2018年8月27日更新

『アイデンティティ』では別人格たちの入れ替わりがカギ!意外な展開も高評価?【ネタバレ】

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アイデンティティー(2003)
© Columbia Pictures Corp

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怖い?わからない?注目の映画『アイデンティティ』

突然の悪天候により、一軒のモーテルに集まった11人の男女が体験する恐ろしい事件を描く『アイデンティティ』。戦慄のホラーであり、極上のサスペンスであり、謎が謎を呼ぶ不思議な作品でもある注目の映画です。 グロテスクなシーンが多く、またストーリー展開や設定が難解なため、怖くてわからない映画と言われることも多い作品でもあります。 そんな『アイデンティティ』のあらすじ、魅力、ネタバレを徹底的にまとめました。

『アイデンティティ』のあらすじ

山中のモーテルに集まった11人の男女。彼らは急に降り出した激しい雨に困惑し、この宿を訪れたのでした。11人は天候が回復するまで静かな時間を過ごすかに思われましたが、モーテルを舞台にした連続殺人が起こります。次々に殺されていく宿泊者たち。生き残ったのは4人の男女の中のエドは、犯人探しを始めます。 一方、連続殺人を犯した殺人鬼・マルコムの再審理が行われようとしていました。彼には死刑判決が下っていましたが、解離性障害が疑われておりそのためもう一度審理が必要となったのです。

『アイデンティティ』の世界を盛り上げるキャストたち

エド/ジョン・キューザック

ジョン・キューザック
©Marechal Aurore/ABACA/Newscom/Zeta Image

モーテル内での連続殺人の真相に迫ろうとするエドは、カロラインという女優の運転手です。彼は刑事のロードと協力して犯人探しを始めました。そんなエドに扮したのはジョン・キューザックです。 ジョン・キューザックは、少年時代から演劇活動をしているキャリアの長い俳優です。演技だけでなく、脚本を手がけたり、プロデューサーなど制作にも関わっています。 1999年には『マルコヴィッチの穴』、2001年には『セレンディピティ』と人気の作品に立て続けに出演しました。その後も多くの映画作品に出演し、2016年には、映画『セル』で主演と製作総指揮を務めています。

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マルコム・リバース/プルイット・ティラー・ヴィンス

映画『アイデンティティ』では二つの場面を中心にストーリーが展開していきます。判事たちに再審理をされる死刑囚のマルコム。彼の中には何人もの別人格があり、その中には凶行を犯し続ける殺人鬼の人格が潜んでいます。 そんなマルコムを演じたのは、プルイット・テイラー・ヴィンスです。屈強そうな体型が印象的な彼ですが、演じた役は、繊細な演技力が必要とされる難解な役どころが多い演技派俳優です。 1998年に公開された『海の上のピアニスト』に出演し、一躍注目を集めました。 大学では演劇学科に進み、長年演技に携わってきたヴィンスですが、出演作にも恵まれ知名度も上がってきた頃から、眼振(眼球振盪)を患ってしまいました。眼振とは、自分の意思とは関係なく黒目が動いてしまう症状をいいます。 今作でのマルコム役では、狂気的とも言える演技を披露したヴィンス。彼の不安定な瞳の動きが、心に闇を抱える殺人鬼・マルコムの表情を見事に表現しています。

真相に気づけない?『アイデンティティ』のトリック【ネタバレあり】

アイデンティティー(2003)
© Columbia Pictures Corp

嵐の日のモーテルという密室で繰り広げられる連続殺人事件。映画『アイデンティティ』はサスペンスタッチで展開していきます。当然鑑賞者は犯人は一体誰なのか?という視点で観ます。 時折挿入される殺人鬼・マルコムの再審理のシーンで、モーテルでの出来事は彼が過去に起こした凶悪事件なのでは?と思ってしまう人もいるのでは? 『アイデンティティ』には鑑賞者のミスリードを誘うような仕掛けがたくさん施されています。マルコムのシーンとモーテルでのシーンが同時に進んでいくため、あたかも同時に起こっていることか、または彼の過去の事件を思い返しているかのように考えさせられてしまいます。 実は、モーテルでの出来事はマルコムの心の中の出来事なのです。マルコムは解離性障害を患っており、心の中に複数の人格を抱えていました。判事たちは、マルコムの人格の中で誰が殺人鬼なのか探るために再審理を行ったのです。 マルコムの中の人格は、自分が消えたくないためとマルコムの肉体を独り占めするため、モーテルで起こった殺人事件に不安と疑心暗鬼を募らせ、互いに殺し合っていくのです。 多重人格や解離性障害を描いたサスペンスやスリラー作品は数多くあれど、別人格同士が互いを認識し、感情を持って交流している様子が描かれる作品は他にはないと言えるのではないでしょうか。

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死体の傍のルームキーの謎

モーテルでのシーンでは、殺人が起きた後に死体の傍にルームキーが必ず落ちています。最初に殺された女優のカロラインの死体の傍には、刑事のロードのルームキー「10」が落ちていました。 その後も殺人が起こるたびに「9」、「8」とまるでカウントダウンのように順番にルームキーが発見されます。 途中、犯人探しを始めた運転手のエドと同じように、鑑賞者も最初のルームキー発見者であるロードに疑いの目を向けてしまいます。観る者のミスリードを誘う巧妙なトリックです。

恐怖心をあおられる!『アイデンティティ』の伏線【ネタバレあり】

衝撃のラストに驚愕させられる『アイデンティティ』には、たくさんの伏線が散りばめられています。 ストーリーの序盤で殺人鬼・マルコムと精神科医・マリックの会話が流れますが、その中でマルコムの解離性障害と誕生日などが明らかにされます。モーテルの男女は皆マルコムと同じ誕生日であったことがわかった時、事件の真相に気づいた人もいたのではないでしょうか。 モーテルの男女がマルコムの別人格だということに気づけても、その中の誰が殺人鬼の人格なのかということは最後までわからなかった人も多いことでしょう。マルコムの中の殺人鬼、凶暴性を持った人格は、何と子どものティミーだったのです。 ティミーは、3人家族でモーテルを訪れました。母のアリスが事故で怪我をしたため近くのモーテルに避難したのです。見るからに大人しそうな無口な少年のティミー。この子が大人を何人も殺したなんて誰も想像もしないでしょうが、ティミーは事件の前に不可解な行動を繰り返していました。

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ティミーの不可解な行動

母のアリスが事故で怪我をしたため、モーテルを訪れたティミー一家。その後殺人事件が起こり、宿泊者たちが恐怖におののく中、ティミーは同じ宿泊者のラリーの車にひかれそうになります。それを庇って自ら犠牲になる父・ジョージ。 事故で怪我をした母・アリスも車中のティミーをあやしていた事が原因で車に撥ねられたので、この時点でもしかしたら……と思った人もいるかもしれません。 また、ティミーは本当なら一人でトイレに行けないほど幼さの残る子どもであるのに、母アリスが怪我をしているため、何度も一人で部屋を出ています。しかし、母が重傷という不憫な状況なのでティミーに疑いの目を向ける登場人物はありませんでした。

意外なストーリー展開に高い評価!【ネタバレあり】

『アイデンティティ』には、登場人物が目を背けたくなるような残酷な殺され方をするシーンが多数あり、グロテスクな映像作品が苦手な方は抵抗を感じてしまう作品かもしれません。 しかし、多重人格の殺人鬼の別人格同士が殺し合いをするという斬新な設定と、まるで先が読めない意外で難解なストーリー展開は高い評価を得ています。 一度は死刑判決が決まったマルコムを、解離性障害を理由に再審理し、別人格の中の殺人鬼が誰なのか突き止めようと奮闘する判事という設定も他にはないものです。 結果として、マルコムの肉体は殺人鬼の人格に完全に乗っ取られてしまい、病院に搬送される途中に新たな罪を犯すという衝撃のラストにも賞賛の声が上がっています。

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『アイデンティティ』で描かれる世界とは?考察とネタバレ

『アイデンティティ』が異常性のある殺人鬼の犯した罪を描いただけであれば、こんな後味の悪い気持ちになることはないのに、と思ってしまいます。 マルコムの詳細な生い立ちや、凶行に出るまでの経緯などは描かれていませんが、彼の中の殺人鬼の人格が子どものティミーだったことがなんとも痛ましいです。ひょっとして、ティミーは幼少時代のマルコムそのものだったのでは。 モーテルの事件で生き残ったのは、パリスという名の女性でした。彼女は売春婦でしたが、心優しく良識ある大人の女性です。忌まわしい事件から生還し、憧れの地で穏やかに生活している彼女をティミーが襲いました。 悪魔のような形相で、パリスをあばずれと罵倒しながら惨殺するティミー。主人格であるマルコムにも、女性に落胆したトラウマになるような過去があったのかと思うと、恐怖よりもいたたまれない気持ちが湧いてしまいます。 パリスは運良く生き残ったのではなく、もしかしたら最後の最後にじっくりといたぶりながら殺すためにティミーが残しておいたのではないかとも考えさせられてしまいますね。 ラストには完全にマルコムの肉体を乗っ取ったティミー。自分の正体を突き止め消そうとした医師・マリックを殺すシーンは恐ろしさを感じると同時に何とも言えない悲しい気持ちに襲われます。

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『アイデンティティ』を何度も見て作品の世界に浸ろう!

複雑な謎が絡み合う衝撃のサイコ・サスペンス『アイデンティティ』は、全てがわかった後でもう一度、登場人物の行動や伏線に注目して見てみるとさらに作品の世界が楽しめます。 一度見てよくわからなかったという人もぜひもう一度じっくりと作品に深く浸ってみてください。