2018年6月18日更新

在日コリアンを題材にした映画12選

©2018「焼肉ドラゴン」製作委員会

2018年6月22日公開の映画『焼肉ドラゴン』の題材にもなり、世間の関心を集める「在日コリアン」。今回は、そんな在日コリアンの人々を取り巻く歴史的背景や問題に、様々な監督がそれぞれの視点から迫った作品を12本ご紹介します!

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映画『焼肉ドラゴン』公開間近!在日コリアンを題材にした映画をご紹介!

2018年6月22日より、鄭義信(チョン・ウィシン)の初監督作『焼肉ドラゴン』が全国公開されます!本作の登場で改めて在日問題を意識し、関心を持った人も多いのではないでしょうか? 日本と朝鮮半島の間には、現在も多くの歴史的問題が横たわり、国同士をめぐる話題が毎日のようにニュースを賑わせてきました。自身が実際に在日コリアンである監督だけでなく、日本人監督も映画の中で取り上げてきた、非常に難しいテーマなのですが……。 時代が進む中で、在日コリアンとはどんな人たちなのか、その歴史的背景は、といった根本的な部分を知らない世代も増えているのかもしれません。 そこで今回は、様々な視点から在日コリアンを取り上げた作品をご紹介します!

在日コリアンってどんな人たち?在日問題って?

在日コリアンは基本的に、朝鮮籍、あるいは韓国籍を持つ在日外国人の総称です。帰化するなどして日本国籍を持つ、韓国・朝鮮系日本人も含める場合もあります。 日本は戦前の帝国主義時代、朝鮮半島を植民地とし、支配政策を展開しました。当時の朝鮮人の生活は困窮を極め、仕事を探し日本に移住する人が現れることに。一方で、戦時下には、徴用や徴兵による「強制連行」が行われ、この時の人々が在日コリアンのルーツとなったようです。 「日本名」に改名させられ、差別や偏見の中で暮らしてきた人々は、日本の敗戦後にその多くが祖国に帰国していきます。しかし、日本に留まる人も一定数おり、植民地の解放で「外国人」となった彼らに外国人登録制度上の「朝鮮籍」が与えられました。 こうした歴史的背景が、現在までの在日問題へと繋がっていったとされています。

朝鮮籍=北朝鮮籍ではない?

在日朝鮮人・韓国人と呼ぶため、それぞれを「北朝鮮籍」と「韓国籍」と考えがちですが、朝鮮籍は"朝鮮半島出身を意味する便宜的な籍"でしかありません。 外国人登録制度の都合によるもので、韓国成立後、朝鮮籍から韓国籍に変更した人が在日韓国人と呼ばれるようになりました。日本は血統主義なので、在日朝鮮人の子供は朝鮮籍を、在日韓国人の子供は韓国籍を親から引き継ぐことになります。 また、朝鮮籍は「実在の国」を表さない特殊さから、海外旅行の手続きなどが非常に不便で、それを理由に韓国籍へ変更したケースも多かったそうです。

1. 死刑制度の是非や在日問題に迫る大島渚監督の代表作【1968年】

1958年の「小松川事件」の犯人、金子鎮宇(李珍宇/イ・チヌ)をモデルに、在日朝鮮人死刑囚"R"を主人公に描いた社会派ドラマ。死刑反対論者の立場を取ってきた大島渚監督が、ATG(日本アート・シアター・ギルド)と共同製作し、低予算で仕上げた一作。 重いテーマですが、ブラックユーモアと皮肉を交えたシナリオ構成と演出の巧みさがそれを感じさせません。 強姦致死等の罪で少年Rに絞首刑が執行されるも、ロープにぶら下がったまま脈が停止せず、意識が回復したRは心神喪失状態に。この状態では再執行が法的に許されないため、刑務官たちは彼の記憶を取り戻そうと、罪状や家庭環境を芝居で再現するのですが……。 物語は一つの事件から、死刑制度と在日朝鮮人差別、貧困を背景とした犯罪心理など、日本国家が抱える問題点や矛盾にまで及んでいきます。

2. 鬼才・崔洋一監督の代表作であり、在日コリアンを描く映画の発展の契機となった悲喜劇【1993年】

日本で韓国への関心が高まりつつあった90年代。崔洋一(さい・よういち)がメガホンを取り、梁石日(ヤン・ソギル)の自伝的小説『タクシー狂操曲』を鄭義信との共同脚本で映画化しました。 フィリピン女性に恋した在日コリアンの男性を主人公に、多国籍都市・東京で暮らす人々の日常をシリアスかつ、コミカルに綴った名作ドラマ。過激な性描写を特徴とする一方、弱者とされがちだった在日コリアンが、たくましく生きる姿を描いた点が高い評価を得ました。 崔洋一の名を世に知らしめ、主演を務めた岸谷五朗とルビー・モレノは、一躍トップスターの仲間入りを果たすことに!本作のヒットは、「韓流ブーム」が起こる2000年代以降、在日コリアンを題材にした映画が数多く製作されていく契機となりました。 若き日の遠藤憲一や國村隼、古尾谷雅人ら個性派キャストの怪演にも注目です。

3. 韓国系日本人家族のルーツをたどった、松江哲明監督の私的ドキュメンタリー【1999年】

在日コリアン三世でありながら、"キムチが食べられない"という松江哲明監督が、日本映画学校(現:日本映画大学)の卒業制作として撮影したロード・ムービー。 松江哲明の祖父・松江勇吉(劉忠植/ユ・チュンシク)は、戦中に日本へ渡って来た在日一世ですが、彼が死の間際に遺した言葉は「哲明バカヤロー!」でした。思い悩んだ哲明は、自分と家族のルーツをたどるため、カメラを手に親族が暮らす祖父の故郷へ「私探し」に旅立つのです。 タイトルの「あんにょん」は韓国語の挨拶で、"こんにちは"と"さようなら"の両方の意味からとり、皮肉を込めて付けたのだとか。旅の風景はユーモアに溢れつつも、否応なく民族と国家をめぐる問題を浮き彫りにし、植民地時代の傷跡を垣間見せます。

4. 在日コリアン三世の高校生の葛藤を描く痛快青春映画【2001年】

金城一紀の自伝的小説『GO』が、主演に窪塚洋介、ヒロインに柴咲コウを迎えて映画化され、多くの映画賞を総なめにした傑作青春映画です。 在日コリアン三世の高校生・杉原が、日本人の少女との恋や友情に悩みながら、アイデンティティを模索する様が描かれました。喧嘩と悪さに明け暮れ、葛藤する杉原の姿からは、若い世代の「在日」に対する思い、戦争の陰を引きずる親世代への反発が伝わってきます。 反対に親は親なりに、海外旅行のために朝鮮籍から韓国籍に変えるなど、次世代に道を開こうとしており、それぞれの立場から在日問題が見えてくるでしょう。 差別が絡む暗くなりがちなテーマを、痛快なコメディに仕上げたセンスが秀逸です!

5. 李相日監督が朝鮮学校時代の淡い青春をベースに描いたデビュー作【2001年】

李相日(り・そうじつ/イ・サンイル)の日本映画学校の卒業制作で、2000年度のPFF(ぴあフィルムフェスティバル)アワードで4冠達成後に一般公開され、監督デビュー作となりました。 朝鮮学校に通うごく普通の高校生・楊大成(ヤン・テソン)は、両親に"朝鮮人として誇り高く生きよ"と育てられた、在日コリアン三世。そんな彼にとって、誰もが当たり前に経験する出来事や感情は、「在日」という枠によって当たり前ではなくなってしまい……。 そうした現実を、鮮やかな語り口と、淡々とした視線で見つめた点が評価されました。 タイトルは日本語で若さを表す「青」と、朝鮮語で青の読みの「chong(チョン)」を並べたもので、「チョン」はかつての日本における朝鮮民族への蔑称でした。

6. 梁石日の最高傑作を原作に、金銭欲と性欲と暴力に満ちた男の生涯を描く人間ドラマ【2004年】

梁石日の父親がモデルの自叙伝的小説で、第11回山本周五郎賞に輝いた最高傑作を、崔洋一監督が構想に6年かけ、鄭義信との共同脚本で映画化しました。 戦後に朝鮮・済州島から大阪へ渡り、妻子や親せき、愛人までも踏み台にして欲望の限りを尽くしていく在日コリアンの男・金俊平(キム・ジュンピョン)。暴力と本能のままに生きた男と、彼に翻弄された人々の波乱に満ちた一生を神話的色彩を帯びたストーリーで綴る人間ドラマです。 公開時は内容だけでなく、ビートたけしが自身の監督作以外では14年ぶりの主演を務め、鈴木京香と夫婦役を演じたことも話題になりました。

7. 二人の男と一人の女、一つの死体が繰り広げる、グ・スーヨン監督の異色のロードムービー【2003年】

日本のCM界で活躍する、在日コリアン二世のCMディレクター、グ・スーヨン初監督作。実弟の具光然を脚本に迎えて、同名の自著を映画化しました。 いじめられっ子の在日韓国人の高校生・ヒデノリは、離れて暮らしていた姉が自殺したことを知り、姉に祖国を見せたいと思い立ちます。彼は釜山へ向かうフェリーに乗るため、仲間と万引きやカツアゲを繰り返しながら、姉の死体を車に乗せて博多を目指すのでした。 主演は市原隼人と、強迫性障害を持つ少女役で映画初出演の中島美嘉。蒼井優、風吹ジュンや津川雅彦ら豪華俳優が特別出演したほか、柄本明と佑の親子共演も注目されました。 斬新な映像感覚、エキセントリックな雰囲気は、若者の間で密かなブームになったそうです。

8. 日本と在日朝鮮の高校生たちの騒動を描く井筒和幸監督作【2005年】

キネマ旬報ベスト・テン1位、ブルーリボン賞作品賞などに輝いた井筒和幸監督作。塩谷瞬、若手時代の沢尻エリカ、高岡蒼佑(現:高岡奏輔)らが出演しました。 「パッチギ」とは、朝鮮語で"突き破る、乗り越える"、"頭突き"を意味する言葉です。 60年代後半の京都を舞台に、日本人と在日朝鮮人の高校生の恋と、彼らの周囲で起こる騒動を描いた青春群像ドラマ。本作では在日韓国・朝鮮人が、日本社会から完全に独立した共同体を築いており、朝鮮総連の協力で実際の在日の人々がエキストラを演じています。 主人公が恋を活力に朝鮮人への理解を深める展開や、南北分断の悲劇を歌った名曲「イムジン河」を全編に流すなど、音楽面の充実もヒットに繋がったと評されました。

9. 東京に移り住んだ一家のその後と、在日一世の時代を描くシリーズ第2弾【2007年】

映画『パッチギ!』の続編として、1968年の京都から1974年の東京へと舞台を移し、主演キャストを井坂俊哉と中村ゆりに一新して制作されました。 愛する息子の病気の治療に奔走する李安成(リ・アンソン)の一家を中心に、在日コリアンたちの日常と、前作で描かれなかった父親世代の物語を平行して描く人間ドラマ。前作のエンタメ的な要素は抑えられ、在日に対する差別描写や、井筒監督の政治的主張が強いと言われています。 日本による「強制連行」と「慰安婦問題」が登場しますが、主張が在日コリアン側に偏っているという意見もあり、様々な議論を巻き起こした作品でもありました。

10. 在日コリアン三世の女性と韓国人男性の数奇な運命を綴るファンタジック・ラブストーリー【2008年】

河合勇人の長編監督デビュー作であり、女優・山本未来の映画初主演作。絶大な人気を誇る韓国人俳優、キム・レウォンの日本映画初出演作としても注目されました。 在日コリアン三世の主人公が、ジュエリーショップの出店のために訪れた釜山で、小学校教師の男性と運命の出会いを果たすラブストーリー。勝ち気で身勝手な女性が、内面的に成長を遂げていく過程を幻想的な桜が彩り、哀しい運命の皮肉が涙を誘います。 男性の母親役でパク・ジョンスが出演し、ジュエリーショップのマネージャー役に戸田恵子、柄本明、佐藤浩市ら有名個派俳優が脇を固めました。

11. 北朝鮮で暮らす家族を想い、脚本を書き下ろした梁英姫監督初のフィクション映画【2012年】

在日コリアン二世の梁英姫(ヤン・ヨンヒ)監督が、自らの実体験と1950年代から1984年に行われた北朝鮮への「帰国事業」をモチーフに描いた感動の家族ドラマです。 帰国事業は朝鮮総連の主催で推進され、在日朝鮮人と彼らの家族が日本から北朝鮮へ集団的に永住帰国、移住する国家的な運動でした。本作は70年代に北朝鮮へ渡り、病気の治療で25年ぶりに帰国した長男と家族の再会を通し、両国に翻弄される人々の姿を描きます。 出演は妹役の安藤サクラ、兄役に井浦新、ヤン・イクチュンなど実力派が集結。インディペンデント映画ながら、第85回米アカデミー賞外国語映画賞日本代表に選ばれました。

12. 在日コリアン家族の絆を描いた鄭義信の初監督作【2018年】

2008年に日韓合同で初上演され、両国で再演され続けている伝説の同名戯曲を、作者の鄭義信が自ら監督と脚本を担当して映画化しました。 70年代の関西を舞台に、小さな焼肉店を営む在日コリアン一家が、時代の波に翻弄されながらも懸命に生きていく様が描かれます。笑いあり涙ありの家族の日常から見える日韓の過去と現在、そして未来への希望と、多くのことを感じられる人間ドラマです。 演劇賞を総なめにした戯曲の映画化に、主演には真木よう子、妹役で井上真央と桜庭ななみ、大泉洋、韓国からキム・サンホらが参戦しました。 日本と朝鮮半島の歴史を振り返った時、必ず話題にあがる在日コリアンの問題。映画はニュースや新聞からは見えないものを、私たちに伝えてくれるのではないでしょうか。