『国宝』瀧内公美演じるカメラマンは喜久雄の娘!?彼女の生い立ちや原作との違いを解説

原作との違いを含め、何度観ても新たな発見がある映画『国宝』。今回は最後に大きなインパクトを残した登場人物・瀧内公美演じるカメラマンの正体に、原作小説と映画から迫っていきます。 ※本記事には小説・映画『国宝』のネタバレが含まれています。未読・未鑑賞の方はご注意ください。
『国宝』瀧内公美演じる喜久雄の娘・綾乃のプロフィール
映画『国宝』のラスト近くに登場した、喜久雄を取材するカメラマン。彼女は実は喜久雄と愛人の藤駒の娘・綾乃であることが途中で明かされます。 映画では綾乃は幼少期(中盤)に1回、成人後(終盤)に1回の登場で、母親の藤駒と2人で生きてきた様子。喜久雄は父親としての存在がなかったように描かれているため、愛憎込められた綾乃と喜久雄の会話が非常に印象に残りました。 しかし小説では喜久雄の兄貴分である徳次が喜久雄の代わりにずっと藤駒と綾乃の面倒を見ており、綾乃の成長を影から見守っていました。
綾乃の生い立ちは?女手一つで育てられた娘
ここからは、瀧内公美が演じた綾乃の生い立ちについて、映画の方から振り返ってみましょう。
京都の芸妓・藤駒と喜久雄の娘
藤駒は喜久雄が京都の花街で出会った芸妓で、まだ無名だった喜久雄の役者としての才能を見抜いて惚れ込んだ人物。綾乃は2人の間に生まれた娘でした。 しかし藤駒は正妻ではなく愛人という立場だったため、藤駒と綾乃は普段は2人暮らしで、たまに喜久雄が訪れるという生活が続いていたようです。
父・喜久雄と「悪魔」の取引を目撃
2人で神社にお参りしていた時、喜久雄が長いこと拝んでいるのを見て「神様にぎょうさんお願いごとするんやなあ」とふと聞いた綾乃。しかし父の「悪魔と取引してたんや」という返事を聞いて驚きます。 さらに「日本一の歌舞伎役者にして下さい。その代わり、他のもんはなんもいりませんから」と願ったと言う喜久雄の顔を見て、綾乃は子ども心にも恐ろしく思ったでしょう。このセリフが終盤の2人の邂逅に活きてくるのです。
隠し子発覚で喜久雄の人気が低迷する一因に⋯⋯

愛人の子である綾乃はずっと日陰者の暮らしを強いられていました。喜久雄の襲名披露の凱旋を見に来た綾乃が父を呼んでも、彼は冷たい視線を投げるだけ。 しかもその場面は週刊誌による隠し子スクープとして格好の餌食になってしまいます。それ以来、喜久雄との関係はプッツリ切れてしまうのでした。
大人になった綾乃はカメラマンとして父と再会!

瀧内公美が登場するのは、綾乃が成人後にカメラマンとなり、喜久雄の人間国宝認定後の取材で再会するシーン。ここからは映画の中で、成長した綾乃がどのような人物として登場したのかを紹介していきます。
最初はただのカメラマンだと思っていたが⋯⋯
ラスト近く、喜久雄が人間国宝に認定された後の取材でカメラを構える女性が登場。最初は顔が映らず、ただの取材カメラマンだと思って見ていると、突然喜久雄に語りかけてきたのです。
「藤駒という女性を覚えていますか?」
カメラを構えながら喜久雄に向かって突然「藤駒という女性を覚えていますか?」と語りかけたカメラマン。すると喜久雄は「忘れてへんよ、綾乃」と返したのです。 その人物は成長してカメラマンとなった綾乃でした。喜久雄は最初から綾乃だと気付いていたのでしょうか。
「本当に日本一の歌舞伎役者になったんだね」
綾乃は幼い頃に喜久雄が神社で「悪魔と取引した」と言っていたことを忘れてはいませんでした。「日本一の歌舞伎役者になる」という願いが叶ったことを、綾乃は皮肉を込めてこのセリフを返したのです。 しかし綾乃は彼の芸を認めてもおり、「正月を迎えたような気分にしてくれる」とも伝えます。彼女の父への愛憎入り混じる複雑な感情がこの短いシーンに凝縮されていました。
原作における綾乃を紹介!映画とはまた違った一面も?
原作小説では映画に比べて綾乃の登場場面は多く、徳次とともに欠かせない人物。ここからは小説での綾乃のエピソードを紹介していきます。
原作の綾乃は父を憎んでいなかった?

小説では徳次が喜久雄の代わりに藤駒(小説では市駒)と綾乃を支えており、関係性を悪化させないように努めていました。そのため映画の綾乃ほど憎んでいる印象はなく、父娘関係は破綻してはいません。 しかし前述の「悪魔と取引した」場面が出てくるのは、綾乃の息子・喜重が火傷で病院に運ばれた時で、ここで綾乃はこれまでの父への恨みをぶちまけています。
喜久雄の兄貴分・徳次が第二の父親
綾乃は愛人の子という自分の身の上で辛い目に遭い、中学生の時に非行に走ってしまいます。その時も徳次が自分を犠牲にしてまで窮地から救い出してくれました。綾乃にとっては徳次は第二の父親といえるでしょう。 読書好きな徳次の影響で、小説ではカメラマンではなく出版社に就職して編集者となっています。
実はあのセリフは徳次のものだった!
綾乃が喜久雄の取材で再会した際に発した「正月迎えたような気分になる」というセリフは、小説では徳次が純粋に褒め称えて言っています。映画では綾乃が相反する感情を抱きつつも称賛する場面で使われ、効果的に改変されていました。
『国宝』瀧内公美の演技力に脱帽!一瞬だが忘れられない場面に
映画で綾乃を演じた瀧内公美の演技力に、誰もが釘付けになったことと思います。終盤のあのシーンにしか登場しないにもかかわらず、“只者ではない”ことを観客に気付かせるほどの迫力!しかも映画の中盤に登場していた喜久雄の娘だったこともわかり、2人の緊張感ある会話からこの作品の締めに向かうにふさわしいシーンになりました。
映画に説得力を生む名演技を披露した瀧内公美

主演映画『火口のふたり』(2019年)や『由宇子の天秤』(2021年)などで高い評価を得ている瀧内公美。2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』では源明子役を務め、その熱演は注目を集めました。2025年は朝ドラ『あんぱん』やドラマ「占拠シリーズ」第3弾『放送局占拠』、映画『宝島』にも出演しています。
実は瀧内公美が登場することは明かされていなかった!?
実は事前情報ではキャスト欄に瀧内公美の名はなく、公開初日に自身のInstagramで出演報告をしていました。しかしこの時点でも役柄は明かしていません。 おそらく終盤の重要なシーンに登場するキーマンともいえる役どころだったため、事前告知はできなかったと思われます。小説とはまったく違ったシーンとなり、原作ファンも驚いた改変と演出になっていたのではないでしょうか。
『国宝』瀧内公美演じる綾乃に注目!
映画『国宝』に登場する喜久雄の娘・綾乃を、原作小説との違いと比較して紹介しました。映画では瀧内公美の演技力によって喜久雄の物語が引き締まるラストを迎えたのではないでしょうか?彼女の今後の活躍にも期待が高まります!