2018年5月22日更新

鮮烈な恋、ひたむきな愛。映画『君の名前で僕を呼んで』の魅力を徹底解説

『君の名前で僕を呼んで』
©Frenesy, La Cinefacture

2018年度アカデミー賞で脚色賞を獲得し話題を呼んでいる、大注目作品『君の名前で僕を呼んで』。今作の魅力や見どころを、概要紹介や筆者の感想などを交えながら解説していきます。

アカデミー賞受賞の注目作『君の名前で僕を呼んで』

アンドレ・アシマン原作の青春小説の映画化であり、2018年度アカデミー賞で脚色賞を獲得した大注目作品『君の名前で僕を呼んで』。 ふたりの青年の真っ直ぐで鮮やかな恋の風景を、北イタリアの美しい景色を伴って描いた今作は、2017年11月に米国で公開後瞬く間に話題となり、日本でも4月27日(金)からTOHOシネマズ シャンテ他で全国ロードショーされています(配給:ファントム・フィルム、提供:カルチュア・パブリッシャーズ/ファントム・フィルム)。 今回はそんな今作の魅力を、作品の概要や登場人物の紹介、鑑賞後に筆者が感じたことなどを踏まえながら徹底的に解説していきます。

ふたりの青年のひと夏の恋

『君の名前で僕を呼んで』
©Frenesy, La Cinefacture

舞台は1983年の北イタリア。毎年家族と避暑地で夏を過ごしている17歳のエリオは、父がインターンとして招いた24歳の大学院生オリヴァーと出会います。 過去のどのインターン生とも違う、特別な印象を放つオリヴァーと、多感な年頃ゆえの複雑さと知的さを持つエリオは、共に時間を過ごすうちに強く惹かれ合い、時に激しく反発しながら関係を深めていきます。しかし、オリヴァーが去る日がだんだんと近づき、ふたりの別れはすぐそこまで迫ってきていて…… みずみずしい太陽や庭に佇む芳醇なアプリコットの木々、洗練された街の中で育まれる、ふたりの青年のひと夏の恋が描かれています。

軒を連ねる人気キャスト

主演は映画界の新星、ティモシー・シャラメ

今作で主人公エリオを演じたのは、映画界の期待の新星として呼び声の高い若手俳優ティモシー・シャラメ。ニューヨークのマンハッタン出身で、芸術一家の長男として幼少期から役者としてのキャリアを積んできました。弱冠22歳でありながら数々の主演男優賞へのノミネートを経験し、今作のラストシーンでは3分30秒の超長回しでの演技を披露し、人々の注目を集めています。

相次ぐ助演男優賞へのノミネート、アーミー・ハマー

エリオの恋の相手オリヴァーを演じたのは、ロサンゼルス出身の男優アーミー・ハマー。2011年にクリント・イーストウッド監督の『J・エドガー』、2015年には『コードネームU.N.C.L.E.』などのヒット作に続々と出演するなど、日本でも高い人気を得ています。 195センチの長身と端正な顔立ち、類まれに見ぬ演技力で活躍を続けており、今後も目が離せません。

驚くべき豪華スタッフ陣

イタリア出身の映画監督、ルカ・グァダニーノ

今作でメガホンを取ったのは、イタリア出身の映画監督ルカ・グァダニーノ。1999年に『The Protagonists』で監督デビュー、本作はヴェネチア国際映画祭で世界プレミア上映され、話題を呼びました。 その後、2009年制作『ミラノ、愛に生きる』のヒットや、2015年制作『胸騒ぎのシチリア』がヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に選ばれるなど、映画界で広くその名を広げています。 今作『君の名前で僕を呼んで』では多くの作品賞を受賞しており、また2018年にはクラシック・カルト映画『サスペリア』の公開も控えています。

伝説と称される脚本家ジェームズ・アイボリー

脚本を担当したのは、アメリカのバークレー出身の脚本家で映画監督としても活躍するジェームズ・アイボリー。1963年『眺めのいい部屋』、1986年『モーリス』、1993年『日の名残り』などのヒット作を連発し、これまでに3回の最優秀作品賞と最優秀監督賞を含めた25のアカデミー賞ノミネートにも輝いています。 1995年にはその数々の実績が称賛され、全米監督協会からD・W・グリフィス賞を贈られています。

語りつくせない今作の魅力

自然で知性溢れる登場人物たち

『君の名前で僕を呼んで』
©Frenesy, La Cinefacture

今作の登場人物たちは、常に自己と他者への感情に真摯に向き合い、その過程の中で葛藤と喜びを繰り返していきます。それは生きとし生けるものとして全く自然なことであり、私たちが少しずつ押し殺し擦り減らすうちに忘れてしまった大切な何かを思い出させてくれるのです。 また、文学や言語学、音楽など、それぞれが志向する分野に豊富な知識を持ち、探求と議論を続ける姿からは、溢れる知性とほとばしる好奇心、豊かな個性があり、彼らひとりひとりから、観る者を虜にする深い愛嬌を感じることができます。

秀逸なタイトル

君の名前で僕を呼んで
©Frenesy, La Cinefacture

恋愛の最中の心情は、多くの作品の中で独自の感覚や演出などを用いて表現されてきましたが、今作ではエリオとオリヴァーが自分の名前でお互いを呼ぶことで愛をささやき合うという行為が行われています。このすなわち恋焦がれる人物との同一化への欲求が「I love you」という感情の中には含まれているということを表しています。 人間は形を定めず、時には明確な言葉を介さず愛を証明します。このタイトルはオリヴァーのセリフの引用ですが、自分の名前を相手に与え合うことで好意を確かめるふたりの恋の姿を彷彿とさせる、秀逸で完璧なタイトルと言えるでしょう。

すべてを許し、すべてに許された世界

『君の名前で僕を呼んで』
©Frenesy, La Cinefacture

これまでにも多くの「LGBT映画」が製作され、多くの人々の支持を得て各映画賞にもその名を轟かせてきました。青年ふたりの恋ということで、今作もLGBT映画として話題を呼んでいますが、他の多くのLGBT映画で描かれてきた同性同士の恋愛への偏見や差別、またそれらからの保護的視線や加護などの存在は、『君の名前で僕を呼んで』には登場しません。 すべての性別の恋愛を特別視せず、そのすべてを受け入れ認めること。それは日々沙汰されている社会問題の解決の糸口であり、誰もが息をしやすい世界の成立への一歩であると、今作は鑑賞者に提示しています。

普遍的な愛を体現する名作

『君の名前で僕を呼んで』
©Frenesy, La Cinefacture

恋する人間の美しさと痛み、普遍的な愛の姿を体現した映画『君の名前で僕を呼んで』。すでに多くの評価を受けている今作ですが、これからの映画史においても名を残すこと間違いなしの傑作と言えるでしょう。2018年5月現在、大ヒット公開中ですので未鑑賞の方はぜひ映画館に足を運んでみてください。