2024年4月27日更新

17巻完結『血の轍』(ちのわだち)最新巻までネタバレあらすじ!最終回の結末は?

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『血の轍』の魅力を全巻ネタバレ紹介!押見修造が描く、新たな狂気

『血の轍』
『血の轍』
  • もはやサスペンスホラー!あなたの近くにも毒親が……?
  • 不気味な世界観。明かされる真実に衝撃を受ける

『惡の華』や『ぼくは麻理のなか』など多くの傑作を描いてきた漫画家・押見修造が、2017年から手掛けている作品が『血の轍』(ちのわだち)です。小学館の『ビッグコミックスペリオール』に連載され、単行本は2024年4月現在の時点で17集まで刊行されています。 サイコサスペンスとして毒親という題材に迫る本作は、主人公に対する母親の歪んだ愛情と、ある夏の日に起きたゾッとする事件を中心に展開されていきます。2018年「このマンガがすごい!」のオトコ編9位にもランクインしました。 今回はそんな『血の轍』について、1巻から最終17巻までのあらすじと魅力を紹介していきます! ※この記事には『血の轍』最終17巻までのネタバレ情報が含まれます。未読の人は注意してください。

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【最終回】17巻あらすじをネタバレ解説

静一は認知症の静子を自宅に引き取り最後まで見届けることを決めました。自力で生活ができなくなってしまった静子のため、食事の世話からトイレの介助まですべてを淡々とこなしてく静一。どれだけ大変な状態でも静一は一度も憤ることなく、たった1人で静子を看続けます。 静子といるため仕事も退職。1日中静子と2人きりの生活の中、ある夜唐突に静一は夢を見ます。 広い部屋でテーブルをはさんで向かい合う子ども姿の静一と若い頃の静子。「黙ってないで何か言ったら?」という静子の言葉を皮切りに、2人は過去の出来事の中で言えなかったこと、思い続けてきたことを語り合いました。 今まで絡みに絡んでいた因縁の糸を解いていくように、2人はまっすぐな言葉で1つひとつ話をするのです。 愛してもらえず母親を憎んでいた、と言う静一。静子はその言葉に大笑いした後、たった一言「私はずっと愛してたよ」と口にします。その言葉が本当なのか、嘘なのか静一にはわかりません。けれど、静一は「僕もあなたを愛してるよ」と穏やかに返すことができました。 夢の終わり。別れの言葉を最後に交わして静一は目を覚まします。息を引き取った静子を見ながら、静一は乾いた笑みとともに「死んだ」と呟くのでした。

吹き出し アイコン

ずっと靄がかかっていた2人の関係や心情が最後の会話でようやく澄んでいくような印象を覚えました。重く苦しい今までの積み重ねがあったからこそ、ラストシーンの味わい深さと言葉にできない余韻にひたることができますね。

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1巻あらすじをネタバレ解説

ここからは漫画『血の轍』を1巻から順番にネタバレ解説していきます!

主人公の静一は、ごく普通の中学2年生男子のつもりでした。内向的ですが学校には友達がおり、気になる女子の吹石由衣子とも、たまに会話する仲になっています。 あるとき静一は、従兄弟のシゲルに笑われてしまいます。シゲルが言うには、静一の母・静子が「過保護」だというのです。しかし静一は、静子のスキンシップや過干渉が当然の親子関係だと思っていたため、真顔で否定したのでした。 シゲルを含む親戚たちと山登りに行った夏休みに、事件が起きます。シゲルが崖の近くでふざけたとき、静子は息子が落ちないように静一を抱きしめました。するとシゲルはまた「過保護」と笑ったのです。 その後、別の崖でもシゲルはふざけます。静子は1度シゲルを抱きしめたのですが、一呼吸の後、何を思ったのかシゲルを崖から突き飛ばします。転落したシゲルと呆然とする静一ーー。 なぜか静子は微笑を浮かべるのですが、直後に悲鳴をあげて取り乱します。以降静子は、シゲルが足を滑らせて崖から落下したと親戚たちに嘘を話しはじめるのでした。

2巻あらすじをネタバレ解説

転落したシゲルは意識不明であるものの生きていました。警察の事情聴取が行われますが、静子はシゲルがよろけたのだと堂々と嘘を話します。静一は迷いながらも「ママの言う通りです」と静子を庇うのでした。 静一が事件のショックから1人の部屋で泣いていると、自宅に吹石由衣子が訪れます。しかし、会話を楽しめる心境ではなく、静一はどもりながらも「遊べない」と伝えるのでした。 去り際に吹石は手紙を渡してくれたのですが、その様子を静子が見ていました。吹石が帰った後で、静子は静一に手紙を見せるようにと強要します。ハートのシールで封をされていた手紙は、吹石からのラブレターでした。 静子は「むり」「受け入れられない」と、静一と吹石の関係を全否定します。静一は赤子のように泣いてしまうのですが、静子は笑顔で息子と共にベッドに横になり、手紙を捨てるように提案。静一は好きな子の手紙を、母親と一緒に破るという異様な行為を承諾してしまいます。 手紙をビリビリに引き裂いた後で、静一と静子は唇同士を熱く重ねて親子のキスをするのでした。

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3巻あらすじをネタバレ解説

静一はストレスから吃音を発症。まともに会話ができなくり、同級性に笑われます。唯一笑わなかったのは吹石で、放課後に告白の返事を求めてきました。しかし静一は「ママがいるから」という理由で交際を拒否。逃げるように家に走ります。 自宅に着くと、両親の口論が外まで漏れ聞こてきました。喧嘩の発端はシゲルの見舞いに行くかどうがだったようですが、静子は破滅的なことを叫び出し、見えない赤子をあやす素振りをします。母の奇行に静一は唖然とするだけでした。 静子を置いて、シゲルの見舞いに行く静一と父親。シゲルは脳障害で意思疎通すらできずに、だらりとベッドに寝ていました。 シゲルを見て思うところがあった静一は、帰宅後に吐き気に襲われながら、胸中の疑念を静子にぶちまけます。なぜシゲルを落としたのか?なぜ嘘を吐いたのか? 静子の返答は「ママ死んでいい?」という意味不明なものでした。静一が戸惑うと、静子は「じゃあママがやる?」と呟き、静一の首を締めます。静一が窒息しかけたところで静子は手を離し「なまいき言わないで。いっちょまえに」と、いつになく冷徹に言い放ったのでした。

4巻あらすじをネタバレ解説

静子に恐怖を覚えた静一は、放課後に家に帰りたくないと感じるようになり、時間つぶしのためにベンチに腰掛けていました。すると、隣に座ってきたのは吹石でした。彼女は、自分も親子関係が悪いと話し「いっしょだね」と静一に寄り添おうとしてくれます。 嬉しく感じた彼は、「つきあっ……て」と、どもりながらも自分から告白。オーケーされ、あらためて吹石との交際がはじまります。吹石のおかげでメンタルが安定した静一は吃音が改善。同級生にもバカにされなくなっていきます。 ベンチでの会話が日課になり、「ずっとここにいたい」と2人は語り合います。しかし、安心できる時間は長く続きませんでした。静子が静一と吹石を発見し、追いかけてきたのです。 草むらで追い詰められかけた静一でしたが、初めて母親に敵意を見せます。「あっちいけ」「おまえなんかいらない」とハッキリ静子を拒絶。 罵声を浴びた静子はトラウマを刺激されたのか「いらない子」と呟き、自身の爪を噛んで指を血だらけにします。静一と吹石は、その隙に走って逃げ出したのでした。

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5巻あらすじをネタバレ解説

静子から逃げた吹石と静一。彼女は、家族には無断で静一を自宅に招き入れ、おにぎりを振る舞って部屋に泊めます。一緒にベッドに入ってキスをした静一は興奮と共に精通を経験するのでした。 しかし翌日、吹石宅に静子が現れます。静一は身を隠し、吹石は玄関へ移動。彼女は静子に対して、静一の居場所を知らないとシラを切りつつ、「おばさんのせいじゃないんですか?」と逆に詰問しました。 すると静子は「私のせいね」と呟き、唐突に独白をはじめます。家族から愛してもらえなかった子供時代や、周囲の軋轢、愛する静一への想い……。出迎えた吹石の父親を困惑させるほど独り語りをした後、静子は帰っていくのでした。 その後、静一は吹石の父に見つかり、吹石の家に泊まっていられなくなります。2人で逃げ出し、冷え込んだ立体交差点の下で身を寄せ合いますが、先ほどの母親の言葉で心境が変化した静一は、吹石に「もう……帰る」と告げます。吹石は「私のせい?」と涙を流しますが、静一は答えません。 吃音がまた発症してしまった静一は、唇を震わせながら一心不乱に帰路を走ります。

6巻あらすじをネタバレ解説

再会した静一と静子は、涙ながらに謝罪し合い、2人で家に帰って“お話し”をすることにします。 静子はシゲルが落ちたときの話をはじめ、「静ちゃんもママも悪くない。しげちゃんは自分で落ちたの」と言い切ります。犯行をとぼける母にあらためて驚愕する静一でしたが、繰り返し説明されるうちに洗脳状態に陥ります。シゲルが1人で転落したのが真実だったと“思い出した”ように錯覚するのです。 また静子は、静一が吹石と一緒にいたことを責め、射精したことを「きったない」と否定。「いなくなって」と家から追い出そうとします。静一は「(僕は)吹石も嫌いになるから」と許しを請います。 対する静子が口にしたのは、「さいしょっから嫌いだったんだいね?」という誘導の言葉でした。静一はマインドコントロールされるように“最初から吹石が嫌いだったと思い出して”、指切りをします。 父親の一郎が帰ってきて、シゲルの意識が戻ったという衝撃の事実を伝えますが、自分たちで記憶を改ざんした静一と静子は、もはや危機感すら覚えなくなって微笑むのでした。

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7巻あらすじをネタバレ解説

シゲルは記憶を失っていたものの、それでも意識を取り戻したことにホッとする静子たち。しかし面会後、静子と一郎(夫)はささいなことですれ違い、それから彼女は部屋に引きこもるように。心配した静一が部屋に行くと、「(吹石には近寄らないという)約束」を覚えているかと聞かれます。この質問に対し、彼は「はい」と答えて、そのまま学校へと行きました。 学校に着くと机に吹石からの手紙が入っており、静一は放課後に彼女のいる学校の裏門に向かい、貸していたジャージなどを返してもらいます。家に泊めた一件以来、彼女は彼を心配していましたが、彼は母親と約束したから近づかないと一言。 それでも引き止める彼女に対し、笑顔で「もう飽きた」と彼女に言い放ちます。家に帰り、彼はこのことをうれしそうに静子に伝えますが、彼女は「近づくなって言ったんべに」と冷たくあしらいました。 12月、静子と静一はシゲルの家へ見舞いに行くことに。彼女は見舞いについてイラ立っているようでした。シゲルはやってきた2人を見て、静子を思い出したかのようなことを言いかけます。これを聞いた静一は、転びそうな彼を支えていた手を放しました。 転んで倒れながら、静子を指差して泣きじゃくるシゲル。シゲルの母親は彼女に、息子を突き落としたのは彼女ではないのかと問い詰めました。すると静一が「ママをバカにするな」と声を荒げます。こうして2人は家を去り、シゲルたちは呆然としていました。

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8巻あらすじをネタバレ解説

シゲルのお見舞いに行った帰り道。自分をかばってくれた静一を、静子は嬉しそうに抱き締めました。家に帰った2人は、一郎の登場には目もくれずに2人だけの世界に没頭。家庭に嫌気が差した一郎は、そのまま家を出て行ってしまいます。 次の日、静一が学校のトイレにいると、友達の小倉達がやってきて彼の髪をセットし始めました。変わっていく自分を笑いながら見ている小倉とシゲルの顔が重なった静一は、衝動的に暴力を振るい始めます。 その後、静一は先生に止められるまで、「死んでるくせに」と言いながら小倉の顔を殴り続けました。当然、保護者が学校に呼ばれますが、静子は吹石のせいだと責任を転嫁。 暴力沙汰から1週間が経つ頃には、クラスメイト全員から避けられるようになってしまった静一。そんな状況の中、静一の下校途中に叔母が現われ、話をすることになります。 シゲルを突き落としたのは静子だろう、と問い詰められた静一は叔母を殴って逃走。しかし、次の日も家に現われた叔母に対して、静子はついに自分がやったことを認めたのでした。

9巻あらすじをネタバレ解説

静子を罵倒し始めた叔母と叔父。激怒する叔父に髪を掴まれ、静子は無理矢理土下座をさせられます。しかし彼女は一切謝ろうとせず「警察に行きましょう」と言い続けました。 静子は追いすがる静一に対して、「もう嘘をつかなくていい」「いいママになれなくてごめんね」と泣きながら謝罪。そして、彼女は叔父と叔母によって連れて行かれました。 その日の夜、1人になった静一は吹石の夢を見て自慰を体験。その後帰宅した一郎から、改めて静子が逮捕されたことを告げられます。 次の日、事情聴取のために静一は警察と話をすることに。シゲルが突き落とされた当日の様子を詳細に語った彼は次第に過去にも同じようなことがあったことを思い出していました。 静一が3歳の時のこと。散歩の途中で高台に来た静子は、「わたしもう消えることにする」「せいちゃんが先ね」と言って、抱いていた静一を落としたのです。彼が死んでいなかったことを知った静子は、「もういいや」と言って彼を拾い上げ、再び帰路についたのでした。 その道中、道端には猫の死体が落ちていました。彼は猫と自身を重ね合わせ、「この猫は僕だ。殺されて置き去りにされた僕だ」と、自分が静子に1度殺されかけたことを思い出したのです。

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10巻あらすじをネタバレ解説

記憶が戻った静一は母親を拒絶し始めます。そんな静一に声を掛けたのは、やはり吹石でした。静子によって殺された自我を取り戻したい静一と、同じく幼い頃に母に捨てられた“要らない自分”と決別したい吹石。2人は自我を取り戻そうと、あるおまじないを始めます。 2人は母親の顔を描いた袋を「死ね」と叫びながら石で滅多打ちにして、高らかな笑い声をあげました。清々しい表情となった2人は改めて交際をスタートさせ、2人で生きていこうと誓い合います。 雪降る深夜、静一が目を覚ますと庭にシゲルの姿がありました。様子のおかしな彼に連れられ、静一は母に突き落とされた高台へ。絶望して「戻して」と懇願するシゲルに、静一は生きることの希望を説きます。ところが今度はそこへ静子の幻影が現れるのでした。 静一は胸に秘めた彼女への憎しみをぶちまけます。すると幻影は「私のせいにしないで。自分を見なさいよ」と言い放つのでした。

11巻あらすじをネタバレ解説

自分の心に巣食うママの幻影と対峙する静一は、静子の目を通した転落事故の様子を見ることになります。静子の目を通した静一は、彼女に対して強い憎しみをぶつけていました。シゲル転落時も「それを殺せよママ」という静一の囁きに呼応して、静子は静一に対して許しを請いながらシゲルを落とします。 自分が母親を追い詰めていたと知った静一は、静子に謝ると「もう消えたい」と茫然自失状態に。そんな静一に「じゃあぼくをころして」と声を掛けたのは3歳の静一です。静一は過去の死ねなかった自分を崖から落としますが、実際に彼が突き落としたのは一緒に来ていたシゲルでした。 シゲルは崖下で死亡しており、翌日静一は少年鑑別所へ。「内省の時間」に瞑想を始めた静一の中に、ふと母親の顔が浮かびます。決別したと思った静子は、まだ静一の中にいるのでした。

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12巻あらすじをネタバレ解説

鑑別所でも静一はいまだママに囚われている様子で、静子のことばかり考えています。ところが静子は突然、シゲルを突き落としていないと主張を翻したのです。その後、静子は証拠不十分で釈放されました。 しかしいくら待っても静子は静一に会いにきません。静一の精神は不安定なまま審判の日に。受け答えの中でママのことだけを考えていたと言う静一に対し、静子は終始興味がなさそうな表情を浮かべています。 口を開いたかと思うと、静子は突然母親をやめると宣言。「ありがとう人殺しになってくれて」「バイバイ」と晴れ晴れした笑顔を静一に向けたのです。 静一は半狂乱となって静子に馬乗りになります。彼は激情に任せて静子の首を締めますが、彼が見下ろしたママの表情はまさに無。自分に一切興味がなくなった静子に絶望した静一は、いよいよ壊れてしまいます。 そこから彼の視界は歪み、処分を言い渡される中、ついに静一自身もゆらりと歪んで消えてしまいました。

13巻あらすじをネタバレ解説

前作から23年が経った2017年。36歳の静一は東京で一人暮らしをしています。モノローグで「僕は生きてしまった」と語る彼は、淡々と日常を繰り返しながら死んだように生きているようです。 父は事件後も静一に寄り添ってくれたようで、今でもときどき会って食事をしていました。ところがそんな父も病に倒れ、静一が駆けつけたときにはすでに死亡。1人ぼっちとなった静一は父の自宅へと向かいます。 そこには自分の死んだ後のことや静一への懺悔の言葉、シゲルへの賠償金として8000万を支払ったことなどが綴られた手紙が遺されていました。手紙の最後には静子の住所が記されていましたが、静一はその部分だけそそくさと破って燃やします。 葬式と納骨を終えた静一は、やっとすべてが終わったとどこか安堵した表情。墓地で人生の終わらせ方を考えているとき、ふと子どもとぶつかります。静一が顔を上げると、そこには2人の娘を連れた吹石がいました。

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14巻あらすじをネタバレ解説

目が合う静一と吹石ですが、吹石は静一を覚えていない様子です。すれ違う瞬間に静一の顔が脳裏に浮かび、思い出す吹石。しかし静一は何も答えず、2人はそのまますれ違ってしまうのでした。 命を断つ覚悟を決めた静一ですが、自宅で首を吊ろうとすると静子の幻影が現れます。そして静子に阻まれ、結局彼は死ねませんでした。 死ぬことを諦めた静一の携帯が突如鳴ります。相手は警察署の青山と名乗る人物で、家賃を滞納し徘徊していた静子が保護されたと言うのです。すぐに死のうとするも、幻の静子に止められる静一。結局彼は静子との再会を果たします。 老いた静子と相対し、自分が家賃を払う条件で住んでいるアパートに彼女が来るのを拒む静一。アパートで泣いて詫びる静子を見限り、もうあなたとは二度と会わないと言い放ちます。 帰り道にあるベンチで、静一は幻影の静子と激しい言い合いになります。もう飽きたと語り帰路につく静一ですが、シゲルの幻影はまた会いに行くよねと呟くのでした。

15巻あらすじをネタバレ解説

静子との再会から2ヶ月。結局静一はシゲルの幻影に急かされるまま、静子の元へと向かっていました。 静子の家へと向かいながら「殺してしまうかもしれない」「いっそその方がいいのかもしれない」と自問自答を繰り返す静一。しかし軒先に腰掛ける彼女の姿を見た途端、静一の気持ちは再び揺らいでしまうのでした。 一方の静子は静一のことがわからない様子で、しきりに猫を探しています。そのまま静一は猫探しに付き合い、静子にすすめられるままアパートに泊まっていくことに。 静子はボケてしまったのだろうか、それとも本当は自分が静一だとわかっているのではないだろうか。そんな疑問が湧きあがりながらも、流されるまま静子のもてなしを受ける静一。 そして床に就いた静一は、静子に背を向けたまま、何をして、何を考えて、何で生きていたのか問いかけます。 すると静子はポツリ、ポツリと己の歩んできた轍を語り始め、ついには自分が忘れ去っていたとある記憶を思い出すのでした。

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16巻あらすじをネタバレ解説

静一はついに母親の深層へと潜り込みます。そして多くの人にころされた静子と母親にころされた静一は、2人だけの境地にたどり着くのでした。心が通い合い、静一は新たな気持ちで目覚めます。 「元気で。」ーー。一言だけを残して静子のもとを去り、前を向いて生き始めます。その日を境に淡々と日々を送り、静子の家を訪ねることもしなかった静一。本を読み始めてからは死のうと考えることを止め、季節が変わっていくのを実感していました。 そして心の中にいたシゲルも姿を消しますが、夢の中でシゲルの母親が不敵な笑みを浮かべます。夢から覚めた静一のもとに一本の電話が。なんと静子が階段から落下して病院に送られたとのこと。 事件性はなく、幸いにもすぐに退院できる程度の怪我でした。翌日以降、静一は気力を失った静子の介護を始めます。もはやかつての母親の姿はなく、少しずつ“溶けて”いくのでした。

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物語が良い方向に展開していったと思ったら少しずつ不穏な感じに!後半は介護の大変さも重なっていて、静一が少しずつ追い込まれているのが伝わったな~。だけど最終的には母親を自宅に引き取る決断をした静一。この行動が正解なのかは分からないけど、どこか瞳に色があったから良かったのかな?ちょっぴり危うさも感じるけど……。

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『血の轍』物語を読み解くために注目すべきポイント

肉まんとあんまん

日常の光景として、静子が静一に対して「朝はんは肉まん?あんまん?」と尋ねるシーンが何度もあります。選択肢が2つしか与えられていないこと自体に違和感を感じるとともに、静一が毎回肉まんを選んでいる点も不可解ですよね。 そして静一が吃音を発症した際には「あんまん」と答えようとしますが、上手く伝えられずに「肉まん」と答えます。これは静子の支配を象徴しており、「肉まんを選択=母親に支配されている」「あんまんを選択=支配から逃げようとしている」のではないでしょうか。

どうして静一の目に映る静子は姿を変えるのか

大人に成長した静一の前に現れた静子。その姿は子供の頃と変わっておらず、むしろ若くて綺麗になっています。すでに別れから20年以上経っているのに老いていないのは不可思議ですよね。 しかし129話では、静子の姿が場面によって老いたり(本当の姿)若くなったりしていました。入れ替わりの頻度は非常に高く、静一が静子への拒絶と愛情の狭間で揺れているのだと思われます。 今までは「静一の目」というフィルターを通して見ていた静子の姿は若くて美人。しかし徐々に支配から逃れたことで、本当の姿が見えてきたのではないでしょうか。 さらに122話では静一の目の中に映る静子の姿が、老婆の姿と若い頃の姿が混合して描かれています。つまり本作は静一のフィルターを通して描かれているのです。

白い猫が意味するものとは

『血の轍』では、何度も白い猫が登場します。しかし猫は生きている姿を見せたことがありません。そして125話では死んでハエがとまっている猫の姿も。猫の様子は静一の感情とリンクしており、さらに「猫=支配される側」と見ると恐ろしいほどに静一の立場とリンクします。 129話では、作中で初めて生きた白猫が登場。静子に優しく抱かれていますが、静一から見た猫は子供の頃の静一の顔をしています。さらに静一の膝に乗ってきた猫(幼少期の静一)は涙を流していました。 つまり静一は猫に自分を投影しており、猫の状態が静一の感情を表しているのです。139話のラストでは清々しい顔をして前を向いて静子のもとを去る猫が描かれているので、静一が新たな人生を歩むことを暗示しています。

『血の轍』主な登場人物を紹介!毒親・静子の歪んだ性格に迫る

主人公は気弱な中学生・静一

主人公・長部静一(おさべせいいち)は、中学2年生の男子です。 見た目は幼い印象で、身長が低めの痩せ型。性格は内向的ですが、想いを寄せる吹石由衣子に自分から声をかけたり、友達に冗談を言ったりするなど、社会性のある面も描かれています。 物語序盤では、過干渉な母親・静子に対して、照れたリアクションこそ見せても、とくに問題意識は感じていない様子でした。しかし、従兄弟のシゲルに「カホゴだいね」と指摘されて以来、反論しつつも徐々に母親の異様さを認識していきます。 静子がシゲルを崖から突き飛ばしてした事件以降は、精神的ストレスから吃音を発症。学校で他の生徒からいじられるようになります。 その後、吹石と付き合いはじめると吃音が治り、思春期の少年らしく精通を経験。静子に自己主張ができるようになるなど成長を見せましたが、それらは一時的な変化でした。 静子に洗脳されるように、「吹石を嫌いになる」と約束してしまうなど、母親との共依存関係を繰り返してしまうキャラクターです。

怖すぎる“毒親”・静子

長部静子は主人公の母親で、若々しく美しい容姿の主婦です。 一見すると穏やかで優しい女性ですが、静一に対して過保護な面を持っています。静一を「静ちゃん」と呼んで溺愛しており、抱きしめるのはもちろん、唇を重ね合うキスまでしています。 また、最愛の静一に対しての態度すら安定していません。精神的に不安定になると、首を締めたり、ヒステリックに怒鳴ったりと豹変しています。 こうした異常行動は、どこまでが演技で、どこまでが素なのかが曖昧です。シゲルを崖から突き落としたときも、穏やかな微笑を浮かべた直後に、まるで本心から驚いたように悲鳴をあげました。 性格が歪んだ背景には、静子の生い立ちが関係している模様です。まだ作中で明確な過去は描かれていませんが、静子は自分自身が「いらない子」で「愛してもらえなかった」と、度々呟いています。 夫や親戚とも表面的にしか付き合えず「ひとりぼっち」だった……。そうした孤独感や閉塞感から、静一に執着していることが垣間見える、恐ろしくも魅惑的なキャラクターです。

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作者・押見修造の作品を紹介

『おかえりアリス』

亀川洋平、室田慧、三谷結衣。小学校の時から仲の良かった幼馴染3人組は、中学生になっても気安く距離の近い関係を築いていました。しかし、洋平が三谷を、三谷が慧を好きになり水面下で三角関係が形成されていきます。 そしてある時、洋平が三谷と慧のキス現場を目撃してしまったことから関係は悪化。慧の転校で完全に3人の関係は終わったかに見えました。しかし、高校1年の春、慧が戻ってきたことで幼馴染たちの青春の時間が再び動き始めて……?

『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』

吃音により自分の名前を言うこともできないヒロイン・大島志乃。幼い頃からもどかしさに苦しめられ、人間関係にまで悩まされる日々。様々なことを諦めつつあった志乃ですが、高校で初めて大切な友人ができます。 友人をきっかけに変化していく志乃の日常。うまく言葉にできないもどかしさは変わらずありつつも、さらに違った感情を志乃は知っていきます。 これは、ぎこちなくも確実に関係を紡いでいく高校生たちの不器用だらけの青春ストーリー。

『血の轍』をraw・zip・pdfなど違法サイトで読むのは絶対にやめよう!

違法NG

海賊版サイトで『血の轍』のzip・rar・pdf・rawなどのファイルが違法アップロードされていたとしても、絶対に利用するのはやめましょう。

海賊版の漫画サイトは利用しただけで犯罪になる可能性があります。軽い気持ちで漫画を閲覧したとしても、最悪のケースだと刑事罰を科されることもあるのです。元々違法アップロードの規制対象は、音楽と映像のみでした。しかし、2021年1月の法改正により漫画、雑誌など全ての著作物に適用されるようになったのです。

さらに海賊版サイトにはデバイスのウイルス感染や、クレジットカード情報が不正に抜き取られるなど、犯罪に巻き込まれるリスクさえはらんでいます。安全に漫画を読むためにも、公式なサービスの利用を心がけましょう。

令和3年1月1日から、インターネット上に違法にアップロードされたものだと知りながら侵害コンテンツのダウンロードを行う行為が幅広く違法となります。刑事罰の対象となる場合もあります。

『血の轍』の展開に鳥肌!ネタバレをチェックして本編に追いつこう

『血の轍』の題材となっている「毒親」は、現代において普遍的なモチーフになります。静子ほどではないにしても「自分の親も過干渉気味だった」という人が、深く共感してハマっているようです。また、「自分に子供ができたら毒親にりそうだ」と、静子の方に感情移入している読者の声もネットでは書き込まれています。 心情描写が丁寧なため、読み返すことで過去のエピソードの微細なセリフの意味が再解釈できる作品です。読み返しながら、今後の展開に注目していきましょう!