2019年1月11日更新

バロンが『猫の恩返し』と『耳をすませば』に登場するワケとは?徹底比較・考察

『猫の恩返し』でハルを助けてくれる猫男爵・バロンですが、実は『耳をすませば』にも異なる設定のバロンが登場していることをご存じでしょうか。この記事では、『猫の恩返し』のバロンについて、『耳をすませば』のバロンと比較しながらご紹介します。

ジブリ映画『猫の恩返し』と『耳をすませば』に登場するバロンに迫る!

1995年に公開されたジブリ映画『耳をすませば』と、2002年公開の『猫の恩返し』に登場するイケメン猫・バロン。 2作とも柊あおいによる漫画が原作となっており、『耳をすませば』は『魔女の宅急便』の制作に携わった近藤喜文が、『猫の恩返し』は『となりの山田くん』の制作に参加した森田宏幸が監督を務めています。 『耳をすませば』では主人公・雫が訪れた地球屋に置いてある猫の人形として登場しますが、『猫の恩返し』では主人公・ハルを助ける「猫の事務所」の所長として登場するバロン。 この記事では、ジブリのイケメン猫・バロンについて、『耳をすませば』と『猫の恩返し』を比較しながら解説していきます。

『猫の恩返し』ではキザで紳士な猫男爵として登場

バロンは「猫の事務所」で所長を務める、二足歩行の猫男爵です。 身の丈は30cmほどで、白のタキシード姿にステッキという、英国紳士のような出で立ちをしています。バロンの本名はフンベルト・フォン・ジッキンゲンで、劇中では「男爵」という意味のバロンで呼ばれています。 性格はムタ曰く「キザ」な紳士で、どんな事態にも冷静沈着に対処します。事務所を訪れた客に振舞う特製スペシャルブレンドの紅茶は毎回味が変わるそうで、紅茶を飲んで「おいしい」と言うハルに「君はついてる」と笑顔で応えています。 バロンは身体能力や剣術にも優れ、ハルを追いかけてきた兵士たちを、木のステッキ一本で倒しています。ハルのことを全力で守り、いかなる時も紳士的な態度を崩さないバロンの姿に、多くの女性ファンが魅了されました。

『耳をすませば』では猫の置物として登場

『猫の恩返し』では全編にわたって登場するバロンですが、『耳をすませば』では地球屋に置かれている猫の人形として登場します。 角度によって光るバロンの目は、エメラルドの原石を含む鉱物でできています。光に当たると輝きを放つのは、職人が人形を作る際についた細かい傷によるもの。これは「エンゲルス・ツィマー(天使の部屋)」と呼ばれています。 地球屋の主人・西史郎は、戦前のドイツへ留学中にバロンと出会います。史郎はバロンの持ち主に譲ってほしいと頼みますが、バロンの恋人である貴婦人の人形が修理中で、2体を引き離すことはできないと断られてしまいました。 そこへ史郎の彼女・ルイーゼが現れ、自分が修理の終わった貴婦人の人形を買い取り、必ずバロンと引き合わせると名乗り出ます。ルイーゼの約束によって、史郎は持ち主からバロンを譲って貰えることになったのです。 しかし、史郎がドイツを離れた直後に第二次世界大戦が始まり、ルイーゼと貴婦人の人形は行方不明に。史郎は約束を果たそうと地球屋を開き、バロンと共にルイーゼと貴婦人の人形を待っているのです。

バロンの声優は、両作品でそれぞれ違う人が務めていた!

バロンの声優は、『耳をすませば』では露口茂が務めていましたが、『猫の恩返し』では袴田吉彦に変更されています。 露口茂は、1932年東京出身の元俳優です。1972年の刑事ドラマ『太陽にほえろ!』に山村精一警部補役で出演し、吹き替えでは『シャーロック・ホームズの冒険』で主人公のシャーロック・ホームズ役を担当しました。バロン役を演じた時はなかなか納得のいく演技ができず、自分から頼んで何度もとり直したそうです。 袴田吉彦は、1973年静岡出身の俳優です。1992年、映画 『二十才の微熱』 の主役でデビュー。その後数多くのドラマや映画に出演し、2000年にはディズニー映画『ダイナソー』に声優として出演しました。 では、なぜバロンの声優を露口茂から袴田吉彦に変更したのでしょうか。森田宏幸は、声優変更について「バロンを今までの渋いイメージではなく、若々しいイメージにしたかった」とコメントしています。つまり、キャラクターが持つ印象を変化させたいという意図があったようです。

バロンが2作に登場する理由とは?

『猫の恩返し』は『耳をすませば』のスピンオフ作にあたり、月島雫が書いた物語という位置づけになっています。そのため、『耳をすませば』で登場したバロンや、雫の前に現れた野良猫のムーンが、それぞれバロンとムタ(ルナルド・ムーン)として『猫の恩返し』に登場しているのです。 『耳をすませば』の紳士的な部分は変わらないものの、月島雫が憧れていた大人で神秘的なバロンに比べ、『猫の恩返し』では若々しくよりアクティブになっています。 他にも、『耳をすませば』で雫を演じた本名陽子が、ハルのクラスメイト・チカ役で出演していたり、バロンが連れ去られたハルを追いかけるシーンで一部『耳をすませば』の音楽が流れるなど、作品の随所に制作スタッフの遊び心が見られます。 また『猫の恩返し』の「猫の事務所」には、バロンの恋人ルイーゼと思われる肖像画が飾られています。

『猫の恩返し』のバロンは『耳をすませば』の月島雫が広げた物語だった!

『耳をすませば』で、地球屋に訪れた月島雫が一目惚れした猫の置物。このバロンを登場人物として書かれた物語が『猫の恩返し』だったのです。 『猫の恩返し』では雫なりの解釈が付け加えられ、『耳をすませば』とは違った雰囲気のバロンが私たちを魅了してくれます。1匹の猫が2作を繋げるキーパーソン(キーキャット?)となっていたのです。