あの人の死は必然だった?『サマーウォーズ』の考察・解説を紹介【ネタバレ注意】

2017年8月14日更新

2009年公開の細田守監督作品『サマーウォーズ』のあらすじ・考察・解説をご紹介!OZの名前の由来、栄おばあちゃんの死について、夏希が花札代表に選ばれた理由など。たくさんのネタバレを含んでいますので未視聴の方は要注意です。

『サマーウォーズ』がもっと楽しめる!考察・解説を紹介

『サマーウォーズ』は『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』『時をかける少女』『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』などヒット作を連発する細田守監督作品。2009年8月に公開され興行収入16.5億円を記録したヒット作です。 今回は本作をより楽しめること間違いなし、な考察や解説をご紹介!その前にまずはあらすじをおさらいしましょう。

『サマーウォーズ』のあらすじ【ネタバレ注意】

数学が得意な高校2年生の主人公の小磯健二は、憧れの先輩である高校3年生の篠原夏希に、実家に一緒に来てくれと誘われます。 夏希の実家のある長野県上田市に行くと、90歳になる夏希の曾祖母陣内栄の誕生日を祝うために親族26人が集結していて、健二は夏希に婚約者のふりをするように頼まれます。栄に婚約者を連れてくると約束してしまったことが理由です。 時を同じくして、インターネット上の仮想世界「OZ」が「ラブマシーン」という人工知能に乗っ取られます。OZと密接に関係している現実世界は混乱に陥り、栄を中心とした陣内一族の活躍により事態は収束にむかいますが、混乱の影響で、栄の健康状態をモニターするシステムがエラーし、栄は心臓発作で亡くなってしまいます。

陣内一族の男たちは栄の敵討ちのためラブマシーンを倒す計画を立て成功しかけるが、ちょっとしたミスで逆転され、アカウントを奪われてしまいます。ラブマシーンが奪ったアカウントの中には、小惑星探査機「あらわし」を管理するアカウントも含まれており、ラブマシーンはあらわしを地球のどこかの核施設に落とそうとします。 陣内一族は地球の危機に団結して立ち向かうことを決め、ラブマシーンに花札勝負を挑みます。一族を代表して夏希が勝負をし、見事勝利しますが、ラブマシーンは最後の悪あがきとして、あらわしを陣内家に落とすことを画策します。 健二は得意の計算能力を使い、ラブマシーンのパスワードを解析し、あらわしの落下点を変更することに成功。陣内家を救った健二を一族は認め、夏希は健二の頬にキスをします。

仮想世界「OZ」って何?

『サマーウォーズ』の世界を支える重要なシステム「OZ」。インターネット上の仮想世界として描かれており、映画の冒頭でも説明がなされますが、普段からネットを利用していない人やアバターという言葉を聞いたことがない人にはわかりづらいかもしれません。

仮想世界「OZ」とは?

OZは『サマーウォーズ』に登場するインターネット上の仮想世界であり、世界中で10億人以上が利用しています。インターネット、携帯電話、テレビなどからアクセスすることが可能で、ショッピング、スポーツ観戦、ゲーム、ビジネス、納税などの各種行政手続きをすることができます。

アバターとは?

OZを利用する際には、アバターの設定が必要になります。アバターはOZ上での利用者の分身で、職業についている人であれば、現実世界と同様の権限を持つことができます。水道局員なら、OZ上で水道管理ができますし、アメリカ大統領なら、核ミサイルの発射もできてしまうということになります。アバターが乗っ取られると、それらの権限を悪用されてしまう危険があります。

OZの名前の由来

「OZ」は『オズの魔法使い』からとったのではないかという説が一部にありますが、これは誤りです。 OZの名前の由来は、実は細田守監督が昔東映アニメーションで働いていた際に、その近くにあったスーパーの名前「LIVINオズ」から取ってきているのだそう。当時、監督は家と仕事場とスーパーを往復する生活を送っていたそうで、なんでもある夢のような場所「オズ」だったそうです。

祖母・栄の死は『サマーウォーズ』の物語上必然的だった

細田守監督は本作まで一人も死なせなかった

物語のちょうど真ん中で栄が亡くなります。前半で一族の団結を描き、中心となってきた栄を失った一族が再び団結するのを後半で描くという構成でしょう。 細田守監督は東映アニメーションで働いていた時に子供向けアニメを主に作ってきたことから人の死に抵抗感があり、『サマーウォーズ』までその作中で一人も死人を出してきませんでした。しかし本作では物語の流れとして必然的に「栄の死」を描かなければならなかった、とインタビューで答えています。 実は、最初のプロットでは栄は死なないという設定でした。しかし、家族が心をひとつにしていく過程でどうしても栄が死ぬ必要があると考え、泣く泣く栄が死ぬストーリーに変更したそうです。

栄の死を描きたくなかったもう一つの理由

細田監督は経験上、製作中の映画と現実がリンクしてしまうことが多く、製作当時、細田監督の祖母の健康状態が思わしくなかったたね、栄の死を書いてしまうと、祖母が死んでしまうのではないかという葛藤もあったとのことです。『サマーウォーズ』は2009年8月公開ですが、細田監督は同5月に母を6月に祖母を亡くしています。 細田守はアニメ映画監督としての覚悟をもって、栄の死を必然性をもって描いたということになります。このシーンでは、栄の死に関して、ラブマシーンによる混乱の影響によるものという描き方をしつつも、医者である万作に「寿命だろう」というセリフを言わせているところに、細田監督の死生観がうかがえます。 また、栄の死後のシーンでは、朝顔や子供の授乳を描くことで、生命の循環を暗示しているように思えます。

花札で夏希が代表になった理由とは

ラストでラブマシーンに花札勝負を挑むシーンがありますが、この時、ラブマシーンと戦うのはヒロインの夏希です。ヒロインの見せ場を作ると言ってしまえばそれまでですが、夏希が選出されるシーンは描かれていませんし、また理由も直接言及されているシーンはありません。 物語内では、侘助に負けるシーンも描かれています。どうして、夏希が代表に選ばれたのでしょうか?

答えは小説版『サマーウォーズ』の中に

『サマーウォーズ』には角川文庫から出ている小説版があります。映画では描かれなかったキャラクターの心理やセリフが小説では描かれています。 栄が亡くなる前日に、健二と花札をするシーンで、「この家には、私に負けず劣らずの勝負強い子がいる」と話しています。夏希は勝負強いというコンセンサスが親族で共有されていたのかもしれません。

本作の悪役ラブマシーン、その正体とは

OZ内のみならず全世界の脅威となった人工知能「ラブマシーン」。その正体は侘助が作った知識欲を与えられたハッキングAIです。侘助から買い付けた米国の国防総省は実証実験場としてOZを利用しました。しかし、囲いの中から脱走して知識欲のままにOZ内を荒らしまわります。 物語上悪役として描かれているラブマシーンですが、彼の行動は悪意からくるものではありません。所詮「プログラムされたことをしている」に過ぎないからです。プログラムされたことをそのまま実行した結果大変な事態を招き最後は消滅させられる。ある意味悲しい存在とも言えるのかもしれません。

健二と夏希の恋はその後どうなったのか?

健二と夏希のキスシーン?で締められた映画版。初々しさ全開の二人でしたが二人の恋仲はその後どうなったのでしょうか。 全3巻刊行されている漫画版の最終巻ではおまけとして映画のラストシーンの後日の様子が描かれています。どうやらお互い意識しながらもまだ恋人関係には至っていない様子。 しかし、夏希は健二が東大を目指すことを知り、自分も東大を受験することを決めて必死に勉強しています。その理由を聞かれた夏希の返事は「やっぱり同じトコ行きたいじゃない」。侘助の事が思い浮かび落胆する健二ですがすぐに夏希の本心に気づきお互い赤面して締められています。どうやら二人の未来は明るいようですね。

『サマーウォーズ』と『ぼくらのウォーゲーム』が似ている!

本作に非常に似ている作りの作品があることをご存知ですか?インターネット上で戦う少年少女という世界観に加えて、背景などもそっくりで、一時は「パクリだ」と話題になったその作品は『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』という40分のアニメ映画。 実はこの作品も監督は細田守であり、2作の作りが非常に似ているのは『デジモンアドベンチャー 僕らのウォーゲーム!』の世界観や背景などに監督の思い入れがあり、『ぼくらのウォーゲーム!』で描けなかった深い物語を『サマーウォーズ』で描こうとしたのではないかと考えられます。 詳しくは以下の記事で説明しています。