ついに日本でも公開!『犬ヶ島』
みなさんは、犬や動物はすきですか?筆者はわんこがだいすきで、現在グレートデーンという超大型犬といっしょに住んでいます。そのため犬が人間と冒険に出る『犬ヶ島』は、ずっと前から公開をとても心待ちにしていました。 英語タイトルは「Isle of Dogs(アイルオブドッグス)」で、これを流れるように言うことで「I Love Dogs(アイラヴドッグス)」と聞こえます。かつてここまで繰り返して言いたくなる映画のタイトルが過去にあったでしょうか……。 ブライアン・クランストンやエドワード・ノートンなどのハリウッドスターたちだけでなく、日本からも大物キャストたちが声優として参加している本作品。本記事ではネタバレありでストーリーをご紹介します。
【冒頭のあらすじ・ネタバレなし】犬はすべてごみ溜めへ島流し!
舞台は今から20年後の日本・メガ崎市。原因不明の「ドッグ病」が蔓延し、人間への感染を恐れたコバヤシ市長はゴミ捨て島である「犬ヶ島」へすべての犬を追放することを決定します。犬の追放を反対する団体や、「科学党」のワタナベ教授の"ドッグ病は治せるかもしれない"という主張にも全く声に耳を傾けません。 市長はあくまでも市民の安全を考えての対策であると述べますが、実はこれには先代からの恨みを晴らす目的が隠されていました。
メガ崎市の市長に隠された歴史
むかしむかし、日本には、犬を崇拝していた2つの族と猫を崇拝していたコバヤシ一族がいました。3つの族が関わる戦争が置き、猫派のコバヤシ一族が無残にも敗戦。この戦は、コバヤシ一族で何世代も語り継がれる憎い戦となりました。 数世紀の時が流れ、近未来のメガ崎市。蔓延する「ドッグ病」をきっかけに犬を追放しよう、というのが、猫派・コバヤシ一族によるリベンジ計画だったのです。
アタリにとってスポッツは測り知れない存在
はじめに犬ヶ島へと島流しの対象として選ばれたのはスポッツ。スポッツは、コバヤシ市長の養子であるアタリ少年にペット兼護衛犬として与えられていた犬です。 実は、アタリの両親は不慮の事故で亡くなっており、その事故でアタリも大けがを負います。当時ひとりぼっちの病床で目覚めたアタリのもとに、市長補佐に連れられてきたのがスポッツでした。 あくまでもペットではなく護衛犬として扱うようにという忠告をよそに、アタリは耳に着けたインカムを利用してスポッツにささやきます。自分の言葉にまっすぐに応答するスポッツをみて、アタリの目には涙がこぼれ落ちていきました。 ひとりぼっちだったアタリにとって、とても大きな存在だったスポッツ。そのスポッツを取り返したいという一心で、自分の命も顧みず犬ヶ島へたったひとりで上陸します。
犬ヶ島で出会う5匹のリーダー犬たち
ちいさな飛行機で降り立った犬ヶ島で、アタリは様々なリーダー犬たちと出会います。チーフ、レックス、キング、ボス、そしてデューク。 映画の冒頭にもある通り、登場キャラクターたちはそれぞれの言語で話すため、日本語を話すアタリと英語を話す犬たちは意思疎通ができているようなできていないような……。 チーフ以外は元飼い犬だったので、すすんでアタリを助けます。一方、野良犬として過ごしてきたチーフは人間になつくということを知りません。そのため、スポッツ捜しにもあまり乗り気ではない様子。しかし、想いを寄せる犬ヶ島イチ美しい犬・ナツメグに「アタリを助けてあげて」とお願いされ、チーフは渋々ついていくことにしました。
【ここからネタバレあり】アタリと打ち解け始めるチーフが実は……?
みんなでスポッツを探そうと進んでいく一団でしたが、途中でチーフとアタリがいっしょにはぐれてしまいます。ふたりっきりになったアタリは落ちていた棒を遠くに投げて、チーフに拾ってくるように言います。 チーフが何を言ってもアタリには伝わらないので、仕方なく拾いにいくチーフ。馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの態度ですがアタリが「いい子だね」といって抱きしめると、チーフはどこかうれしそうな表情を浮かべます。 初めはツンツンしていたチーフも、徐々にアタリに打ち解けます。そして仲良くなったアタリは、チーフをお風呂にいれてあげることにしました。すると、長年チーフに染みついていた汚れがきれいに落ちて、スポッツと同じ犬種であることが明らかになったのです。
犬を助けるために一致団結する学生たち
のちにナツメグの飼い主ということが明らかになる、アメリカからの交換留学生・トレイシー。コバヤシ市長が悪徳であることを証明しようと、同級生たちを連れて作戦を練ります。 一方メガ崎市では、ドッグ病の治療薬を開発したワタナベ教授が自殺に見せかけた方法で殺害されてしまいました。事件性を探っていたトレイシーは、悲しみに暮れる研究助手・ヨーコのもとへ。ヨーコはコバヤシ市長の意図と「ドッグ病」の真実を世間にあばくことができるよう、トレイシーに治療薬を託したのでした。
待ちわびたスポッツとの再会
コバヤシ市長が送り込んだロボット犬たちに襲われ、危機一髪の状況になるアタリと犬たち。もうここまでかと諦めかけたとき、颯爽と現れたのが……スポッツ!軍用に開発された特殊な武器が備えられているスポッツは、ロボット犬たちを次々とやっつけます。 犬ヶ島に追放されてすぐのころ、スポッツはあるグループの助けを借りてケージから無事に脱出に成功。そして、同じくそのグループにいたペパーミントという犬に出会い恋に落ちていたのでした。
スポッツからの衝撃の告白
スポッツは再会できたうれしい気持ちと同時に、もうアタリの護衛犬として仕えることはできない旨を伝えます。いまいるグループの中での責任と、ペパーミントの妊娠が理由だと。それを聞いたチーフは「わざわざお前のことを探しにきたのに!」とうんざり。 そんなチーフにスポッツは、じつはお互いが兄弟犬であるという事実を告げます。そして、チーフにならアタリの護衛犬としての役目を譲ってもよいだろうと。スポッツは驚きを隠せないチーフに、マイクを与えました。
いざコバヤシ市長と対面!
メガ崎市では、コバヤシ市長にトレイシーたちが立ちはだかっています。そこでドッグ病はコバヤシ一族の憎しみによる陰謀であること、人為的な病であったこと、そしてワタナベ教授は殺害されたことを人々に打ち明けました。 そこへアタリたちが到着。アタリのスピーチに心動かされたコバヤシ市長は自身の汚職を認め、予定されていた犬駆除作戦をキャンセルしようとします。邪魔をする市長補佐のせいで誤って作戦決行のスイッチが押されてしまいますが、トレイシーの友人によってギリギリのところで食い止めることができました。 騒動の結果、アタリは重傷を負ってしまいます。勇気あるアタリの命を救うために、コバヤシ市長が腎臓移植を決意し、アタリは無事に回復。そしてアタリに市長の座が譲られ、すべての犬は無事にメガ崎市に戻ることとなりました。
心温まるアドベンチャーの裏にある現実
愛するペットや動物たちと言葉で意思疎通ができたらどんなにしあわせだろうと、夢見る人は多いでしょう。この『犬ヶ島』は英語と日本語で分けることによって、言葉が通じなくとも意思疎通が可能であることを決定づけてくれたのはないでしょうか。 無事にスポッツが見つかった喜びは言うまでもなく、チーフが数々の冒険を経て徐々に人間が好きになっていく様子はとても心が温まります。 この『犬ヶ島』は、私のような犬好きは観ずにはいられません。もちろん犬好きでなくとも、人間と動物が力を合わせて悪をやっつけ明るい未来を切り開くストーリーは、人々に広く愛される作品だといえるでしょう。
でも笑いあり・涙ありのストーリーだけではありません。『犬ヶ島』のなかには、日本や世界における現代社会の問題を大きく含んだシーンがたくさんあることに気づきます。 「犬ヶ島」にある原子力発電や遊園地などは廃墟と化していますし、食べ残しや使わなくなった家電ゴミなどで溢れかえっています。さらに市長の策略は、単に"嫌い"という理由でよそ者を排除しようとする群衆の心理を描いているともいえます。 高層ビルが並び立つ華やかな街並みの一方で、目を背けたくなるようなごみ問題を抱えている"架空の都市"であるメガ崎市。そもそも"ペットを捨てる"という問題についても、観終わったあとはきっと考えさせられることでしょう。
みなさんは『犬ヶ島』、どう感じ取られたのでしょうか。筆者は観終わった後まっすぐ家に帰り、楽しいときも気分が落ち込むときも、いつもそばにいてくれるわんこに犬用おやつをあげました。