2016年12月23日更新 1,031view

アニメ映画『秒速5センチメートル』を徹底解説!【ネタバレあり】

新海誠が手掛けたアニメ映画『秒速5センチメートル』。胸を締め付けられるような切ないストーリーと、美しい映像表現が印象的な作品です。ここでは、多くの人々の心を捉えた本作について、ネタバレを含めまとめていきます。

新海誠が贈る驚愕の映像美の恋物語『秒速5センチメートル』

アニメ映画『君の名は。』の大ヒットでその名が広く知られるようになったアニメクリエイターの新海誠。『秒速5センチメートル』は、新海が手掛けた3作目の劇場公開作品です。

桜の花びらが舞い落ちるスピードが「秒速5センチメートル」だそうで、それは作品の冒頭でも語られ、満開の桜の美しい映像に目を奪われずにはいられません。

物語は主人公の少年を軸に切ない恋心を描き、中学時代の1話「桜花抄」、高校生時代の2話「コスモナウト」、社会人になった3話「秒速5センチメートル」の3つのストーリーで構成されています。

ここでは、ファンから熱い支持を受ける『秒速5センチメートル』のあらすじやその結末まで、ネタバレを含めて解説していきます。

『秒速5センチメートル』のあらすじ

1話「桜花抄」

1話『秒速5センチメートル』画像

貴樹と明里の出会いは、東京の小学校。転校生同士で似たような境遇のため、すぐに仲良くなりました。しかし、小学校卒業と同時に明里が栃木県に転校してしまいます。

明里からの手紙をきっかけに連絡を取り合っていたふたりですが、今度は貴樹が鹿児島県に引っ越すことに。さらに遠く離れてしまう前に、貴樹は意を決して明里に会いに栃木へ向かいます。

ところが、約束の当日は大雪になり、貴樹の乗る電車は大幅に遅れてしまい……。

2話「コスモナウト」

2話『秒速5センチメートル』

舞台は、鹿児島県の種子島。高校の同級生・花苗は、中学2年で貴樹が転校してきた時から貴樹に恋をしていましたが、なかなか想いを伝えることができません。

卒業後の進路も決まらず、趣味のサーフィンもスランプ。そんな時、貴樹が東京の大学へ進学することを知り、ある決意を持って波に挑戦し、とうとう成功します。スランプを克服した花苗は、貴樹への告白を決心するのですが……。

3話「秒速5センチメートル」

3話『秒速5センチメートル』

社会人になった貴樹は、何かにもがきながら東京の街で仕事に追われる日々を過ごしていました。3年間交際している恋人にも心が向かず、彼女からもそのことを指摘されてしまいます。

貴樹の心は完全にすり減り、懐かしい昔の夢を見ます。

『秒速5センチメートル』の登場キャラクターと声優キャスト

遠野貴樹/水橋研二

遠野貴樹

主人公の遠野貴樹(とおの・たかき)は、転勤族の家に生まれた一人っ子。小学3年で東京の学校に転校し、その後明里も転校してきて出会います。

水橋研二

貴樹の声を少年から大人まで通して担当したのは、東京都出身、1975年生まれの水橋研二(みずはし・けんじ)です。

1996年の映画『33 1/3 r.p.m.』で、いきなり主演デビュー。以降、映画やテレビドラマ、CMなど多くの作品で活躍し、フジテレビのスペシャルドラマ『 これでいいのだ!! 赤塚不二夫伝説』では赤塚不二夫役を務めました。

本作の貴樹役となった経緯ですが、新海監督は以前水橋が出演した映画『月光の囁き』を観ていたそうです。その時の声がとても印象に残っていて、声優を決める段階になった時に貴樹役に思い浮かんだのが水橋だったのだとか。

篠原明里(少女)/近藤好美

篠原明里『秒速5センチメートル』

貴樹の初恋の少女・篠原明里(しのはら・あかり)は、貴樹と同じく一人っ子。親の都合で転勤が多く、境遇が似ていることから貴樹と親しくなり、淡い恋心を抱きます。

近藤好美 画像

出典: ameblo.jp

1話「桜花抄」で少女時代の明里を務めたのは、埼玉県出身、1988年生まれの近藤好美(こんどう・よしみ)です。

ファッション雑誌のモデルをしながらドラマやCMにも出演していましたが、2011年には所属事務所を退所し、一般企業に就職。2016年現在はナレーション活動をしているそうで、結婚したこともブログで報告されています。

明里役はMDオーディションが行われました。録音での演技が少し気にかかった新海が実際に会ってみたところ、自然体の声が格段に良く、また儚さも感じる声が役のイメージと一致し決定したといいます。

篠原明里(大人)/尾上綾華

篠原明里『秒速5センチメートル』画像

出典: renote.jp

3話「秒速5センチメートル」での成人した明里です。このストーリーでは、栃木県の両親と披露宴についての会話がされているシーンが確認できます。

尾上綾華

大人になった明里を演じたのは、埼玉県出身、1982年生まれの尾上綾華(おのうえ・あやか)です。

ファッション雑誌のモデルやキャンペーンガールなどの活動のほか、情報番組『スッキリ!!』にも出演歴があります。

本作のMDオーディションで大人の明里役に決定した理由は、まず声が美しいこと、そして少女時代を務めた近藤と声質が似ていたからだそうです。少女の儚さが消え落ち着いた大人の女性となった明里にしっくりきたのだとか。

澄田花苗/花村怜美

澄田花苗『秒速5センチメートル』

出典: cslbook.com

貴樹の転校先の種子島の少女・澄田花苗(すみだ・かなえ)。貴樹に一目惚れをし、貴樹と同じ高校に進みますが、その想いを伝えられないでいます。

花村怜美

そんな花苗の声は、東京都出身、1984年生まれの花村怜美(はなむら・さとみ)が担当しました。

映画『バトル・ロワイアル』中川有香役などの女優活動を経て、2002年に声優デビュー。アニメ『東京マグニチュード8.0』で主人公の小野沢未来役を務めるほか、声優ユニット「sorachoco」としての活動歴もあります。

花苗役もMDオーディションが行われ、決まった経緯は少女時代の明里役の近藤とほぼ同じでした。録音よりも実際に会って聴いた声がとても自然で良く、演技にもそうした面を出してほしいと新海監督は思ったそうです。

水野理紗/水野理紗

水野理紗『秒速5センチメートル』

貴樹と3年間付き合った水野理紗(みずの・りさ)。貴樹の心が自分にないことを感じていて、「1000回のメールのやりとりをして、心は1センチくらいしか近づけなかった」という内容のメールを送り別れを告げました。

水野理紗

演じたのは、役柄と同姓同名の神奈川県出身、1978年生まれの水野理紗(みずの・りさ)です。

郷田ほづみ率いる劇団「湘南テアトロ☆デラルテ」で看板女優として活躍するほか、アニメ『アカメが斬る!』では殺し屋のナジェンダ役を務めました。

新海が手掛ける映画の常連声優であり、本作では花苗の姉役も兼任。本作以外にも『雲のむこう、約束の場所』や『星を追う子ども』、『言の葉の庭』などの新海作品に出演しています。

『秒速5センチメートル』のエンディングは?【ネタバレ】

1話『秒速5センチメートル』

出典: cslbook.com

1話では、貴樹は明里に会いに栃木へ向かい、大雪のため大幅に遅れましたが、明里は駅で待っていてくれました。雪の降りしきる深夜、ふたりは唇を重ね幸せを感じると同時に、この先一緒にはいられないことを悟りお互いに手紙を渡せないまま翌朝別れます。

高校時代の2話で、時折“誰か”に携帯メールを打つ貴樹。一瞬視聴者は明里と繋がっていると思わせられ、実はどうしても送信できなかったメールでした。一方、一度は貴樹への告白を決意した花苗ですが、貴樹の心が遠くにあると感じ取り、結局想いを伝えられずに失恋します。

3話『秒速5センチメートル』画像

出典: jinbita.com

3話での貴樹は社会人になり、とにかく前に進みたくてもがく日々。あの日明里と別れ、手紙の交換も次第に途切れてしまい、あれほど大切に思っていた明里の存在が自分の中で風化していることに気付きます。

しかし、完全に忘れることはできず、恋人・理紗とも向き合えないでいました。そして、貴樹をはじめ登場人物の様々な“想い”が映し出されたあとのエンディング。

3話『秒速5センチメートル』画像3

出典: photozou.jp

小学生時代の思い出が残る土地の踏切で、貴樹はひとりの女性とすれ違います。おもわず振り返りますが、電車に阻まれ女性の姿は見えず、電車が通り過ぎた後にはもう女性の姿はありません。

この女性が、大人になった明里です。明里は貴樹との恋をすでに過去の思い出に変え、結婚して東京で暮らしていました。そうした事実を全く知らない貴樹ですが、女性が振り向かずに立ち去ったことで、自分の中でけじめをつけたような表情を見せます。

お互いに振り向き合い、奇跡のハッピーエンド!にはならなかったエンディング。現実的に初恋とは儚いものであり、「日常によりそった作品」を目指したという新海監督は、リアルで切ないこのラストを選んだのでしょう。

『秒速5センチメートル』の2つの小説版

小説『秒速5センチメートル』

映画公開後、新海監督は自ら『秒速5センチメートル』の小説も書き上げています。貴樹視点の1話、花苗視点の2話、貴樹視点の3話と、映画と同じ構成ですが、映画では描かれなかった細部が小説では補われました。

各シーンでの登場人物の詳細な心理描写のほか、お互いに渡せなかった手紙の内容も確認できます。特に3話「秒速5センチメートル」においては、貴樹の大学時代や社会に出てからの人間関係についても詳しく語られました。

小説『秒速5センチメートル one more side』

また、もうひとつ『秒速5センチメートル』の小説版があり、『秒速5センチメートル one more side』のタイトルで、ライトノベル作家の加納新太が書いています。

基本的なストーリーは変わらずこちらでも手紙の内容が公開されていますが、1話が明里、2話が貴樹、3話は明里と貴樹の両者という視点になるため、新海のオリジナルとは違った趣になっているそうです。

「連作短編アニメーション」という構成への想い

2話『秒速5センチメートル』画像

『秒速5センチメートル』は、ひとりの少年を軸にした「連作短編アニメーション」と称していますが、新海監督が初めに考えたのは10本の異なる内容のオムニバス映画だったそうです。

しかし、作品全体を見た時に“ひとつのもの”としての満足感を込めたいと思い、10本の中からストーリーを繋げられそうな3本に絞りました。

それならば、わざわざ「連作短編」にせずひとつの物語にまとめてしまう方法もありますが、生活の隙間にすっと入れそうな長さの作品、短い中でもしっかりと語られた作品を目指し、「連作短編アニメーション」という形になったといいます。

山崎まさよし / One more time,One more chance

主題歌に関しては、10本のプロットを立てた時それぞれに合う曲も考えたそうです。「連作短編」の構成になり、全体のテーマと一番重なったのが山崎まさよしの『One more time, One more chance』だったため、3編通してこの1曲にすることに決めたのだとか。

リリースされた1997年は、ちょうど貴樹と明里が出会った頃。切ない歌詞とメロディーが登場人物の心情とぴったりと合い、物語をより盛り上げています。

『秒速5センチメートル』の聖地

本作では、さらに「日常によりそった作品」にするために、徹底的にロケハンをし、一部手を加えながらもリアルな情景づくりにこだわったといいます。

東京の街並み、栃木や種子島の自然など、現地を知っている人には親しみをもってもらえるように、知らない人には現実の風景がより伝わるように、常に考えたのだとか。そこで物語の舞台となった場所をご紹介します。

小田急・小田原線「参宮橋駅」付近

1話『秒速5センチメートル』画像3

小学生の貴樹と明里が駆け下りていた参宮橋公園の横にある坂です。15年後、大人になった貴樹が再びここを歩くシーンもあります。

また、エンディングで貴樹が明里とすれ違った踏切もここからそう遠くないようです。

栃木県の岩舟町

1話『秒速5センチメートル』画像2

出典: ckworks.jp

明里の引っ越し先の町です。貴樹と明里が待ち合わせた岩舟駅には映画公開後から訪問者が増え、北海道や外国からの観光客も訪れるのだとか。

鹿児島県種子島の中種子町

2話『秒速5センチメートル』画像2

2話「コスモナウト」の舞台となった町です。貴樹と花苗が通った高校や、学校帰りに立ち寄った売店も実際にあります。

『秒速5センチメートル』の感想・評価は?

3話『秒速5センチメートル』画像5

お互いに惹かれ合っていた少年少女が、引っ越しや月日の経過によって、心も変化していく様子を描いた本作。「距離」や「時間」や「速度」をテーマに、切ないエンディングの物語となりました。

新海作品のファンだというお笑いの田村淳は、時間の流れが独特なこと、見終わった後に浄化された気分になることを語り、映画『恋空』の今井夏木監督は以下のような感想を述べています。

私は『恋空』で意図的に「空」をたくさん撮りましたが、自然は意図したようには絶対に撮れなくて本当に苦労したんです。でもアニメは好きなように描けます。それがすごく羨ましかったと同時に、自分のイメージが明確にないと表現ができないという事実に頭の下がる思いでした。アニメですが完全に大人向けの作品です。
引用:www.tfm.co.jp

さらに、ciatrユーザーの感想も挙げてみます。

映像美や音楽、切ない終わり方も良い

Kenta_Kawamura
中学生時代に見た作品。
最後の切なく終わる感じが良い。桜のシーンは印象にかなり残る。
oomo96
アニメーション映画としての画力は桁違いの良さ。主人公の感情の変遷や人を思い続ける気持ちが痛いほどはっきりそして、深く描かれている。

初めて見たときから、衝撃が消えずに何度も何度も機会があるたびに見ている作品。

Mamio
短編3本がまとまった映画。最後の話は社会人になった今の私の目線で見ると共感できる部分が多かった。山崎まさよしの声と映像がリンクして、最後は鳥肌ものでした。
dachi023
何回か見たが3部が毎回辛い気持ちになる。
しかし、その辛さが何となくクセというかなんというか。
すれ違いの恋の儚さにジーンとする1本。
一度は見たい映画。アニメだからと馬鹿には出来なかった。

ラストに不満が残るという意見も

bluegirl_beer
#ネタバレ
映像がすごく綺麗です。
3部構成になっていて、1~2部はとてもサイレントな作りの映像美が
マッチして良い雰囲気を出しています。
それだけに3部の構成が悪目立ちしてしまっています。泣かせにきてるんだろうけど、泣けなくて、戸惑っているうちに映画が終わって呆然としてしまうという。
Teppeyc2Rock
バッドエンドだね。 辛い。

概ね高評価ですが、3話が駆け足的になったことで、あっけなく終わってしまった印象を持った人もいるようです。より深く物語を読み取るために、映画とあわせて小説も読んでみると良いかもしれません。

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