2018年10月4日更新

【レビュー】女性は共感必至!?美しきホラー『ブルー・マインド』少女の身になにが……?

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ブルー・マインド
©2017 tellfilm GmbH & Zürcher Hochschule der Künste ZHdK

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ワールド・エクストリーム・シネマ2018の注目作『ブルー・マインド』

2018年10月13日(土)から東京と大阪の2都市で開催されるワールド・エクストリーム・シネマ(WEC)2018。今回上映される4作品のなかでも、特に注目を集めているのがスイスのホラー映画『ブルー・マインド』です。 近年、従来のホラーとは違う「ニュータイプ・ホラー」ともいうべき作品が数多く生み出されています。2014年の『イット・フォローズ』をはじめ『ゆれる人魚』(2017)や『RAW〜少女の目覚め〜』(2018)など、じわりとした恐怖を感じさせるそれらの作品たち。『ブルー・マインド』もこの系譜に位置付けられます。 本国のアカデミー賞であるスイス映画賞で、作品賞をはじめ主要3部門受賞という高い評価を得た本作。主演のルナ・ヴェドラーは、ベルリン国際映画祭でシューティングスター賞を獲得しました。 大人へと成長する少女の不安や混乱を描いた『ブルー・マインド』は、美しく官能的ななかに、じりじりと追い詰められる恐怖がにじむ作品となっています。

少女が経験する不安と恐怖

ブルー・マインド
©2017 tellfilm GmbH & Zürcher Hochschule der Künste ZHdK

監督のリサ・ブリュールマンは本作で、女性特有の成長にともなう身体の変化、そしてそれに対する少女の不安や恐怖を象徴的に描き出しました。 ミアの身体は初潮を迎えるとともに異様な変化を見せはじめます。最初の変化はつま先に起こりました。医者には「珍しい症状」と言われるものの、ミアは受け入れることができません。それから変化は拡大していき、ミアは若さを謳歌するように履いていたショートパンツを履かなくなります。 それでもさらに、彼女の身体は「完成形」に向かって変化しつづけるのです。 初潮とともに身体に変化が起こる、というのは多くの女性に経験があるでしょう。ミアに起こる変化は、身体が成熟していく過程で起こるものや、月経のたびに起こる変化を連想させます。 私たちはその変化に違和感を持ち、今までの自分とは違うものに変わっていくようで不安や恐怖を感じたのではないでしょうか。

ブルー・マインド
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また、この不安定な時期を共有する少女たちには独特の友情が芽生えます。ともに不安をかき消そうと悪さをしたり、大人の女性になることに不安を感じながらも背伸びして見せたり……。そうするうちに彼女たちは、親も知らない経験や感情を受け入れ合っていくのです。 女性の観客には特に、実体験と通じるところがあるのではないでしょうか。

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新星ルナ・ヴェドラーの繊細な演技

ブルー・マインド
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主演のルナ・ヴェドラーは、本作で弱冠19歳にしてスイス映画賞で主演女優賞、ベルリン国際映画祭でシューティングスター賞を受賞しました。 ヴェドラーが演じる15歳のミアは、官能的かつ思春期の少女らしい冷めた雰囲気を醸し出しています。 家族に見せるいらだちや愛情を感じさせる表情はあどけなさを残し、友達の前で悪さに慣れた風を装う表情には戸惑いが見え隠れ。初めてのセックスでは官能や情熱ではない複雑な表情を見せます。 彼女の演技は、少女の不安定であるがゆえの美しさや、この時期特有の色気を感じさせながらも、決していやらしくはありません。

現実的な映像だからこその不気味さ

ブルー・マインド
©2017 tellfilm GmbH & Zürcher Hochschule der Künste ZHdK

少女の成長もの、特にホラー作品では、幻想的な映像表現を用いることが多々あります。しかし『ブルー・マインド』の映像は基本的に現実的です。VFXなどを使った現実離れした描写はほとんどありません。 映像が普通であるからこそ、ミアの生活と秘密が地続きであると感じられるからこそ、彼女の身に起こるグロテスクな変化の不気味さや恐怖がくっきりと浮かび上がります。 また、本作で印象的に使われている水や海は、やはり少女という存在を描く作品にはたびたび登場するイメージ。世界中で「母性」や「生命力」の象徴とされている水は、一方でときに自然災害となって生命を奪うものです。 “優しさや生命力”と“危険や凶暴性”という2面性を持つ水は、大人と子供の間で波のように揺れ動く少女の象徴でしょう。そして多くの水が集まった海には、また違った意味合いも感じられます。

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『ブルー・マインド』は2018年10月13日からWECから公開!

ブルー・マインド
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少女の成長に対する不安と恐怖を寓話的に描いたホラー『ブルー・マインド』は、特集上映「ワールド・エクストリーム・シネマ2018(WEC2018)」内にて上映されます。 東京はヒューマントラストシネマ渋谷で10月13日(土)から19日(金)までの1週間、大阪はシネ・シーブル梅田にて11月10日(土)から16日(金)の間『エンドレス・ウォー』(2017)と交互に4日間上映予定。 気になった方は、この機会を逃さずぜひ劇場に足を運んでみてください! ほかにも「WEC2018」では、日本ではなかなか観ることができない世界中のガツン!とくる映画を限定上映します。 下記記事やオフィシャルサイトからチェックしてみてください。