『マシニスト』、難解と呼ばれる映画を考察してみた⑤【ネタバレ、アイバン、妄想】

2018年7月1日更新

ブラッド・アンダーソンが監督を務め、スコットコーサーの複雑な脚本を映画化した『マシニスト』。クリスチャン・ベール主役のダークなサイコスリラー『マシニスト』の難解な内容を考察してみました。

『マシニスト』、クリスチャン・ベール怪演の難解映画を考察!

『ザ・コール 緊急通報指令室』などで知られるブラッド・アンダーソンが監督を務め、スコットコーサーの複雑な脚本を映画化した『マシニスト』。主役のクリスチャン・ベールが、30キロ近く体重を落とし、役に挑んだことが話題を呼びました。本記事では、そんなダークなサイコスリラー『マシニスト』の散りばめられた伏線を紹介しながら、映画の内容を考察していきます!

【ネタバレ】『マシニスト』で何がおきていたのか?

1年もの間睡眠障害に悩まされ、眠ることが出来ずに痩せ細ってしまった主人公トレバー。その見た目から同僚に避けられ、身体的にも、精神的にも限界が来ていました。そして、意味深な嫌がらせと意地悪な同僚アイバンに悩まされたトレバーは、段々と現実と妄想の区別がつかなくなっていきます。 そして映画が進むにつれて明かされるのは、トレバーが1年前に起こしたひき逃げの罪でした。トレバーは、罪意識から架空の人物を作り上げ、自らを無意識に罰していたのです。自らの犯した轢き逃げの事実に向き合うことを決めたトレバーは、警察へ自首し、1年ぶりに深い眠りにつくことが出来ます。

車のナンバーが示すアイバンの正体

『マシニスト』で、最も謎の存在であるアイバンの正体は一体誰だったのでしょうか?トレバーはアイバンを殺しますが、死体が消えてしまったり、アイバンの車がトレバー自身の物であったり、初めて『マシニスト』を見た多くの人が、アイバンが架空の人物であることに気づくと思います。 しかし、アイバンはトレバーが作り出したただの架空の人物ではなく、トレバー自身が感じた自分の悪の部分であったのではないでしょうか?トレバーが追跡しようと警察に連絡したアイバンの車のナンバーは、トレバーの車のナンバー「743 CRN」の順番を逆にしたナンバー「NRC 347」であり、アイバンが彼自身である事を示しています。

映画の出来事はほとんどトレバーの妄想?

アイバンだけでなく、一年間通っていたカフェのウェイトレス、マリアとその息子のニコラスもトレバーの作り出した人物でした。トレバーが1年前にひき逃げをしてしまった少年とその母親は、マリアとニコラスという名前でトレバーの意識に現れます。2人の生活を壊すアイバンの行動は、過去にひき逃げ事件で自分が壊したものをトレバーが無意識に再現したものでした。 マリアとニコラス、そしてアイバンが現実に存在しないため、彼らの登場するシーンが実際には起きていないということになります。マリアの家を訪れたシーンでは、トレバーのアパートとマリアのアパートの間取りが全く同じであることに気付いたでしょうか?

アイバンの指の話はトレバーの罪の意識と呵責を意味する!

『マシニスト』には、映画全体を通して伏線が張り巡らされています。アイバンが指を失って足の指に取り替えたという話をしたのは、トレバーが職場で起こした事故への罪意識を感じていたためです。また、トレバーが、彼の手を余りにも念入りに洗うのは、罪を洗い流そうとする心境からきているようです。 自分の悪い部分を集めたアイバンを言い訳に、トレバーは罪から逃げようとします。トレバーがアイバンの車に自ら体当たりして、ひき逃げの罪を警察に告発するのは、まさに自分の罪をアイバンに償わせようとする心理そのものですね。

トレバーが読んでいるドストエフスキーの本の意味

トレバーがニコラスと訪れるアミューズメントパークの乗り物には、トレバーの罪の意識を表すように、罰を受ける罪人の姿や、ドストエフスキーの著書のタイトルである「罪と罰」の文字が現れます。『マシニスト』の内容は、罪の意識に苛まれる罪人が長年を経て自首をする「罪と罰」の現代版ともいえます。 さらに、トレバーが読んでいる本「白痴」もドストエフスキーの著書であり、前向きで善良な人が虐げられる様子を描いた内容です。トレバーは、「白痴」を読むことによって自分が善人であることを再確認している様にも見えます。 しかしながら、色々と自分の罪の意識を誤魔化して、睡眠障害で1年も苦しんでいたトレバーは、自首をすることでゆっくりと眠ることが出来るのです。たとえ残酷な事実であっても、真実に向き合うことが本当の意味の安らぎを得ることになるということでしょう。

『マシニスト』の難解映画『メメント』と比較される評価とは?

記憶を長期間保てないレナードを主人公とした『メメント』、原因不明の睡眠障害に悩まされるトレバーが主人公の『マシニスト』は、お互いに比較されることが多い映画です。『メメント』も『マシニスト』も、何度も映画を繰り返し見ることによってやっと全貌がつかめるという映画になっています。 しかし、『メメント』よりも『マシニスト』を好む人の多くが、俳優達の演技を高く評価しています。主役のトレバーを演じたクリスチャンベールは、見た目だけでなく、トレバーの不安定な鬱の心境と、映画の後半になるにつれて崩壊していく精神を反映した演技が特徴的でした。