ネタバレ込み!映画『ニンジャバットマン』徹底レビュー【忍者とは?】
映画『ニンジャバットマン』の試写会に行ってみた
「バットマン×忍者」というコンセプトが大いに話題になった『ニンジャバットマン』。水崎淳平監督、中島かずき脚本という日本人クリエイターたちが中心になって制作された本作は、アメリカでも非常に好意的に受け取られています。 この記事では、そんな本作を一足先に鑑賞したciatr編集部が、本作の魅力等をネタバレ込みで紹介していきます。
1分でわかる!『ニンジャバットマン』のあらすじは?
映画『ニンジャバットマン』のストーリーは極めてシンプル。1分でわかります。 「ゴリラ・グロッドの実験に巻き込まれたバットマンとヴィランたちが、戦国時代にタイムスリップし、大暴れする」。以上です。 「もっと細かく……!」という声が聞こえてそうですが、本当にそれだけなのです。約80分の上映時間の間、観客はひたすらバットマンファミリーとヴィランたちのド派手なバトルを見ることになります。ちなみに劇中、疑問点が湧くこともありますが、それを気にしたら負けです。 本作はそういうタイプの作品なのです。頭を空にして、成人している方はなるべくキツめのアルコールを片手に見るのがいいでしょう。間違っても「ダークナイト」シリーズを見るような気分で見てはいけません。
「ダークナイト」シリーズと絶対に切り分けて考えなければいけない理由とは?
まず、本作のヴィランの一人。ゴリラ・グロッドは、その名の通りゴリラです。しかも、喋るゴリラです。リアリティを追求した「ダークナイト」シリーズのファンはこの時点で違和感を覚えるでしょう。 また、ジョーカーの描写もこれまでとは異なります。本作の彼は強いです。もちろん、これまでも知的なカリスマ性を見せていたジョーカーですが、今回は物理的に強い。バットマンと素手で殴り合えるレベルです。「コスプレしたおっさん二人が殴り合いって……」と思ってしまうあなたには、これまでのシリーズと本作をきっちり切り分けて鑑賞することをおすすめします。
超動く!『ニンジャバットマン』はアクションがすごい
さて、本作の大きな見どころの一つとなるのがそのアクションです。 劇中、ほとんどのシーンでアクションが行われていたのではないかと錯覚するほど、アクション続き。特に、冒頭のアクションシークエンスは非常に格好良く、「日本すげぇ!バットマンつえぇ!」となること請け合いです。 本作のアクションシーンは、実写ではなくアニメだから成立した場面が多々見受けられます。日本人スタッフが中心となってこれだけのクオリティのアニメが作れると証明した本作は、ジャパニメーションの可能性をさらに拡張した一本と言えるでしょう。
声優陣の好演が光る
本作で特に印象的だったポイントの一つが、声優陣の好演です。 バットマン演じる山寺宏一、ジョーカー役の高木渉を筆頭に、釘宮理恵、子安武人、大塚芳忠、石田彰、小野大輔……と主役級の人気声優がズラリ。尺の関係で、チョイ役と言わざるを得ない出演シーンのキャストもいますが、それぞれがしっかり存在感を発揮しています。 中でも、やはりメイン級で出演している山寺と高木は、バットマンとジョーカーの魅力を十二分に表現していると言えるでしょう。また、釘宮理恵演じるハーレイ・クイン、大塚芳忠のアルフレッドは特にはまり役だったので、必見ですよ!
アメリカでバカウケなのも納得、日本文化を超フィーチャー
予告編でバットマンが和室でお茶を飲んでいるシーンが確認出来る事からもわかるように、本作は日本文化を非常にフィーチャーしています。それも、リアルな時代劇描写ではなく、「アメリカ人の思う日本」に寄せたような、少し嘘くさい雰囲気が特徴的です。 その一端として、「ニンジャ」と銘打ちつつも、本作のバットマンはほとんど全く忍びません。こちらもリアルよりの感覚で見ていると首を傾げたくなるポイントなので、深く考えない方が良いでしょう。
一方で、戦国時代にタイムスリップしたヴィランたちが日本各地の戦国大名となるのですが、その配置が本来その土地を納めているはずの武将のイメージとリンクさせられていたりと、歴史マニアならニヤリとしてしまうポイントもあります。 特に、劇中でジョーカーが口にする、自分の領地にかけたあるセリフは思わず「上手い!」と唸る出来だったりするので、多少戦国時代の予習をしていると、より楽しめるかもしれません。
え、ガッチャマン?人気キャラはだいたい登場
本作を視聴していてまず驚いたのは、その登場キャラクターの多さです。 例えば、バットマンの相棒として知られる「ロビン」ですが、ロビンだけでも4人登場します(厳密には、ナイトウィング、レッドフード、レッドロビン、ロビンの4名)。これにバットマンを加えた5人が空を飛行する姿は、人気作品『ガッチャマン』を彷彿とさせるようなビジュアルです。
また、ヴィランも大量に登場。先述のジョーカーたちに加えて、ペンギン、ベイン、ポイズン・アイビーなど人気キャラクターがズラリ。さらに、キャットウーマンとバットマンが半ば協力関係にあったりと、過去の実写映画版の知識しかないと、若干戸惑うかもしれません。 本作では大量のキャラクターに対する説明等は全くされないので、事前に登場キャラクターのリサーチを行なっていると、一層作品を楽しめるでしょう。 また、「そんなの面倒臭い」という方も、物語の鍵を握るゴリラ・グロッドのことくらいは最低限調べておくと良さそうですよ。
それでも検索なんて面倒臭い!というあなたの為のゴリラ・グロッド解説
おわかりいただけるでしょうか?この背景に写っているゴリラが、ゴリラ・グロッドです。格好いいですね。 元はバットマンと同じくDCコミックのヒーローであるフラッシュのヴィランとして登場した彼は、ゴリラにも関わらず、高度な知能を有するキャラクターです。コミックでは非常に人気のあるヴィランで、天才的な頭脳とゴリラの身体能力を活かした戦いをします。 本作では知的な科学者としての側面が強調されていましたが、古いコミックでは目から光線を出していたそうです。ちなみにこの光線を食らうと、ゴリラになってしまうことから一部では「ゴリラ光線」と呼ばれています。 彼と戦っていたフラッシュは、「ゴリラ光線を食らってしまったぞ!?30秒以内に敵を倒さないとゴリラになってしまうウッホ!」と言いながら必死に戦っていました。大変ですね。
そして、こちらが『ニンジャバットマン』版のゴリラ・グロッド。注目のポイントは、兜です。
インフレ、インフレ、インフレ!中島かずきファンなら大満足か
本作を語る上で決して避けては通れないのは、脚本・中島かずきの存在です。 『仮面ライダーフォーゼ』『キルラキル』「グレンラガン」などに代表される彼の作風は、「熱血・インフレ・屁理屈・見栄切り」など、いくつかの特徴が見られますが、本作にもその特徴は脈々と受け継がれています。 過度なネタバレを避ける為に、詳細な言及は避けますが、中島脚本作品を一度でも見た人であれば、「これは中島の仕事だ……!」と確信できる展開が多々あります。もちろん、厳密に彼が考案したシーンかどうかはわかりませんが、ともかくインフレが続く本作は、中島作品ファンであれば間違いなく楽しめるでしょう。(余談ですが、中島は劇団☆新感線の作品で、時代劇も多数手掛けています)
マーベルへのカウンター?亜流が増える「バットマン」シリーズ
これまで語ってきたように、本作は「バットマン」のタイトルを冠しつつも、これまでの実写映画シリーズとは大きく異なるケレン味に溢れた作品となっています。 本作と同じく、山寺がバットマン役を演じ、2017年に公開された『レゴバットマン ザ・ムービー』も好評価でしたが、こうした亜流の作品が多数作られているのは、躍進を続けるマーベルに対して、DCコミックが新たな作風を模索しているからと言えるかもしれません。 マーベルとDC、二つの会社が切磋琢磨し、より高品質な作品が作られ続けるのは、ファンにとっては嬉しいことですよね。
映画『ニンジャバットマン』は6月15日から公開
日本独自の魅力に溢れた映画『ニンジャバットマン』。 疑問点や独特のノリに戸惑う事もあるかもしれませんが、ファンなら見て損の無い一作です! そんな映画『ニンジャバットマン』は6月15日から公開!想像よりも遥かに強烈なアクションシーンが目白押しなので、是非、大きなスクリーンで楽しんでくださいね!