2021年7月9日更新

『バケモノの子』熊徹は時代遅れな父親か?九太にとってどんな存在だったのか解説

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『バケモノの子』
©2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS

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『バケモノの子』熊徹を解説!頑固な父親は時代遅れなのか

2015年に公開された細田守監督によるアニメ映画『バケモノの子』。人間界からバケモノ界に迷い込んだ主人公・九太の成長物語である本作で、師匠・熊徹は九太にとってかけがえのない存在です。 両親を失った九太の父親代わりでもあった熊徹。この記事ではそんな熊徹のキャラクター基本情報を紹介するとともに、九太の目線で彼がどんな「師匠」で「父親」だったのか読み解いていきます。 熊鉄のような不器用で頑固一徹な父親は時代遅れなのか、込められたメッセージを考察してみました。 ※この記事は映画本編のネタバレを含みますので注意してください。

熊徹の基本情報

名前熊徹(くまてつ)
種族バケモノ
立場・渋天街随一の武芸の達人
・次期宗主候補の1人
性格粗暴で品格のカケラもない
声優役所広司
モチーフ映画『七人の侍』の菊千代

熊徹はバケモノ界「渋天街」で一二を争う最強のバケモノ。次の宗師候補の1人ですが、宗師になるための必須条件、「弟子をとること」を満たしていません。粗暴で品格のない熊徹の弟子には誰もなりたがらないのです。 そんな時、家出して渋谷でさまよっていた九太と出会います。熊徹をバケモノ界まで追ってきた九太。強くなりたいという彼の根性を気に入った熊徹は、バケモノ界ではご法度である「人間」を弟子にとるのでした。

九太から見た熊徹は?4つの側面を解説【ネタバレ注意】

①憧れの師匠であり信頼できる父親

両親がいなくなり親戚の養子となる予定だった九太は、葬式で大人たちの会話を聞いて嫌になって逃げ出しました。 そんなとき出会った熊徹。九太は強さに惹かれて弟子入りを申し込みましたが、幼稚なくらい不器用に感情をぶつける熊徹の性格が九太の心を開いていったことも間違いないでしょう。 苦手な生卵を食べるように叱ってくれたことすら、親からのような愛を感じられて九太は嬉しかったはずです。 熊徹は九太にとって師匠なだけでなく、信頼できる父親になっていったのです。

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②一緒に成長できた仲間

熊徹と九太はまるで性格が合わず、事あるごとに衝突していました。それでも熊徹は噓偽りなく真っ直ぐに九太と向き合い続け、家族として師弟として絆を強めていきます。 九太は8年の歳月を過ごすなかで、か弱い少年から立派な青年へ成長を遂げます。一方熊徹も、荒削りだった武術を人に教えることで洗練させていきました。また独りよがりだった性格も、2人そろって少しずつ丸くなっていきます。 九太にとって熊徹はただの指導者・保護者ではなく、一緒に成長する仲間でもあったのでした。

③一人前と認めてくれない、子離れできない父親

九太が人間界に出かけていたことを知った熊徹は取り乱し、九太を叱りつけました。 九太はそんな熊徹を見て、これだけ一緒に過ごしても自分は所詮人間だから心に闇を宿している可能性をまだ疑われるのだ、弟子としても認めてもらえないのだとショックを受けます。さらにはそんな熊徹に不満を感じてしまう自分はやはり人間で、本当に心に闇を抱えているのだと思い込むことに。 しかし実際には、熊徹は九太のことを認めて信じていました。多くの人間がもつ心の闇を九太はやどしていないとわかっていたのです。 熊徹が取り乱したのは、九太が人間界に戻ってしまうのではないかという不安や寂しさが原因でした。九太のことを深く愛していたが故に、子離れできていない父親のようになっていたのです。

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④命に替えても愛を注いでくれた恩人

九太と同じ人間の子だった猪王山の息子・一郎彦。彼の中に芽生えた闇は、人間界の渋谷で暴走してしまいます。それを身を挺して止めようとする九太の前に、神への転生の特権を使って燃える刀となった熊徹が現れました。 命に替えて人間界を守ってくれた熊徹。九太はその惜しみない愛情と揺るぎない信頼に改めて気付かされます。もう熊徹がいなくても、自信と誇りを持って立派に人間界で生きていけることでしょう。 さて、自分の消滅と引き換えに九太の未来を守ったことから一見子離れできたように見える熊鉄。しかし九太の胸の中へ吸収されることを選んでいるところを見ると、本当は最後まで子から離れられない不器用な父親だったのかもしれません。

熊徹のような不器用な父親は時代遅れか?

現代社会では、かつてのように父親が1人威厳を振りかざして子育てをすることが難しくなってきています。しかし熊徹を見ていると、不器用な男親でも子どもを立派に育て上げることができると思えるのです。“支えてくれる存在が周りにいれば”の話ですが……。 子どもは親が思っているよりもいろんな人と関わって生きています。多々良や百秋坊のように見えるところで助けてくれる人だけではなく、女子高生の楓や人間の父親もある意味では九太を導く「親」でした。 現代では家族の形も親のあり方も多様化が進み続けています。時代遅れに見えることもあるかもしれませんが、威厳のある男親というのもその1つの形。 どんな親も皆不器用な側面を持っているものです。完璧な親なんていません。 多様化が進んだ現代だからこそ、社会がいろんな「親」や「家族」を認めて支えていってほしい、また困っている親たちは周りに頼ってほしいという思いが、熊徹というキャラクターには込められているのかもしれません。

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『バケモノの子』熊徹は愛すべき不器用な父親!

人間界とバケモノ界という2つの異なる世界で、親子のような絆を築いた熊徹と九太。『バケモノの子』はそんな不思議な父と子の関係性を昔ながらの武術アクションを用いて描いた、どこか懐かしいような冒険活劇でした。 不器用な漢役を演じることも多い役所広司が熊徹の声を担当したこともあり、渋みもありながら憎めない愛すべきキャラクターとなった熊鉄。『バケモノの子』を鑑賞する際は、ぜひ熊徹にも注目してみてください!