『耳をすませば』月島雫はなぜ嫌われる?恋する文学少女に大人がやきもきする理由
『耳をすませば』は、長年ジブリ映画を支えた名アニメーター・近藤喜文が監督を務め、最初で最後の監督作となった青春映画の傑作。 甘酸っぱい恋模様と、進路に悩む思春期の少年少女の姿を描き、他のジブリ作品とは一線を画す名作です。周囲の変化を受けて自分の夢に向かって歩き出す月島雫の姿に、共感と憧れを抱いた人も多くいるはず。しかし一方で、雫があまり好きになれないという声も。 この記事では、そんな主人公・月島雫を紹介します。大人が気になるやきもきポイントにも切り込んでいきましょう。
『耳をすませば』月島雫ってどんな女の子?
年齢 | 14歳 |
---|---|
声優 | 本名陽子 |
主人公の月島雫は、向原中学校の3年生。図書館に勤める父と、社会人大学生の母、しっかり者の姉と4人で暮らしています。読書好きな彼女は、借りた本の図書カードに毎回「天沢聖司」の名前があると気づき、どんな人物か思いを巡らせていました。 その後、聖司と出会い、彼が将来のことを見据えて行動していることを知った雫は、自分も夢を追いかけたいと考えます。そこで前々からやりたいと思っていた“物語を書く”ことに挑戦しました。 原作マンガでは中学1年生の設定でしたが、アニメ版では中学3年生に年齢が引き上げられています。これによって、雫が進路や将来に悩む描写も自然になったといえるでしょう。 しかし、ネット上で月島雫と検索すると「嫌い」という言葉が予測変換にでてきます。一体それはどうしてなのでしょうか。
夢を持つだけでは報われない?月島雫が「嫌い」な理由
雫は本当に夢を見つけたの?聖司に影響されすぎ?
恋愛に悩む一方で、中学3年生の雫に付きまとうのが「進路」の問題。彼女は中盤までは読書ばかりしていましたが、聖司の夢を知って、自分との差に焦り始めました。 月島家の両親はどちらかと言えば放任タイプでしたが、母代わりの姉が受験について口出しし始めたり、母親が社会人学生として大学院に通うようになったりと、聖司以外にも周囲の変化が雫に影響を与えたのでしょう。 中学3年生というのは自分の将来を考え始める時期ではありますが、あまりに将来を明確に考えている聖司に雫が影響されたことは間違いありません。焦った雫がもともと好きだった小説を将来の夢にしようと考えたのが、少し短絡的にも感じられることが「嫌い」と言われる一因かもしれませんね。
夢を追う大変さがわかるからこその「嫌い」
“物語を書く”という夢を見つけてから、雫は勉強そっちのけで執筆に没頭し、成績が落ちてしまいます。そのため姉や母は小説を書くことに難色を示しますが、雫の必死な姿を見ていた父は理解を示します。 月島家は比較的自由な雰囲気の家庭ですし、地球屋の主人も雫の夢を応援してくれます。ですが、ほかの可能性を捨てて小説家になる夢を追うのであれば、その責任を負うのは雫本人です。 雫はまだ中学生ですから、それ以外の可能性を狭めてしまうのはもったいないとも思えます。聖司に影響されて「夢」を持ったのならば、なおさらそれが本当に自分のやりたいことか見極めるべきです。そのためにはもう少し時間をかけたほうが良いかもしれません。 夢を追うことは素晴らしいことですが、必ずしもうまくいくとは限りません。だからこそ、それを身をもって知っている多くの大人は、こうした雫の行動にやきもきしてしまうのでしょう。
最後は夢へ区切りを付けるのが聖司との違い?
雫は最終的に、なんとか初めての小説を完成させ、納得のいく出来ではなかったものの、聖司の祖父・西老人に夢の原石を認めてもらいました。ここで雫は、夢に対して一応の区切りを付けます。 一度小説を書いてみたことで納得した雫は、まずは高校に進学して勉強に励むことを決めました。聖司のように一足飛びに夢を目指すのではなく、堅実に一歩一歩夢への道を進むことにしたのです。 ちなみに雫が初めて完成させた小説とは、のちにジブリ映画となった『猫の恩返し』(2002年)です。同作は「耳すま」のスピンオフであり、雫が地球屋の主人に許可を取って小説に登場させたいと言っていた猫の男爵・バロンが登場しています。
月島雫は鈍感すぎる?性格がいいからこそ引っ掛かる
善意が裏目に?月島雫の行動にやきもき
雫は恋愛に疎く、友人の夕子が野球部員の杉村が好きだと気づき協力しようとしますが、彼が雫に思いを寄せているのは誰の目にも明らかでした。杉村のことを「鈍い」と言っていた雫ですが、それは彼女も同じです。 一方、杉村も夕子の本心を知らずに、彼女にラブレターを渡したチームメイトから返事を聞いてくれと頼まれたために、夕子との仲は険悪になってしまいました。 雫は杉村を責めますが、反対に自分が告白され、予想外の事態に動揺してしまいます。何も知らず夕子をけしかけていたこと、自分を棚に上げて杉村の鈍さと無責任さに腹を立てたこと。全てに自己嫌悪しながら、一つ大人への階段を上ったのです。
聖司に恋するまでが急すぎる?
一方で、あの図書カードの「天沢聖司」だった聖司への想いにも気づかず、彼に嫌味を言われ「ヤなやつ!」と連呼する雫。それでも、杉村の件を経て少しだけ自分の気持ちも、周囲の気持ちも察せられるようになり、聖司への想いを自覚していきました。 恋愛に興味がなく鈍感だった雫ですが、聖司があの「天沢聖司」だと知ってからは、すぐに彼が好きだという自分の気持ちに気が付きます。これは聖司の見事な作戦にはまったこともありますが、あまりにも急展開過ぎないでしょうか。 そんな雫に対して「うぶすぎて嫌い」という声もありますが、それでも男女ともに人気があるのは逆にその「うぶさ」に魅力を感じる人が多いことも事実。恋愛に対するあまり一貫性のない行動も、中学3年生という周囲の変化に揺れ動き、成長する時期であればこそ。それも雫の人気の理由です。
月島雫が「カントリーロード」の和訳に込めたメッセージ
原曲は"故郷へ帰りたい気持ち"を表現した歌だった
主題歌「カントリー・ロード」の原曲は、アメリカ人歌手ジョン・デンバーが1971年に発表した「Take Me Home, Country Roads」で、邦題は「故郷へかえりたい」。 意味も曲名の通り、"長く故郷を離れていた青年が、彼の地ウェストバージニア州の素晴らしさと、そこへ帰りたい気持ち"を歌ったもの。これを雫が和訳した設定で、鈴木敏夫プロデューサーの娘・鈴木麻実子が訳しましたが、原曲とは意味がかなり異なりました。 雫は「故郷って、やっぱり何かわからない」と言っており、彼女は和訳作業を通して初めて、"自分にとっての故郷"を意識します。原曲のような田舎の風景もない、開発が進む多摩丘陵の風景の中に、雫はどんな故郷を見出したのでしょうか?
雫にとって故郷は「いつか夢を叶えて帰る場所」
出だしの「ひとりぼっち おそれずに 生きようと 夢見てた」の部分には、夢のために新しい環境へ飛び出した、歌の主人公の強がりが伺えます。 挫けそうな時は故郷を懐かしむけれど、そんな自分を叱咤し、涙は見せない。でも思い出に縋りそうになるせいで、心は焦り足取りが早くなってしまいます。辛くなっても故郷へ続く坂道には行かない、夢を叶えて帰るから、今は「さよなら カントリー・ロード」。 雫にとって故郷は、夢を掴んだ時に初めて帰る場所で、それまでは前を見て強く生きるという決意の表れではないでしょうか。日本人特有の"哀愁"も感じ、聖司が「イタリアへ行ったらお前のあの歌、歌ってがんばるから」と言ったように、誰にも当てはまる応援歌でもありました。 この訳の主題歌は日本で大ヒットし、オリコン最高22位、約20万枚の売上を記録しました。
『耳をすませば』月島雫の名台詞集
「君も可愛くないね。私そっくり。どうして変わっちゃうんだろうね。私だって前は、ずっと素直で、優しい子だったのに」
杉村に告白された後、自己嫌悪に陥った雫。沈んだ気持ちを抱えたまま、何となく地球屋に向かって歩き出します。以前地球屋に導いてくれた猫のムーンを見つけて話しかけるのが、このセリフ。思春期の変化に戸惑う雫の気持ちがよく表れています。
「あなたのことずーっと前から知っていたような気がするの。時々会いたくてたまらなくなるわ。今日はなんだかとても悲しそう」
聖司に連れられて地球屋に入った雫が、気になっていたバロンに見入りながら語りかけるシーンのセリフ。バロンの中にキャラクターを見出した雫は、この後バロンをモデルに小説を書きあげることになるのです。
「あいつは自分の才能を確かめにいくの。だったら私も試してみる。決めた!私、物語を書く。書きたいものがあるの」
雫は聖司と両想いになった後、親友の夕子と彼についてガールズトークを繰り広げます。しかし安易な恋愛話にならないのが雫らしいところ。イタリア留学が決まった聖司は「自分の才能を確かめに行く」のに、自分はまだ「何者でもない」と感じていた雫は、小説を書く決意を固めるのでした。
原作と比較した月島雫の違い
『耳をすませば』の原作は、1989年に雑誌『りぼん』に連載されていた柊あおいによる少女漫画。漫画では月島雫は中学1年生であり、続編『耳をすませば 幸せな時間』で中学3年生になっています。ファンタジー小説が大好きな、想像力豊かな女の子である点は同じです。 キャラクター設定が違うのは雫の姉の汐で、映画では気の強い大学生になっていましたが、漫画ではおっとりした性格の高校生。漫画には聖司の兄・航司が登場し、汐と交際していて、雫と聖司の恋模様にも関係してきます。 映画で汐が真逆に描かれたのは、雫というキャラによりリアリティのある思春期の戸惑いを感じさせるため。聖司も同様に、画家志望からバイオリン職人を目指すしっかり者に描かれています。
『耳をすませば』月島雫の声優・キャストは?
声優は本名陽子
日付変わってしまいましたが✨
— 本名陽子☺︎喧嘩独学見てね (@honnayoko) January 21, 2024
全プリキュアLIVEにたくさんの応援をありがとうございました????一万人のプリキュアたち、輝きまくっていたよ。眩しかったなぁ✨配信で見てくれたプリキュアたちも本当にありがとう!想い、届いてるからね????また、会おうね!#全プリキュアLIVE#プリキュア #本名陽子 pic.twitter.com/FgvjoqG54v
月島雫の声を演じた本名陽子は、1979年1月7日生まれ、埼玉県出身。子役出身で、女優業や音楽活動もしており、ドラマ・映画・舞台・CM含め約180本もの作品に出演しました。 声優としては、『おもひでぽろぽろ』の主人公(幼少期)役でデビューし、『猫の恩返し』にもチカ役で出演しています。主な代表作は、『ふたりはプリキュア』の美墨なぎさ/キュアブラック役など。 『耳をすませば』では、主題歌「カントリー・ロード」の歌唱も担当しました。
ニコニコ生放送で雫と聖司は別れると予想した!?
そんな本名ですが、2013年7月5日に本作が地上波放送され、同時刻にニコニコ生放送で実況放送された際、衝撃の発言が物議を醸しました。 生放送中、「もし続編があったらどうなっていると思いますか?」という問いに、出演者のバイオリニスト・石川綾子は「(聖司と雫は)もう結婚しているんじゃないかと……」と返答。一方の本名は、「私、すぐ別れると思います。(聖司が)イタリアに染まって凄いチャラい感じになってたら嫌ですよね」と、笑顔で答えていたのです! そして、「先々を考えるのって楽しいですよね。ちょうど(中学生だから)変化の時期で」とも語り、"あくまで仮定の話"だと補足していました。ファンとしては結婚して欲しいですが、お互いに様々な経験と出会いを経て破局する……こともあるのかもしれません。
実写映画では清野菜名が演じる!
2022年10月14日公開の実写映画『耳をすませば』では、清野菜名が10年後の月島雫を演じています。大人になった雫は、夢を追いながら児童書の編集者として出版社に勤めており、イタリアで奮闘する聖司を心の拠り所にしています。 そんな大人の雫を演じる清野菜名は、意志の強いがんばり屋な雫のイメージにぴったり。上手くいかない時の葛藤も見事に表現してくれそうです。
『耳をすませば』月島雫は知れば知るほど嫌いになれない
杉村の気持ちを知らずに夕子を応援したり、他人の心配より聖司への想いに気づけ!とヤキモキさせられたりと、ちょっぴり恋愛音痴な雫。けれど、杉村も夕子の気持ちを全く察せていなかった例があるので、中学3年生ってこのくらい鈍感なのかもしれません。 『耳をすませば』は、普通の女の子だった雫が恋を知り、自分のやりたいことを見つける成長物語だったのです。主人公の雫にフォーカスしてみると、作品のメッセージがダイレクトに伝わってきますね。