2023年4月28日更新

ハンニバル・レクターの残虐さに隠された美しさとは……モデルやマッツ版まで解説

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『ハンニバル』
©︎NBC/Photofest/zetaimage

アンソニー・ホプキンス、ギャスパー・ウリエル、そしてマッツ・ミケルセンと3人の名優が演じてきた「ハンニバル・レクター」。原作者のトマス・ハリスははじめ脇役で登場させたものの、その存在感に惹かれ小説『羊たちの沈黙』で主役として描きました。 この記事ではハンニバル・レクターの基本情報から生い立ち、そして演じた3人の役者について徹底的に深堀りしていきます! ※ネタバレを含みますので注意してください。

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ハンニバル・レクターとはどんな人?モデルは?

『羊たちの沈黙』アンソニー・ホプキンス
© ORION PICTURES/zetaimge

トマス・ハリスが生み出したハンニバル・レクターに、実はモデルとなった人物がいました。「囚人+医師+サイコパス」という現実離れした悪のカリスマにモデルとなった人物がいるとは驚きですよね。

伝説の悪役!ハンニバルの人物像

ハンニバル・レクターは静かで冷静沈着な風貌からは想像もつかない恐るべき内面を持っており、その二面性に取り憑かれた観客も多いハズ。劇中にはその内面が言葉に漏れ出ている場面がいくつも存在します。 有名どころとしては『羊たちの沈黙』(1991)でクラリスが分析されたことに怒って「自分の分析をすればいい」と言った際「昔、国勢調査員が来た時、そいつの肝臓をソラマメと一緒に食ってやった。キャンティワインのつまみだ」と答えたセリフ。 その後の肉食動物がやるような「ジュルル」という演技も相まって彼の猟奇性と優雅性が同時に表現されている名シーンです。 そして音楽でさらにその優雅さや貴族らしさを表現しており、音楽を愛するレクターが看守殺害後バッハの『ゴルドベルク変奏曲』に酔いしれる姿に彼の美学が凝縮されています。

ハンニバルのモデルは?

原作者のトマス・ハリスがモデルとした殺人鬼は「アルフレド・バッリ・トレビーニョ」です。ハリスは刑務所で脱獄を試みて怪我を負った囚人を取材していました。そこで協力してくれたのが刑務所にいたサラザール博士という人物。 柔らかい物腰と鋭い洞察力を持つ博士のおかげもあり取材は無事に終了します。しかし取材後、刑務所の関係者だと思いこんでいたサラザール博士は囚人のトレビーニョだったと知りました。 トレビーニョは怒りから恋人を殺害し、遺体を切り刻んで埋めた罪によって収監されていました。猟奇的な一面もハンニバル・レクターは踏襲しています。

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伝説はいかにして成った?ハンニバルの生い立ち

少年期〜青年期(『ハンニバル・ライジング』)

『ハンニバル・ライジング』(2007) ギャスパー・ウリエル リチャード・ブレイク
©MGM/All Star Picture Library/Zeta Image

第二次世界大戦末期、貴族一家に生まれたレクターは妹と両親の4人で城に暮らしていました。しかし爆撃で両親は死亡、さらに逃げてきたリトアニア市民6人は腹を空かせ妹を食べてしまったのです。そしてレクターは記憶を失いました。 8年後、戦争孤児となり叔父の封書からフランスへ。そこで未亡人のムラサキという女性と出会いました。最年少で医学校に合格し、彼女とともにパリへ向かいます。レクターは自白剤を自らに打つことで過去の記憶を掘り起こしました。 手がかりから次々と犯人を殺害、リーダー格のグルータスと相対します。妹の一部を自らも食べたという真実を告げられたレクターは怒り、剣を突き刺して生きているグルータスの頬に噛みつきました。

晩年期①(『レッド・ドラゴン』『羊たちの沈黙』)

『羊たちの沈黙』アンソニー・ホプキンス、ジョディ・フォスター
© ORION PICTURES/zetaimge

レクターは精神科医として独立します。著名人が集まるほど人気になるも、非常識な患者を診る内に凶暴性が目覚め始めました。 レクターはFBIのウィルから難事件の捜査協力を求められますが、レクターがその犯人であると気づかれ逮捕されます。収監中も論文発表など影響力は衰えておらず、再びウィルを手助けすることに。 その後FBIアカデミーのクラリスとともに「バッファロー・ビル事件」を解決に導く一方で、自身は逃亡。この時レクターは彼女に惹かれていきました。

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晩年期②(『ハンニバル』)

『ハンニバル』 レクター博士
©RODEO DRIVE PRESS / VISUAL Press Agency

イタリアへと渡り「フィル博士」として第二の人生を送っていました。しかしレクターから逃げ延びたメイスンに懸賞金を賭けられます。 さらに「クラリスが組織から孤立している」と耳にして渡米を決意。アメリカでレクターはメイスンの一味に捕まりますが、クラリスに救助されます。 クラリスが孤立した一因である上司のポールを招待しディナーを開催、彼女の心の傷を癒やすためポールの脳みそを食べて殺害しました。食事の終盤、クラリスにキスする間に手錠をかけられたため、レクターは自らの手首を切り落とし再び逃亡しました。

アナザーストーリー①【原作】

レクターはクラリスに亡き妹の姿を重ね、薬物によって彼女を催眠状態にします。ポールとのディナーでもクラリスにポールの脳みそを食べさせ、楽しいひと時を過ごしました。 レクターはクラリスと男女の仲にまで発展。仲良くダンスする姿がアルゼンチンで発見されます。

アナザーストーリー②【ドラマ版『ハンニバル』】

ハンニバル
© 2013 Sony Pictures Television Inc. All Rights Reserved.

レクターはウィルに協力する裏で犯人と繋がっていたりレクターを疑う人物を殺害したりと危険な一面を垣間見せます。裏切りと信用を繰り返しながら、ウィルと信頼関係を築いていきました。 ラストで「レッド・ドラゴン」の犯人ダラハイドに襲撃されます。致命傷を負ったレクターとウィルはダラハイドを殺害。2人は抱き合いながら崖へと転落していきました。

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ハンニバル・レクターを演じた俳優たち

最恐のハンニバル。アンソニー・ホプキンス

『羊たちの沈黙』アンソニー・ホプキンス
© ORION PICTURES/zetaimge

ハンニバル・レクターといえばアンソニー・ホプキンスを想像する方も多いのではないでしょうか。『羊たちの沈黙』(1991)『ハンニバル』(2001)そして『レッド・ドラゴン』(2002)に出演しています。 1作目ではその特大なインパクトとは裏腹に、劇中の出演時間はわずか12分しかありませんでした。あの恐怖を引き出すため、ホプキンスは「まばたきをしない」という演技をしています。その理由はかつてロンドンで遭遇した不審者がまばたきをしておらず恐怖を感じたという実体験から来ているそう。 クラリスとレクターが獄中で会話するシーンではバストアップで交互に話す特徴的なシーンが使われており、その高い演技力で作品の恐怖を増幅させています。

若き日のレクター博士。ギャスパー・ウリエル

『ハンニバル・ライジング』ギャスパー・ウリエル
© MGM/zetaimge

『ハンニバル・ライジング』(2007)で若き日のレクターを演じたのは2022年にこの世を去ったギャスパー・ウリエル。 心に闇を抱えるキャラクターを演じ、早くに亡くなったジョーカー役のヒース・レジャーと重なる部分がありますが、両者とも心の底からキャラクターを楽しんでいたと語られています。 レクターを演じるにあたり「ダークな部分をまるでゲームのように楽しんだ」と来日時に答えていました。また身体の作りを勉強するため医大の解剖学の授業にまで参加したといいます。 レクターが狂人へと変わっていく過程を見事演じきったギャスパー・ウリエルは、これからが楽しみな俳優だっただけに訃報には世界中から哀しみの声が寄せられました。

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マッツ・ミケルセンが演じたハンニバルの特異性

ドラマ『ハンニバル マッツ・ミケルセン』
© BRITISH SKY BROADCASTING/All Star Picture Library/Zeta Image

ドラマ版「ハンニバル」でレクターを演じたのがマッツ・ミケルセンです。スーツを着こなし「紳士」な一面とその裏に潜む「狂気」な一面を演じきりました。映画のレクターとは違う洗練された美しさがあり、その美しさがギャップを生み出し残虐さを引き立てています。 ドラマ版の魅力的なシーンとして人肉を調理し食べるシーンは外せません。人肉だから気持ち悪いはずですが、彩られた人肉料理に空腹を刺激されるという不思議な感覚を与えてくれます。 料理だけでなくアートのような死体、恐怖と心地よさを同時に感じる音楽など五感を楽しませてくれる、サイコスリラーという枠を超えた作品に仕上がっているのです。 さらに作中でレクターとウィルが惹かれ合っていくBL的な要素も。マッツは2人の関係性について「ロマンティックなもの」と答えています。さらにラストシーンではキスするという展開も考えていたそうですが「肉体的な繋がりにはしたくなかった」という理由でその案はなくなりました。

魅力に溢れた悪のカリスマ、それがハンニバル・レクター!

アンソニー・ホプキンスによる狂気を感じる演技によってスリラーの金字塔となった『羊たちの沈黙』(1991)。主人公ハンニバル・レクターはその「冷静と狂気の二面性」という性格にとどまらず、その後のギャスパー・ウリエル、マッツ・ミケルセンによって新たな人物像も生み出されていきました。 この記事で「ハンニバル・レクター」の活躍を再び追いかけたくなった方は、配信で振り返ってみてはいかがでしょうか。