2018年9月25日更新

ゲイがなぜか!?愛してやまない定番女性映画10選【名場面解説も】

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ゲイたちがこよなく熱愛する定番女性映画10作品をご紹介!

世界中にさまざまなLGBT映画があり、さらに近年は同性婚をはじめとする社会情勢の変化もあって次々と新しい作品が生まれています。しかしそれとは別に、LGBTが一切登場しないあるいは脇役の1人に過ぎないけれど、ゲイたちが愛してやまない女性映画というものが存在します。 ここではそんな映画を、邦画4作・洋画6作の合計10作品ご紹介したいと思います。国内外の複数のゲイニュースサイト、および有名ドラァグクィーン・ゲイのSNS等から幅広く情報収集して選びました。それぞれの作品そのものは有名であっても、一般にこうした切り口で括られるのは珍しいかもしれませんが、ゲイにとってはもはや定番中の定番ばかりです。 ただ好んで鑑賞されるだけでなく、ドラァグクィーンたちが見せる華やかなショーの題材になることもしばしば。ゲイたちにとってそれぞれどこがツボなのかも詳しく解説したいと思います!

1.三田佳子の女優演技にしびれる!『Wの悲劇』

夏樹静子の同名小説を劇中劇として交差させながら、スキャンダルを利用してのし上がっていく若手女優の成長と恋を描いた1984年公開の角川映画です。劇団研究生の静香を薬師丸ひろ子、押しも押されもせぬ先輩のトップ女優・翔を三田佳子が演じました。 新作公演の初日、翔のホテルの部屋でパトロンの男が腹上死。偶然その現場を目撃してしまった静香に、翔はスキャンダルの身代わりになってくれればあらゆる手を尽くして新作の主役にしてあげると約束します。 女の打算と思惑に満ちたドロドロとした関係はもちろんですが、ゲイたちがとりわけしびれるのが三田佳子のすさまじいほどの大女優ぶりです。高木美保扮する静香のライバルをイジメ倒して追い出し、ついには演出家たちを説得するため、舞台上で一世一代の名演説を披露するのです。 「そんなとき、オンナ使いませんでした?」脚本・荒井晴彦のうんだ名セリフは、ゲイの会話にしばしば登場するほど人気です。

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2.ゲイが大好きな遊郭・女郎ものの中でもとりわけ人気の高い『吉原炎上』

ゲイは女郎や花魁、娼妓の物語が大好きですが、中でも飛び抜けて人気の高いのが五社英雄監督の『吉原炎上』です。明治の吉原遊郭を舞台に、5人の女の激しい生き様を豪華絢爛に描いたものです。 大胆なヌードや性愛シーンも厭わなかった、名取裕子やかたせ梨乃ら人気女優たちによる体当たりの演技が見どころですが、なんと言っても有名なのは西川峰子(現・仁支川峰子)が演じた伝説の名シーンです。 西川扮する花魁の小花は、御職の座を奪われた末、肺結核による壮絶な死を迎えます。真っ赤なシーツと口から吐いた血にまみれ、「ここ噛んで~」と叫びながら狂乱のうちに死にゆく姿は一度観たら忘れることのできない強烈な印象を残しました。 派手でドラマチックな最期と死に至ってなお自らの欲望を捨てない性!女の情欲がみなぎる五社英雄監督作品は、他にも『鬼龍院花子の生涯』や『陽暉楼』、『極道の妻たち』などゲイに人気があります。

3.上質な白スーツに赤ワインをぶっかける!『疑惑』

松本清張原作・野村芳太郎監督という『砂の器』の最強コンビ、さらに桃井かおりと岩下志麻という名女優2人による迫力の熱演が見どころの極上サスペンスが『疑惑』です。 埠頭で車ごと転落死した財閥富豪。同乗しながら無傷で生還し、多額の保険金を受け取った後妻の球磨子が容疑者として逮捕されるものの物的証拠がない中、敏腕弁護士の律子が弁護を引き受けます。ところが、2人は協力し合うどころか激しく衝突し……。 傲慢でふてぶてしい球磨子と冷徹で凛とした律子がバーで対立するシーン。球磨子が律子の着ていた上質な真っ白いスーツに赤ワインをぶっかけると、律子は顔色一つ変えず、グラスの水を勢いよく球磨子の顔面に返します。 これぞ絵に描いたような女の喧嘩!なんでもこのシーンだけを何度も繰り返して見るほど好きなゲイも多いのだとか……。

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4.女だけの隔絶した世界と厳格なヒエラレルキーがツボ!『大奥』

複数の映画化・ドラマ化作品が存在する『大奥』。江戸城の一角に設けられていた正室や側室、奥仕えの女中ら女だけで暮らす居所に渦巻く人間模様を描いた物語として、時代を超えて絶大なる人気を誇ります。 男女の役回りを逆転させた異色の「大奥」シリーズも好評でしたが、ゲイが好きなのはもちろん女だけの「大奥」ものです。高視聴率を記録した連続ドラマの完結編として映画化された仲間由紀恵主演による2006年の『大奥』を好きな映画にあげるゲイも多いようです。 一部では、身分制度による厳格なヒエラルキーは、自虐と冗談半分まさにゲイコミュニティーそのものという声も……。「お局」という言葉は、ゲイの間でも古株やベテランを形容する言葉として頻繁に使われます。

5.レインボーフラッグの原案とも言われるゲイアイコン映画の金字塔『オズの魔法使い』

L・F・ボームの人気童話を原作に、『風と共に去りぬ』のヴィクター・フレミングが監督、主演にジュディ・ガーランドを迎えたミュージカル映画の古典にして、知る人ぞ知るゲイアイコン映画としても金字塔的作品に位置づけられているのが1939年公開の『オズの魔法使』です。 巨大竜巻に巻き込まれ、魔法の国オズに迷い込んでしまったドロシー。勇気のないライオン、脳のない案山子、心のないブリキの樵を旅の道連れに、故郷のカンザスに戻る冒険を繰り広げます。 それぞれ欠点を抱えながらも個性を生かし、強く生きていく彼らの姿に、まだ権利を認められず差別に苦しんできたゲイたちは自分の姿を重ねたのです。 LGBTを象徴するものとして有名なレインボーフラッグは、本作でジュディ・ガーランドが歌ったアカデミー主題歌賞受賞の名曲『虹の彼方に(オーバー・ザ・レインボー)』に由来していると言われています。

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6.ドラァグクィーンなら必ず一度は通る『何がジェーンに起こったか?』

ハリウッド黄金時代を代表する大女優の2人、ベティ・デイビスとジョーン・クロフォードが愛憎入り混じる奇怪な老姉妹を演じたサイコサスペンスの異色作です。 古い屋敷で一緒に暮らす、かつて名子役として一世を風靡しながら今はただの老婆となり果てた妹ジェーンといまだ美貌を誇る女優の姉ブランチ。ブランチが事故により半身不随になったことで、それまで鬱屈と不満をため込んでいたジェーンが異常なイジメの行動をとるようになります。 中でも老醜を曝け出し奇行に出るベディ・デイビスの鬼気迫る演技が強烈で、「ブラ~ンチ!」と独特の声音で名を呼ぶセリフは有名になりました。アメリカのドラァグクィーンの間では、ショーで見せるコメディ寸劇の定番中の定番です。 2017年にはジェシカ・ラングとスーザン・サランドンが舞台裏の2人を演じた実録ドラマ『フュード/確執 ベティvsジョーン』が放送されるなど、1962年の公開から半世紀以上たっても愛され続けているのは、ゲイからの熱い支持あってのことです。

7.フェイ・ダナウェイのラジー賞演技こそがもはや伝説!『愛と憎しみの伝説』

『何がジェーンに起こったか?』でブランチを演じていたジョーン・クロフォードの知られざる実像を描いた伝記映画です。養女であるクリスティーナが出版した暴露本が原作になっており、養女虐待の事実が明らかになったことで当時一大センセーションを巻き起こました。 映画は興行的には大ヒットを記録しながら、批評家からは酷評されてラジー賞の不名誉を着せられます。ところが、クロフォードを演じたフェイ・ダナウェイのすさまじい怪演がとりわけゲイたちの間で話題をよび、ある種のコメディ映画として次第に高い評価を得るようになっていた異色作です。 特に、顔にコールドクリームを塗りたくった状態で、洋服を針金の安いハンガーにかけたまま収納していたことを激怒するシーンは有名で、アメリカではそのまねをするゲイが続出したと言います。

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8.ゲイが好きな女性4人組もの、新定番と言えばもちろん『セックス・アンド・ザ・シティ』

ゲイは女性4人の群像ものがなぜか大好きです。邦画でいうと『細雪』や『阿修羅のごとく』など4姉妹ものや『ガール』など友情もの。そんな中、世界中のゲイにとって新定番となったのが人気ドラマシリーズから始まった『セックス・アンド・ザ・シティ』です。 大都会ニューヨークを舞台に、キャリー、サマンサ、シャーロット、ミランダの親友4人が繰り広げる恋とセックスを描き、社会現象を巻き起こしました。 脇役には複数のゲイも登場しますが、そればかりか、プロデューサーら製作陣もゲイによって構成されており、明らかにゲイ・テイストで作られたドラマだと言えるでしょう。 劇場版は2作品が公開されましたが、2作目にはライザ・ミネリが本人役で登場しました。ライザは母の故ジュディ・ガーランドともどもゲイアイコンとして抜群の人気を誇る人物であることは言うまでもありません。

9.アメリカのゲイにとって必見の古典女優映画と言えばこれ!『サンセット大通り』

数々の傑作を映画史に残した名匠ビリー・ワイルダーが、華やかなハリウッドの裏表を描いた1950年公開の不朽の名作です。グロリア・スワンソンがサイレント時代の大女優ノーマを演じ、ウィリアム・ホールデンが売れない若手脚本家ジョーを演じました。 かつて銀幕の大スターとして君臨したものの、今や大豪邸で静かに暮らすノーマ。再び映画界へのカンバックを狙うノーマが、ジョーに自分用の脚本の修正を依頼した上、愛人のように囲い込みますが、そのことが2人を悲劇へと導くのでした。 ノーマが大女優の貫禄と陶酔の中、自宅の大階段をサロメになりきり降りていくラストシーンのゴージャスさ!アメリカのゲイにとって女優映画の王道と言えば『サンセット大通り』に尽きるのは、このシーンを見れば一目瞭然です。

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10.たとえゲイでも女になって一度は演じてみたい!『欲望という名の電車』

ゲイとして知られていたテネシー・ウィリアムズがピューリッツァー賞を受賞した同名戯曲の映画化です。映画史に残る名ヒロイン・ブランチを演じたビビアン・リーが『風と共に去りぬ』に続き2度目のアカデミー主演女優賞に輝いたほか、マーロン・ブランドが野性的な魅力で一躍セックスアイコンとなりました。 妹ステラが暮らすニューオリンズを訪ねてきた姉のブランチ。ステラの夫で暴力的なスタンリーの手によりその過去が暴かれ、追い込まれた末ついに精神を病んでいく姿を描きます。 名戯曲を完璧に映像化したのは名匠エリア・カザンです。もちろん、女の哀しい性とそれゆえの行く末を見事に演じ上げたビビアン・リーの素晴らしさは言うまでもありません。 『欲望という名の電車』は本映画化以外にも、世界中の舞台で今も上演され続けています。テネシー・ウィリアムズは生前、ブランチ役は絶対に男性が演じてはならないと言っていたそうです。それはゲイの役者が強烈に惹かれるキャラクターであることを当事者として認識していたからかもしれません。

ゲイたちから愛される秘密は……?

こうした作品がゲイたちから愛される秘密はどこにあるのでしょうか? 内容も雰囲気もそれぞれ異なりますが、共通して垣間見える要素としては、強い女、過剰な女、破滅していく女、女同士のドラマチックな対決、女優を豪華に演じる女優といった点などがあげられるかもしれません。 当然のことながら、同性の女性が好む女性映画やストレートの男性が好む女性映画とは、ずいぶん異なるようです。 周囲にゲイの友人や身内がいたら、一度これら作品について尋ねてみてはいかがでしょうか。間違いなく、熱く詳しく語ってくれるはずです!