「トムとジェリー」の最終回が切なすぎる……「夢よもう一度」はデマだった?
誰もが知っているアニメ「トムとジェリー」。ネット上には、このシリーズの「最終回」として語り継がれている切ない物語があるのをご存じでしょうか。 そこで今回は、噂される最終回「夢よもう一度」が真実なのかデマなのかを、実在するエピソードと照らし合わせて検証していきます。あわせて、混同されやすい悲劇的な1本や、劇場用短編シリーズが実際にどの作品で幕を閉じたのかも整理しました。 「子どものころは歯医者などでよく流れていたけれど、最近は見かけないな」と思った人もご安心ください。「トムとジェリー」は現在も新作が作られており、2026年5月29日には劇場版最新作も公開されています。
「トムとジェリー」の概要
| 原題 | Tom and Jerry |
|---|---|
| 創作者 | ウィリアム・ハンナ, ジョセフ・バーベラ |
| 製作 | MGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー) |
| 劇場用短編の製作期間 | 1940年〜1967年 |
| ジャンル | コメディ, スラップスティック |
| 主な受賞 | アカデミー賞短編アニメ賞を7回受賞 |
| 最新の劇場公開作 | 「トムとジェリー 時をこえる魔法の羅針盤」(2026年5月29日 日本公開) |
「トムとジェリー」ってどんなアニメ?
「トムとジェリー」は1940年から現在まで続く、世界的な人気アニメです。 誰もが一度は観たことがあると言ってもいい知名度で、今でも度々新作が発表されています。キャラクターも可愛らしく、グッズの需要も高いです。
あらすじ
短気でお調子者なネコのトムと、狡猾にトムをあしらうネズミのジェリーが織りなす、ドタバタ劇です。 動物同士の追いかけっことは思えないほど、あの手この手でジェリーを捕まえようとするトム。そんなトムを、ジェリーはひらりとかわします。
主要登場人物
トム
トムはグレーのハチワレで、品種が明かされていないイエネコです。食べることや寝ることが大好きで、本名はトーマス・キャット。寝食と同じくらいジェリーを追いかけることも好きですが、ドジで調子に乗りやすい性格が災いし、ほとんどの場合敗北しています。 基本的には何らかの被害を被る、負け役です……。
ジェリー
ジェリーはトムが飼われている家に住みついている、イエネズミです。本名はジェロム・A・マウスで、ずる賢い性格をしています。トムから追いかけ回されることが多いジェリーですが、最後の機転で逆転勝利する物語がほとんどです。 またトムから追いかけられているイメージがあるジェリーですが、彼も相当なイタズラ好きで自分からちょっかいをかける場合もあります。
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ネットで語られる「夢よもう一度」のあらすじ
あらすじ①姿を消したトム
歳を重ねても追いかけっこを続けていたトムとジェリーですが、ある日を境にトムがジェリーの前から姿を消してしまいます。深く考えずにいたジェリーでしたが、トムは自分の死期を悟ってライバルの前から去っていたという筋書きです。 「猫は死期を悟ると姿を消す」という言い伝えを下敷きにした展開で、ジェリーが気づいたときにはもう遅く、トムはすでに亡くなっていたとされています。なお、この言い伝え自体も獣医学的に裏づけられたものではなく、あくまで物語を盛り上げる装置として使われている点には注意が必要です。
あらすじ②ジェリーの新しい遊び相手
トムがいなくなった家に、新しい猫がやって来ます。猫はトムより小さかったものの、ジェリーは新しい遊び相手ができたと考えました。 早速いつものように、罠を仕掛けるジェリー。しかし新しい猫は罠に見向きもせず、ジェリーを真っ先に襲います。致命傷を負ってしまった彼は死の間際で、ある真実に気がつきました。 それは所詮ネズミがネコに敵うわけがなかったこと、トムが子どもの自分にあわせてわざとやられてくれていたことです。ジェリーはトムが自分にとって、なくてはならない親友だったのだと悟りながら、猫に食べられ死んでしまいます……。
あらすじ③天国での再会
猫に食べられて命を落としたジェリーを、天国にいるトムが笑顔で迎えるという結末です。 「また喧嘩できるね」「今度こそは捕まえてやるぞ」と、ふたりは言葉を交わすのでした。喧嘩ばかりだった関係が、最後に友情として結ばれる構成が涙を誘います。
【都市伝説】実はデマだった!?
結論から書くと、この物語は公式のエピソードではありません。「夢よもう一度」というタイトルの作品はたしかに実在しますが、内容はまったくの別物で、ネットで語られる筋書きは裏づけのない創作です。 理由は大きく2つあります。ひとつは、後述するとおり実在の「夢よもう一度」がトムの死もジェリーの死も描いていないこと。もうひとつは、2026年9月時点でも「トムとジェリー」の新作が作られ続けており、シリーズとしての最終回が存在しないことです。 とはいえ、この創作エピソードが広く支持されてきたのも事実。喧嘩相手であり親友でもあるという関係性をうまく言い当てているため、非公式ながら根強い人気を保っています。
デマだとしても、よき喧嘩相手であり親友でもある2人の関係が伝わって泣けます……。
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実在する「夢よもう一度」はどんな話?
公式「夢よもう一度」のあらすじ
いつものようにジェリーを追いかけていたトムの前に巨大なブルドッグが現れ、釘のように地面へ打ち込まれてしまいます。恐怖のあまり悲鳴をあげたトムですが、それは悪夢でした。 目を覚ましてご機嫌のトムがジェリーを追い回していると、今度は大きな犬小屋が出現。身構えるトムの前に出てきたのは、ネズミほどの大きさしかない小さなブルドッグでした。ところがこの小犬が滅法強く、トムは噛みつかれた挙げ句、夢と同じように地中へ埋められてしまいます。小犬はジェリーと意気投合し、ボディーガードのようにトムを撃退し続けました。 ノミ取りスプレーや仕掛けを使った作戦もことごとく失敗。「現実より夢のほうがまだマシだ」と考えたトムは、レコードをかけて睡眠薬を飲み、眠りにつきます。夢のなかでブルドッグに殴られても、トムは気にせず微笑むのでした。
公式「夢よもう一度」は最終回といえる?
「夢よもう一度」の原題は Purr-Chance to Dream。1967年に公開された作品で、監督はベン・ウォシャム、製作はチャック・ジョーンズが手がけました。MGMが劇場で公開した「トムとジェリー」短編としては、これが最後の1本です。 つまり、1940年から続いた劇場用短編シリーズに限れば「最終作」と呼んで差し支えありません。ただし内容は前述のとおりドタバタ喜劇で、ネット上で語られる「切ない最終回」とは似ても似つかないものです。 そしてシリーズ自体はその後もテレビシリーズや長編作品として続いており、現在に至るまで完結していません。噂の最終回は、「夢よもう一度」というタイトルの響きから想像を膨らませた創作と考えるのが自然でしょう。
都市伝説と混同されやすい「悲しい悲しい物語」
「切ない最終回」を探して行き着くのが、1956年公開の「悲しい悲しい物語」(原題 Blue Cat Blues)です。ハンナとバーベラが手がけた1本で、シリーズでは珍しく救いのない結末を迎えます。 物語はジェリーのナレーションで進みます。白い雌猫に一目惚れしたトムは、贈り物攻勢で気を引こうとするものの、裕福なライバルのブッチにことごとく上回られます。全財産をつぎ込み、過酷な契約にサインしてまで中古車を手に入れますが、それもブッチに踏み潰されてしまいました。 やがて雌猫はブッチと結婚し、打ちのめされたトムは線路の上に座り込みます。恋人がいるから平気だと思っていたジェリーも、その恋人が別のネズミと結婚したと知り、トムの隣に腰を下ろすのでした。
このエピソードは、シリーズで唯一といっていいほど悲劇に振り切った内容です。失恋に加えて経済格差や借金、自死を思わせる描写まで盛り込まれています。 内容が内容だけに、「トムとジェリーには衝撃的な話がある」という印象だけが独り歩きしやすい1本でもあります。噂の最終回とこの作品が結びつけられて語られる場面は多いものの、創作された最終回の出どころが「悲しい悲しい物語」だと公式に確認された事実はありません。 なお、本作ではトムとジェリーは一度も喧嘩をしません。ジェリーは落ちぶれていくトムを支え、介抱する親友として描かれています。
「トムとジェリー」の最後はどれ?3つの区切りを整理
| 区切り | 該当する作品 | 公開年 |
|---|---|---|
| ハンナ=バーベラ期の最終作 | 赤ちゃんは知らん顔(Tot Watchers) | 1958年 |
| MGM劇場用短編シリーズの最終作 | 夢よもう一度(Purr-Chance to Dream) | 1967年 |
| シリーズ全体の最終回 | 存在しない(新作が作られ続けている) | - |
「最終回」という言葉が混乱を招くのは、シリーズが何度も制作体制を変えながら続いてきたためです。ウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラが手がけた劇場用短編は1958年公開の「赤ちゃんは知らん顔」で一度終わり、MGMのアニメ部門も閉鎖されました。 その後ジーン・ダイッチが制作を引き継ぎ、さらにチャック・ジョーンズの体制へと移ります。1967年の「夢よもう一度」で劇場用短編の歴史はいったん幕を閉じましたが、シリーズはテレビアニメや長編映画へ舞台を移して現在まで続いています。 つまり、「どの区切りの話をしているか」で最後の作品は変わります。シリーズ全体を終わらせる最終回は、2026年9月時点でも作られていません。
アカデミー賞短編アニメ賞を受賞した7作
| 邦題 | 原題 | 受賞年度 |
|---|---|---|
| 勝利は我に | The Yankee Doodle Mouse | 1943年度 |
| ネズミ取り必勝法 | Mouse Trouble | 1944年度 |
| ただいまお昼寝中 | Quiet Please! | 1945年度 |
| ピアノ・コンサート | The Cat Concerto | 1946年度 |
| 台所戦争 | The Little Orphan | 1948年度 |
| パーティ荒し | The Two Mouseketeers | 1951年度 |
| ワルツの王様 | Johann Mouse | 1952年度 |
「トムとジェリー」がこれほど長く愛されてきた背景には、映画としての評価の高さがあります。当時の短編アニメは劇場で本編の前に上映されるものだったため、アカデミー賞の対象になっていました。 ハンナとバーベラがMGMで手がけた作品のうち13本がノミネートされ、そのうち7本が短編アニメ賞を受賞しています。キャラクターもののアニメシリーズとしては群を抜いた記録です。 なかでも「ピアノ・コンサート」は、トムの演奏と音楽が緻密に同期した演出で知られる1本。セリフに頼らず動きと音だけで笑わせる作りが、世界中で通用した理由といえるでしょう。
完結どころか新作が続々!近年の「トムとジェリー」
トムとジェリー 時をこえる魔法の羅針盤
2026年5月29日に日本公開された「トムとジェリー 時をこえる魔法の羅針盤(コンパス)」は、中国とアメリカの合作で作られた長編アニメです。シリーズ初となる全編フルCGの長編で、監督はジャン・ガンが務めました。 博物館で追いかけっこをしていたトムとジェリーが、展示されていた「星の羅針盤」を誤って起動させてしまい、数千年前の異世界「黄金の都」へ飛ばされるというストーリー。羅針盤の力を狙うラット魔王に立ち向かうため、いつものふたりが一時休戦して手を組みます。 日本語吹き替え版には佐藤拓也、多田野曜平、中井和哉、久保ユリカ、安元洋貴、天﨑滉平、野津山幸宏らが参加しました。
実写映画『トムとジェリー』(2021年)
日本では2021年3月19日に公開された映画「トムとジェリー」は、実写の俳優とアニメーションのキャラクターが同じ画面で共演する作りが話題になりました。監督はティム・ストーリー、主演はクロエ・グレース・モレッツです。 舞台はニューヨークの高級ホテル。世紀の結婚式を控えたホテルにジェリーが住みつき、追い出し役として雇われたトムとの攻防がホテル中を巻き込んでいきます。 日本でも金曜ロードショーで地上波放送されるなど、シリーズの知名度を改めて押し上げた1作でした。ここからも分かるとおり、「トムとジェリー」は終わるどころか新しい形で作り続けられています。
「トムとジェリー」の最終回に関するよくある質問
「夢よもう一度」は本当に最終回なの?
MGMが劇場公開した短編シリーズに限れば、1967年の「夢よもう一度」が最後の1本です。その意味では最終作と呼べます。 ただし、シリーズ全体を締めくくる「最終回」ではありません。実際に描かれるのはブルドッグに翻弄されるトムのドタバタ劇で、ネットで語られる切ない結末とは無関係です。
トムやジェリーが死んでしまう話はあるの?
噂されるような「トムが病死し、ジェリーが食べられる」エピソードは存在しません。ただし、救いのない結末を迎える作品として「悲しい悲しい物語」があるため、これが記憶と混ざって語られている可能性はあります。 同作は2匹が線路に座り込むところで終わり、その後は描かれません。シリーズのなかでは異色の、後味の重い1本です。
「トムとジェリー」はどこで見られる?
2026年9月時点では、U-NEXTやAmazonプライム・ビデオなどで映画版やテレビシリーズの一部が配信されています。作品数が多いシリーズのため、見たい作品を決めてから配信サービスを選ぶのがおすすめです。 配信対象は入れ替わることがあるので、視聴前に各サービスの最新情報を確認してください。「悲しい悲しい物語」のように取り扱いが限られる短編もあります。
「トムとジェリー」の切なすぎる最終回はデマだった
ここまで見てきたとおり、「トムとジェリー」の切ない最終回はタイトル以外がデマでした。実在する「夢よもう一度」は1967年公開のドタバタ喜劇で、劇場用短編シリーズの最終作ではあるものの、噂のような別れは描かれません。 それでも語り継がれてきたのは、喧嘩相手であり親友でもあるふたりの関係を、この創作がうまく言い当てていたからでしょう。本物の悲劇を味わいたいなら、線路の上で幕を閉じる「悲しい悲しい物語」が近い読後感をくれるはずです。 噂の真相を知って懐かしくなった人は、あらためてシリーズを追いかけてみてください。2026年にも新作映画が公開されたばかりで、追いつくには絶好のタイミングです。
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