『NOPE/ノープ』ネタバレ考察感想!結末までのあらすじを解説 チンパンジー事件の元ネタや旧約聖書の意味は?
映画『NOPE/ノープ』あらすじ
ロサンゼルス郊外の牧場。亡き父から牧場を受け継いだOJは、半年前の父の事故死を受け入れられずにいました。表向きは彼は飛行機から落下した部品に当たったとされていましたが、OJはそのときに謎の飛行体を目にしていたのです。 妹のエムは、この飛行体を撮影した動画を作ることを思いつきます。やがて次々と怪現象が起き、“最悪の奇跡”が彼らを襲うのでした。
映画『NOPE/ノープ』感想 本作で描かれた批判精神とは
『未知との遭遇』からのホラー展開と、ジャンル横断が面白いSF×ホラー。映画史やSF・ホラー映画などのオマージュ満載で、かなり「見る者」を選ぶタイプの作品かも。見世物の消費文化を痛烈に批判している。
一見しただけでは「???」が残る。謎の飛行物体が結局何だったのか、後で考察を読んでも「?」くらいは残る!得体の知れないものへの恐怖はよく描かれていて、音響効果も恐怖を増幅させていた。
ジョーダン・ピール監督からの挑戦状のような作品で、われわれ視聴者もただただ「見る」ことを消費するばかりだと、未知の“抗いようのない”ものに“飲み込まれる”と警告されているよう。監督の批判精神は本作でも活きています。 それだけでなく、エンターテインメント大作としても映像的に見応えがあり、SFやホラー映画への愛もあふれている作品です。
映画『NOPE/ノープ』結末までのネタバレあらすじ
カリフォルニア州ロサンゼルス。ヘイウッド・ハリウッド牧場では、訓練された馬を撮影用に貸し出していました。しかし父オーティスは、あるとき突然空から降り注いだ5セント硬貨が目を貫通し、亡くなってしまいます。 半年後、牧場を継いだ息子OJは、CM撮影のためにラッキーという馬を連れて現場入りします。しかし鏡に驚いた馬が暴れだし、仕事はキャンセルに。 彼は「ジュピターズ・クレイム」というテーマパークに立ち寄り、オーナーのジュープにラッキーを売ります。一緒にいた妹のエムがジュープがかつて人気ホームコメディ『ゴーディ、家に帰る』に出演していた子役だと気づくと、彼は得意げに「ゴーディ」関連の物が展示してある部屋に案内しました。 『ゴーディ、家に帰る』は、出演していたチンパンジーが俳優やスタッフを襲う惨劇を起こし、打ち切りになったドラマでした。
【Ghost(ゴースト)】
夜になり、エムはゴーストという馬が外に出ているのに気がつきます。OJが連れ戻そうと近づきますが、馬はエムが大音量でかけていた音楽に驚いて逃げてしまいました。 車で後を追ったOJは、照明が点いたジュピターズ・クレイムの競技場から、声が聞こえてくるのに気づきます。すると悲鳴のような音ともに竜巻のような風が起こり、雲の合間にUFOのような物体が出現。OJは急いで家に戻り監視カメラを確認しますが、停電でなにも映っていません。 兄から話を聞いたエムは、UFOを撮影してひと儲けしようと言います。翌日2人は家電量販店に行き、新しい監視カメラを2台購入。カメラの取り付けにやってきた従業員のエンジェルは、彼らの目的を知ると自分も仲間に入れてほしいと言いますが、兄妹は断りました。
【Clover(クローバー)】
ある夜、今度はクローバーという馬が外に出ていました。エムは監視カメラをチェックしますが、カマキリが映ってしまい役に立ちません。すると遠隔操作で彼らの監視カメラを見ていたエンジェルから、もう1台のカメラが動いていないと連絡がきます。 外に出たOJは再びあの竜巻に遭遇し、エムがジュープのテーマパークから勝手に持ってきた木馬が吸い上げられていくのを見ました。 翌日エムは、CM撮影で知り合ったカメラマンのホルストにUFOの撮影を持ちかけますが、相手にしてもらえません。するとエンジェルがやってきて、映像を見ていて気づいたことがあると言います。それは、何日も同じ場所から動かない雲でした。 エンジェルが「あの中に船があるのか」と言うと、OJは「船じゃない」と答えます。
【Gordy(ゴーディ)】
約25年前、『ゴーディ、家に帰る』の撮影現場では、チンパンジーのゴーディの誕生日エピソードが撮影されていました。しかしゴーディはプレゼントの箱から飛び出した風船が割れる音でパニックになり、出演者を襲います。 子役として出演していたジュープはテーブルの下からビニールのテーブルクロス越しにその惨劇を見ていました。そのとき彼は、靴が直立しているのを目にします。 ゴーディは彼を見つけ、じりじりと近寄ってきました。そしてグータッチをするように拳を出してきます。ジュープもそれに応えるように拳を出したところで、ゴーディは射殺されてしまいました。 返り血を浴びて呆然とするジュープ。そんな悪夢から目覚めた彼は、テーマパークの新たな出し物の初披露に向けて、気合いを入れます。
【Lucky(ラッキー)】
ジュープは新たなショー「星との遭遇体験」を始めようしますが、“奇跡”はいつもより早く現れ、激しい風を巻き起こして観客を飲み込みます。OJは、観客席の下に隠れてUFOをやり過ごしました。 UFOの影響で車が動かなくなり、OJたちの家に戻ってきたエンジェル。エムは兄から電話で異常を知らされます。どうやらUFOは家の真上にいるようで、コインや鍵、そして血が降り注いできました。 ラッキーを車に乗せて戻ってきたOJは、UFOが頭上にいることを確認すると、ドアをロックして車の中で過ごします。翌朝、UFOが吐き出した木馬がフロントガラスを直撃し車が動かくなってしまったため、エンジェルの車で家に戻り、玄関にいた2人を乗せて逃げました。 テレビでは、ジュピターズ・クレイムで1晩のうちに多くの人が消えたニュースが報じられています。兄妹はエンジェルの家に身を寄せていましたが、OJは牧場に戻ると言いだします。引き留めようとする2人に、彼は「目を見なければ食われない」と言いました。 そのときホルストからエムに電話がかかってきます。ニュースを見て彼女の話を信じた彼は、撮影のために、手動のIMAXカメラを自作。OJはUFOを「Gジャン」と名づけ、4人で作戦を立てます。
【Jean Jacket(Gジャン)】
撮影隊のホルストとエンジェルは、少し離れた斜面へ。エムは大音量のレコードを合図に、空気で膨らむ50体もの“スカイダンサー”を起動。そしてOJは、オトリとしてラッキーに乗って走ります。 そこへ突然、電動バイクに乗ったゴシップサイトの記者がやってきます。UFOの撮影をしようとした彼は、停電地帯に入ったことでバイクが急停止し、地面に投げ出されてしまいました。 ホルストたちは記者が吸い込まれていくのを撮影していましたが、フィルム交換と重なってしまい、うまく撮れたかはわかりません。次のチャンスを作るため、OJはフードを被って、ラッキーを走らせます。Gジャンに旗を吸わせて撮影は成功。しかしホルストはもっとすごい映像を撮ろうと、カメラを持ったまま自ら吸い込まれていきました。 その後Gジャンは形を変え、ひらひらと広がる帆のようなものの真ん中に四角い口が広がります。 OJはエムにバイクで逃げるように指示し、自分が注意を引くことに。しかし兄とラッキーの姿が見えなくなり、エムはGジャンを無人のジュピターズ・クレイムに誘い出します。 彼女は巨大なジュープ君風船を空に放ち、Gジャンがそれを吸い込むように仕向けます。作戦は成功し、エムはパークにあった井戸型の巨大なポラロイドカメラで上空を撮影。Gジャンの体内で圧迫された風船が破裂し、本体も爆発します。エムは決定的瞬間を撮影することに成功しました。 パークの外に野次馬やマスコミが群がるなか、エムは遠くにラッキーに乗ったOJの姿を見ます。
映画『NOPE/ノープ』7つの視点でネタバレ考察・解説
①『動く馬』についての解説
映画の起源として知られる『動く馬』は、1878年にエドワード・マイブリッジが撮影した連続写真で、疾走する馬の動きを撮影したものです。当初は走る馬の動きを正確に分析する目的で撮影されたこれらの写真は、のちに映画へと発展しました。 「ノープ」では、この『動く馬』に映っている騎手が主人公たちの先祖という設定になっています。ここでは、“史上初の映画”を撮影した白人たちの名前は知られていても、そこに映っている黒人の名前は記録に残っていない、というのがポイント。 監督のジョーダン・ピールは、映画史のなかで、黒人はないがしろにされてきたと主張しているのです。
②チンパンジーの事件の元ネタとは?
本作に登場するゴーディの事件は、2009年に起きた実際の事件をモデルにしています。人間とともに暮らし、動物タレントとして活躍していたチンパンジーのトラヴィスは、ある日突然、飼い主の友人の女性を襲い、顔面をずたずたに引き裂き、両耳と両手を食いちぎりました。 「ノープ」ではチンパンジーのゴーディが、ドラマ撮影中に出演者やスタッフを襲う事件を起こしています。当時子役だったジュープは、惨劇の一部始終を目撃していました。これは相当なトラウマとなったはずですが、彼はそれすらもビジネスに利用するようになります。 本作のテーマの1つには、「見られる物」から「見る者」に対する復讐というものがあります。ジュープはゴーディの事件のような強烈な“見世物”に取り憑かれ、今度はUFOを“見世物”にしようとして、返り討ちにあったのです。
③冒頭の旧約聖書の引用の意味は?
本作の冒頭には、「わたしはあなたに汚物をかけ、あなたを辱め、あなたを見せ物にする」という旧約聖書ナホム書第3章6節からの引用があります。 ナホム書は、人々に対して残虐な行為をしていたアッシリア帝国に、神が鉄槌を下すという内容。つまり「力の行使によって支配する者は、逆に滅ぼされる」という教訓をあたえているのです。 UFOを見世物にするために支配しようとしたジュープは、観客もろとも捕食され、滅ぼされてしまいます。 一方、優れた馬の調教師であるOJは動物を支配しようとはせず、畏敬の念を抱いていました。UFOが生命体だと気づいた彼は、動物に接するように一方的に支配しようとするのではなく、対等に勝負に挑みます。また彼らの目的が相手を自分の意のままにすることではなく、「写真をとる」ことだけだったのも印象的です。
④靴が意味するもの
ジュープが『ゴーディ、家に帰る』の子役時代に体験した惨劇が、彼の記憶として劇中で語られていますが、その際に彼の視界に映っていたものの中に一際印象的なものがありました。それは、襲われた共演者の脱げた靴が直立している様子。 ジュープの目にはこの靴がまるで「奇跡」のように映っていて、ゴーディが彼を襲わずグータッチしようとしたことも合わせて、“自分は選ばれた”人間のように感じさせていたのかもしれません。しかしその傲慢さが、ジュープを破滅させてしまうのです。
⑤未確認飛行生物の正体と目的は?
多くの人々を丸ごと吸い込んでいた「未確認飛行生物」。その正体が劇中で語られることはありませんが、明らかに捕食が目的でした。 見世物を生業とするジュープやゴシップ記者やカメラマンのホルスト、そしてそれを消費する側の「見る者」たちを吸い込む姿は、見る(見せる)欲に憑りつかれた者たちを罰する神(超越的存在)のようにも見えます。本作のテーマである「エンタメ業界の搾取」を暗喩しているものともいえるかもしれません。
⑥ラストのOJは死んだのか?生きてる?
エムが未確認飛行生物との戦いを制した後、吸い込まれたと思っていたOJが馬に乗って姿を現します。そのシーンで物語は終わりますが、結局彼が実際に生きて戻ったのかどうかははっきりしません。 これも視聴者がどう受け取るか、「見る側」に委ねられている演出の仕方だと考えられます。彼が馬に乗った姿は、まるで彼らの先祖である『動く馬』の騎手のよう。「最悪の奇跡」から生還したヒーローのようにも見えます。
⑦タイトルの意味を考察
タイトルの「NOPE」とは、否定のNOのスラングで「無理!」といった意味です。虫が嫌いだったり、ホラーが苦手だったりと、どうにも受け付けないものに対して「無理!」と軽く使うカジュアルな言葉。 劇中でも何度かこの「NOPE」という言葉が登場していますが、ジョーダン・ピール監督はホラー映画に対する「無理!」といった拒否反応を逆手にとって、遊び心でこのタイトルを付けたと語っています。
作中に散りばめられたオマージュを解説
「ノープ」には、日本のアニメ作品を含む、複数の名作SFへのオマージュが散りばめられています。 まず、牧場にUFOが飛来するという大筋はM・ナイト・シャマランの『サイン』(2002年)に似ていますし、宇宙からの飛行物体によって停電するという現象は、UFO映画の草分け的作品『未知との遭遇』(1977年)と同じです。ジュープが謎の飛行体を使おうとしたショーも、「星との遭遇体験」と名づけられていました。 また謎の飛行生命体のデザインは、『新世紀エヴァンゲリオン』の使徒を参考にしたとピール自身が語っています。そして最後に、エムがバイクでジュピターズ・クレイムに逃げ込むシーンには、『AKIRA』の“スライドブレーキ”の引用が。 そのほかにもジョン・カーペンター作品へのオマージュなど、ポップカルチャー愛が感じられます。
映画『NOPE/ノープ』をネタバレ考察でおさらい!続編はある?
ジョーダン・ピールのこれまでの作品と同様に、痛烈な社会批判のメッセージを持ちながら、過去のの名作SFへのオマージュを散りばめ、エンターテインメント大作としても大満足の出来となっている『NOPE/ノープ』。 実は本作には続編があるのでは?と言われています。その理由は、US版の最終予告編2分20秒あたりに映っている人物が本編に登場していないから。ピールも本作での出来事について「物語のすべてを語り尽くしたわけではない」と発言しています。 いまのところ明言されていはいませんが、続編の可能性に期待したいですね!