映画『えんとつ町のプペル』結末までのネタバレあらすじと感想解説!なぜ賛否両論となったのかを考察
漫才コンビ「キングコング」の西野亮廣が原作・脚本・製作総指揮を手がけ、2020年に公開された『映画 えんとつ町のプペル』。2016年に出版された絵本『えんとつ町のプペル』のアニメーション映画版です。 主人公ルビッチの声を芦田愛菜、ゴミ人間プペル役の声を窪田正孝が演じています。 本記事では『映画 えんとつ町のプペル』のあらすじや、結末までのネタバレを紹介。また絵本と映画の違いについての解説や考察もまとめていきます。 ※この記事は絵本・映画『えんとつ町のプペル』のネタバレを含みますのでご注意ください。
映画『えんとつ町のプペル』のあらすじ
えんとつだらけの「えんとつ町」は、もくもくと立ち上る真っ黒な煙のせいで空が見えません。えんとつ掃除屋の少年ルビッチはその町で唯一、煙の向こうにある“星”の存在を信じていました。 ハロウィンの夜、ルビッチはゴミから生まれたゴミ人間と出会います。名も無い彼に「プペル」と名付けて友達になったルビッチでしたが、プペルはルビッチが星を信じていることをいじめっ子に話してしまい……。 信じることの素晴らしさを改めて教えてくれる、優しくて心温まるストーリーです。
映画『えんとつ町のプペル』の結末までのネタバレあらすじ
【起】ハロウィンの夜の出会い
えんとつだらけの「えんとつ町」。空は煙で覆われており、誰も煙の先に星空があることを知りません。唯一、えんとつ掃除屋の少年ルビッチだけは“星”を信じていました。 ハロウィンの夜。賑わう町の空から赤く輝く塊が落ちて来ました。ドクドクと心臓のように脈打つ塊はゴミ山に落ち、周囲のゴミをまとって人型のゴミ人間になります。 町の人に「くさい」と嫌がられ、町の治安を守る「異端審問官」に追いかけられてしまうゴミ人間。ゴミ箱に隠れたゴミ人間は、そのままゴミ収集車に回収されてしまいました。ゴミ人間の助けを求める声を聞いたのが、たまたま通りかかったルビッチです。 ルビッチはゴミ収集車を追いかけて、荷台でゴミ人間に出会います。2人はそのままゴミ焼却炉で焼かれそうになりますが、協力して脱出しました。 帰る場所がないというゴミ人間に、ルビッチは「友達になって!」と提案。トモダチの意味がわからないゴミ人間に「隣にいるだけでいい」と伝えて、彼を「ハロウィン・プペル」と名付けるのでした。
【承】父ブルーノの言葉
ルビッチとプペルはいつも一緒に過ごすようになり、ルビッチはプペルのくさい体を洗ってあげます。えんとつのてっぺんに登ると、ルビッチはプペルに「この煙の向こうに星空があると信じている」と教えました。 ルビッチの父ブルーノはこの町でただ1人、星のことを紙芝居にして子供たちに教えていた人物でした。「諦めずに信じろ。1人になっても行動しろ」とブルーノはいつもルビッチに言うのです。 しかしブルーノは嘘つき呼ばわりされた挙句、1年前に突然姿を消しました。ルビッチも嘘つきと言われ学校をやめることになりましたが、今でも父の言葉を信じ続けています。 プペルはルビッチの以前の友達に絡まれて、ルビッチが星を信じていることを言ってしまいました。噂が広まると異端審問官が母の元を訪れ、お世話になっているえんとつ掃除屋のボスも何者かに命を狙われます。 ルビッチはプペルに怒り、感情のまま言葉を投げつけます。「洗っても洗っても臭くなる」「なんで現れたんだよ!」
【転】くさい身体の理由
プペルは以前からゴミ山で、ルビッチが父にもらったというブレスレットを探し続けていました。ある日ルビッチの前でプペルが頭の傘を開くと、ブレスレットが落ちて来ます。 ブレスレットはずっとそこにあったのです。ルビッチは、プペルが洗っても洗っても臭くなるのは、ゴミ山でブレスレットを探してくれていたからだと気がつきました。ルビッチは罵ったことを謝り、「ブレスレットは君の脳みそだろ」とブレスレットを返して、一緒にいればいつでも見られると言います。 照れて鼻をこすったプペルの仕草がブルーノの癖にそっくりで、ルビッチは泣き出してしまいました。するとブルーノの心臓が高鳴り、空に巨大な船が現れます。それはブルーノの紙芝居に出てきた船にそっくりでした。
【結末】父の言葉とお互いを信じた先に
ブルーノの紙芝居が彼の実体験だと気づいたルビッチは、星が本当にあるのだと確信し、みんなに見せると決意します。鉱山泥棒スコップに大量の無煙爆弾をもらうと、船に詰め込みました。 異端審問官がかけつけますが、ブルーノやルビッチを嘘つきと言った子供たちや、えんとつ掃除屋の仲間たちが異端審問官を引き止めます。 ルビッチとプペルをのせた船は、ぐんぐん上昇。そして無煙爆弾を括り付けた風船を空に放ち、爆発させて「えんとつ町」を覆う煙を吹き飛ばすことに成功するのです。 そこにはキラキラと輝く無数の星が広がる、果てしない星空がありました。 「頑張ったなチビ」と声が聞こえて、ブルーノの姿が見えます。次の瞬間プペルは別れを告げて崩れ、ブレスレットを残して消えました。ラストでは、赤い塊が夜空へ飛んでいき、一番明るく輝く星になったのでした。
映画『えんとつ町のプペル』の感想・評価
話題だったので軽い気持ちで見てみたら、想像していた以上に絵が綺麗で驚きました。とても良い話だし、メッセージ性が高くて色々考えさせられました。ただ、王道的ストーリーなので少し先が読めてしまい後半飽きてしまったかも……。
先に絵本を読んでいましたが、結構違いがあったので楽しめました。世界観は変わらないので、まるで絵本の世界に入り込んだような感覚になれました。声優さんたちも自然でよかったです。涙腺が弱いので2回くらい泣いてしまいました!
【解説】初めから映画がゴールだった?絵本との違いとは
西野亮廣が2011年頃に制作をスタートした『えんとつ町のプペル』の物語。『映画 えんとつ町のプペル』は2016年に出版された絵本の映画化かと思いきや、実はそうではありません。 西野亮廣はもともと映画のストーリーを完成させていました。そのまま映画化しても集客は見込めないため、映画のストーリーを少し削って絵本を制作。つまり最初から映画をゴールに設定しており、絵本は映画をたくさんの人に知ってもらうための入り口だったのです。 そのため絵本と映画ではストーリーが異なります。大きな違いは、映画では「えんとつ町」の歴史が語られていること。えんとつ町を作った「レター2世」の父親は、3ヶ月で腐る通貨「 L(エル)」を発明し経済を回しましたが、経済をコントロールしたい中央銀行によって殺されます。 レター2世は「L」を復活させるため、中央銀行の目の届かない場所にえんとつ町を作りました。えんとつ町の人々に「海には魔物がいる」と信じさせたのは、外へ出て中央銀行に見つからないようにするためだったのです。 また映画版ではルビッチの父親ブルーノが登場したり、脇役のストーリーが描かれたりもしています。
【考察】『えんとつ町のプペル』はなぜ賛否両論あったのか?
絵本・映画ともに『えんとつ町のプペル』は賛否両論ありました。映画だけに絞ると、絶賛の声もあれば「友情や家族など感動要素を詰め込みすぎ」「メッセージが薄っぺらい」と言った声も。否定的な声も目立った理由はターゲットの年齢層が広いからではないでしょうか。 サイバーパンクな世界観や「信じれば世界は変わる」「行動しろ」といったメッセージは大人向けですが、メッセージを訴えるストレートさや王道的ストーリーは子供向けに感じられます。その結果、大人にとっては押し付けがましさを感じる作品になってしまったのかもしれません。 しかし西野亮廣はこの作品について「大人になる過程で夢を捨てた人が、いい歳して夢を追って輝く人を見て、自分が間違えたと証明されたくないから否定する」「“捨てろ”と否定されるゴミ人間は夢追い人」といった内容の想いを語っていました。 ゴミ人間は夢を追う人、見えない空で輝く星は夢を表しているのですね。つまり本作はどちらかというと大人向けで、ストレートなメッセージの裏側にたくさんの暗喩や秘められたメッセージが込められているのです。 細部までじっくり考えたり、作者のインタビューを探したりすればするほど、奥深さがわかって感動できる作品ということなのではないでしょうか。
映画『えんとつ町のプペル』をネタバレ解説・考察でおさらい
絵本『えんとつ町のプペル』は2021年9月時点で累計発行部数70万部を突破した話題作で、『映画 えんとつ町のプペル』も第44回日本アカデミー賞で優秀アニメーション作品賞を受賞するなど高く評価されています。 絵が綺麗なので軽い気持ちで見てみるのも良いですが、細かい点やメッセージについてじっくり考察してみると様々な発見があるかもしれません。ネタバレを読んだ方も、ぜひ映画を鑑賞してみてください。