2017年11月16日更新

月島雫、『耳をすませば』ヒロインが恋愛に疎いワケ

1995年に公開され、青春映画の傑作と名高いジブリ映画『耳をすませば』の主人公・月島雫。彼女にフォーカスすることで、映画のメッセージが伝わってくるかも。

『耳をすませば』のヒロイン・月島雫を徹底解説!

『耳をすませば』は、長年ジブリ映画を支えた名アニメーター・近藤喜文が監督を務め、最初で最後の監督作となった青春映画の傑作。 甘酸っぱい恋模様と、進路に悩む思春期の少年少女の姿を描き、他のジブリ作品とは一線を画す名作に。この瑞々しい世界観は、現実とのギャップに憂鬱になる人が続出したという噂もあるほど、若者を中心に大きな影響を与えました。 この記事では、主人公・月島雫を紹介します。月島雫について知れば知るほど『耳をすませば』が面白くなるはず!

月島雫は普通の女の子だった

耳をすませば
©Studio Ghibli/BVHE/Photofest

主人公は月島家の次女、月島雫。向原中学校の3年生で、図書館に勤める父と、社会人大学生の母、しっかり者の姉との4人暮らしです。外では明るい性格で友人も多いですが、家では部屋に引きこもり、何かと口うるさい姉に反発していました。 読書好きで、特に幻想文学とファンタジー小説を好むごく普通の女の子です。図書館と学校の図書室に頻繁に通い、夏休みに20冊読破を目指すほどの本好き。 成績を落としても国語だけは82点を取り、文学に関する興味関心、知識は豊富でした。 そこから得た文章力と豊かな想像力を活かして、序盤に洋楽「カントリー・ロード」に日本語訳詞をつける、という作詞の才能を発揮。借りた本の図書カードに毎回「天沢聖司」の名前があると気づき、どんな人物か思いを巡らせる、年頃の女の子らしさもありました。

雫が和訳した「カントリーロード」

原曲は"故郷へ帰りたい気持ち"を表現した歌だった

主題歌「カントリー・ロード」の原曲は、アメリカ人歌手ジョン・デンバーが1971年に発表した「Take Me Home, Country Roads」で、邦題は「故郷へかえりたい」。 意味も曲名の通り、"長く故郷を離れていた青年が、彼の地ウェストバージニア州の素晴らしさと、そこへ帰りたい気持ち"を歌ったもの。これを雫が和訳した設定で、鈴木敏夫プロデューサーの娘・鈴木麻実子が訳しましたが、原曲とは意味がかなり異なりました。 雫は「故郷って、やっぱり何かわからない」と言っており、彼女は和訳作業を通して初めて、"自分にとっての故郷"を意識します。原曲のような田舎の風景もない、開発が進む多摩丘陵の風景の中に、雫はどんな故郷を見出したのでしょうか?

雫にとって故郷は「いつか夢を叶えて帰る場所」

出だしの「ひとりぼっち おそれずに 生きようと 夢見てた」の部分には、夢のために新しい環境へ飛び出した、歌の主人公の強がりが伺えます。 挫けそうな時は故郷を懐かしむけれど、そんな自分を叱咤し、涙は見せない。でも思い出に縋りそうになるせいで、心は焦り足取りが早くなってしまいます。辛くなっても故郷へ続く坂道には行かない、夢を叶えて帰るから、今は「さよなら カントリー・ロード」。 雫にとって故郷は、夢を掴んだ時に初めて帰る場所で、それまでは前を見て強く生きるという決意の表れではないでしょうか。日本人特有の"哀愁"も感じ、聖司が「イタリアへ行ったらお前のあの歌、歌ってがんばるから」と言ったように、誰にも当てはまる応援歌でもありました。 この訳の主題歌は日本で大ヒットし、オリコン最高22位、約20万枚の売上を記録しました。

雫が“思春期の少女”に変わった瞬間

雫は恋愛に疎く、友人の夕子が野球部員の杉村が好きだと気づき協力しようとしますが、彼が雫に思いを寄せているのは誰の目にも明らか。杉村とはクラスメイトで、軽い言い争いをするほどの距離感だったにも関わらず、凄まじい恋愛音痴っぷりでした。 杉村も夕子の本心を知らずに、彼女にラブレターを渡したチームメイトから返事を聞いてくれと頼まれたために、夕子との仲は険悪に……。 雫は杉村を責めるも、反対に自分が告白され、予想外の事態に動揺してしまいました。何も知らず夕子をけしかけていたこと、自分を棚に上げて杉村の鈍さと無責任さに腹を立てたこと全てに自己嫌悪しながら、一つ大人への階段を上ったのです。 それと同時に、あの図書カードの「天沢聖司」だった聖司への想いにも気づかず、彼に嫌味を言われ「ヤなやつ!」と連呼する雫。それでも、杉村の件を経て少しだけ自分の気持も、周囲の気持ちも察せられるようになり、聖司への想いを自覚していきました。 こうして雫は、ただの女の子から"思春期の少女"へと変わっていったのでした。

周囲の人に感化されやりたいことを見つける

恋愛に悩む一方で、中学3年生の雫に付きまとうのが「進路」の問題。中盤までは読書ばかりしていましたが、聖司の夢を知って、自分との差に焦り始めました。 改めて聖司を見ると、中学3年生とは思えないほど将来設計がはっきりしています。月島家の両親はどちらかと言えば放任タイプでしたが、母代わりの姉が受験について口出しし始めたり、母親が社会人学生として大学院に通うようになったりと、周囲の変化が雫に影響を与えたのでしょう。 雫が姉に進路を相談するシーンもあり、「進路っていつ決めた?」と聞かれ、「それを探すために大学に行っているの」という姉のセリフが印象的でした。 何もかも完璧に見えた姉も、具体的な将来までは決められていなかったのです。

『猫の恩返し』が月島雫の集大成!

周囲の影響を受け、何より聖司のイタリア留学の話に刺激された雫は、「自分を試す」と言って前々からやりたかった"物語を書く"ことを始めました。 勉強そっちのけで成績を落とし、姉や母には難色を示されますが、雫の必死の姿を見ていた父の理解を得て、何とか初めての小説が完成。納得のいく出来ではなかったものの、聖司の祖父・西老人に夢の原石を認めてもらい、一応の一区切りを付けるのです。 自分の才能に挑戦して良かった、先へ進むためにまずは高校へ進学して勉強に励むという宣言から、雫の人としての成長が伺えました。さて、雫は自著に西老人が経営する「地球屋」に置かれていた、「バロン」という猫の人形を登場させています。 実はこのバロンは、2002年公開の『猫の恩返し』にも登場する猫の男爵。同作は「耳すま」のスピンオフで、雫が書いた物語という設定で製作されたのでした。 雫は夢を叶え、さらにそれが映画化されたわけですから、ファンとしても嬉しいですね!

声優を務めた本名陽子が語る月島雫

雫の声を演じたのは、数々の話題作でお馴染みの声優・本名陽子

月島雫の声を演じた本名陽子は、1979年1月7日生まれ、埼玉県出身。子役出身で、女優業や音楽活動もしており、ドラマ・映画・舞台・CM含め約180本もの作品に出演しました。 声優としては、『おもひでぽろぽろ』の主人公(幼少期)役でデビューし、『猫の恩返し』にもチカ役で出演しています。主な代表作は、『ふたりはプリキュア』の美墨なぎさ/キュアブラック役など。 『耳をすませば』では、主題歌「カントリー・ロード」の歌唱も担当しました。

ニコニコ生放送で雫と聖司は別れると予想した!?

そんな本名ですが、2013年7月5日に本作が地上波放送され、同時刻にニコニコ生放送で実況放送された際、衝撃の発言が物議を醸しました。 生放送中、「もし続編があったらどうなっていると思いますか?」という問いに、出演者のバイオリニスト・石川綾子は「(聖司と雫は)もう結婚しているんじゃないかと……」と返答。一方の本名は、「私、すぐ別れると思います。(聖司が)イタリアに染まって凄いチャラい感じになってたら嫌ですよね」と、笑顔で答えていたのです! そして、「先々を考えるのって楽しいですよね。ちょうど(中学生だから)変化の時期で」とも語り、"あくまで仮定の話"だと補足していました。ファンとしては結婚して欲しいですが、お互いに様々な経験と出会いを経て破局する……こともあるのかもしれません。

『耳をすませば』は月島雫の成長物語だった

杉村の気持ちを知らずに夕子を応援したり、他人の心配より聖司への想いに気づけ!とヤキモキさせられたりと、ちょっぴり恋愛音痴な雫。けれど、杉村も夕子の気持ちを全く察せていなかった例があるので、中学3年生ってこのくらい鈍感なのかもしれません。 『耳をすませば』は、普通の女の子だった雫が恋を知り、自分のやりたいことを見つける成長物語だったのです。主人公の雫にフォーカスしてみると、作品のメッセージがダイレクトに伝わってきますね。