2018年7月19日更新

オダギリジョー初監督作にも参加!撮影監督クリストファー・ドイルの魅力とは?

オダギリジョー初監督作の撮影監督に抜擢されて話題になっているクリストファー・ドイル。ウォン・カーウァイとのコンビも有名な世界的名カメラマンの魅力とキャリアに迫ります。

オダギリジョー初監督作に撮影監督として参加するクリストファー・ドイル

クリストファー・ドイル
© Zuma/Avalon

香港映画界の鬼才・ウォン・カーウァイ監督と組んで生み出した数々の作品により、世界に新鮮な衝撃を与えた撮影監督、クリストファー・ドイル。手持ちカメラを駆使した生々しくもスタイリッシュな映像が代名詞ですが、近年はハリウッドはじめ世界各国の作品も手掛ける名カメラマンの1人です。 2018年7月現在の最新ニュースでは、オダギリジョー初監督作の撮影監督にクリストファー・ドイルが抜擢され、話題をよんでいます。同作はタイトル未定ながら2019年公開を目指し、7月中旬にクランクイン予定のようです。 ここでは、そんな名カメラマン、クリストファー・ドイルについて、代表作10本を紹介することで、彼のユニークな魅力とキャリアに迫りたいと思います!

クリストファー・ドイルのプロフィール

クリストファー・ドイルは1952年5月2日、オーストラリアのシドニーで生まれました。18歳のときノルウェー商船の船員として出国後、イスラエルやタイ、インドなど世界各国で石油採掘、ホメオパシー医療、農業など多種多様な職を経験。その後、学生として滞在していた台湾でスチールカメラマンの仕事を得た後、エドワード・ヤン監督の現場でいきなり映画カメラマンデビュー。 そして、『恋する惑星』などウォン・カーウァイ監督と組んで生み出したスタイリッシュかつ斬新な作品により、一躍その名が世界に知れ渡ることになります。以後、他の監督との作品含め中華圏で50作以上、その他言語圏で20作以上の撮影を手掛けるなど、映画界を代表する名カメラマンの地位を築き上げました。 若い頃には日本文学に傾倒していたことがよく知られていますが、監督デビュー作となった1999年の映画『孔雀』では主役に浅野忠信を抜擢するなど、日本とも深い縁があります。 2017年に開催された第70回カンヌ国際映画祭では、それまでの功績に対して権威ある「ピエール・アンジェニュー・エクセレンズ撮影賞」を授与されました。

1. クリストファー・ドイルの記念すべき長編デビュー作【1983年】

『牯嶺街少年殺人事件』や『カップルズ』などで知られる台湾映画界が誇る故エドワード・ヤン監督とクリストファー・ドイル、両者の長編デビュー作となったのが、『海辺の一日』です。 恋人を裏切って政略結婚した兄とは違う生き方を選んだ妹。ピアニストとして成功している兄の元恋人に会い、自らの気持ちに正直であろうと生きてきた自身の半生を静かに振り返る妹の心の遍歴を描きます。 当時、スチール写真のカメラマンとして台湾で活動していたドイルを撮影監督としてエドワード・ヤン監督が起用したことで生まれたこのコンビ。多くの撮影監督は撮影助手としての修行を長年積んだ後に一本立ちするものですが、ドイルは完全な独学で、いきなり撮影監督になったのです。 ヒューストン映画祭でグランプリを受賞した秀作であり、ヒロインにはシルヴィア・チャンが扮しています。日本では長らく劇場未公開でしたが、2007年の東京国際映画祭および同年のぴあフィルムフェスティバルで上映されて高い評価を得ました。

2. ウォン・カーウァイ監督との名コンビ誕生をうたい上げた第1作【1992年】

1960年代初頭の香港を舞台に、6人の若者が織り成す恋と別れを描いたウォン・カーウァイ監督の長編2作目です。本作でカーウァイ監督は初めてクリストファー・ドイルと組み、コマ落としなどを用いた疾走感あふれる独特の映像と演出が衝撃を与えました。 サッカー・スタジアムの売店で働いていたスーが恋に落ちたヨディ。ヨディはナイトクラブのダンサーであるミミと一夜を過ごす一方、ヨディの親友サブがミミを、警察官のタイドがスーに想いを寄せるなど、入り組んだ恋愛模様を繰り広げます。 レスリー・チャン、マギー・チャン、カリーナ・ラウ、トニー・レオン、アンディ・ラウら豪華キャストが若者たちの群像劇を演じます。香港の2大映画祭である香港電影金像奨で最優秀作品賞など3冠、金馬奨でも最優秀監督賞を受賞しました。

3. 新鮮な感覚がセンセーションを巻き起こした香港ニューウェイブの金字塔にして、カーウァイ監督の代表作!【1995年】

香港の混沌とした街並みと雑踏を舞台に、すれ違う2組の男女の恋愛を斬新な感覚で切り取った香港ニューウェイブを代表する傑作です。「ゴダールの再来」とまで評されたウォン・カーウァイ監督の文字通り代表作であり、ポップで軽やかな後半部の撮影を手掛けたのがクリストファー・ドイルです。 失恋の痛手を背負う警官223号が出会った麻薬ディーラーの女。一方、やはりスチュワーデスの恋人に振られた警官663号は、たまたま立ち寄った売店で風変りな店員フェイと出会います。 フェイ・ウォン、トニー・レオン、ブリジット・リン、金城武らが個性的なキャラクターを演じ、中華圏のみならず世界中でスマッシュヒットを記録しました。香港の街と若者たちの生態をスタイリッシュな映像で映し取ったクリストファー・ドイルの名を一躍有名にした作品でもあります。 ちなみに、本作で登場するトニー・レオン演じる警官663号の部屋は、ドイル自身の部屋をそのまま使って撮影したものです。

4. カンヌなど世界中の映画祭で高く評価された、カーウァイ流メロドラマ【2001年】

トニー・レオンとマギー・チャンという2大スターを迎え、W不倫という大人の恋愛を描いたウォン・カーウァイ監督作です。本国の映画祭のみならず、カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞とフランス映画高等技術委員会賞、モントリオール映画祭最優秀作品賞、仏セザール賞外国語作品賞など、海外でも多数の賞に輝きました。 1962年の香港で、2組の夫婦が同じ日に同じアパートの隣人として引っ越してきます。お互いの配偶者同士が浮気していることを知った妻と夫の2人が接近し、次第に惹かれ合っていく姿を描きます。 設定的には『欲望の翼』と『2046』の間に位置づけられる作品ですが、ここではとりわけ濃密な官能あふれる60年代テイストの映像美が目を惹きます。 本作ではクリストファー・ドイル以外にも、ホウ・シャオシェン監督作品の撮影で知られる台湾のカメラマン・リー・ピンビンも撮影監督として参加。両者の見事なコンビネーションによって極上の映像が生まれました。

5. 鮮やかな色彩世界も話題に!チャン・イーモウ監督が生み出した豪華絢爛な歴史絵巻【2003年】

中国映画界を代表する巨匠チャン・イーモウ監督が、壮大なスケールで描いた豪華絢爛な歴史武侠アクション。ジェット・リー、マギー・チャン、トニー・レオン、チャン・ツィイーなど豪華キャストに加え、衣装のワダエミ、撮影のクリストファー・ドイルなど国際的なスタッフが結集した大作です。 熾烈な権力争いが繰り広げられていた紀元前200年、刺客に命を狙われる秦王の前に、王のため3人の刺客を倒したという謎の男・無名が現れ、その経緯を語り始めます。 設定ごとにカギとなる色を決めたことで生まれた鮮やかな映像世界が話題になり、7部門を独占した香港電影金像奨でクリストファー・ドイルが撮影賞に輝いています。

6. M・ナイト・シャマラン監督によるファンタジック・ミステリー【2006年】

『シックス・センス』や『ヴィレッジ』で知られる鬼才M・ナイト・シャマラン監督が手掛けた新感覚ミステリー。ある一軒のアパートに突然現れた謎の女性が住民たちの間に巻き起こす騒動をファンタジックに描きます。 フィラデルフィアのアパートで管理人をしているクリーブランドは、謎めいた娘がアパートのプールで毎夜のように泳いでいるのを突き止めます。住民たちの運命を予言する、ストーリーと名乗る娘の正体は何なのか、現代のおとぎ話が展開します。 クリーブランドをポール・ジアマッティー、ストーリーをブライス・ダラス・ハワードが演じました。ハリウッドに進出したクリストファー・ドイルが、青の色調が強い印象を残すミステリアスな世界を映像化しています。

7. カンヌ国際映画祭で特別賞受賞!ガス・ヴァン・サント監督作【2008年】

ブレイク・ネルソンの同名小説を原作に、誰にも言えない秘密を抱えた少年の揺れ動く心を描いた人間ドラマです。『マイ・プライベート・アイダホ』や『エレファント』で知られる鬼才ガス・ヴァン・サントがメガホンをとり、カンヌ国際映画祭では60周年記念特別賞を受賞しました。 オレゴン州ポートランドに暮らす16歳のアレックスは、スケートボードをしていた最中に誤って他人を死なせてしまいます。目撃者もいない中、その事実を隠したまま何事もなかったかのような日常生活を送ろうとするのですが……。 罪の意識や不安に苦しむ主人公をゲイブ・ネヴァンスが演じています。クリストファー・ドイルは少年の繊細で危うい内面に寄り添うような、研ぎ澄まされたカメラワーク見せました。特に、スケートボードをする少年たちを至近距離から捉えた場面は、瑞々しい効果をもたらしています。

8. ジム・ジャームッシュ監督と初タッグ!スペインを舞台にした幻想的なサスペンス【2009年】

インディーズ映画の旗手として知られるジム・ジャームッシュ監督が、カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した『ブロークン・フラワーズ』の次作として発表した幻想的なサスペンス。 ある謎めいた任務を遂行するためスペインにやってきた一人の男。「孤独な男」というコードネームを与えられ、さまざまな場所をめぐる男の前に、同様の任務を負った仲間たちが出現します。 主人公をジャームッシュ作品ではおなじみのイザック・ド・バンコレが演じたほか、ビル・マーレイ、ガエル・ガルシア・ベルナル、ティルダ・スウィントン、工藤夕貴ら国際色豊かなキャストが顔を揃えました。 スペインらしい色彩が溢れ、トリップ感覚がありながらもシンプルな映像をクリストファー・ドイルが担当。また、音楽を日本のロックバンドであるBorisが担当するなど、音と映像の織り成す独特の世界観が見どころです。

9. クリストファー・ドイルが最新3Dカメラで撮影したJホラー【2011年】

ハリウッド進出も果たした『呪怨』の清水崇がメガホンをとり、クリストファー・ドイルを撮影監督に迎えたジャパニーズ・ホラー。パナソニックが開発した最新3Dカメラを使用した、これまでになかった異次元の映像体験が話題になりました。 自宅で3D映画を見ていた姉弟が、突然画面から飛び出してきたウサギのぬいぐるみを手にしたことで、弟の失踪など不可解な現象に巻き込まれていく恐怖を描きます。 ヒロインのキリコを満島ひかり、父親を香川照之が演じています。クリストファー・ドイルらしいスタイリッシュさが加味された戦慄の映像体験はもちろん、スリリングな展開からも目が離せません。

10. カルトの巨匠・アレハンドロ・ホドロフスキーによる半自伝的な映像詩【2017年】

カルト的人気を誇る南米チリの鬼才アレハンドロ・ホドロフスキー監督が手掛けた、自伝的な作品です。2014年公開の前作『リアリティのダンス』の続編的位置づけであり、本作では両親との葛藤や恋、さまざまな出会いを経験するホドロフスキー自身の青春時代が描かれます。 故郷トコピージャを離れ、一家で首都サンティアゴに移り住んだ青年ホドロフスキー。強権的な父親との確執に悩みつつ、恋や友情、さらには自由な芸術家たちとの出会いを経て、次第に詩人としてのアイデンティティーを育んでいきます。 強烈なエネルギーにあふれながら虚実入り交じったマジック・リアリズムの映像世界が、87歳の鬼才と異能の撮影監督・クリストファー・ドイルのタッグにより生み出されています。

世界の名監督たちから愛されるクリストファー・ドイル

クリストファー・ドイルというと、なんと言ってもウォン・カーウァイ監督とのコンビが有名ですが、ご紹介した作品からもわかる通り、実は世界中の名監督たちと仕事をしています。 台湾のエドワード・ヤン、中国のチャン・イーモウ、アメリカのM・ナイト・シャマラン、ガス・ヴァン・サント、ジム・ジャームッシュ、チリのアレハンドロ・ホドロフスキー、そして日本の清水崇。ご紹介した以外にもイギリスのジェームズ・アイヴォリーやアイルランドのニール・ジョーダンなど、その豪華な顔ぶれには驚くばかりです。 それはつまり、クリストファー・ドイルの生み出す映像が唯一無二であることの証でしょう。かつてその斬新な映像感覚で世界を驚かせた新鋭も、2018年7月現在もう66歳です。オダギリジョーの初監督作はもちろんですが、今後、どんな監督と組んで円熟した世界を見せてくれるか、楽しみですね。