『おおかみこどもの雨と雪』花が「気持ち悪い」「可哀想」と言われる理由は?隠されたメッセージや最後まで徹底解説
細田守監督作『おおかみこどもの雨と雪』の主人公・花。「おおかみこども」のきょうだいを育てるシングルマザーというシビアな状況の中でも笑顔を絶やさない花のプロフィールを紹介し、その人生を深掘りしていきます。 ※本記事には、映画『おおかみこどもの雨と雪』のネタバレが含まれています。未鑑賞の方はご注意ください。
【概要】『おおかみこどもの雨と雪』花の年齢や大学は?

| 年齢 | 19歳(彼と出会った当時)~32歳(物語の終わり頃) |
|---|---|
| 家族 | 父子家庭で育ち、高校生の時に父親が死去して天涯孤独に。 |
| 居住地 | 田舎の古民家(モデルとなった古民家は富山県上市町に存在) |
| 大学 | 都内の国立大学 |
| 特性 | 決断力と独立心があり、笑顔を絶やさずにいることを信条としている。 |
| 声優 | 宮崎あおい |
大学に通っている時に「おおかみおとこ」の彼と出会い、一目惚れした花。姉の雪と弟の雨、2人の子どもを授かって幸せな生活を送っていましたが、突然彼を亡くしてシングルマザーとして生きていくことになります。 「おおかみこども」である雪と雨を育てるため、田舎の古民家へ転居。初めは近所付き合いをせずに、独りで子育てをしていましたが、徐々に周囲の人々に心を開いていきました。
【評価】花が「気持ち悪い」「可哀想」と言われるのはなぜ?
①花はどんな時でも笑顔

男手一つで育ててくれた父親が、「笑顔を絶やさない子に育ってほしい」という願いを込めた名前を持つ花。それを聞いてからは、辛い時も苦しい時も笑顔でいようと心に決めていたようです。 ただ、それが逆に「どんな時でも笑っていて気持ち悪い」という感想が出てしまう原因の1つになったようでもあります。
②極端な「母親」としての振る舞い

別の要因としては、彼女の極端に「母親」であろうとする振る舞いからきているのかも。「おおかみこども」という特殊な子育てをしているためか、人生すべてを子どもの養育に捧げてしまい、恋愛や再婚といった「個人の幸せ」を置いてきてしまっているようにも見えます。 あまりに過剰な責任感や極端な自己犠牲を強いられているようにも感じられる点が挙げられそうです。
【メッセージ】花は理想の母親?名前の意味も考察
母親として多様な生き方を認める花

そんなネガティブなイメージも持たれている花ですが、おおかみこどもである雪と雨に多様な生き方を認めている面もあります。雪が人間として生きることを選んだ時も、雨がおおかみとして生きると決めて山へ向かった後も、花は悩みながらも彼らの生き方を否定することはありませんでした。 子どもの成長を信じ、その究極の二択を迫られた時も「どちらでも選べるように」という方針を貫いてきたことは、子どもたちにとっても心強かったのではないでしょうか。
花という名前に隠されたメッセージが!

花という名前は、家の裏庭に咲くコスモスを見た父親が「花のように笑顔を絶やさない子に育ってほしい」という願いを込めたもの。花の献身的な子育ては、その名が示す通り「土を耕し、水をやり、芽を出す」手助けをしているよう。 さらに、子どもたちが自立して巣立っていく姿は「花が咲き、種を飛ばし、やがて散っていく」という自然のサイクルそのものでもあります。雪と雨は2人とも家を離れて、それぞれ寮生活に山に、独り立ちしていきました。 また、花が持つ忍耐強い雑草のような生命力は、どんな環境にも適応し、いかなる困難の中でも生き抜いていく「個の強さ」を象徴しているようです。
細田守監督が描いた理想の母親とは?
花は子どもたちに自由に道を選択できる人生を歩んでほしいと願っていたはず。人生のレールを親が敷くことはなく、あくまでも最終的な判断は子どもたち自身に任せていました。 幼い頃は母親ときょうだい3人だけの世界でしたが、成長するにつれ、雪は草平、雨は山の先生といった他者との関わりが出来てきます。そうした出会いによって彼ら自身の道が必ず見つかると、花は信じていたのでしょう。
【ネタバレ】花は最後どうなった?死亡したのか・その後の人生の選択
ラストシーンで花は死亡していない

豪雨の中、山へ向かう雨を追って山中へ独り入って行った花。途中の山道で転倒して意識を失ってしまいますが、雨に助けられます。意識を取り戻した後、山へ入っていく雨を送り出していました。 物語の最後、寮生活を始めた雪を送り出した後、花は家に1人で住んでいます。子どもたちが巣立った後はどうしているのでしょうか。
子育てを終えた花のその後はどうなる?
花のその後は特に描かれてはいませんが、おそらく母親としての役割を終えて社会に復帰し、自身の幸福を追求できるようになったかもしれません。学芸員としての仕事もあり、自給自足の農作業も続けていき、充実した毎日を過ごしていそう。 寮生活をしている雪も長期の休みには帰省して、家族としての時間を過ごせるのではないでしょうか。雨もきっと時々、山から様子をうかがっているかもしれません。
【過去】父親を亡くした花の生い立ちが壮絶?
最終的には自らの道を切り開き、2人の子どもをそれぞれの道に送り出した花ですが、その生い立ちは実に苛酷なものでした。幼い頃から父子家庭で育ち、その父親も高校生の時に亡くしてしまい、天涯孤独の身になっています。 巡りあった彼とも幼い子ども2人を遺して先に旅立たれてしまい、若くしてシングルマザーに。彼女の芯の強さはこんな生い立ちからきているのかもしれませんね。
『おおかみこどもの雨と雪』花は子どもを想う母親
過酷な生い立ちから「おおかみおとこ」との恋、「おおかみこども」の出産と子育てと、あまりにも壮絶な人生を歩んできた花。いつも笑顔でいようとする彼女の健気さと忍耐強さ、そして芯の強さは彼女の魅力的な特性です。そんな花に注目して、作品を楽しんでみてください!


