『国宝』吾妻千五郎を演じた中村鴈治郎は人間国宝の息子?原作小説の裏話や映画との違いを解説!

2025年に公開され、実写邦画歴代興行収入1位を獲得した『国宝』。歌舞伎の世界の“血”と“芸”のせめぎ合いを描いた芸道映画として高く評価されました。 この記事では、『国宝』に登場する吾妻千五郎について紹介します。 ※『国宝』のネタバレと捉えられる記述がありますので、未視聴の方はご注意ください。
『国宝』吾妻千五郎(あがつませんごろう)のプロフィール

吾妻千五郎は、上方歌舞伎の当主で大物役者です。俊介の父である二代目花井半二郎とともに、俊介と喜久雄に稽古を施します。娘の彰子はのちに喜久雄と結婚します。 喜久雄に対しては彼の芸を評価していますが、特に肩入れするということもなく、冷たく接するというわけでもなく、基本的に中立な立場を保っています。
吾妻千五郎役の中村鴈治郎は人間国宝の息子
吾妻千五郎を演じたのは、歌舞伎役者の四代目・中村鴈治郎です。彼の父である四代目・坂田藤十郎は人間国宝で、2009年には、関西の歌舞伎役者として初めて文化勲章を受章しました。 初名の中村智太郎時代は、学業を優先して学校が長期休みの間にしか舞台に立っていませんでしたが、1980年12月、病に倒れた祖父の代役で『曽根崎心中』の徳兵衛役を務め、一躍注目を集めます。 2015年に成駒屋の当代である中村鴈治郎を襲名し、2019年には紫綬褒章を受章しました。
中村鴈治郎は『国宝』生みの親の1人?原作誕生秘話

中村鴈治郎は行きつけのバーのママの紹介で、『国宝』原作者の吉田修一と出会い、「歌舞伎の世界を書きたい」という相談を受け、楽屋に招いたといいます。しかし鴈治郎の出番に舞台裏までついてくるので大道具係に怒られ、弟子が着る黒衣(くろご)を用意したとか。 吉田は3年間、月に2、3回劇場に足を運び、おかもち(小道具入れ)を運んだりしていました。舞台袖から見た演目を翌日には客席から見たりと、贅沢な時間を過ごしたと語っています。 また鴈治郎は、映画では出演とともに歌舞伎指導を担当し、リアリティを出すのに尽力しました。
映画『国宝』吾妻千五郎の名シーンを紹介

落ち目になっていた喜久雄はなんとかして後ろ盾を得るため、千五郎の娘である彰子に近づきます。しかしそんな魂胆は千五郎には見え見え。喜久雄のもとに千五郎が怒鳴り込んでくるシーンで、鴈治郎は「履物」に注目してほしいと語っています。 「あれは家から飛び出してきたんで、眼の前にあるものを履いてきたんです。女物のサンダルを履いているんですよ」 鴈治郎の迫力のある演技に目が奪われるシーンですが、そんな細かいこだわりがあったのですね。
原作小説における吾妻千五郎はどんな人物?映画との違いを解説
映画では、喜久雄を歌舞伎の世界に復帰させたのは万菊になっていますが、原作では千五郎が喜久雄を歌舞伎の世界に呼び戻しています。 実の父・権五郎の部下である辻村に頼まれて宴会に顔を出した喜久雄は、そこで辻村の逮捕劇に巻き込まれてしまいます。ヤクザとの関係が取り沙汰されればマイナスになるとわかったうえで、喜久雄は世話になった辻村に忠義を尽くしました。 その心意気を見た千五郎は、喜久雄を許したのです。
吾妻千五郎役の中村鴈治郎は『国宝』を両面から支えた人物
『国宝』原作者の吉田修一は、中村鴈治郎のもとで3年間歌舞伎の世界を間近で観察しました。その後、鴈治郎は吾妻千五郎役で映画に出演。さらに歌舞伎指導も行っています。 まさに「『国宝』生みの親の1人」ですね!

