2023年4月27日更新

「カリオストロの城」ネタバレ徹底解説!伯爵のモデルや名作に隠された設定とは【ルパン三世】

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『ルパン三世 カリオストロの城』
原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV

『ルパン三世 カリオストロの城』は、1979年に公開された宮崎駿の初監督映画。月日が流れた現在も不朽の名作アニメーションとして人気を集めています。 今回は、あらすじやあの名場面の背景、宮崎駿が監督になった理由などを徹底解説!これを読めばもっともっと「カリオストロの城」が好きになってしまうかも? ※この記事には『ルパン三世 カリオストロの城』のネタバレが含まれます。未鑑賞の場合はご注意ください。

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映画『ルパン三世 カリオストロの城』のあらすじ解説【結末ネタバレ】

大金を盗み出し浮かれ気分のルパンと次元。ところが、札束は全て「ゴート札」と呼ばれる精巧な偽札であり、一味は偽札密造の噂があるカリオストロ公国へ。 彼らはそこで、婚姻による国の乗っ取りと王家の指輪にまつわる「ゴートの秘宝」を狙うカリオストロ伯爵から逃れ、追われている王女・クラリスを保護しました。その後、囚われた彼女を救うため再び城へ潜入しますが、伯爵に見つかり城の地下へ落とされます。 偶然再会したルパンと銭形は、地下に広がる偽札工場を発見することに……! 結婚式の当日。ルパンは大司教に変装してクラリスと指輪を奪取しますが、またも彼女が伯爵に捕まり、指輪も奪われてしまいます。時計塔に指輪をはめ込んだ伯爵は、欲深い者を処刑する仕掛けによって圧死し、水の引いた湖から古代都市の遺跡が現れます。 クラリスへの想いと秘宝を残して、カリオストロ公国を去っていくルパン。銭形はその後姿を見ながら、「ヤツはあなた(クラリス)の心を盗んだ。」と告げるのでした。

なぜ宮崎駿がルパン映画の監督になったのか?

宮崎駿が初めて『ルパン三世』に関わったのはTVアニメ1期。視聴率の低迷による路線変更で、当時所属したAプロダクション(東映動画から独立)が中盤以降の演出を手がけました。 その後2期への参加は断ったものの、クオリティの酷さに怒りを覚えた宮崎。偽名の「照樹務」名義で脚本や絵コンテなどを担当しました。人気を獲得した『ルパン三世』は劇場版「ルパンVS複製人間」(1978年)を経て、本作の制作が進められていきます。 東京ムービー新社は当初、宮崎の東映動画時代の恩師にして盟友・大塚康生に監督を打診しますが、気乗りしない彼が宮崎に声をかけたのだそう。宮崎は「ルパンや東映動画時代にやった事の大棚ざらえ」として引き受け、大塚もキャラクターデザイン・作画監督として携わりました。

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「カリオストロの城」は実話?伯爵にはモデルがいた

ルパン三世が架空の人物であるように、本作の物語も実話ではありません。 宮崎駿によると、モーリス・ルブランの小説「アルセーヌ・ルパン」シリーズの『緑の目の令嬢』及び、黒岩涙香・江戸川乱による『幽霊塔』が元ネタとのこと。前者の主人公アルセーヌ・ルパンは、ルパン三世の祖父のモデルでもあります。 「騎士のようにヒロインを守る」「一族の宝が水底の遺跡」といった、ルパンやクラリスの設定は『緑の目の令嬢』から、トリックなどは『幽霊塔』から取られました。 一方で、伯爵は18世紀に実在した天才詐欺師がモデルになっています。その人物の名はアレッサンドロ・ディ・カリオストロ。低い身分の生まれながら、予言や魔術、美人局、医師・錬金術師などの肩書を操って富裕層や秘密結社から大金を騙し取っていました。 詐欺師の一面は、偽札密造で各国の暗部と通じていた劇中の伯爵と重なりますが、史実の伯爵には義賊的な面もあったようです。1785年、マリー・アントワネットを巻き込む「首飾り事件」に関わった疑いで失脚し、最期は異端者として獄中死しています。

注目ポイントはここだ!こだわりの演出や構成を解説

『ルパン三世 カリオストロの城』
原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV

実は、わずか半年で構想から制作まで行われていた映画「カリオストロの城」。非常に短い期間であったにも関わらず緻密な演出や技法をふんだんに使用し、後のアニメ業界に大きな影響を与えることになりました。 大胆なコミカルシーンとシリアスシーン、それぞれが盛りだくさんとなっている本作の中でも、特に注目すべき描写や構成、設定について解説していきます。

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1. 「カリオストロの城」は70年代という時代背景を大きく反映した作品

実は本作は、当時の日本社会を大きく反映させた作品。そのことは、ルパンのキャラクター性と社会状況の連動性から伺うことができます。 本作が作られた時期は1970年代でした。70年代といえば、日本の学生運動が下火になった時期に成人を迎えた若者が、何事に関しても関心を持てない「シラケ世代」へと変貌していった頃。 そこで本作のルパンも“暇つぶしに面白そうなことをやる”というスタンスで物事に取り組むのです。事実、クラリスと追っ手によるカーチェイスを追いかけたのも、単に“面白そうだから”という理由です。 また本作でのルパンは、過去の自分に対して「まだ駆け出しのチンピラだった」、「もう10年以上昔だ。俺は1人で売り出そうと躍起になっている青二才だった。バカやって、いきがった挙げ句の果てに俺はゴート札に手を出した……」などと語っており、60年代の学生運動が盛んだった頃は当時の若者同様、ルパンも野心溢れた青年だったことを表しています。 しかし、クラリスとの出会いを通じて「シラけた」ルパンは少しずつ変化していきます。宮崎駿は日本の若者たちに希望を抱いていると同時に、希望を抱かせたかったのかもしれません。

2. 指輪に注目?計算され尽くしたストーリー構成

まずは、物語の進行を促す役割として「指輪」が活躍しているところに注目してみてください。 物語の冒頭でのこと。クラリスが偶然指輪を落とすことによって、ルパンは「大きくなりやがって……」と、彼女との記憶を思い出します。つまり、指輪が彼らの偶然の再会を実現させたということです。 またクラリスの指輪を狙う伯爵とルパンの戦いが佳境を迎えた際には、伯爵が指輪を手に入れたことによって、そのまま不運にも死を迎えることになります。 上記からわかるように、1つの指輪を軸に冒頭から結末までストーリーが展開されていくという、指輪による偶然の連続性が本作の面白さの1つなのです。

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3. 痛快なアクションとサスペンス性の融合が最高

アクションシーンの魅せ方がバラエティ豊かなところは、本作の魅力を語る上で欠かせない要素です。 冒頭のカジノ襲撃での華麗な逃走劇や、クラリスの追っ手との愉快なカーアクションは観る側をスカッとさせるような痛快さがあります。また、クラリスが幽閉されている場所を目指して屋根をつたっていくユニークなアクションシーンでは、ルパンが現実ではありえないような大ジャンプを披露し、鑑賞者の笑いを誘いました。 一方で、敵がアジトを襲撃してきた時にルパンたちが大苦戦してしまうアクションシーンや、クラリスと脱出する際にルパンの胸がピストルで撃たれてしまうようなハラハラのサスペンスも。 このように、ワクワクさせる痛快なアクションから、思わず息を飲んでしまうような緊張感溢れるアクションまで、観るものを全く飽きさせることがないのです。そしてアクションシーンを用いて私たちに夢を与えると同時にリアリティをも感じさせるのは、まさに宮崎演出の賜物でしょう!

4. キャラクター同士のやり取りから目が離せない?ルパンと次元大介の掛け合い

『ルパン三世 カリオストロの城』
原作:モンキー・パンチ ©TMS・NTV

作品内にはクスッとくるポイントが多々ありますが、中でもキャラクター同士の掛け合いにもこだわりが感じられます。 例えば、ルパンと次元のやり取りに注目。 指輪のことを真剣に話すシーンでは運ばれてきたミートパスタを奪い合い、故障した車を修理する冒頭のシーンでは全身全霊でじゃんけんを行い、そしてルパンに何があったか聞き出そうとするシーンでは謎の格闘技をかけたり……。 物語に必要なシーンを抑えつつ、彼らのたわいもないやり取りを描くことで、絶大な信頼関係を私たちに示しているのです。 また、ルパンがクラリスを救出しに来たシーン。クラリスを助けたいという趣旨を説明しつつ、可愛らしいマジックを披露するルパンの姿は、なんとも微笑ましいですね。

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5. ロマンあふれるストーリー構成にも秘密が?オマージュの使い方がエモい

『ルパン三世 カリオストロの城』を観た者はわくわくとした高揚感を抱きます。その理由は、本作のストーリー構成に隠されていました。 実は、いくつかのオマージュが本作には組み込まれているのです。それぞれのオマージュもロマン溢れるものになっています。 例えば、ダスティン・ホフマン主演の青春映画『卒業』。この映画では“花嫁を結婚式中に奪取する”という場面が非常に有名で、その後、数々の作品で模倣されるようになりました。そして『ルパン三世 カリオストロの城』でも、よく似た場面が出てきます。 また、湖の中に古代遺跡が隠されているという設定は、モーリス・ルブランの「アルセーヌ・ルパン」シリーズの一篇『緑の目の令嬢』のオマージュです。

6. リアリティもたっぷり味わえる!謎の偽札ゴート札の設定

本作には、夢のような冒険だけでなく、リアリティを感じさせる表現も描かれています。ここからは、本作でリアリティを感じられる2つの点について紹介していきます。

複雑な国際事情

本来、夢のあるストーリーとシリアスな政治的物語は共存しづらいもの。しかし、本作ではワクワクする要素がたっぷりと詰まっていながらも、実際にありそうな国際情勢を描いたプロットが展開されています。 物語の中盤、カリオストロ公国の偽札作りを目の当たりにした銭形警部は、すぐさま国際警察に証拠を提出。しかし、国際警察は証拠を目の前にしても出動を命令することはありませんでした。 それは、カリオストロ公国が「クラリスをルパン三世から守った」という建前を得ている上に、各国との強い結びつき(様々な国が偽札作りを頼んでいた背景がある)を持つ中では、世論はカリオストロ公国を支持するに違いない、という国際警察の主張があったからです。 こういった複雑な国際関係は、現実さながらにシビア。あるべき正義像とは一体何なのかを考えさせられます。

謎の偽札、ゴート札の存在

またゴート札そのもののにもリアリティとシリアスな面が感じられます。それにはとある仕掛けが。 作品の中盤で、ルパンはゴート札に対して以下のように語っていました。 「中世以来、ヨーロッパの動乱の陰に必ずうごめいていた謎のニセ金……。ブルボン王朝を破滅させ、ナポレオンの資金源となり、1927年には世界恐慌の引き金ともなった、歴史の裏舞台、ブラックホールの主役、ゴート札」 つまり、ゴート札は実際に起こった歴史に組み込まれているということ。そうすることで「本当に実在した犯罪」という印象を鑑賞者に与えるのです。

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7.「カリオストロの城」はルパン三世とクラリスが大人になる物語でもある

『ルパン三世 カリオストロの城』、クラリス
© Monkey Punch All Rights Reserved. © TMS All Rights Reserved.

彼らが初めて出会った当時は、幼い子供と青二才の泥棒という未熟な者同士でした。しかし再び会った時は、クラリスは美しい女性へ、そしてルパンは心身ともに成熟した大人へと成長しています。 そんな彼らの成長に合わせた関係性の変容が、本作のミソです。クラリスにルパンが救われるという関係性が、成長後はルパンにクラリスが救われるという構図に逆転します。

ルパンからクラリスへ

この逆転を受け、クラリスへの複雑な思いを抱いているルパンの様子が随所随所に描かれています。 過去に自分を助けてくれた救世主、可哀想な少女、そして魅力ある女性として、ルパンは彼女に対する複合的な視点をもち、葛藤するのです。しかし最後のシーンでは、クラリスに抱きつかれるものの手を回すことはなく、そっとおでこにキスだけをして彼女のもとから去るのでした。 ルパンがクラリスとの別れを選んだのは、彼なりの優しさがありました。クラリスのことは好きだけど、彼女の想いに応えると彼女の望む平和な生活を奪ってしまうことになってしまう……そう気が付いたルパンは、彼女のために身を引いたのです。 この結末は、ルパンが心身ともに大人になったことを暗に示しているのではないでしょうか。

クラリスからルパンへ

対してルパンとの過去を思い出すことがなかったクラリスは、当初は少し怪しげなおじさま、ぐらいにしか捉えていなかったようです。しかし、彼の茶目っ気のある性格や真摯な態度を見て、次第に心を寄せていきます。 そして物語の最後には「私も連れてって!」とルパンと一緒にいたい気持ちを吐露します。しかしルパンになだめられ、そのまま彼らのやり取りは終わってしまいます。 恋は叶わなかったものの、少女から恋愛感情を覚えた女の子へと成長するクラリスの姿からは、女性としての魅力を感じざるを得ません。

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8.クラリスのヒロイン像にも注目!

本作のヒロインであるクラリス像には、とあるモデルを使用したようです。 そのクラリスのモチーフとなったのは、モーリス・ルブランの「緑の目の令嬢』に登場するオーレリィという少女。オーレリィは強い自立心を持つキャラクターとして描かれており、クラリスの芯のある姿と一致するものがあります。 例えば、1人で車に乗って追っ手から逃走する場面は、彼女の強さを最もわかりやすく表しています。 しかしクラリスは強いながらもまだまだあどけなさを残し、子供と大人の狭間で揺れ動いていました。そして、その成長過程が観る者の心を強く惹き付けるのでしょう。

9.「カリオストロの城」の名物パスタ!“ミートボール・スパゲッティ”

ルパンと次元がカリオストロ城に侵入する算段をしながら町のレストランで食事をするシーン。2人は赤ワインを飲みながら中央に皿に盛られたスパゲッティを奪い合っています。このミートボールがごろごろしているトマトソースのスパゲッティ。やたら美味しそうですよね。 映画に登場する料理が「美味しそう」と話題になることがありますが、アニメ史に残る名物メニューといっても過言ではないほどの人気なんです。ネットで検索すると数え切れないくらい現れるレシピ。 クックパッドにも常に30種類ほどのレシピが掲載されています。次元も夢中になるミートボール・スパゲッティ。1度は食べてみたいところですね。

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「カリオストロの城」主要キャラ紹介

『ルパン三世 カリオストロの城』
『ルパン三世 カリオストロの城』原作:モンキー・パンチ (C)TMS

ルパン三世役/山田康雄

アルセーヌ・ルパンの孫で世界中に名の知れた大泥棒です。10年以上前、ゴード札に手を出そうとして窮地に追い込まれたところを幼少期のクラリスに助けられたことがあります。 ルパンの声を演じる山田康雄は東京都出身、1932年生まれの俳優・声優・ナレーターです。1971年に抜擢されて以来亡くなるまで担当していたルパン役のほか、クリント・イーストウッドの吹き替えも担当しています。

クラリス・ド・カリオストロ役/島本須美

本作のヒロイン、クラリス姫。7年前に火事で両親を失い、カリオストロ公国・大公家の最後の1人となりました。大人しい性格をしていて、大公家に伝わる「銀の山羊の指輪」の所有者でもあります。それが理由でカリオストロ伯爵に結婚を迫られることに。 クラリスの声を演じる島本須美は高知県出身、1954年生まれの女優・声優・ナレーターです。1977年頃からテレビドラマにも出演しています。

カリオストロ伯爵役/石田太郎

カリオストロ公国の摂政で7年前カリオストロ大公が亡くなってからは実質的な権力を手中に収めています。クラリスを娶り合法的な支配者となることに加え、クラリスがもつ指輪を奪いゴートの秘宝を手に入れようと目論んでいます。 カリオストロ伯爵の声を演じる石田太郎は京都府京都市出身、1944年生まれの俳優・声優・僧侶です。舞台やテレビドラマ、映画と幅広く活躍しました。

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何度観ても最高!名作映画『ルパン三世 カリオストロの城』

今回は、一言では語りつくせない『ルパン三世 カリオストロの城』の魅力を紹介してきました。 本作は、ストーリー構成や細かい演出、魅力あるキャラクターの登場など様々な要素が引き立てあった傑作アニメ映画に仕上がっています。 ぜひこの記事を通じて、あなただけのお気に入りポイントを再確認してみてください!