2025年12月3日更新

【ひどい?】『果てしなきスカーレット』評価が分かれる原因は?脚本や演技から理由を考察

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果てしなきスカーレット
ⓒ2025 スタジオ地図

『時をかける少女』(2006年)や『サマーウォーズ』(2009年)などが大ヒットを記録し、「ポスト宮崎駿」と評されるほど注目と人気を集めるアニメーション監督・細田守。 しかし彼の最新作『果てしなきスカーレット』は酷評、興行不振と意外な状況となっています。 『果てしなきスカーレット』はいったいなぜ酷評されているのでしょうか。また一方で評価されている点についても紹介します。 ※この記事は『果てしなきスカーレット』(2025年)のネタバレを含みます。

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『果てしなきスカーレット』初日からガラガラの映画館!興行収入は?

『果てしなきスカーレット』は全国約400館以上で公開され、多いところでは1日10回以上上映されました。しかし観客の入りはまばらで、ネットでは「ガラガラ」という評が目立ち、ほぼ貸切状態で鑑賞したという人も。 また本作の公開にあわせて、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では11月を「細田月間」として4週連続で過去作品を放送するなど、その人気は健在のように見えますが、『果てしなきスカーレット』は不発。これはいったいなぜなのでしょうか。

興行収入は初動4日間で約2.7億円!

『果てしなきスカーレット』の3連休を含む公開4日間の興行収入は約2.7億円、観客動員数は17万人と発表されています。 これは細田守監督の前作『竜とそばかすの姫』(2021年)が公開3日間で動員60万人、興行収入8億9000万円を記録したことと比べると、ほぼ4分の1と非常に低い数字となっています。

低評価の原因を考察!細田守脚本やミュージカル調に賛否

映画『果てしなきスカーレット』(2025年)
(C)2025 スタジオ地図 (C)KADOKAWA CORPORATION 2024

『果てしなきスカーレット』の酷評されやすい点として、ミュージカルシーンをはじめ、“唐突さ”が指摘されています。 それぞれ詳しく見ていきましょう。

展開が急?視聴者が没入できず⋯⋯

果てしなきスカーレット スカーレット
ⓒ2025 スタジオ地図

本作が酷評されている理由の1つは、「展開が急でついていけない」という点です。 母ガートルードは原作小説ではスカーレットの義母であると明らかにされていますが、映画では明言されていません。そんななか、なぜ「母」がスカーレットに冷たく接するのかの説明はなく、観客は疑問を抱えたまま物語が進んでいくことになります。 またスカーレットの父アムレットが処刑された理由もよくわからないまま。劇中では「反逆罪」とされていますが、王である彼が何をどのようにすれば「反逆」になるのかもよくわかりません。 さらにクローディアスがなぜ死者の国を支配するようになったのか、その過程も描かれませんでした。 さまざまな、しかも重要な要素の説明が省略されているため、観客が置いてきぼりになってしまったと思われます。

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細田守脚本が不人気?過去作・奥寺脚本との違いとは

果てしなきスカーレット スカーレット 聖
ⓒ2025 スタジオ地図

細田守がその人気を確立した『サマーウォーズ』や『時をかける少女』では、現在大ヒットを記録している『国宝』も手掛けた奥寺佐渡子が脚本を担当していました。 しかし『おおかみこどもの雨と雪』(2012年)では細田監督も脚本に参加し、『未来のミライ』(2018年)以降は、監督がひとりで脚本を手掛けています。同作あたりから脚本の出来の甘さを指摘する声はあがっていました。それが『果てしなきスカーレット』でも顕在化したと言えるでしょう。

賛否分かれるダンスシーン演出

キャラバンで聖が踊り子に誘われるシーンや、スカーレットが現代の日本のような場所で聖と踊るなど、『果てしなきスカーレット』にはダンスシーンがいくつか登場します。しかしそれらのシーンは唐突で、観客を困惑させました。 パンフレットのインタビューによると、細田監督は『竜とそばかすの姫』で歌とダンスは映画自体を上げてくれることに気づいた、(ダンスシーンは)スカーレットが違う自分の可能性に気づくきっかけとして未来のビジョンが思いついたと語っています。 賛否両論あるものの、ダンスシーンの描写や演出は美しく、背景や人々なども細かく描き込まれた力の入った映像であるは間違いありません。

有名俳優起用も演技に低評価?なぜプロ声優は少ないのか

果てしなきスカーレット クローディアス
ⓒ2025 スタジオ地図

声優陣には錚々たる面々が名を連ねましたが、演技の評価もあまり高くありません。それは、これまでも何度も指摘されてきたとおり、顔や体が見える演技と声だけの演技は、全く演技の技法が違うからでしょう。 一方で、本作は『ハムレット』をベースにしており、聖役の岡田将生やアムレット役の市村正親は、過去に舞台でハムレット役を経験しています。また役所広司や吉田鋼太郎は「シェイクスピア俳優」として高い評価を得るなど、数多くのシェイクスピアの舞台作品で活躍しています。 このキャスティングは、『果てしなきスカーレット』が『ハムレット』の翻案であることを意識したものと考えられます。

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一方で称賛の声も!新たな映像表現や芦田愛菜の歌唱力に注目

酷評が目立つ『果てしなきスカーレット』ですが、逆に好評を博している部分もあります。 では、どんなところが評価されているのでしょうか。

圧倒的な映像美!ドラゴンの繊細な表現が光る

果てしなきスカーレット
ⓒ2025 スタジオ地図

『果てしなきスカーレット』の最大の魅力は、美しい映像です。 2Dと3Dが混じり合う、日本のアニメーション表現をアップデートすることを目指した本作。背景や波のような空が美しく描写され、生き物、特に大きなドラゴンの質感が細やかに、かつ生き生きと表現されています。 映像に関してはネット上でも高く評価している声も多く、細田監督が制作発表当初から自信をのぞかせていった理由も納得できます。

主演・芦田愛菜の演技&歌声に絶賛の声多数

芦田愛菜

もう1つ、高く評価されているポイントは主人公スカーレットを演じた芦田愛菜の演技と歌唱力です。 強い意志を持つ王女としてのスカーレットと、迷い苦しむ彼女の2つの側面を見事に表現した彼女の演技は高く評価されています。 また主題歌「果てしなき」の歌唱も担当しており、その澄んだ歌声も多くの支持を得ています。

『果てしなきスカーレット』劇場で評価を確かめよう!

賛否両論のさまざまな反応を巻き起こしている『果てしなきスカーレット』。あまりの酷評に「逆に観たくなった」といった声も散見されますが、未見の人には、ぜひフラットな気持ちで作品を楽しんでほしいです。 『果てしなきスカーレット』は全国公開中です。