2024年5月6日更新

ひどい?実写『耳をすませば』ネタバレ感想レビュー!批判の理由はカントリーロードにあり?

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『耳をすませば』(2022年)
©︎柊あおい/集英社 ©︎2022『耳をすませば』製作委員会

柊あおいの少女マンガを原作に、スタジオジブリがアニメ映画化し大ヒットとなった『耳をすませば』。その実写版は、2022年10月14日に公開されました。 本作はアニメ映画の単純な実写化ではなく、設定やストーリーが変更され、「10年後」も合わせて描かれるオリジナルストーリー。 しかしそんな実写版には、厳しい評価も寄せられているようです。どんなところが評価され、どんなところが批判されたのか、いくつかのポイントに分けて紹介します。

本記事には実写映画『耳をすませば』のネタバレが含まれる箇所があります。未鑑賞の場合は注意してください。

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高橋一生は出演した?

アニメ版で天沢聖司の声優を務めたのは、いまや人気俳優となった高橋一生。実写化にあたって彼の出演も期待されましたが、今作には高橋一生は出演していません

実写版『耳をすませば』舞台は10年後!ネタバレあらすじ

公開年 2022年
上映時間 114分
キャスト 清野菜名 , 松坂桃李
監督 平川雄一朗

原作やアニメ版では、雫と聖司の出会いからお互いの想いを確かめ合うまでが描かれました。実写映画では、2人の「あの頃」とその「10年後」が二重構造で描かれます。 中学時代に様々な出来事を経て、想いを確かめ合った雫と聖司。10年後の1998年、雫は児童書の編集者として働きながら小説家を目指していました。挫けそうな時はイタリアの聖司に想いを馳せ、彼もまた、雫を心の支えに海外で奮闘中です。 しかし雫は、あるとき担当していた作家の園村から担当変えを言い渡されてしまいました。上司に言われたとおりに仕事をこなす彼女からは、以前のような情熱が感じられないというのです。 雫は自分の夢は小説を書くことではなかったのかと、本当の願いは何なのかわからず、現実との間で心がゆれ動きます。 彼女が答えを探しに向かったのは、聖司がいるイタリアでした。 イタリアで2人は再会したものの、現地になじみ、仲間とともに行動する聖司を見て、雫は距離を感じてしまいます。一方の聖司は、雫に会えたことでなにかが吹っ切れたようでした。そして彼の部屋で、雫はあの頃のように彼の演奏にあわせて歌います。

そんななか、聖司の演奏仲間の女性がやって来て、自分の聖司への想いと2人が10年も遠距離恋愛していることの不自然さ、そして雫と聖司は住む世界が違うと言います。ショックを受けた雫は、聖司になにも言わず帰国してしまいました。 聖司とは別れたと言う雫。夕子は杉村との結婚が決まり、同居していた家を出ていくことになります。実家に戻った雫は、これまでに書いた小説を押入れから発見し、書くことへの情熱を思い出しました。 その後、雫は後輩・高木に頼んで、園村のもとへ連れて行ってもらいます。これまでのことを謝ると、彼は彼女に「あなたなら良い小説が書けると思う」と言いました。 ある日の明け方、雫が自室で執筆に励んでいると、窓の外から音が聞こえてきます。窓を開けて確かめると、そこにはイタリアにいるはずの聖司が。2人は自転車で高台へ行くと、聖司は拠点を日本に移すと報告し、朝焼けを見ながら雫にプロポーズします。 こうして2人はまた、お互いに励まし合って夢を目指すことにしたのでした。

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実写版『耳をすませば』はひどい?面白い?

アニメ版に思い入れのあるファンからは批判の声が多くあがっていました。一方で、アニメ版を細かく覚えていない・知らないという層からは、作品のスピード感や構成、適度なリアリティが良いという高評価も。 以下では作品に寄せられた評価を、肯定的なもの、否定的なものの順番に細かく読み解いていきます。

【低評価】実写版『耳をすませば』はひどい?4つの批判理由

実写版は特にアニメ版のファンからは不評だった部分も。その理由を4つ紹介していきましょう。

『耳をすませば』4つの批判理由
  1. 名曲「カントリーロード」が流れない「カントリーロード」の代わりに「翼をください」が主題歌になっている
  2. 聖司くんの夢がバイオリン職人からチェロ奏者に聖司くんの夢が原作マンガともジブリ版とも違う
  3. ラストの納得感ラストが唐突で納得感がない
  4. 聖司くんと雫の関係性大人になった聖司くんと雫がうまくコミュニケーションをとれていない

①名曲「カントリーロード」が流れない

『耳をすませば』
©︎柊あおい/集英社 ©︎2022『耳をすませば』製作委員会

ジブリ版の影響で、『耳をすませば』といえば「カントリーロード」と、切っても切れないイメージを持っている人は多いでしょう。しかし実写版の主題歌は、「カントリーロード」ではなく、合唱曲としても有名な「翼をください」です。 そのため、雫が「カントリーロード」の訳詞を考えるシーンなどはなく、聖司くんとの出会いも違ったものになっています。これに不満を覚える観客が多くいました。 この変更についてプロデューサーの西麻美は「『カントリー・ロード』を主題歌にすべきではないか、という考えはもちろんありました。ですが、もともとあれはジブリのオリジナルストーリーがあってこその楽曲です。ストーリーが違う以上『カントリー・ロード』にはできない」と判断したそうです。 「どういう音楽なら雫と聖司が自然に好きになれたかと平川(雄一朗)監督と話し合い、合唱コンクールで歌う曲で、かつ歌詞がぴったりな『翼をください』にしました」と語っています。

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②聖司くんの夢がバイオリン職人からチェロ奏者に

『耳をすませば』
©︎柊あおい/集英社 ©︎2022『耳をすませば』製作委員会
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アニメ版と印象がどうしても強いから、このキャラはこんなじゃないんだよなあってやっぱり思っちゃう

アニメ版も原作マンガから設定を大幅に変更しているので、実写版も設定が違うのは問題ないでしょう。しかしアニメから引き継いでいる設定と実写オリジナルの設定が、継ぎ接ぎのような違和感を生んでしまっています。 雫はアニメでは重要なポイントになっていたカントリーロードの訳詞がなくなり、彼女が文章を書くようになるきっかけがわからなくなっていました。 また聖司の夢をバイオリン職人からチェロ奏者に変更したことで、あまりに華やかな世界の住人になってしまい、雫とは“住む世界が違う”人になってしまいます。 この変更は、大人になった2人のすれ違いをわかりやすくするために必要だったのかもしれませんが、ジブリ版の聖司の素朴な良さは薄れていました。 またアニメ版とはかなりイメージが違うキャラクターもいました。そういった世界観の不一致が気になるという声も上がっています。

③ラストの納得感

『耳をすませば』(2022年)
©︎柊あおい/集英社 ©︎2022『耳をすませば』製作委員会
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雫の悩みには痛いくらい共感できたのに、悩みの解決が雑すぎて納得できなかった……

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アニメ版の名シーンを再現したかったからなのか、ラストの展開がすこし強引な感じになってたよね

地球屋の主人が指摘したとおり、「大人になるにつれて心の音が聞こえなくなる」という悩みは共感できるものの、雫や聖司がそれをどのように解決したのかよくわからなかったという感じた人が多いようです。 悩みの答えは、自分の本当の思いに“耳をすませば”また聞こえてくるというものでしたが、そのきっかけや方法を求めていた読者にとっては納得がいかない展開だったかもしれません。 終盤は急展開すぎて多少リアリティや納得感がなく、あのアニメ版の名シーンを再現することに引っ張られたのではないかと感じられました。アニメや原作マンガとは違った設定にしたのであれば、そこにこだわりすぎなくても良かったかもしれません。

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④聖司くんと雫の関係性

『耳をすませば』 松坂桃李
©︎柊あおい/集英社 ©︎2022『耳をすませば』製作委員会
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聖司くんのかっこよさが足りない!もっとキュンキュンさせてほしかった!!

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実写版の聖司くんの方が、ちょっと現実的な性格になってたよね。僕はこっちの方が共感できたかも

アニメ版の天沢聖司は、中学生にしてイタリア留学を決意し親を説得するなど、夢に向かって行動力を発揮していました。しかし実写版では夢のあり方に納得できないものがあり、思い悩む等身大の青年として描かれています。 ツンデレですが人間としてかっこいい彼が好きだったアニメファンには、思い描く「天沢聖司」のイメージとは違ったかもしれません。 雫からしても、自分の悩みになにか答えが見つけられるのではないかと期待して遠くまで会いに行ったのに、久々に会った聖司は頼りづらく感じられたのではないでしょうか。 2人には距離ができており、その上聖司も悩みを抱えていて、さらにほかの女性の存在も見え、そんな状態で聖司に頼ることはできません。結果、雫は聖司と別れたつもりになって帰国します。 しかしその後の聖司からの手紙を見ると、彼には別れたという認識はなさそう。2人とも自分たちの関係について、きちんと話し合っていないようでした。 それなのにラストは、突然帰国した聖司からのプロポーズという急展開。名シーンの再現にはたしかに心動かされましたが、ついていけなかった人も多いのではないでしょうか。

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【高評価】雫のリアルな悩みに共感!

『耳をすませば』月島雫
©︎柊あおい/集英社 ©︎2022『耳をすませば』製作委員会
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「あの頃」も10年後もちゃんと描いてくれたから、最後まであっという間だった!地球屋の再現度もすごい

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「翼をください」歌ってるシーン感動したなあ!大人になった2人には、たしかにこの曲の方があってるかも

とくにアニメ版のファンではないという観客からは、中学時代と10年後をうまく織り交ぜた展開や、雫の悩みの切実さ・共感の呼びやすさなどが評価されています。 10年前と大人になってからをどちらも描いたことで、物語の展開がスピーディーになり2時間があっという間に感じられたという声も。また雫の悩みがアラサー独特のものに昇華しており、多くの女性たちの共感を呼んでいます。 何より、アニメ版を模したような演奏・歌唱シーンはアニメ版ファンにも初見の人たちにも大好評です。「カントリーロード」を起用しなかったことには賛否両論ありますが、「翼をください」も、遠距離恋愛や素直になれない大人の思いが詰まっていて、非常に心を打たれました。

アニメファンからも高評価だったのは……

キャストの良さ

『耳をすませば』
©︎柊あおい/集英社 ©︎2022『耳をすませば』製作委員会
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松坂桃李の聖司くんも、清野菜名の雫もイメージにぴったり!夕子と杉村も豪華〜

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作家役の田中圭もかなり良い味出してたよね!田中圭の最後のセリフがいちばん刺さったかも

本作では、大人になった聖司を松坂桃李、雫を清野菜名が演じています。どちらもキャラクターのイメージに合っているとキャスティングは好評。2人とも演技力に定評のある俳優なので、その共演が話題を呼んでいます。 W主演の2人以外にも、杉村役に山田裕貴、雫の会社の先輩役に松本まりか、雫が担当する作家・園村役に田中圭など、豪華キャストが顔を揃えています。 「10年後」パートは、実力派俳優たちがよく知られたキャラクターや、映画オリジナルキャラクターをどのように演じているのか、ぜひ注目してみてくださいね。

夕子と杉村が付き合っている!

『耳をすませば』
©︎柊あおい/集英社 ©︎2022『耳をすませば』製作委員会
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あのエンディングのさりげないシーンから、10年後にも2人が一緒なのは熱い!

雫の親友で野球部の杉村に想いを寄せていた夕子と、雫に片思いしていた杉村は、10年後には付き合っています。さらに2人には結婚の話も! ジブリ版のエンドロールで、2人が一緒にいるシーンから彼らが付き合うことになったというのは描かれていましたが、まさか10年もつづいているとはうれしい驚きですね。 雫との交流もつづいており、彼女にとって中学の同級生という長い付き合いの2人は、なんでも相談できる良き友人でありつづけていました。

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実写版『耳をすませば』への正直な感想

総合評価
3

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30代男性

夢に向かって頑張ってみたけど、自分だけ周りに置いていかれているのでは…っていう焦りにすごく共感できた。夢とか遠距離恋愛とか、そんなに上手くいくもんじゃないよ。そのへんのリアリティはちょうどいい。「あの頃」と「現在」のバランスが良かった。

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20代女性

アニメに寄せるのかオリジナルで行くのか、中途半端。『耳をすませば』の実写化というなら、せめて中学時代だけでもアニメに寄せてほしかった。あとやっぱりカントリーロードじゃないのがしっくり来ない……。10年前の雫の私服もコスプレっぽく感じた……。

ジブリのアニメ版『耳をすませば』の結末をネタバレ解説

アニメ映画のあらすじ

『耳をすませば』

読書が大好きな中学3年生の月島雫。あるとき彼女は、図書室で借りた本の貸出カードを見て「天沢聖司」という人がいつも自分より先に同じ本を借りていることに気づきます。いったいどんな人なのかと期待を膨らませていた雫でしたが、実際に会った聖司はとても嫌なヤツでした。 そんなある日、雫は電車の中で出会った大きな猫に導かれて「地球屋」という不思議なアンティークショップにたどり着きます。その後彼女が「地球屋」に行くとそこには聖司がおり、彼が店主の孫であることが判明。そしてバイオリン職人を目指してイタリアで修行しようと考えていると話します。 聖司に対するイメージが変わった雫は、次第に彼に惹かれていきました。 雫は聖司に比べて進路も目標も決まっていない自分に焦りを感じ、小説を書くことを決意します。そして「地球屋」の店主にその店にあるバロンという猫の男爵の人形を主人公にしたいと申し出るのでした。

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アニメ映画のラストは?

耳をすませば

バロンの物語を書きはじめた雫でしたが、そのせいで成績が下がってしまいます。学校から注意を受け家族で話し合いをすると、両親は小説を最後まで書くことを認めてくれました。 小説を書き上げた雫は、それを「地球屋」の店主に見せに行きます。それを読んだ彼は、バロンがこの店に来たいきさつを語ってくれました。それは、雫の書いた物語と酷似していたのです。 “受験生に戻る”ことを決意した雫がある朝目を覚ますと、窓の外には聖司の姿がありました。「秘密の場所に連れて行く」という彼とともに、雫は朝の街並みを見渡せる高台にやってきます。そこで聖司は雫にプロポーズ。 彼が一人前のバイオリン職人になったら結婚しようという聖司に、雫は「うれしい」と答えるのでした。

原作漫画『耳をすませば』の結末をネタバレ解説

耳をすませば 書影
©柊あおい/集英社

ジブリ映画『耳をすませば』の原作は、1989年に集英社の少女マンガ雑誌『りぼん』に連載された柊あおいによる同名作品です。 原作では雫と聖司は中学1年生の設定で、王道の青春ラブストーリー。また聖司が目指しているのは画家だったり、映画には登場しない聖司の兄と雫の姉が付き合っていたりと、多少映画と設定が違っているものの、紆余曲折のすえ2人がお互いの気持ちを確かめ合ってハッピーエンドとなっています。 原作の続編『耳をすませば 幸せな時間』はそれから2年後の物語で、雫たちは中学3年生です。受験生として少し憂鬱な気分になっていた雫は、あるとき空から降ってきた不思議な羽根を拾います。 それについて調べているうちに、彼女は「猫の図書館」にたどり着き……というファンタジー色の強い内容。もちろん雫と聖司は結婚していません。 ファンにとっていちばん気になる「雫と聖司は結婚したのか」という疑問については、原作でも明かされていないのです。

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実写『耳をすませば』ひどいかどうかは自分の目で確かめてみて

辛口レビューをお届けしてきましたが、見どころも多い実写版『耳をすませば』。 ジブリアニメが名作だからこそ、それだけ思い入れの強いファンも多くいます。ファンにとっては、アニメ版の良い設定が削られていると少し悲しくなってしまうこともあるかもしれません。 しかし実写版は実写版として、新しいストーリーも取り入れ、2人の物語をよりリアリティのある形で描き直していました。10年後と現在をうまく織り交ぜた二重構造で描き、雫の悩みをよりアラサーが共感しやすい形で展開し直しています。 さらに実力も人気もある俳優陣が、2人の幸せなその後を形にしてくれたというのは嬉しいことではないでしょうか。 賛否両論巻き起こった映画だからこそ、ジブリ版のファンも、原作やアニメを知らない人も、ぜひ自分がどんな感想を抱くのか実際に観て確かめてみてください!