2017年7月6日更新

ペドロ・アルモドバル、重厚な映画を生み出すスペインの監督に迫る!

オールアバウトマイマザー

『オール・アバウト・マイ・マザー』や『ボルベール〈帰郷〉』で全世界に評価されるスペイン映画を作り上げたペドロ・アルモドバル。彼が映画監督として成功するまでには様々な紆余曲折がありました。代表作品とともに彼のキャリアをご紹介していきます。これを読めば作品が見たくなるかも。

目次

スペインを代表する映画監督、ペドロ・アルモドバル

  スペインの映画監督の中で最もインターナショナルに活躍するペドロ・アルモドバル。彼は1951年、スペインの片田舎に生まれました。

少年時代はカトリック教徒の寄宿学校に入るため、自身の故郷よりも都会の街カセレスに住むことになります。そこで初めて映画館の存在を知り、みるみるうちに映画に夢中に。両親の司祭になってほしいという期待とは裏腹に映画業界への興味を膨らませました。

フランコ体制の中で苦労した貧乏時代

  映画監督になると決めたペドロは1967年に首都マドリッドへとやってきます。ところが折しも時代はフランコによる独裁政権。国立映画学校が閉鎖され映画制作の勉強ができない上に、お金もないペドロは路頭に迷ってしまいます。

結局、フリーマーケットを始めとした仕事でなんとか食いつなぐ生活を送ることになりました。

一方で映画監督になる夢は諦めておらず、なけなしの金をはたいて8mmカメラを購入しショートフィルムを撮影。その後1970年代後半ににマドリッドで起こったポップカルチャー・ムーヴメントを代表する人物として時の人となります。

初の監督作品『Pepi, Luci, Bom y otras chicas del montón(原題)』

  そんな彼が念願の映画監督デビューを果たしたのは1980年、『Pepi, Luci, Bom y otras chicas del montón(原題)』。

家でマリファナを育てていたのを警察官に見られ、その警察官にレイプされてしまったペピ。そこでペピは彼の妻を使い復讐する作戦を立てます。この映画はペドロが友人たちから資金面で援助を受けて製作した映画で、予算の7倍に及ぶ興行収入を打ち出した大ヒットとなりました。

代表作『オール・アバウト・マイ・マザー』

 

そんな彼が世界的に有名となったのは1999年、『オール・アバウト・マイ・マザー』の公開時でした。

この映画は様々な境遇の「女たち」にスポットをあてています。息子を事故で亡くしたシングルマザーのマヌエラ(セシリア・ロス)、レズビアンの大女優ウマ(マリサ・パレデス)、エイズを患いながら妊娠したシスター・ロサ(ペネロペ・クルス)など悩みを抱えながらも強く生きる女性たちに世界が大絶賛。

この年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞し、ペドロ・アルモバドルの名も広く知られるようになりました。

『バッド・エデュケーション』では自身の幼少時代を描く

 

2004年には『バッド・エデュケーション』でニューヨーク映画批評家協会賞外国語映画賞を受賞します。神学校での少年同士の恋、神父による性的虐待を映し出した本作はセンセーショナルだとして話題作に。

実はこの作品は、自身が少年時代を過ごした寄宿学校でのの経験を反映している半自伝的作品だと言われています。この脚本を完成させるのには10年もの歳月を費やしたのだとか。

ハーバード大学で名誉博士号を受けたペドロ・アルモドバル

  『オール・アバウト・マイ・マザー』以降、映画監督としての評価が高まったペドロ・アルモバドル。2001年にはアメリカ芸術科学アカデミーの外国名誉会員に選出されています。

また、2009年にはハーバード大学から名誉博士号を授与されています。映画界への貢献が理由だったそうですが、非英語圏の監督が選出されるのはすごいことですよね。

ペドロ・アルモドバル作品は注目作ばかり!

  スペインで映画を撮り続けるペドロ・アルモバドル、その作品はどれも世界中から注目を受けるものばかり。

観ているこっちまでぎりぎりな気分!?女性たちを描くラブ・コメディ(1988年)

 

失恋したヒロインを始め、“神経衰弱ぎりぎりの”女たちを描く本作。カルメン・マウラ主演で、アントニオ・バンデラスも出演しています。

実はこの作品の撮影中にペドロと主演のカルメン・マウラは修復不可能かと思われるほどの仲違いをしてしまったそう。カルメン曰くそんな状況下の中での撮影はまさに生き地獄だったのだとか。結局2人が再びタッグを組むまで18年もかかってしまったのだそう。

ダメンズたちに振り回されたキカの行く末は?ちょっと変わったコメディ(1993年)

 

メイクアップアーティストの女性、キカに降りかかるトラブルと恋愛を描きます。キカと恋に落ちたのに彼女を置いて旅に出たニコラス、カメラマンのラモン、レズビアンの姉を持つポールなどどこか問題を抱える男性たちも多く登場します。

実はこの作品にはペドロ・アルモバドルの実の母親が登場しており、テレビ番組でニコラスにインタビューするリポーター役だったのだそう。

オスカー受賞!愛する女性が昏睡状態に陥った2人の男性を描く(2002年)

 

『オール・アバウト・マイ・マザー』に続くヒット作品となった『トーク・トゥ・ハー』。女性の主人公が多いペドロ作品の中で、この作品は2人の男性が主役。同じ病院で昏睡状態に陥る2人の女性と、彼女たちを愛する2人の男。同じ境遇を持つ2人はいつしか友情を深めていきますが…。

各雑誌で「2002年に観たい映画ベスト10」に選ばれるなど、映画は好評。さらにはスペイン語映画にも関わらずアカデミー賞で脚本賞を受賞するという快挙を成し遂げました。

死んだ母が家に帰ってきた!?ペネロペ・クルスの好演が光る(2006年)

 

ペネロペ・クルスの主演でも話題となった『ボルベール〈帰郷〉』は、タンゴの楽曲「Volver」を題材にしたドラマです。

仕事をクビになった夫を、娘が刺し殺すという信じられない事態に陥ったライムンダ。その事態の最中、なんと数年前に亡くなった母親が家に帰ってきます。なんでも彼女は現在の状況を修復しにやって来たというのですが…。

  この映画ではペドロ・アルモバドルの故郷、ラ・マンチャが舞台になりました。出演した女優たちは高い評価を受け、中でもペネロペ・クルスはスペイン女優として初めてアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。

肌を再生する医師と女性の驚くべきドラマ(2011年)

 

ティエリ・ジョンケの小説『蜘蛛の微笑』を映画化した本作。妻の死によって、誘拐した女性を妻瓜二つの姿に変えていく形成外科医ロベル・レガルとその女性ベラを描いています。ロベル・レガルはアントニオ・バンデラスが演じました。

ペドロ・アルモドバルは10年前に読んだ原作を元に、時間をかけて脚色していったといいます。カンヌ国際映画祭のパルム・ドールはじめ、ゴールデングローブ賞の外国語作品賞にもノミネートされました。

ペドロ・アルモドバル監督最新作『ジュリエッタ』

 

ペドロ・アルモドバル監督の最新作は『ジュリエッタ』。恋人ともにポルトガルへと引越そうとしていたジュリエッタ。ところが12年間連絡をとっていない娘がスイスで3児の母をしていると聞き、彼女から手紙が来るかもしれないと思い引越しをキャンセルします。ティーンエイジャーだった頃の一連の騒動を思い出すジュリエッタでしたが…。

主演はスペイン女優のアドリアーナ・ウガルテ。スペイン本国では2016年4月に公開されています。日本での公開はまだ未定ですが、世界中で順次公開予定です。