ごとにネタバレありで解説していきます。

①興味が湧かない女

大学生の領は興味がない女を使い捨てにするつまらない性生活を送っていました。映画は領の気だるげな行為中のシーンから始まります。 授業にはほとんど出ず、夜はバーでアルバイトをする領。授業のノートは女友達の恵が持ってきてくれていました。 あるときバーにホストをしている友人が、静香という女性を連れてきます。ホストと静香との会話の中で「女なんてつまんないよ」とこぼす領。そんな領のことが静香は気になったようで、仕事が終わった頃に領を迎えにきました。

AD

②耳が聞こえない少女・咲良

静香から家に招き入れられた領は静香を抱こうとしますが、拒まれてしまいます。そこへ現れたのは、生地の薄いネグリジェに身を包んだ女性(冨手麻妙)でした。 女性の名は咲良といい、生まれつき耳が聴こえませんが読唇術を心得ています。静香は領に、咲良と関係を持つよう求めました。突然のことに戸惑いつつも、領は静香の見ている前で咲良と体を重ねます。 実はこれは、静香が経営するボーイズクラブ「Le Club Passion」の入店試験。静香は領が相手とどう向き合うかを試したのです。しかし静香は、領の振る舞いは自分本位だと指摘。さらに、合格するためには1回で1万円以上の価値がなければダメだと言ったうえで、机の上に5000円札を1枚置き、不合格だと告げます。しかしそこへ咲良が追加で5000円札を置きます。かくして領はギリギリ合格。迷った挙句、娼夫・リョウとして働くことを決意したのでした。

AD

③イメージを自在に変えるヒロミ

娼年
(C)石田衣良/集英社 2017 映画『娼年』製作委員会

最初の客は、クラブの常連客であるヒロミ(大谷麻衣)でした。初回のデートでは淑女らしい服装であらわれ、プラトニックにデートを終えます。その後ヒロミは再び彼を指名。1回目とは全く違う艶やかな姿で現れ、リョウをホテルに誘います。 1度目のデートとは打って変わり、ホテルでは互いを激しく求め合うふたり。廊下を清掃員がぼやきながら通り過ぎる一方、壁ひとつ隔てた部屋ではふたりが夢中で抱き合っている、という対比がどこか可笑しみを感じさせる演出になっています。 のちにヒロミは電話で静香に、リョウを絶賛するのでした。

AD

④漏らした体験が性癖になったイツキ

ふたり目の客は、知的な雰囲気の女性・イツキ(馬渕英里何)。ふたりはレストランで食事をしながらプラトンなどの古代ギリシャ哲学について語り合った後、イツキの家へ。 そこでイツキは、幼い頃の体験を打ち明けます。それは、幼なじみの少年の前で尿意を我慢しきれなかったという出来事。そのときに強い高揚を覚えて以来、その感覚が忘れられず、普通の関係では満たされないのだと言います。 イツキはリョウに、その姿を見届けてほしいと頼みます。戸惑いながらも彼女の願いを受け入れ、ありのままの彼女を否定しないリョウ。すべてが終わったあと、リョウはイツキの頭を静かに撫でるのでした。体を重ねる場面ではありませんが、相手の欲望を否定せず受け止めるリョウの資質がはっきり表れるエピソードです。

AD

⑤目の前で妻を抱いてほしい老人

娼年
(C)石田衣良/集英社 2017 映画『娼年』製作委員会

ひとりの主婦(荻野友里)と池袋で落ち合ったリョウ。彼女はリョウに抱かれながら、結婚してから夫に全く求められないと、苦しみを打ち明けます。クラブでリョウを求める者の中には、こういった既婚者も少なくありません。 ある時、遠く熱海から指名が入ります。向かった先は立派で古風なつくりの屋敷。そこに住む初老の男性・泉川(西岡德馬)は糖尿病を患い、車椅子での生活を送っています。彼はリョウに、うら若き妻・紀子(佐々木心音)と自分の目の前で関係を持つよう求め、その様子をビデオカメラで撮影したいと言うのです。 リョウはあえて荒々しく振る舞い、泉川を挑発します。撮影しながら表情を歪めていく泉川でしたが、やがて妻の変化を前に、自らも高ぶりを抑えられなくなっていきます。自分では妻を満たせない夫の嫉妬と欲望が交錯する、本作でも特に倒錯的な場面です。

AD

⑥握った手の感触で満たされる老女

クラブの客の中には、上品な佇まいの老女(江波杏子)もいました。彼女がリョウに求めたのは、体を重ねることではなく、手を握り合うこと。 握った手から伝わる感触だけで深く満たされていく老女の姿に、リョウは年齢や体の条件を超えて続いていく欲望のかたちを知ります。性愛を「行為」だけで捉えていたリョウの視野が、大きく広がる場面です。 老女を演じた江波杏子は舞台版に続いての出演で、映画公開から約半年後の2018年10月27日に亡くなりました。

AD

母を失った傷を引きずる領

領は瞬く間に上り詰め、今ではあとわずかでナンバーワンになりそうです。活躍を見て静香は、領の願いをなんでも1つ叶えると言い出しました。 領は自分と付き合って欲しいと迫ります。幼い頃に母を亡くした領は、ずっと年上の女性からの愛情に恋焦がれていたのでした。拒む静香にそれでも迫ろうとしますが、ついにビンタされてしまいます。 我に返った領はせめて自分を認めてもらうため、もう一度「試験」を受けさせて欲しいと申し出るのでした。

AD

⑦領のことが好きな恵

大学の友人・恵は、以前にも増して大学に来なくなった領を心配していました。そして彼がボーイズクラブで働いていることに気づき、止めようとします。 実は恵はずっと領のことが好きでした。しかし彼を説得することも、思いを断ち切ることもできず、彼を買うことにします。 扉をあけると恵がいて驚いたリョウでしたが、プロとして丁寧に応えます。すべてを終えたあと、リョウはいつでもまたバーに来て欲しいと言いましたが、恵はもう戻れない虚しさを感じていたのでした。

⑧焦がれ続けた静香

再び試験を受けるリョウを迎えに来た静香。車の中で静香は、自分もかつて同じ仕事をしていたこと、その過程でHIVに感染したことを明かしました。領の想いに応えたくても、静香にはそれができないのです。 入店試験の相手だった咲良は静香の娘でした。再試験での領の相手は咲良でしたが、領は静香の心とも繋がることができました。 その後ボーイズクラブは摘発され静香は逮捕されますが、領と咲良はふたりでクラブを再開させます。

AD

【感想・レビュー】濡れ場は“笑える”?

特に男性には、この映画を「エロ目的」で見に行くのはおすすめできないかもしれません。なぜなら、出てくる濡れ場がいずれも本当に生々しく、そして必ずしも「美しい」とは限らないものだからです。「笑える」と茶化すようなレビューすら一部には投稿されています。 しかし性欲と向き合うというのは、そんなに美しいことだらけではないはずです。映画では、女性たちの多様な性への欲求がありありと描き出されています。何かを強く求める、剥き出しの女性たちの姿に人々は共感するのかもしれません。 監督の三浦大輔はインタビューで「エロスそのものには興味がなく、セックスを通したコミュニケーションを描きたかった」と語っています。

AD

壮絶さを極めた濡れ場の役作り

松坂桃李『娼年』
(C)石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会

リアルな性描写を実現するための努力の数々

原作者の石田衣良と監督の三浦大輔は、濡れ場には一切妥協しない姿勢でそれぞれ本作の小説と映画を作り上げました。製作にあたって小西プロデューサーは映倫に脚本を持ち込んで相談し、本作を妥協なく映画化するにはR18+にするほかないと理解したといいます。 主演の松坂桃李は舞台版でもリョウを熱演。「二度とできないと思える」ほど消耗したという舞台での演技を下地にしつつ映画にも臨み、撮影期間中は渋谷のビジネスホテルで寝泊まりして、役から抜けられない状況をつくりました。 撮影に際してスタッフは、全ての濡れ場のために絵コンテとそれをもとに代役が演じたビデオコンテを作成。ダンスの振り付けのように動きのひとつひとつにまで「振り」をつけ、撮影前のリハーサルは5日間にも及びました。

AD

リアルな濡れ場に貢献したスタッフの仕事ぶり

娼年
(C)石田衣良/集英社 2017 映画『娼年』製作委員会

映画のリアリズムに貢献しているのは、役者だけではありません。濡れ場における人物の動きに対して計算されたカメラ位置、東京各所の空気感が見事に定着した画面、そして煌びやかな光と陰。本作で撮影を手掛けたのは、主に広告の世界で活躍するJam Eh I。今回が劇場用長編映画デビューとなります。 本作の濡れ場を見ていくと、その生々しさは役者の演技に加えて「音」によるところが大きいとわかります。実際、他の映画の濡れ場を見ていると、腰を打ち付ける音などは聴こえますが、ここまでリアルで生々しい、湿度を感じる「音」が聴こえてくることはほとんどないでしょう。 本作で録音を担当した加藤大和は、『舟を編む』や『テルマエ・ロマエ』などの話題作の音を手掛けたベテラン。三浦大輔監督とは『何者』でも仕事をしています。

AD

「セックスが下手」と言われて来た筆者が鑑賞してみた

娼年
(C)石田衣良/集英社 2017 映画『娼年』製作委員会

さて、この映画を鑑賞した筆者ですが、実は過去に付き合っていた女性に「セックスが下手」と言われたことが何度もあります。しかも、別の時期に付き合っていた女性や友人からも「セックスが下手そう」「お前はモテるわけがない」と言われたことが何度もあるのです。 「じゃあどうしたらいいの?」と問い返すと、返事は決まって「うーん......」「説明が難しい」。どうやら本当に筆者は「セックスが下手」あるいは「下手そう」なようです。これはいったい、どうしたことなのでしょうか。 そんな筆者が、娼夫と呼ばれる「セックスが上手い」職業について扱ったこの問題作を、期せずして見に行くことになったのです。

AD

『娼年』が見せる「セックス」の本質とは?

娼年
(C)石田衣良/集英社 2017 映画『娼年』製作委員会

さて、冒頭で述べたように筆者は「セックスが下手」と呼ばれ続けてきました。それに対して、本作の主人公・リョウはセックスによってクラブのナンバーワンに上り詰めたため、「セックスが上手い」のだと思われます。 一体どのようにすれば「セックスが上手い」と言われるのでしょうか?

AD

そもそも、リョウはセックスが上手かったのか?

映画の冒頭で最初にリョウが関係を持つギャル風の女は、名門大学に通う領とセックスしたことを友人に自慢できる、と喜びます。しかし、これはあくまで「セックスが上手かった」と言っているわけではなく、「名門大学に通っている」というリョウのステータスについて評価しているだけに過ぎません。 さらにリョウは、最初の「試験」で静香に「不合格」を下されます。このことからも、物語の冒頭の時点ではリョウが必ずしもセックスが上手いわけではないということがわかります。

リョウはなぜ人気を誇ったのか?

かろうじて咲良に認められたリョウは、その後、数多くの女性と関係を持ちます。しかし、その多くは、彼よりずっと年上の女性ばかり。しかも、いつまでもステディな相手がいなかったり、変わった性癖を持っていたり、夫に拒絶されたりと、性的に何かしらの葛藤や苦しみを抱えている人ばかりでした。 また、いきなり身体を重ねるのではなく、シンプルなデートを挟んでからことを行っている女性も見られます。彼女たちは、単純な肉欲ではなく、精神的な理解を求めているのです。 そんな女性たちを、リョウは「受容」するのです。幼い頃に母を失っている彼は、年上の女性に対してその面影を求め続けています。そして、自分の目の前にいるにもかかわらず、セックスの相手の女性に対して「どこかへ行ってしまうかもしれない」という不安を抱いているのでしょう。そのためにリョウは、苦しむ人々を心の底から受け入れ、相手を思いやるのです。

AD

映画『娼年』についてよくある質問

映画『娼年』は何歳から観られる?

映倫区分R18+のため、18歳未満は鑑賞できません。2018年4月6日に公開された、上映時間119分の作品です。

『娼年』の原作は?続編はある?

原作は石田衣良の小説で、『娼年』『逝年』『爽年』の3部作です。完結編の『爽年』は映画公開前日の2018年4月5日に刊行されましたが、2026年9月時点で映画の続編は発表されていません。

『娼年』に舞台版はある?

2016年に三浦大輔の演出で舞台化されており、映画と同じく松坂桃李がリョウを演じました。舞台版はR-15指定で上演されています。

映画『娼年』はどこで配信されている?

2026年9月時点では、U-NEXT、Amazon プライム・ビデオ、Hulu、Netflixで見放題配信されています(ワンスクリーン調べ)。配信状況は変わることがあるため、各サービスで最新情報を確認してください。

映画『娼年』はヒットした?

全国73館での公開ながら、公開6週目に興行収入3億円を突破しました。R18+指定の作品としては大きな話題を集めた一本です。

AD

映画『娼年』で多様な性への欲望について考えを深める

映画『娼年』は、性への欲望を酸いも甘いもありのままに描き出した衝撃の問題作です。性についての話題がタブー視される風潮の中で、ここまでありありとセックスだけと向き合った作品がかつてあったでしょうか。 性の話題に恥じらいを感じてしまう女性や、女性に夢を見すぎている男性にこそ見て欲しい渾身の一作です。ぜひ文章で読むだけでなく、映像で感じてみてください。