2021年7月16日更新

『サマーウォーズ』をもっと楽しむ!家系図&キャラ解説とともに映画の魅力をネタバレ考察

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『サマーウォーズ』(2009年)

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細田守監督『サマーウォーズ』のあらすじ・魅力をネタバレ解説!

映画『サマーウォーズ』は、『時をかける少女』や『おおかみこどもの雨と雪』、『バケモノの子』などヒット作を連発する細田守監督による作品。2009年8月に公開され興行収入16.5億円を記録したヒット作です。 2019年には公開10周年を迎え、これを機に『サマーウォーズ』公開10周年プロジェクト《UP DATE》が始動。 明治安田生命やローソンとのタイアップをはじめ、巡回展「未来のミライ展 時を超える細田守の世界」やPixiv「スタジオ地図」イラストコンテストなど記念イベントが次々と発表されています。 10年経ってもいまだその人気は衰え知らずの『サマーウォーズ』。今回は本作をより楽しめること間違いなしの考察や解説を紹介!まずは映画のあらすじやキャラクター相関図など、基本情報からおさらいしましょう。 ※この記事は映画のネタバレを含んでいます。未視聴の場合は注意してください。

『サマーウォーズ』のあらすじ【ネタバレ注意】

数学が得意な高校2年生の主人公の小磯健二は、憧れの先輩である高校3年生の篠原夏希に、実家に一緒に来てくれと誘われます。 夏希の実家のある長野県上田市に行くと、90歳になる夏希の曾祖母陣内栄の誕生日を祝うために親族26人が集結していました。そこで健二は夏希に、婚約者のふりをするように頼まれます。栄おばあちゃんに、婚約者を連れてくると約束してしまったことが理由です。 時を同じくして、インターネット上の仮想世界「OZ」が「ラブマシーン」という人工知能に乗っ取らてしまいました。

OZと密接に関係している現実世界は混乱に陥り、栄を中心とした陣内一族の活躍により事態は収束にむかいますが、混乱の影響で、栄おばあちゃんの健康状態をモニターするシステムがエラーに。栄おばあちゃんは心臓発作で亡くなってしまいます。 陣内一族の男たちは栄の敵討ちのためラブマシーンを倒す計画を立て成功しかけますが、ちょっとしたミスで逆転され、アカウントを奪われてしまいます。 ラブマシーンが奪ったアカウントの中には、小惑星探査機「あらわし」を管理するアカウントも含まれており、ラブマシーンはあらわしを地球のどこかの核施設に落とそうとしていたのです。 陣内一族は地球の危機に団結して立ち向かうことを決め、ラブマシーンに花札勝負を挑みます。一族を代表して夏希が勝負をし、見事勝利しますが、ラブマシーンは最後の悪あがきとして、あらわしを陣内家に落とすことを画策。 健二は得意の計算能力を使い、ラブマシーンのパスワードを解析し、あらわしの落下点を変更することに成功。陣内家を救った健二を一族は認め、夏希は健二の頬にキスをしました。

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陣内家家系図解説&メインキャラクター・声優紹介

『サマーウォーズ』陣内家家系図
©︎ciatr All Rights Reserved

陣内家の家系図は当主の栄おばあちゃんを筆頭に、その子どもたち4人が長女・万里子、長男・万蔵、次男・万助、三男・万作と続きます。万里子には長男・理一、長女・理香がいますが2人とも独身。万蔵は亡くなっていますが、その娘・雪子がヒロイン・夏希の母です。 万助の子どもは、長男・太助、長女・直美、次女・聖美の3人。警察官の翔太は太助の息子で、キングカズマこと池沢佳主馬は聖美の息子です。 万作の子どもは男3兄弟で、長男・頼彦、次男・邦彦、三男・克彦は全員既婚者。それぞれの妻が典子、奈々、由美で、その子どもたちは総勢6人もいます。 そしてアメリカから帰国してきた夏希のおじの侘助。彼は陣内家当主だった曾祖父・徳衛の隠し子で、栄に引き取られた養子でした。夏希の初恋の人でもあります。

メインキャラクター&声優

小磯 健二声:神木隆之介
・数学が大得意
・引っ込み思案で内気な性格
・アバターは丸耳がついた少年
篠原 夏希声:桜庭ななみ
・健二の先輩で校内のアイドル
・健二に彼氏のふりを依頼
・恋愛潔癖症
・アバターは仔鹿の耳の和装少女
陣内 栄声:富司純子
・陣内家16代目当主
・カリスマ性が高く人脈が広い

『サマーウォーズ』その他の登場人物・声優はこちらから

『サマーウォーズ』基本の用語解説

仮想世界「OZ (オズ)」って何?

OZは『サマーウォーズ』に登場するインターネット上の仮想世界であり、世界中で10億人以上が利用しています。インターネット、携帯電話、テレビなどからアクセスすることが可能で、ショッピング、スポーツ観戦、ゲーム、ビジネス、納税などの各種行政手続きをすることができます。

OZの名前の由来

「OZ」は『オズの魔法使い』からとったのではないかという説が一部にありますが、これは誤りです。 OZの名前の由来は、実は細田守監督が昔東映アニメーションで働いていた際に、その近くにあったスーパーの名前「LIVINオズ」から取ってきているのだそう。当時、監督は家と仕事場とスーパーを往復する生活を送っていたそうで、なんでもある夢のような場所「オズ」だったそうです。

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アバターとは?

OZを利用する際には、アバターの設定が必要になります。アバターはOZ上での利用者の分身で、職業についている人であれば、現実世界と同様の権限を持つことができます。 水道局員ならOZ上で水道管理ができますし、アメリカ大統領なら核ミサイルの発射もできてしまうということになります。アバターが乗っ取られると、それらの権限を悪用されてしまう危険があるのです。

徹底考察!『サマーウォーズ』がもっと面白くなる3つの魅力

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\3つの魅力をひもとく/

1.アナログ世代とデジタル世代の共闘

架け橋としての夏希と偏りすぎな侘助
『サマーウォーズ』に追いつきつつある現代技術

2.家族のバトン

栄の死がもたらした絆
栄の意志を受け継いだ夏希のその後

3.リアル感の秘訣〜元ネタ集〜

美しい風景のモデル地
数学の暗号の元ネタ
陣内家のモデルは真田家

①アナログ世代とデジタル世代の共闘を描く

『サマーウォーズ』
(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

本作には「田舎と都会」や「大家族と1人っ子」、さらには「オンラインゲームと花札」など、古き良きもの現代的なものを対比するような要素が度々挿入されています。 しかしそれを劇中でどちらが良いなどと比較するわけではなく、両方の要素が力を合わせてラブマシーンを倒す様が描かれていました。 また夏希というキャラクターは、この対立しがちな2つの要素をどちらも大事にし、2つを協力するための架け橋となるような存在。 彼女が栄おばあちゃんと侘助の架け橋的な役割を果たしたように、古いものと新しいものを繋ぐ存在こそ、これからの時代には必要だというメッセージが込められているのではないでしょうか。

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新しいものに偏りすぎた侘助

一方、侘助は古い家や因習から逃れるようにしてデジタルなものに傾倒し、大事なことを忘れていました。古いものを否定し、新しいものこそ正義と考えるような、彼の偏りすぎた思想が誤算を招き、このような大惨事を引き起こしてしまったのです。 侘助の行動が、上記のメッセージのアンチテーゼのような役割を果たしているのかもしれません。

悪役ラブマシーンの悲しい正体

OZ内のみならず、全世界の脅威となった人工知能「ラブマシーン」。その正体は侘助が作った知識欲を与えられたハッキングAIです。侘助から買い付けた米国の国防総省は、実証実験場としてOZを利用しました。しかし囲いの中から脱走して、知識欲のままにOZ内を荒らしまわります。 物語上は悪役として描かれているラブマシーンですが、彼の行動は悪意からくるものではありません。所詮「プログラムされたことをしている」に過ぎないからです。 プログラムされたことをそのまま実行した結果、大変な事態を招き、最後は消滅させられる。ある意味悲しい存在ともいえるのかもしれません。

『サマーウォーズ』に追いつきつつある現代技術

『サマーウォーズ』
(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

本作が公開された2009年には「OZ」などまだSF的な存在でしたが、2021年現在、『サマーウォーズ』の世界に現実の技術が追いついてきているように思えます。ネットショッピングやネットバンキング、仮想通貨など今やあらゆる分野の取引がネット上で完結できるようになってきました。 しかしそういったデジタル化に伴って、合理化や効率化を追い求めすぎていないでしょうか?侘助の失敗を思い出し、便利さから「ラブマシーン」を呼び起こしてはいないか、今一度自身に問いかけてみるのも大切なことですね。

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②家族のバトン

死を描きたくなかった細田守監督

物語の中盤、栄おばあちゃんが亡くなります。しかし実は最初のプロットでは栄は死なない設定でした。 細田守監督は東映アニメーションで働いていた時に子供向けアニメを主に作ってきたことから人の死に抵抗感があり、『サマーウォーズ』以前は作中で1人も死人を出してきませんでした。 しかも製作当時には細田監督の祖母の健康状態が思わしくなかったそうです。経験上、製作中の映画と現実がリンクしてしまうことが多かったという細田監督は、栄の死を書いてしまうと祖母が死んでしまうのではないかという葛藤もあったとか。 『サマーウォーズ』は2009年8月公開ですが、細田監督は同5月に母を、6月に祖母を亡くしています。 しかしそれでも本作では物語の流れとして必然的に「栄の死」を描かなければならなかった、と細田監督はインタビューで語っています。

栄の死がもたらした絆 そして生命は循環する

物語の構成上、家族が心を1つにしていくためには、どうしても栄おばあちゃんが死ぬ必要があると考えた細田守監督。葛藤の末、泣く泣くストーリーを変更したそうです。 細田監督はアニメ映画監督としての覚悟をもって、栄の死を必然性をもって描いたということになります。 栄の死については、ラブマシーンによる混乱の影響によるという描き方をしつつも、医者に「寿命だろう」というセリフを言わせているところに細田監督の死生観がうかがえます。 そして栄の死後のシーンでは朝顔や子供の授乳を描くことで、生命の循環を暗示しているように思えます。また夏希と健二の愛に溢れたストーリーで物語を締めくくっている点も、世代の交代を思わせますね。

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「大切なのは手を離さないこと」栄おばあちゃんの遺言と朝顔の花言葉

本作の劇中には、朝顔のモチーフがたくさん登場しています。 朝顔の花言葉は「結束」と「愛情」。まさに陣内家が一丸となって困難を乗り越えた様子を示しており、栄の「人と人とのつながりを大切にする」という言葉にも繋がります。 そしてこの思いが若い世代である夏希にも受け継がれたことが、彼女に渡された朝顔柄の浴衣で表されているのです。夏希がその浴衣を着ている最後のシーンが、その最たる象徴でしょう。

栄の愛と強さを受け継いだ夏希

ラストでラブマシーンに花札勝負を挑むシーンがありますが、この時ラブマシーンと戦うのはヒロインの夏希です。物語内では侘助に負けるシーンも描かれているのにどうして、夏希が代表に選ばれたのでしょうか? ヒロインの見せ場を作るためと言ってしまえばそれまでですが、夏希が選出されるシーンは描かれていませんし、また理由も直接言及されているシーンもありません。 『サマーウォーズ』の小説版には、映画では描かれなかったキャラクターの心理やセリフが描かれています。 栄は亡くなる前日、健二と花札をするシーンで「この家には、私に負けず劣らずの勝負強い子がいる」と話しています。夏希は栄と同じように勝負強いという認識が、親族で共有されていたのかもしれません。

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小説版『サマーウォーズ』で描かれる2人のその後

健二と夏希のキスシーン?で締められた映画版。初々しさ全開の2人でしたが、2人の恋はその後どうなったのでしょうか。 全3巻が刊行されている漫画版の最終巻では、おまけとして映画のラストシーンの後日の様子が描かれています。どうやらお互い意識しながらもまだ恋人関係には至っていない様子。 しかし夏希は健二が東大を目指すことを知り、自分も東大を受験することを決めて必死に勉強しています。その理由を聞かれた夏希の返事は「やっぱり同じトコ行きたいじゃない」。 侘助の事が思い浮かび落胆する健二ですが、すぐに夏希の本心に気づき、お互い赤面するところで締められています。2人の未来は明るいようですね。

③リアル感がすごい!『サマーウォーズ』のさまざまな元ネタ集

本作はアニメ作品でありながら、キャラクターや舞台の実在感やリアルさが高く評価されており、観ている側も自然と感情移入できるような作りになっていました。 その実在感はどのようにして生まれたのでしょうか?ここからは本作のリアリティの由来を読み解いていきます。

美しい風景画の数々は長野県にルーツが

『サマーウォーズ』のメイン舞台となった場所があることはご存知ですか?あの田舎町は実在するのです。 主な舞台は、長野県上田市です。上田駅や伊勢山バス停、上田市役所、上田高校、海野町商店......。さらには夏希の実家までモデルがちゃんと存在します。 陣内家の大豪邸から一望できる風景は、実際に砥石・米山城跡からの景色とほぼ同じです。そして立派な家の門は上田城跡公園がモデルとなっているそう。 また細田守監督の妻の実家が上田市であり、そこへ足を運んだことがきっかけで『サマーウォーズ』の世界観が生まれました。ファンなら1度は訪れておきたい聖地ですね。

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健二が解いた数学の暗号にも元ネタが

作品の重要ポイントとなる、数字ばかりの暗号。実は健二のケータイに送られてきた暗号文は、モデルが実際に存在します。 モデルとなった暗号文は素因数分解の困難性を利用した「RSA暗号」といい、健二が解いた文章から察するに、特に「RSA-129」と呼ばれる超難解なもの。 これは1977年にアメリカの科学雑誌「サイエンス」で懸賞問題として掲載された問題で、1994年に600人が8ヶ月もかけて下位問題を解き、さらにスーパーコンピューターで解析してようやく解読されました。 こんな超難問と言える暗号文を、たったの一晩で解き切る健二はまさに天才少年!とはいえ最後の1文字を間違えていた上、世界で50人もが同じく解読していたのですが。

陣内家のモデルとなった一族は真田家

栄の着物についている家紋は、「結び雁金」をモデルにしたもの。実はこの結び雁金という家紋は、実際に戦国武将・真田家が使っていました。(上の画像は真田家の家紋) どうやら真田家自体が陣内家のモデルとして使われていたようです。

キャラデザインは「エヴァ」の貞本義行

『サマーウォーズ』
(C)2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

『サマーウォーズ』のキャラクターデザインを手がけたのは、「エヴァンゲリオン」シリーズで知られる貞本義行。彼は「エヴァ」のように、現実世界とSF的世界の両方で生きるキャラクターをリアルに描く手法に定評があります。 そのおかげか本作のキャラクターも魅力的かつリアルな、生き生きとした表情に仕上がっていました。貞本義行は他にも、『時をかける少女』や『おおかみこどもの雨と雪』などの細田監督作でキャラクターデザインを担当しています。

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「ぼくらのウォーゲーム」との類似点

本作に非常に似ている作りの作品が存在します。 インターネット上で戦う少年少女という世界観に加えて背景などもそっくりで、一時は「パクリだ」と話題になった『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』という40分のアニメ映画。 実はこの作品も細田守監督による作品です。2作の作りが非常に似ているのは『デジモンアドベンチャー 僕らのウォーゲーム!』の世界観や背景などに思い入れがあり、『ぼくらのウォーゲーム!』で描けなかった深い物語を『サマーウォーズ』で描こうとしたからかもしれません。

主題歌は山下達郎の歌う「僕らの夏の夢」

『サマーウォーズ』の主題歌「僕らの夏の夢」を担当したのは山下達郎です。2018年の『未来のミライ』で再び細田監督とタッグを組んでおり、オープニングテーマ「ミライのテーマ」とエンディングテーマ「うたのきしゃ」の2曲を書き下ろしています。 山下達郎は1975年に「シュガー・ベイブ」としてシングル「DOWN TOWN」でCDデビューしたシンガーソングライター。 翌年にはソロアルバム「CIRCUS TOWN」も発表し、1980年の「RIDE ON TIME」が大ヒットしてブレイクを果たしました。代表曲はクリスマスの定番曲「クリスマス・イブ」。 また「僕らの夏の夢」のアコースティック・ライブ・バージョンが、2018年7月11日にリリースされた「ミライのテーマ/うたのきしゃ」の3曲目として収録されています。

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何度でも観たくなる!映画『サマーウォーズ』は夏の名作アニメ

2019年に公開10周年を迎え、様々な特別企画が実施された『サマーウォーズ』。家族の歴史や命の移り変わりをテーマにした、家族でそろって楽しめる作品は夏の定番アニメ映画になりました。 夏はぜひ、みんなで『サマーウォーズ』を観て盛り上がりたいですね!