2018年10月12日更新

【レビュー】『エンドレス・ウォー』がえぐり出す終わりなき闘いの実態

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エンドレス・ウォー
(C)2017 TELECINCO CINEMA, IKIRU FILMS, EL CUADERNO DE SARA AIE

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終わりなき紛争のその先は……『エンドレス・ウォー』レビュー

WEC2018で上映されるサスペンス・スリラー『エンドレス・ウォー』。 コンゴ紛争を題材とした本作は、終わりのない殺し合いに隠されたリアルな現状を描き、本国スペインでNo.1のヒットを記録しました。 1997年から2017年の間に540万人以上と、第二次世界大戦以降もっとも多くの犠牲者を出し、2018年現在もつづいているコンゴ紛争。 『エンドレス・ウォー』は、その紛争と“支援”の実情を鋭くえぐり出し、その先の希望を描いています。

『エンドレス・ウォー』のあらすじ

エンドレス・ウォー
(C)2017 TELECINCO CINEMA, IKIRU FILMS, EL CUADERNO DE SARA AIE

2年前から消息を絶っている人道活動家のサラ。コンゴ民主共和国の紛争地帯で彼女の生存が確認されたのを知った姉のラウラは、現地で妹を探す決意をします。 コンゴでは、希少金属(レアメタル)コルタンをめぐって、政府と武装組織による激しい対立がつづいていました。 サラが参加していたNGOグループに紹介された現地の青年ハミールとともに、彼女が目撃されたゴマを目指すラウラ。しかし、その途中で彼女たちは何度も命の危機にさらされます。 はたしてラウラはサラと再会することができるのでしょうか?そして、この紛争で実際に起こっていることとは……?

『エンドレス・ウォー』のキャスト・監督

エンドレス・ウォー
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本作で主人公のラウラを演じたのは、アカデミー外国語映画賞を受賞した『海を飛ぶ夢』(2004)でゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)新人女優賞を受賞したほか、ホラー映画『永遠のこどもたち』(2007)などで知られるベレン・ルエダ。 そのほかスペインを代表する俳優陣が顔を揃えています。 監督のノルベルト・ロペス・アマドはドキュメンタリー出身で、『フォスター卿の建築術』(2014)などの作品で知られています。 『エンドレス・ウォー』では、緻密な演出によって終わりのない“闘い”の実態を描きました。

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終わらない紛争 終わらない“支援”

エンドレス・ウォー
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コンゴ紛争については、同国で性暴力から女性を守る活動をつづけている産婦人科医のデニ・ムクウェゲが、2018年のノーベル平和賞を受賞するというニュースで知った人も多いかもしれません。 コンゴは「女性にとって世界最悪の場所」と言われています。国連人口基金によれば「1998年以降、推定20万人の女性や少女が性的暴力の被害を受けた」とされ、なかには4歳の女の子がレイプ被害にあうという事件も。 もうひとつ、大きな問題となっているのが少年兵の存在です。武装組織によって誘拐されたり、親を殺されたりした子供たちは、その組織で忠実な兵士となるよう訓練されるのです。 そんな状況にあるコンゴでは、国連をはじめとする様々な組織が人道支援活動を行なっています。 本作で行方不明になっているサラもそうした活動家のひとりですが、彼女を探すラウラは現地での“支援”の実情を目の当たりにし、その意義に疑問を持つようになります。

血みどろの闘いのなかに描かれる人間ドラマ

エンドレス・ウォー
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ラウラはスペイン語と英語を話しますが、現地の言葉であるスワヒリ語はわかりません。作中ではスワヒリ語での会話には字幕がつかないので、多くの観客がラウラと同じように「なにを話しているのだろう?」と想像することになるでしょう。 言葉がわからなくても相手が怒っていること、なにか恐ろしげなことを言っていること、あるいは優しい言葉をかけてくれていることはわかるものです。 人のこころの機微は、言葉だけでなく表情や仕草にもはっきり現れるということを、あらためて実感させられます。 また、ラウラと彼女を案内する青年ハミールは、その交流のなかでお互いに強い影響を与え合います。ふたりそれぞれのなかで起こる変化は、さらりと描かれながらも骨太な人間ドラマの軸となっているのです。

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人間は変わることができるか?

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ハミールには、ある秘密がありました。それを知ってもなお、ラウラは自分と行動をともにしてきた現在の姿が彼の本質であると考えるようになります。 しかし当然、そうではない人もいます。もちろん支援活動をするうえでは、まず支援者自身の身を守らなければいけません。同時に、過去に間違いを犯した人も更生できると信じることが必要ではないでしょうか。 本作で少しずつ見えてくる紛争や少年兵たちの実情、支援の実態、そして後半で次々と展開されるサラの行方やハミールの贖罪は、観客である私たちに大きな問いを投げかけます。 紛争のつづくコンゴでは、殺し合いの“戦い”と、人間を救う“闘い”のふたつが繰り広げられているのです。

『エンドレス・ウォー』はWEC2018で10月13日から上映!

エンドレス・ウォー
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コンゴ紛争の原因となっているのは、携帯電話などの電子機器に使用されるレアメタルの利権争いです。そのことに、先進国に住む私たちは無関心でいいのでしょうか。 また、本作は“支援”のありかたとその問題点も提示しました。 『エンドレス・ウォー』はフィクションではありますが、コンゴ紛争の実態をリアルに描き、高い評価を獲得。日本ではほとんど報道されることのないこの危機的状況について、本作で多くのことが知ることができます。 もちろん、ラウラが妹サラの行方と失踪の理由を追うサスペンス映画としても、非常に面白い作品であることは間違いありません。

エンドレス・ウォー
(C)2017 TELECINCO CINEMA, IKIRU FILMS, EL CUADERNO DE SARA AIE

『エンドレス・ウォー』は、東京のヒューマントラストシネマ渋谷では10月13日(土)からの1週間、大阪ではシネ・リーブル梅田にて11月11日(日)、13日(火)、15日(木)に上映予定。上映時間につきましては、続報を待ちましょう。 WEC2018のそのほかの上映作品は、公式サイトや公式Twitter、下記記事等をチェックしてみてください。 この機会にしか鑑賞することのできない作品に触れることができますよ!