映画『ミッシング』ネタバレ解説!元になった実話や原作はある?
映画『ミッシング』あらすじ・作品概要【ネタバレなし】
タイトル | 『ミッシング』 |
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公開日 | 2024年5月17日 |
上映時間 | 119分 |
監督 | 吉田恵輔 |
キャスト | 石原さとみ , 青木崇高 , 森優作 |
映画『ミッシング』のあらすじ
娘の美羽が失踪し、あらゆる手を尽くして探し続けていた母親の森下沙織里(石原さとみ)。しかし見つからないまま3カ月が過ぎようとしていました。その間も少しずつ世間の関心は薄れていき、焦る沙織里でしたが、夫の森下豊(青木崇高)とは感情の温度差からケンカが絶えません。 沙織里は唯一取材を続けていた地元テレビ局の記者・砂田を頼るしかありませんでした。そんな時、美羽が失踪した時に沙織里が推しアイドルのライブに行っていたことが暴露され、ネット上では「育児放棄の母」というレッテルが貼られて誹謗中傷の的になってしまいます。
映画『ミッシング』ネタバレ解説
【起】娘が失踪!夫婦の捜索活動を追うテレビ局
3カ月前に6歳の娘・美羽が失踪し、夫の豊(青木崇高)とともに捜索活動を続けてきた森下沙織里(石原さとみ)。静岡県沼津市の地方テレビ局ディレクター・砂田(中村倫也)が、彼女たちの捜索活動を長期取材していましたが、これといって有力情報も得られないままでした。 そんな中、砂田は番組の視聴率が落ちてきたことを受け、事件発生当初の報道によってネット上で犯人扱いされていた沙織里の弟・圭吾(森優作)への取材を命じられます。圭吾の非協力的な態度は犯人説を助長させるもので、番組も彼への疑惑を煽るような内容に。これが圭吾の日常生活を大きく変え、仕事にも支障が出てしまいます。
【承】ネットの誹謗中傷と濃くなる弟への疑惑
番組は圭吾への疑惑を深めただけで有力な情報もないままでしたが、沙織里のもとにある情報提供のDMが届きます。直接会って話したいと言われたため遠方の蒲郡まで豊と向かいますが、相手は現れずアカウントも突然削除されていました。 さらに、沙織里が失踪当日に美羽を圭吾に預けてアイドルグループのライブに行っていたことが暴露され、酷い誹謗中傷が始まっていました。沙織里はそのことで豊と自分自身に罪悪感を抱いており、余計にネットの誹謗中傷に敢えて向き合おうとして心を病んでいきます。 一方砂田は後輩のスクープ表彰と出世を横目で見つつ、失踪6カ月目の番組取材の際にスクープ証言を得ていました。それは、圭吾が失踪当日に違法カジノに行っていたことで、失踪事件自体の関与は否定するものでした。
【転】エスカレートするいたずらと残酷な事実
森下家で取材中に美羽を発見したという警察からの電話を受け、警察署へ急ぐ沙織里と豊。砂田たちも後を追って急遽スマホで撮影をしていましたが、実はその電話はいたずらだったことがわかり、沙織里はその場で泣き叫び、失禁してしまいます。 砂田がすぐに撮影を止めると、カメラマンにはなぜ止めたのかと責められ、担当刑事からは違法カジノの件は放送するなと釘を刺されるのでした。しかしこんなスクープを局が逃すはずもなく、違法カジノの件は放送され、再び圭吾はバッシングの渦中に。沙織里も放送で初めてこの事実を知り、圭吾とは絶縁状態になってしまいます。 圭吾は会社をクビになって地元から離れ、豊は悪質な誹謗中傷に対して民事裁判を起こすことを決めます。
【結】娘失踪から2年後の誘拐事件……その時、沙織里は?
失踪から2年後、沙織里と豊は2人で地道に捜索活動を続けていました。そんな時、同じ沼津市内で起こった女児失踪事件に美羽との関連性を見出した沙織里は突き動かされるように自ら捜索活動を始めます。その活動の輪は地域に広がりますが、女児失踪は母親の交際相手の連れ去りであることがわかり、無事に発見されたことを沙織里は心から喜びました。 その頃、圭吾は美羽らしき女児と怪しい男性を発見して後を追っていましたが、圭吾の方が怪しまれて通報されてしまいます。警察から連絡を受けた沙織里は、この件で初めて圭吾が変質者から暴行を受けたことがあると知り、圭吾は違法カジノの件で迷惑をかけたことや、美羽を家まで送らなかった事など含めようやく沙織里に謝罪することができました。 駅前でビラ配りを続ける沙織里と豊に先日見つかった女児と母親が声をかけ、感謝とともに協力を申し出てきました。沙織里は仕事に復帰し、交通安全のボランティアも始め、子どもたちの中にときおり美羽の面影を見るのでした。
『ミッシング』の重要トピックを整理・解説!犯人を描かなかった理由とは?【ネタバレ】
弟が怪しい行動を取っていた理由
圭吾が取材を受けるのを極端に嫌がっていたのは、失踪当日の美羽と別れた後に違法カジノに行っていたことがバレるのを恐れていたから。実はそれも自身の保身だけではなく、違法カジノに誘ってきた職場の先輩を庇う(ひいては職場の人間関係を壊さない)ためでもあったのです。しかしこのことが逆に当日のアリバイを証明することになり、失踪事件への関与はシロになったという皮肉。 圭吾が「変質者」に固執して逆に変質者扱いされてしまった件は、彼が過去に変質者に暴行を受けた心の傷が原因だったことも明らかになります。このエピソードもあまりにも皮肉ですが、彼が人と接するのが得意でない理由もここにあるのです。
真犯人や娘は見つかった?
この物語の要点は「こうした事件に際した場合、人はどう折り合いをつけていくのか」であり、真犯人探しが目的ではないようです。さらに失踪した娘が見つかることもなく、鑑賞者の中にはモヤモヤする人もいたかもしれません。 こうした事件を“見る”側の「視聴者」は、どうしても勝手に犯人を捜してしまうし、最終的には娘も見つかってほしいと願うでしょう。しかしこの作品は夫婦の変化を描くことに重きを置いているので、ことごとく肩透かしを食らってしまいます。圭吾の犯人説がミスリードであることも、ある意味監督からの挑戦状のような気がしてなりません。
元ネタになった実話や原作はある?
『ミッシング』は吉田恵輔監督のオリジナル脚本であり、原作はありません。『空白』の撮影時にこの作品の構想が生まれたといいます。明言はされていませんが、2019年に起こった「山梨キャンプ場女児失踪事件」の詳細や展開に類似点があるため、これが元ネタではないかともいわれています。 山梨の失踪事件では当時小学1年生の女児がキャンプ場で行方不明になり、4年近くの捜索活動を経て、2022年に現場で一部DNAが一致する人骨が発見されたことで女児の死亡が確認されました。その間ずっと家族はSNS拡散やホームページ作成など自分たちでできうる限りの捜索活動を続け、警察の捜索が終了した今も女児の生存を信じて待っています。 しかしその活動の中で受けたネットでの誹謗中傷は酷いもので、家族によって被害届提出と民事裁判も行われました。
石原さとみの体当たりな役作り
石原さとみは本作にかける熱意を多くのメディアで語ってきていますが、特に7年前に吉田恵輔監督の作品を観た時から出演を熱望し、自ら伝手を辿って監督に直談判したというエピソードには驚かされます。それまでの自分を「きっと変えてくれる」と信じていたそう! それは実際大成功で、この作品には今までに見たことがない「石原さとみ」が存在しています。自身でも沙織里役は本来の自分とはかなり乖離していることを感じ、どうやって役作りをするか悩んだとか。沙織里はヤンママがベースになっていて、監督もどうやってこちら側に来てもらうか考え、まず見た目から入ってもらったようです。 子どもを出産してから臨んだ撮影で、娘の失踪という内容は「悪夢に見るほど」トラウマになりそうなものだったというのも納得の熱演。監督が演者のその時の「熱」を感じて、現場での思い付きで撮っていったという演出方法にも驚きです。特にその熱が伺えるのが、虚偽の発見電話に失望して泣き叫ぶシーンでしょう。
映画『ミッシング』キャスト・登場人物解説
森下沙織里役/石原さとみ
失踪した娘・美羽を探し続ける母親・森下沙織里(もりしたさおり)。元々は明るい性格で、ケンカはしつつも夫婦仲は良く、家族を大切に思っています。それが一瞬の出来事ですべてが壊れてしまい、すべての関係性が崩れていき、さらにネットでの誹謗中傷を受けて次第に「悲劇の母親」を演じるようになってしまいます。 演じるのは、数々の映画・ドラマで主演を務めてきた人気俳優の石原さとみ。今作では失踪した娘をなりふり構わず捜し続ける母親役を体当たりで演じています。代表作にドラマ『アンナチュラル』(2018年)や映画『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』(2015年)などがあります。
森下豊役/青木崇高
沙織里の夫で、美羽の父親・森下豊(もりしたゆたか)。沙織里とは事件に対する思いに温度差があるようで、先走りすぎる沙織里をけん制するつもりがケンカになってしまいます。しかし娘への想いは沙織里と同じです。 演じるのは、「るろうに剣心」シリーズの相楽左之助役で知られる俳優の青木崇高。2007年のNHK連続テレビ小説『ちりとてちん』で注目され、大河ドラマには4作品出演しています。2023年にはマ・ドンソク主演の「犯罪都市」シリーズ3作目『犯罪都市 NO WAY OUT』で韓国映画に進出しました。
土居圭吾役/森優作
沙織里の弟・土居圭吾(どいけいご)役を務めるのは、俳優の森優作。圭吾は美羽を最後に見た人物で、物語のキーマンとなる存在です。 森優作は、2015年の映画『野火』で高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞した期待の若手俳優。2024年は出演映画『輝け星くず』が公開予定で、4月期ドラマ『約束〜16年目の真実〜』に井出尚哉役で出演します。
砂田裕樹役/中村倫也
沼津市のローカルテレビ局でディレクターを務める砂田裕樹(すなだゆうき)役を演じるのは、俳優の中村倫也です。砂田は失踪事件当初から沙織里たちに協力して取材を続けてきましたが、次第に視聴率を上げるための番組作りに葛藤を覚え始めます。 中村倫也は2018年のNHK連続テレビ小説『半分、青い』でブレイクした、カメレオン俳優の呼び声も高い演技派。2024年は8月公開の話題作『ラストマイル』にも出演しています。
映画『ミッシング』の監督は吉田恵輔
映画『ミッシング』の監督・脚本を務めるのは、2021年公開の映画『空白』で高く評価された吉田恵輔。2006年に『机のなかみ』で長編映画監督デビューを飾りました。 『ヒメアノ~ル』(2016年)や『愛しのアイリーン』(2018年)など漫画原作作品から、『麦子さんと』(2013年)や『神は見返りを求める』(2022年)など独特なオリジナル脚本作品まで、振り幅の広いジャンルを手がけています。 『ミッシング』については、「辛いことや耐えられないことがあったとき、人はいかに折り合いをつけるのか」がテーマとのこと。沙織里がどう折り合いをつけていくかが、この作品の注目ポイントのようです。
映画『ミッシング』は5月17日公開!母親役の石原さとみや他キャストに注目したい
石原さとみが「母親になった今だからこそ挑戦してみたかった」と語る映画『ミッシング』。2024年5月17日に公開されてから、石原さとみの体当たりの演技には称賛が止みません!9月17日からはNetflixで独占配信も始まりますので、これを機会にぜひ視聴してみてはいかがでしょうか?