2025年9月22日更新

映画『ベートーヴェン捏造』結末までネタバレ考察!実話を元にした原作小説との違いとは

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映画『ベートーヴェン捏造』
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私たちが信じていたベートーヴェンの姿は嘘だった!?かげはら史帆の描く歴史ノンフィクションが『ベートーヴェン捏造』として待望の映画化、2025年9月12日公開予定です。 この記事では原作『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』のネタバレあらすじを紹介します!

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映画『ベートーヴェン捏造』作品概要・あらすじ【ネタバレなし】

公開年 2025年9月12日
監督 関和亮
キャスト 山田裕貴 , 古田新太 , 染谷将太 , 神尾楓珠
原作 かげはら史帆『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』
上映時間 115分

文筆家・かげはら史帆が自身の修士論文を元に作り上げた小説『ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』が待望の映画化! 1977年の国際ベートーヴェン学会で明らかになったのは、ベートーヴェン(古田新太)の秘書であったアントン・シンドラー(山田裕貴)による捏造の数々でした。これまで信じられてきたベートーヴェンの史実には、多くの「嘘」が含まれていたのです。 本作ではベートーヴェンの本当の姿やシンドラーとのいびつな関係性、そしてなぜシンドラーが敬愛するベートーヴェンの史実を改変したのか、その謎に迫ります。

【解説】シンドラーの嘘・捏造を振り返る

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シンドラーの嘘・捏造の中でも「音楽」関連は今でもその影響が大きく残っています。ベートーヴェンの「交響曲第5番第1楽章」。冒頭「ジャジャジャジャーン」を「運命はかく扉を叩く」と表現した言葉から「運命」として知られていますが、この逸話はシンドラーの捏造説が有力です。 さらに「テンペスト」として親しまれる17番のソナタ。こちらはベートーヴェンが作品を解釈するために「シェイクスピアの『テンペスト』を読みなさい」と言った、とシンドラーは書いていますが、こちらも捏造が疑われています。 プライベートな部分では、怠惰で女たらしなベートーヴェンをあたかも「偉大で誠実な偉人」に仕立て上げます。友人の妻に向けたラブレターも、貴族令嬢であった元カノ・ジュリエッタ宛に書き換えられ、あくまで純愛を作り上げたのです。

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【解説】なぜシンドラーはベートーヴェンのイメージをでっちあげたのか

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シンドラーがベートーヴェンの実像である「下品で小汚い癇癪持ちのおじさん」という一面をひた隠し、捏造してまで伝記を書き上げた理由は、第一に「ベートーヴェンを英雄として後世に遺す」ため。そこには純粋なファン心理があったに違いありません。 しかしもう1つの側面として、ベートーヴェンに気に入られていた人物たちすべてに嫉妬し、自身がベートーヴェンには疎まれていた事実をも隠したかったのでないかと思えるのです。

【ネタバレ】映画『ベートーヴェン捏造』を結末まで

【起】ベートーヴェンの伝記は捏造だった?!

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ある中学校の音楽室、放課後に忘れ物を取りに来た男子生徒は、音楽教師に誘われてコーヒーを飲みながら、ベートーヴェンの逸話が「捏造されたもの」だという話を聞きます。 19世紀のウィーン、ヴァイオリン奏者のシンドラーはかねてから敬愛するベートーヴェンに会い、その実際の姿に幻滅しつつも彼の秘書となります。献身的に尽くすシンドラーでしたが、ベートーヴェンはシンドラーの束縛的で鈍感なところに嫌気が差し、「パパゲーノ」という嫌味なあだ名を付けたりして遠ざけようとしました。

【承】ベートーヴェンとシンドラーのこじれた関係

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「第九」初演を成功に導いたシンドラーでしたが、公演の売り上げを持ち逃げしたとベートーヴェンに疑われ、ついに秘書を辞めることに。その後、新しい秘書ホルツがベートーヴェンに気に入られていると知り嫉妬心を覚えていましたが、ベートーヴェンの甥カールが自殺未遂を起こしたと聞き、慌ててベートーヴェンのもとに戻ってしまいます。 そのまま秘書に戻り、穏やかになったベートーヴェンを最期まで看取り、今までで一番幸せな時を過ごしたシンドラー。ところがホルツがベートーヴェンの伝記を書こうとしていることを知り、ベートーヴェンの本来の姿を暴露されることを恐れ、自ら伝記プロジェクトを立ち上げます。

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【転】伝記を巡る争いと会話帳の改ざん

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ホルツが知るベートーヴェンの汚点、カールへの束縛が自殺未遂を起こさせたという事実だけは暴露されたくないと必死になるシンドラーは、ベートーヴェンの旧友ヴェーゲラーと愛弟子リースに伝記の共同執筆を依頼。しかしリースにも嫉妬心を覚え、伝記プロジェクトを頓挫させてしまいます。 ところがヴェーゲラーとリースはしびれを切らして先に伝記を刊行してしまい、ベートーヴェンの暴露話に焦ったシンドラーは、ついに自分の理想像を描いた「ベートーヴェン伝」を執筆。そのために難聴だったベートーヴェンが使っていた「会話帳」を改ざんするまでに至ります。 シンドラーの「ベートーヴェン伝」はベストセラーになりますが、嘘ばかりだと憤るホルツは新聞上でシンドラーと論争を繰り広げるのでした。

【結】セイヤーとの対決の行方

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英語版の「ベートーヴェン伝」を読み、矛盾点に気付いたアメリカ人音楽ジャーナリストのセイヤー。彼は一度シンドラーのもとを訪れますが、その後数年かけて国家図書館に所蔵された会話帳を書き写しながら捏造を証明しようと試みます。 ついに二度目の訪問を果たし、直接対決となりますが、シンドラーの「ベートーヴェンを英雄として後世に遺す」という固い意志の前に、セイヤーは敗北。シンドラーの狂気が正論を覆したのでした。 音楽室でこの顛末を聞いていた生徒は、「セイヤーがどこまで捏造を知っていたのかはわからないのでは?」と教師に問います。教師がこの話を“盛って”話していたことを見抜き、「先生みたいな人が歴史を捏造してきたんでしょうね」とシニカルに言い放って、音楽室を後にしました。

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【ネタバレ】小説『ベートーヴェン捏造』の結末までのあらすじ

【起】「ベートーヴェン捏造」の発覚

1977年に開かれた「国際ベートーヴェン学会」で衝撃の事実が明らかになります。それは「ベートーヴェン」の史実に、大量の捏造が含まれていたこと。その犯人は、ベートーヴェンの晩年を支えた秘書、アントン・フェリックス・シンドラーでした。 ベートーヴェンの史実は、主にシンドラーが残した「ベートーヴェン伝」によるもの。伝記の中で、家族や側近の印象が悪く書かれている一方で、シンドラーは献身的で誠実な人物として描かれています。かねてからその内容を疑う研究者がおり、この学会で捏造が明らかになりました。 耳の聞こえなくなったベートーヴェンは、相手が会話帳に筆談したものを見て言葉で返すコミュニケーションを取っていました。シンドラーは、その「会話帳」の不都合な部分を大量に廃棄していたのです。

【承】シンドラーとベートーヴェンの出会い

法律を勉強するため、片田舎から大都会・ウィーンへとやってきたシンドラー。そこで音楽家として既に名を成していたベートーヴェンと出会い、秘書として仕えることを決めました。 シンドラーは実際、第九の初演に際してアーティストの斡旋や日取りの準備など、優れたプロデュース力を発揮します。しかし彼にはコミュニケーションに少々難があったのです。会話の中でも見当違いのリアクションを取り、嫌気が差したベートーヴェンの皮肉や悪口さえ気付けない鈍感さがありました。 ベートーヴェン側の性格にも難があり、何人もの使用人が逃げ出しています。一方でシンドラーは忠誠心とその鈍感力で、ベートーヴェンに付き随えるのでした。

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【転】ベートーヴェンの会話帳

しかしベートーヴェンの過剰な嫌がらせ行為により、ついにシンドラーも彼の元を離れていきます。しかし数年後、再び戻ってきたのです。シンドラーは自分が離れていた間の記録を「会話帳」で知ることに。この時、会話帳がベートーヴェンの歴史を語る重要な資料であることをシンドラーは認識します。 シンドラーはベートーヴェンが亡くなる最期の時まで秘書として仕えました。葬儀には数万の参列者が集まり、ベートーヴェンとの別れを惜しみます。アマチュア・ヴァイオリニストでベートーヴェンの秘書を務めた、カール・ホルツが伝記を作ろうと発案しました。 伝記のプロジェクトを聞いたシンドラーは、「会話帳」を持って逃げ出してしまったのです。

【結末】嘘を貫け!ラストの大勝負は?

「会話帳」を持ち出したシンドラーは、自ら伝記づくりをスタートさせました。ベートーヴェンを悪く言う相手に対しては伝記の中でこき下ろし、新聞でも反論を掲載するなど、行動がエスカレートしていきます。 「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンに関する覚書」という、少々踏み込みすぎたベートーヴェンに関する伝書が出たことを知り、ついに「会話帳」の捏造に走ってしまうのです。 同じようにベートーヴェンのエピソードを盛って話す19世紀最大のピアニスト、フランツ・リストに対しては嫉妬心に駆られてしまうシンドラー。彼を超えるピアニストを生み出そうと愛弟子・ヴュルナーを育成しますが、途中で逃げられてしまいます。 ラストはベートーヴェンを研究するアメリカの伝記作家・セイヤーとの対峙となりーー。

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原作小説と映画の違い

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原作小説は捏造の事実を追ったノンフィクションですが、映画はその事実を踏まえた上で風刺コメディとして本作のテーマ「捏造の仕組み」を描いています。風刺を効かせるための装置として、映画オリジナルシーンとして冒頭と最後の音楽室での教師と生徒の会話劇が挿入されていました。 捏造の仕組みとしては、本作が描く通り、ある事柄や人物を「誇張して過大評価させる」ためのものであり、現代でも“話を盛る”ことや「フェイクニュース」など日常にも潜んでいる身近な話。バカリズム脚本によって、その日常にも起こり得るという点が強調されていたのが興味深いところでした。

小説『ベートーヴェン捏造』の感想・評価

ベートーヴェン捏造
ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく』の総合評価
3.5 / 2人のレビュー
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30代男性

ベートーヴェンのイメージが180度変わった作品です。少なくとも私が思っていたイメージのベートーヴェンは、シンドラーが作り出した偶像寄りだったことにびっくりしました。シンドラーの執念恐るべし…。

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20代女性

音楽史を辿る作品でありながら「リア充」など若者言葉も使った文体で、とっつきやすかったです。ただやり過ぎ感もあり、人によっては苦手と感じるかもしれません。もともとが修士論文だけあって、情報はしっかり裏取りがされている印象でした。

【考察】バカリズムが映画の脚本を担当した理由は?

バカリズム

映画『ベートーヴェン捏造』(2025)の脚本は、ドラマや映画の脚本を数多く手掛ける芸人・バカリズムが担当しました。 原作小説ではシンドラーのちょっと間抜けなキャラクターと、それに対して意地悪な返しをするベートーヴェンの姿が笑いを誘います。中には「てめえは無駄口を叩くな」などの強烈な現代言葉も。 ボケとツッコミ、言葉の間合いを熟知した芸人だからこそ、普通の史実小説ではない本作の魅力をさらに引き出してくれるのではないでしょうか。 また、バカリズム脚本をもとにメガホンを取るのが関和亮です。監督を務めた『地獄の花園』(2021)では、永野芽郁のヤンキー口調が話題になりました。バカリズムらしいウィットに富んだ脚本と、関和亮の独特な映像センスによって、今まで見たことがないベートーヴェンがスクリーンに現れる予感です。

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映画『ベートーヴェン捏造』ネタバレ解説・考察!実話をもとにした物語

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映画『ベートーヴェン捏造』は、2025年9月12日から全国の劇場で公開!ベートーヴェンを演じる古田新太と、シンドラーを演じる山田裕貴、この2人の異色のW主演によるユーモアたっぷりの会話劇に注目です。