2018年8月26日更新

【連載】カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち#17『シリアル・ママ』

『シリアル・ママ』

独特な作風で知られるジョン・ウォーターズ監督作のなかでも、比較的見やすい部類でありながら異彩を放つ『シリアル・ママ』。“死ぬまでに1度は観るべき”といわれる本作の魅力をご紹介します。

「カルトを産む映画たち」とは?

「カルト(少数の熱烈な信奉)を産む映画たち」とは、有名ではないかもしれないけれど、一部の人には熱烈に愛される映画を紹介していく連載です(毎週日曜更新)。

こんなママがいたら超コワイ!『シリアル・ママ』(1994)

1994年に公開されたジョン・ウォーターズ監督の『シリアル・ママ』。このタイトルを聞いて、どんな内容を思い浮かべるでしょうか。 「ママがシリアル・キラー(連続殺人犯)なの?」と思った方。正解です。 悪趣味映画の巨匠ジョン・ウォーターズ監督による本作は、やはり一部に熱狂的なファンを抱えるクレイジーな作品となっています。 ハチャメチャでやりたい放題の展開、それでいてしっかりしたストーリーライン、そして意外な結末に、ハマる人はがっちりハマるでしょう。そんな怖ろしくも面白い『シリアル・ママ』をご紹介します。

『シリアル・ママ』のあらすじ

メリーランド州ボルチモア。平和な田舎町に住むべバリー・サトフィンは、歯科医の夫と2人の子供をもつ、良き妻であり良き母です。 ある日家族4人で朝食をとっていると、警察が近所のドティ夫人への度重なる嫌がらせ電話について、情報収集にやってきます。 家族を送り出したべバリーは、ドティ夫人に声色を変えて電話をかけ、ひどい言葉で罵りました。嫌がらせ電話の犯人は彼女だったのです。べバリーが嫌がらせを始めたのは、驚くような理由からでした。 次第にべバリーの凶行はエスカレートしてゆき、ついに次々と殺人を犯すまでに。 その理由とは?そして彼女の行く末はどうなっていくのでしょうか?

意外に豪華なキャスト陣をご紹介!

キャスリーン・ターナー/べバリー・サトフィン役

一見完璧な主婦に見える連続殺人鬼べバリーを演じたのは、大女優キャスリーン・ターナー。 ミズーリ州出身のターナーは、1981年の『白いドレスの女』で映画主演デビューを果たし、美人女優として注目を集めます。 1984年の『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』と1985年の『女と男の名誉』では、2年連続ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門主演女優賞を受賞。 ターナーは、本作でそれまでのイメージを一変させました。

サム・ウォーターストン/ユージーン・サトフィン役

べバリーの夫で歯科医のユージーンを演じたサム・ウォーターストンは、テレビシリーズ『ロー&オーダー』(1990〜2010)などで知られています。 1966年の『The Plastic Dome of Norma Jean (原題)』で映画デビューしたウォーターストンは、その後も数多くの映画やテレビシリーズに出演。1974年の『華麗なるギャッツビー』では、主人公ニック・キャラウェイを演じました。 また、2015年からはNetflixオリジナルシリーズ『グレイス&フランキー』に出演しています。

パトリシア・ハースト/陪審員6番役

(左:ジョン・ウォーターズ、右:パトリシア・ハースト)

陪審員6番を演じたのは、新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストの孫であるバトリシア・ハーストです。 1974年、当時学生だったハーストが左翼過激派シンパイオニーズ解放軍に誘拐されるという事件が起こりました。その後、彼女は犯行グループとともに犯罪を行うようになります。 そのことが、犯罪の被害者が犯人に共感してしまう「ストックホルム症候群」の存在を全米に知らしめました。 35年の刑期を終えて出所した後、ハーストはウォーターズの作品に脇役で出演するようになりました。

悪趣味映画の巨匠ジョン・ウォーターズ

ジョン・ウォーターズ
©Van Tine Dennis/Sipa USA/Newscom/Zeta Image

本作は、史上最悪の悪趣味映画『ピンク・フラミンゴ』(1972)の監督として知られるジョン・ウォーターズの作品です。 ウォーターズは、17歳のときに祖母から8ミリカメラをプレゼントされたことがきっかけで映画製作を始めます。1964年から本格的に映画製作をスタートさせ、ディヴァイン主演の『モンド・クラッショ』(1970)でカルト的な人気を獲得しました。 『ポリエステル』(1981)で劇場用映画に進出したウォーターズは、比較的穏当な内容の劇場用2作目『ヘアスプレー』(1988)と3作目『クライ・ベイビー』(1990)で、一般の観客の支持も得ます。 しかし、4作目である本作から、ウォーターズは持ち前の過激で下品な作風に戻りました。

『シリアル・ママ』のここが見どころ!

大女優キャスリーン・ターナーの怪演に注目!

それまで美人女優として活躍していたキャスリーン・ターナーは、本作で連続殺人犯の主婦を怪演しています。 ウォーターズは、脚本執筆段階からべバリー役はターナーに、と決めていたとか。ターナーはそれまでとは全く違う役柄を、見事に演じ切りました。

些細な理由で人を殺す

べバリーがドティ夫人に嫌がらせをし始めたきっかけは、“駐車場で割り込まれたから”でした。その後次々とつづく犯行の理由も、誰もが日常生活で経験するような些細なものばかり。 ベバリーは、自分や家族にほんの少しでも害をなす相手には容赦しません。まさに“カッとなってやった”レベルの犯行をつづけていくことが、彼女の異常性を強調しています。

雑すぎる犯行の手口

さきほども触れたとおり、べバリーは衝動的に殺人を犯します。このようなタイプは「無秩序型」と呼ばれますが、それにしてもあまりに雑すぎます。 その場にあるものを凶器にし、目撃者がいてもお構いなし。そんな彼女の犯行が、いつ、どうやって明るみに出るのかにも注目してみてください。

『シリアル・ママ』はウォーターズ入門編に最適!

ウォーターズ監督の持ち味が活きた作品のなかでは比較的観やすい『シリアル・ママ』は、ウォーターズ作品入門編として最適です。 ウォーターズらしい下品で過激な内容ですが、意外な展開ながらも比較的まともなストーリーラインが、作品全体をしっかりと支えています。 キャスリーン・ターナーの怪演はもちろん、バカバカしくもグロテスクな描写も見どころとなっている本作は、それぞれ2,000円程度でBlu-rayとDVDが発売されています。 映画冒頭には、本作が実話にもとづくストーリーであるという字幕が出ます。しかし実際には完全なフィクションなので、安心して観てください。

次回の「カルトを産む映画たち」は?

次回は9月2日に更新予定です!お楽しみに!